今回は令和1年度 電力科目 A問題8、66kV系統でF点三相短絡が起きたときの過電流継電器(OCR)の動作時間を求める計算問題です。%Zの合成から短絡電流を出し、CTで二次側へ落として整定タップ倍数を求め、最後に図2の限時特性を読むという、変電の総合問題です。
最大の落とし穴はタイムレバー位置。図2はタイムレバー位置10の曲線ですが、本問の整定は位置1。限時特性の動作時間はタイムレバーに比例するので、図から読んだ値を1/10する必要があります。ここを見落とすと10倍ずれます。
令和1年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和1年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【変電】 令和1年度 A問題8
図1のように、定格電圧66kVの電源から三相変圧器を介して二次側に遮断器が接続された三相平衡系統がある。三相変圧器は定格容量7.5MV·A、変圧比66kV/6.6kV、百分率インピーダンスが自己容量基準で9.5%である。また、三相変圧器一次側から電源側をみた百分率インピーダンスは基準容量10MV·Aで1.9%である。過電流継電器(OCR)は変流比1000A/5Aの計器用変流器(CT)の二次側に接続されており、整定タップ電流値5A、タイムレバー位置1に整定されている。図1のF点で三相短絡事故が発生したとき、過電流継電器の動作時間[s]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、三相変圧器二次側からF点までのインピーダンス及び負荷は無視する。また、過電流継電器の動作時間は図2の限時特性に従い、計器用変流器の磁気飽和は考慮しないものとする。
(1)0.29 (2)0.34 (3)0.38 (4)0.46 (5)0.56 s



3つの段階を順にたどる
短絡電流→CT二次電流→整定値の倍数→動作時間——4段階で答えに届きます。
| 段階 | 求めるもの | 使うもの |
| ★① | ★合成%Z | ★基準容量をそろえる |
| ★② | ★三相短絡電流 | ★In×100/%Z |
| ★③ | ★CT二次電流 | ★変流比1000/5 |
| ★④ | ★整定値の何倍か | ★タップ電流5 A で割る |
| ★⑤ | ★動作時間 | ★限時特性図とタイムレバー |
① 基準容量をそろえる
★容量に比例
② 三相短絡電流
★F点は6.6 kV 側
③④ 継電器から見た電流
継電器はCTの二次側にあるので、縮小された電流を見ます。
★変流比で割る
★6倍
継電器の限時特性は、整定値の何倍かで読みます——アンペアそのものではありません。
6倍のとき、図2(タイムレバー10)では約3.8秒——グラフから読み取ります。
⑤ タイムレバーで割る
★答え
タイムレバーは曲線を上下に平行移動させる目盛り——形は変わりません。
なぜ倍数で読むのか
| アンペアで表すと | ★倍数で表すと | |
| ★整定値が変わったとき | ★曲線を描き直す必要がある | ★★同じ曲線が使える |
| ★CT比が変わったとき | ★同上 | ★★同じ曲線が使える |
| ★機種が違うとき | ★比較できない | ★★比較できる |
倍数で表せば、1枚の特性図があらゆる設定に使えます——%Z が基準容量で表される理由と同じ発想です。
だから継電器の資料は、必ず倍数で書かれています。
⚠️ よくある間違い
電源側の1.9 % をそのまま足してしまう——%Z=11.4 % で5,754 A。倍数5.75 となり時間が変わります。基準をそろえてからです。
一次側66 kV で定格電流を求めてしまう——F点は二次側6.6 kVです。
CT比を掛けてしまう——6,005×1000/5=120万 A となり明らかにおかしい。二次は小さくなるので割ります。
タイムレバーで割り忘れる——3.8秒となり選択肢にありません。
タイムレバーを掛けてしまう——34秒。位置1 は最も速い設定です。
⏱️ 本番での進め方
①★基準容量をそろえてから %Z を足す。
②★F点のある側の電圧で定格電流を求める。
③★CT二次電流は変流比で割る(小さくなる)。
④★限時特性は整定値の倍数で読み、レバー/10 を掛ける。
💡 覚え方
「そろえて、割って、縮めて、倍数で読む」——4段階です。継電器の特性図は必ず倍数——アンペアではありません。
限時特性の種類は令和4年度上期 A問題7(変電:過電流継電器の限時特性)、基準容量の換算は令和5年度上期 B問題16(変電:短絡電流の計算)にあります。
整定タップ電流という考え方
継電器は、どの電流から動作を始めるかを設定できます。
| 項目 | 本問の値 | 意味 |
| ★CT変流比 | ★1000/5 | ★一次1000 A で二次5 A |
| ★整定タップ電流 | ★5 A | ★二次5 A から動作を始める |
| ★換算すると | ★一次1000 A 相当 | ★これを超えると動く |
タップ電流5 A は、一次側の1,000 A に相当します——変流比で換算すればそうなるのです。
本問の短絡電流6,005 A は、その6倍——だから倍数が6になることになります。
タップ電流を変えれば、動作を始める電流も変わります——負荷電流では動かず、事故電流では動く値を選ぶ。
タイムレバーの役割
限時特性の曲線を、上下に平行移動させる目盛りです。
| レバー位置 | 6倍のときの動作時間 |
| ★1 | ★0.38秒 |
| ★5 | ★1.9秒 |
| ★10 | ★3.8秒 |
位置1が最も速く、10が最も遅い——比例します。
上位の継電器ほど大きい値にして、時間差をつけます——それが保護協調です。
要点をもう一度
4つの段階を、順にたどるだけです。
| 段階 | やること | 値 |
| ★① | ★電源側を7.5 MV·A 基準へ | ★1.9×7.5/10=1.425 % |
| ★② | ★合成して短絡電流 | ★10.925 % → 6,005 A |
| ★③ | ★CT二次電流 | ★6,005×5/1000=30 A |
| ★④ | ★整定値の倍数 | ★30/5=6倍 |
| ★⑤ | ★図から読みレバーで割る | ★3.8×1/10=0.38秒 |
①の換算を飛ばすと、倍数が変わって時間もずれます——基準容量をそろえるのが出発点です。
⑤のタイムレバーで割り忘れると3.8秒——選択肢にありません。
この問題が総合問題である理由
| 使う知識 | どの分野か |
| ★基準容量の換算 | ★百分率インピーダンス |
| ★短絡電流の計算 | ★変電の計算 |
| ★変流比 | ★計器用変成器 |
| ★限時特性 | ★保護継電器 |
4つの分野を1問でつないでいます——変電の総合問題だと言えます。
どれか1つでも欠けると解けません——だから配点も大きいのです。
動作時間が意味すること
0.38秒という値を、系統の視点で見ましょう。
| 時間 | 何が起きるか |
| ★0.38秒 | ★継電器が動作を指令する |
| ★+0.06秒 | ★遮断器が実際に電流を切る |
| ★合計0.4秒 | ★事故が除去される |
継電器の動作時間に、遮断器の動作時間が加わります——実際の除去時間はそれより長いのです。
0.4秒のあいだ、6,000 A の電流が流れ続けます——機器への熱的な負担は大きい。
★機器の耐量と比べる
機器はこの I²t に耐えられなければなりません——短時間電流耐量と呼ばれます。
だから動作時間は短いほどよい——ただし下位との協調も必要になります。
まとめ
| 合成%Z | 9.5×10/7.5+1.9=14.57%(10MV·A基準) |
| 基準電流 | 10MV·A÷(√3×6.6kV)≒874.8A |
| 短絡電流 | 874.8×100/14.57≒6005A |
| タップ倍数 | 6005÷200÷5=6.0倍 |
| 動作時間 | 図2(位置10)3.8s×(1/10)=0.38s→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・過電流継電器の限時特性グラフ(変電13):【電力】令和4年度上期 A問題7
・百分率インピーダンスと%Z合成(変電11):【電力】令和4年度下期 A問題6
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和1年度 問題一覧(全4科目)

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