変電27【電験3種 電力】直流は電流零点がなく遮断は困難!「容易」は誤り 平成28年度 A問題7 完全解説

電験3種 電力科目 変電 平成28年度 A問題7 直流はなぜ切りにくい?電流の零点がない

今回は平成28年度 電力科目 A問題7、遮断器について誤っているものを選ぶ問題です。アークの消弧、SF₆ガスの環境問題、高電圧系統での使い分け、そして直流遮断の難しさ——遮断器の基本が一通り確認できます。

決め手は電流零点。交流は1サイクルに2回、電流が0になる瞬間(電流零点)があり、そこでアークを消せます。ところが直流は電流零点がないのでアークが自然に消えず、遮断は交流より困難。「容易」とする記述が誤りです。

目次

平成28年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 変電 平成28年度 A問題7 問題文
平成28年度 電力科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7

電験3種 電力科目 【変電】 平成28年度 A問題7

 遮断器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

遮断器は、送電線路の運転・停止、故障電流の遮断などに用いられる。
遮断器では一般的に、電流遮断時にアークが発生する。ガス遮断器では圧縮ガスを吹き付けることで、アークを早く消弧することができる。
ガス遮断器で用いられる六ふっ化硫黄(SF₆)ガスは温室効果ガスであるため、使用量の削減や回収が求められている。
電圧が高い系統では、真空遮断器に比べてガス遮断器が広く使われている。
直流電流には電流零点がないため、交流電流に比べ電流の遮断が容易である。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):直流の遮断は難しい

「電流零点がないため、交流に比べ遮断が容易」——理由は正しいのに結論が逆です。

★交流★直流
★電流零点★1周期に2回ある★ない
★アークの消え方★零点で自然に消える★自然には消えない
★遮断の難易★比較的容易★★困難

交流は50 Hz なら1秒間に100回、電流がゼロになります——その瞬間にアークが消えるのです。

遮断器の仕事は、消えた瞬間に絶縁を回復させること——自分でアークを消す必要はありません

直流には零点がないので、アークが流れ続けます——強制的に消さなければならないのです。

問題文の前半「電流零点がない」は正しい事実——そこから導く結論が逆になっています。

直流遮断器はどうやって切るのか

零点がないなら、人工的に作ればよい——それが基本的な発想です。

方式しくみ
★転流方式★コンデンサとリアクトルで振動電流を重ね、電流を一瞬ゼロにする
★半導体方式★半導体素子で電流を別の経路へ移してから切る
★抵抗投入★抵抗を挿入して電流を減らしていく

いずれも交流遮断器より複雑で高価になります——だから直流送電の弱点とされます。

直流送電が2端子(2地点間)に限られてきたのも、この理由——事故時に切り分けられないからです。

近年、実用的な直流遮断器が開発されつつあります——多端子の直流送電網が現実味を帯びてきました

(1)〜(4) 遮断器の基本

(2)(3) アークをどう消すか

遮断器消弧の方法用途
★ガス遮断器(GCB)★SF6ガスを吹き付ける★超高圧・高電圧
★真空遮断器(VCB)★真空中でアークが拡散する★高圧(6.6〜77 kV)
空気遮断器(ABB)圧縮空気を吹き付ける旧式・騒音が大きい
油遮断器(OCB)油の分解ガスで消弧する旧式・火災の恐れ

SF6は空気の約100倍の消弧能力を持ちます——だから高電圧に向くのです。

真空遮断器は構造が簡単で保守が楽——けれども高電圧では絶縁距離が確保しにくい

だから(5)の前提「電圧が高い系統ではガス遮断器」は正しい——(4)のSF6の環境問題も正しい記述です。

⚠️ よくある間違い
(5)の前半「直流電流には電流零点がない」を見て正しいと判断する——事実としては正しいのです。
誤りは「遮断が容易」という結論——零点がないから困難になります。
(2)の「アークが発生する」を疑ってしまう——電流を切れば必ずアークが出ます
(3)の「圧縮ガスを吹き付ける」を疑ってしまう——ガス遮断器の原理そのものです。
(4)のSF6の温室効果を疑ってしまう——CO₂の約23,900倍で回収が義務
前半が正しく後半が誤りという形は頻出——最後まで読むことです。

⏱️ 本番での進め方
①★直流は電流零点がないので遮断が困難。容易ではない。
②★交流は1周期に2回ゼロになり、そこでアークが消える。
③★直流遮断器は人工的に零点を作る。
④高電圧はガス遮断器、高圧は真空遮断器。

💡 覚え方
「ゼロを通るから切れる」——交流の遮断はそこに頼っています直流にはその助けがない——だから難しいのです。

GISに納まる遮断器は平成24年度 A問題6変電:ガス絶縁開閉装置)にあります。

遮断器と断路器の役割分担

(1)の「運転・停止」を、機器ごとに見ましょう

機器切れる電流役割
★遮断器(CB)★負荷電流・短絡電流★事故時に回路を切る
★負荷開閉器(LBS)★負荷電流のみ★通常の入切
★断路器(DS)★切れない(無電流のみ)★点検時に確実に切り離す

短絡電流は定格の数十倍に達します——それを切れるのは遮断器だけです。

だから遮断器には「遮断容量」という定格があります——切れる短絡容量の上限になります。

遮断容量の決め方

三相短絡容量
\( P_s=\sqrt{3}\,V I_s \)

V:定格電圧 Is:短絡電流

系統の短絡容量より大きい遮断容量が必要です——切れなければ機器が壊れます

系統が大きくなるほど短絡容量も増える——だから遮断器も更新が要ることになります。

%X を大きく設計するのは、この短絡容量を抑えるため——変圧器と遮断器の設計は連動しています

要点をもう一度

誤りは(5)の結論だけです。

記述内容正誤
(1)遮断器の用途
(2)アークの発生
(3)ガス遮断器の消弧
(4)SF6の温室効果
★(5)★直流の遮断が容易★誤(困難)

前半の「電流零点がない」は正しい事実——そこから導く結論が逆です。

零点がないから難しい——因果を逆にした典型的な引っかけになります。

交流遮断の実際

段階起きること
★①★接点が開き、アークが発生する
★②★半サイクル以内に電流零点が来る
★③★その瞬間にアークが消える
★④★消弧媒体が絶縁を回復させる

④で回復が間に合わないと再点弧します——だから消弧能力が重要なのです。

SF6が空気の約100倍というのは、この回復の速さ——高電圧ほど厳しくなることになります。

真空遮断器のしくみ

(5)で比較された真空遮断器を見ておきましょう

段階起きること
★真空バルブ内で接点が開く
★②★接点から金属蒸気が出てアークになる
★③★電流零点で蒸気が急速に拡散する
★④★真空なので絶縁がただちに回復する

真空には電離するものがありません——だから絶縁回復が速いのです。

消弧媒体を吹き付ける必要がなく、機構が簡単——保守がほとんど要りません

ただし真空の絶縁耐力は、距離を伸ばしても比例して上がりません——だから超高圧には向かないのです。

そこがガス遮断器との分かれ目——問題文の(5)前提が正しい理由になります。

遮断器に求められる時間

項目時間の目安
★動作時間★2〜3サイクル(40〜60 ms)
★継電器の判定★1サイクル程度
★合計★0.1秒前後

短絡が続けば機器も系統も傷みます——だから0.1秒以内に切るのです。

直流送電が2端子中心だった理由

(5)の遮断の難しさが、系統の形を決めてきました

★2端子(点対点)★多端子(直流網)
★構成★変換所を両端に1つずつ★3か所以上をつなぐ
★事故時★変換器を止めれば電流が消える★事故区間だけ切り離す必要がある
★直流遮断器★不要★必要

2端子なら、変換器の制御で電流をゼロにできます——遮断器がなくても止められるのです。

多端子では、事故区間だけを切り離さなければなりません——全体を止めては意味がないから。

だから直流遮断器の実用化が待たれていました——洋上風力の集約に必要だからです。

近年、半導体と機械接点を組み合わせた方式が実用段階に入りました——数ミリ秒で遮断できます

まとめ

(1)用途運転・停止・故障電流の遮断→正しい
(2)消弧ガス遮断器は圧縮ガスでアーク消弧→正しい
(3)SF₆温室効果ガスで削減・回収→正しい
(4)使い分け高電圧系はガス遮断器→正しい
(5)直流遮断電流零点がなく困難(容易は誤り)→答え

▼あわせて解きたい関連問題
・真空遮断器の特徴(変電18):【電力】令和2年度 A問題7
・ガス絶縁開閉装置(変電1):【電力】令和7年度上期 A問題6
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成28年度 問題一覧(全4科目)

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