変電17【電験3種 電力】変圧器1台故障!残り2台の120%運転で足りない分を切り換える 令和3年度 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 変電 令和3年度 A問題9 3台のうち1台が故障!残り2台で賄えるか?

今回は令和3年度 電力科目 A問題9、20MV·Aの三相変圧器3台をもつ配電用変電所で1台が故障したとき、残り2台の過負荷運転で賄えない分を他の変電所へ何%切り換えるかを求める計算問題です。

ポイントは皮相電力[MV·A]と有効電力[MW]の使い分け。変圧器の容量は皮相電力、負荷は有効電力(MW)で与えられているので、変圧器が供給できる有効電力=容量×過負荷率×力率で揃えてから引き算します。

目次

皮相電力でそろえる

変圧器の容量は MV·A、負荷は MW——単位が違うのでそろえます

皮相電力
\( S=\dfrac{P}{\cos\theta} \)

力率で割ると MW から MV·A になる

\( S=\dfrac{55}{0.95}=57.9\ [\mathrm{MV\cdot A}] \)
総負荷の皮相電力
★これが供給すべき量

次に、残った2台で送れる量を求めます

\( S_2=2\times 20\times 1.2=48\ [\mathrm{MV\cdot A}] \)
2台を120 % で運転
★過負荷運転

差が、他の変電所へ切り換える分です。

\( \Delta S=57.9-48=9.89\ [\mathrm{MV\cdot A}] \)
不足分
\( \dfrac{9.89}{57.9}\times 100=17.1\ [\%] \)
故障前の負荷に対する割合
★答え

令和3年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 変電 令和3年度 A問題9 問題文
令和3年度 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【変電】 令和3年度 A問題9

 1台の定格容量が20MV·Aの三相変圧器を3台有する配電用変電所があり、その総負荷が55MWである。変圧器1台が故障したときに、残りの変圧器の過負荷運転を行い、不足分を他の変電所に切り換えることにより、故障発生前と同じ電力を供給したい。この場合、他の変電所に故障発生前の負荷の何%を直ちに切り換える必要があるか、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、残りの健全な変圧器は、変圧器故障時に定格容量の120%の過負荷運転をすることとし、力率は常に95%(遅れ)で変化しないものとする。

(1)6.2 (2)10.0 (3)12.1 (4)17.1 (5)24.2 %

答え正解は (4)——約17.1 % です。

別解:MW のまま計算する

力率で割らずに、変圧器側を MW に直しても同じ答えが出ます

\( P_2=48\times 0.95=45.6\ [\mathrm{MW}] \)
2台で送れる有効電力
\( \Delta P=55-45.6=9.4\ [\mathrm{MW}] \)
不足分
\( \dfrac{9.4}{55}\times 100=17.1\ [\%] \)
割合
★同じ答え

比を取るので、力率は約分されて消えます——どちらでそろえても構いません

問われているのが「割合」だから——絶対値を問う問題なら単位をそろえる必要があります

N−1 という考え方

1台が故障しても供給を続けられるか——それがN−1基準です。

状態供給できる量結果
★正常(3台)★60 MV·A★57.9 MV·A を余裕をもって供給
★1台故障(2台・定格)★40 MV·A★大きく不足する
★1台故障(2台・120 %)★48 MV·A★まだ17 % 足りない

過負荷運転をしても足りない——だから他の変電所へ回す必要があるのです。

変圧器は短時間なら定格を超えて使えます——油と巻線の温度上昇に余裕があるからです。

ただし長時間続ければ絶縁が劣化する——だから「直ちに切り換える」必要があることになります。

⚠️ よくある間違い
3台ぶんで計算してしまう——故障したのは1台なので、残りは2台です。
120 % を掛け忘れる——2×20=40 MV·A となり、切換は30.9 %選択肢にありません
力率を掛けてしまう——MW を MV·A にするには割ります55×0.95=52.25 としてしまうと誤りです。
分母を48にしてしまう——9.89/48=20.6 %問われているのは「故障発生前の負荷の何 %」なので分母は57.9です。
選択肢(5)24.2 % は、1台ぶん20 MV·A を基準にした値に近い——何を分母にするかで大きく変わります

⏱️ 本番での進め方
①★MW と MV·A をそろえる。力率で割ると MV·A。
②★残るのは2台。120 % で48 MV·A。
③★分母は故障前の総負荷57.9 MV·A。
④比を取るので、MW のままでも同じ答えになる。

💡 覚え方
「そろえて、引いて、割る」——3手で終わります分母を取り違えないこと——「故障発生前の負荷の何 %」と書いてあります

変圧器の並行運転は平成26年度 A問題7変電:変圧器の並行運転)にあります。

変圧器が過負荷に耐えられる理由

「120 % の過負荷運転」という条件は、実務に基づいています

部位制約するもの限度
★巻線★絶縁物の耐熱★A種絶縁で105 ℃
★絶縁油★劣化・ガス発生★上層油温95 ℃ 前後
★熱の伝わり★時定数が数時間ある★短時間なら温度が上がりきらない

変圧器は熱容量が大きく、温度がゆっくり上がります——だから短時間の過負荷に耐えられるのです。

逆に長時間続ければ、絶縁が劣化して寿命が縮む——温度が6 ℃ 上がると寿命が半分とも言われます。

だから問題文が「直ちに切り換える」と書いている——過負荷は一時しのぎだからです。

なぜ3台構成にするのか

1台故障しても供給を続けられるようにするためです

2台構成なら、1台故障で半分になってしまう——3台なら3分の2が残ります

本問では、それでも17 % 足りない——負荷が容量に対して大きいことを意味します。

配電用変電所のバンク構成

本問の「3台」という設定を、実際の設計から見ましょう

台数1台故障時に残る割合120 % 運転なら
★2台★50 %★60 %
★3台★67 %★80 %
★4台★75 %★90 %

台数が多いほど、1台失ったときの影響が小さくなります——けれども設備費は増えます

本問では総負荷57.9 MV·A に対して48 MV·A——83 % を供給できる計算です。

残り17 % を他の変電所へ回す——配電線を切り換えて融通します

配電線の切換とは

配電系統は、隣の変電所とつながる形に作られています

ふだんは開放している開閉器を閉じれば、供給元を変えられる——常時開路点と呼ばれます。

だから「直ちに切り換える」ことができる——あらかじめ備えているからです。

要点をもう一度

単位をそろえて引き算するだけの問題です。

やること
★①★負荷を MV·A に直す(÷0.95)★57.9 MV·A
★②★残り2台の容量(×1.2)★48 MV·A
★③★差を取る★9.89 MV·A
★④★故障前の負荷で割る★17.1 %

比を取るので、MW のままでも同じ答え——力率が約分されます

気をつけるのは、分母を「故障前の総負荷」にすること——問題文がそう指定しています

なぜ力率が「常に95 %」と断ってあるのか

負荷を切り換えても力率が変わらない、という前提です

もし変わるなら、MW と MV·A の換算が場所ごとに異なる——計算が成り立たなくなります

「変化しないものとする」という条件は、計算を単純にするための断り——読み飛ばしてよい部分です。

力率が悪いと何が起きるか

本問の95 % という力率を、他の値と比べてみましょう

力率55 MW に必要な容量2台120 % で足りるか
★100 %★55.0 MV·A★13 % 不足
★95 %(本問)★57.9 MV·A★17 % 不足
★85 %★64.7 MV·A★26 % 不足

力率が悪いほど、同じ電力を送るのに大きな容量が要ります——無効電力ぶんの電流が余計に流れるからです。

だから力率改善は、変圧器の容量を実質的に増やすことになる——設備投資を先送りできるのです。

電力用コンデンサを入れて力率を95 % から99 % にすれば、必要容量は約4 % 減ります——変圧器を増設するより安上がりでしょう。

まとめ

残2台の容量2×20MV·A×1.20=48MV·A
有効電力に換算48×0.95=45.6MW
不足分55−45.6=9.4MW
切換率9.4/55×100≒17.1%
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・変圧器並行運転の負荷分担(変電9):【電力】令和5年度上期 A問題13
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和3年度 問題一覧(全4科目)

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