今回は平成23年度 電力科目 A問題10、発変電所用避雷器に関する空欄補充問題です。特性要素の非直線抵抗・制限電圧・処理対象のサージ・そして絶縁協調——避雷器の役割が体系的に問われます。
骨格は3つ。①特性要素の非直線抵抗特性でサージ電流だけを放電し続流を切る、②抑制された電圧=制限電圧、③この制限電圧を基準に機器の絶縁や機器配置を経済的に決めることを絶縁協調という。処理対象は雷過電圧と開閉過電圧。
平成23年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【変電】 平成23年度 A問題10
避雷器はその特性要素の(ア)特性により、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、サージ電流に続いて交流電流が大地に放電するのを阻止する作用を備えている。このため、避雷器は電力系統を地絡状態に陥れることなく過電圧の波高値をある抑制された電圧値に低減することができる。この抑制された電圧を避雷器の(イ)という。一般に発変電所用避雷器で処理の対象となる過電圧サージは、雷過電圧と(ウ)である。避雷器で保護される機器の絶縁は、当該避雷器の(イ)に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の(エ)などをも経済的、合理的に決定することができる。このような考え方を(オ)という。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
次の文章は、発変電所用避雷器に関する記述である。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 非直線抵抗 制限電圧 開閉過電圧 機器配置 絶縁協調 (2) 非直線抵抗 回復電圧 短時間交流過電圧 機器寿命 保護協調 (3) 大容量抵抗 制限電圧 開閉過電圧 機器配置 保護協調 (4) 大容量抵抗 再起電圧 短時間交流過電圧 機器寿命 絶縁協調 (5) 無誘導抵抗 制限電圧 開閉過電圧 機器配置 絶縁協調

(ア) 非直線抵抗特性という仕掛け
避雷器の中身は、電圧によって抵抗値が変わる素子です。
| 状態 | 加わる電圧 | 特性要素の抵抗 | 動作 |
| ★平常時 | ★常規対地電圧 | ★きわめて高い | ★電流を流さない |
| ★雷サージ襲来 | ★異常に高い | ★きわめて低い | ★大地へ放電する |
| ★サージ通過後 | ★常規対地電圧に戻る | ★再び高くなる | ★続流を止める |
電圧が上がると抵抗が下がる——オームの法則に従わないので「非直線」です。
この性質があるから、自動的に開いて自動的に閉じる——スイッチのように働きます。
もし単なる抵抗なら、平常時にも電流が流れ続けます——それでは地絡状態になってしまいます。
現在は酸化亜鉛(ZnO)素子が主流——非直線性が非常に鋭いのです。
(イ) 制限電圧とは
避雷器が放電しているあいだ、その端子に残る電圧です。
| 用語 | 意味 |
| ★制限電圧 | ★放電中に避雷器の端子に現れる電圧の波高値 |
| ★定格電圧 | ★続流を確実に遮断できる商用周波電圧の上限 |
| ★公称放電電流 | ★制限電圧を規定するときの電流(10 kA など) |
避雷器はゼロにするのではなく、ある値まで下げるだけ——だから「制限」電圧です。
この値より高い絶縁強度を機器に持たせればよい——それが保護の考え方になります。
「回復電圧」「再起電圧」は遮断器の用語——避雷器のものではありません。
(ウ)(エ)(オ) 絶縁協調という設計思想
(ウ) 2種類の過電圧
| 種類 | 原因 | 継続時間 |
| ★雷過電圧 | ★落雷 | ★数十マイクロ秒 |
| ★開閉過電圧 | ★遮断器の開閉 | ★数百マイクロ秒〜数ミリ秒 |
| 短時間交流過電圧 | 地絡・負荷遮断 | 数秒 |
発変電所の避雷器が対象とするのは、雷と開閉の2つ——どちらも短時間のサージです。
短時間交流過電圧は避雷器の守備範囲ではありません——むしろ避雷器を壊す側の現象です。
(オ) 絶縁協調
すべての機器を最も高い絶縁にすれば安全ですが、費用がかさみます。
| 対象 | 絶縁強度 | 考え方 |
| ★避雷器 | ★最も低い | ★真っ先に動作して他を守る |
| ★変圧器など主要機器 | ★制限電圧より高く | ★避雷器が守れる範囲 |
| ★がいし・線路 | ★最も高い | ★交換しやすい部分は例外 |
避雷器を最も弱くしておくのが要点——そこで受け止めれば他は無傷だからです。
そのうえで機器の配置や離隔距離まで決められる——問題文の(エ)が「機器配置」である理由です。
「保護協調」は継電器の動作順序を決める別の概念——絶縁の話ではありません。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「大容量抵抗」「無誘導抵抗」としてしまう——選択肢(3)(4)(5)です。電圧で抵抗値が変わる非直線抵抗。
(イ)を「回復電圧」「再起電圧」としてしまう——選択肢(2)(4)。どちらも遮断器の用語です。
(ウ)を「短時間交流過電圧」としてしまう——選択肢(2)(4)。避雷器が処理するのは雷と開閉のサージ。
(オ)を「保護協調」としてしまう——選択肢(2)(3)。絶縁強度の話なので絶縁協調です。
(ア)と(オ)の2欄で(1)に確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★特性要素は非直線抵抗。電圧で抵抗値が変わる。
②★制限電圧=放電中に端子に残る電圧。
③★対象は雷過電圧と開閉過電圧の2つ。
④★絶縁強度の合理的な決め方が絶縁協調。保護協調と別。
💡 覚え方
「避雷器をいちばん弱くしておく」——そこで受け止めれば他の機器は守られます。その考え方が絶縁協調——継電器の順序を決める保護協調とは別です。
避雷器の役割は平成30年度 A問題7(変電:避雷器)にもあります。
酸化亜鉛形避雷器
(ア)の非直線抵抗を担う素子について見ましょう。
| ★炭化けい素形(旧形) | ★酸化亜鉛形(現行) | |
| ★非直線性 | ★ゆるい | ★鋭い |
| ★直列ギャップ | ★必要 | ★不要(ギャップレス) |
| ★平常時の電流 | ★流れてしまうのでギャップで遮る | ★マイクロアンペア級で問題にならない |
| ★構造 | ★複雑 | ★簡単・小形 |
酸化亜鉛は非直線性が鋭いので、ギャップが要りません——平常時にほとんど電流が流れないからです。
ギャップがないと、動作が速く確実になります——放電開始の遅れがないのです。
だから現在の避雷器はほぼすべて酸化亜鉛形——ギャップレス避雷器と呼ばれます。
避雷器の設置場所
守りたい機器のできるだけ近くに置きます。
離れていると、その間の配線で電圧が上がってしまう——サージは進行波なので距離が効くのです。
変圧器の直近に置くのが原則——最も高価で交換が難しい機器だからです。
雷過電圧の大きさ
(ウ)の雷過電圧が、どれほどのものか見ましょう。
| 項目 | 値の目安 |
| ★雷電流 | ★数十 kA(最大200 kA) |
| ★立ち上がり時間 | ★1〜2マイクロ秒 |
| ★半波長 | ★50マイクロ秒前後 |
| ★発生する電圧 | ★数百 kV〜数 MV |
系統の運転電圧が数十万 V なのに対し、雷は数百万 V——けた違いの過電圧です。
だから避雷器で逃がすしかない——絶縁を強くして耐えるのは不経済だからです。
開閉過電圧はなぜ生じるか
電流を急に遮断すると、インダクタンスが電圧を生みます。
★電流の変化が急なほど大きい
特に無負荷の送電線や変圧器を切るときに大きくなる——電流が小さくても急に切れるからです。
運転電圧の2〜3倍に達することがある——雷ほどではないが無視できません。
超高圧系統では、雷より開閉過電圧が設計を支配することもある——だから抵抗投入などで抑えます。
要点をもう一度
5つの空欄が、避雷器から絶縁協調へつながっています。
| 空欄 | 答え | 意味 |
| (ア) | ★非直線抵抗 | ★電圧で抵抗値が変わる |
| (イ) | ★制限電圧 | ★放電中に端子に残る電圧 |
| (ウ) | ★開閉過電圧 | ★雷と並ぶサージ |
| (エ) | ★機器配置 | ★離隔距離も決められる |
| (オ) | ★絶縁協調 | ★絶縁強度の合理的な決め方 |
(ア)と(オ)の2欄で(1)に確定します。
「保護協調」との取り違えが最も多い——絶縁の話なら絶縁協調です。
保護協調との違い
| ★絶縁協調 | ★保護協調 | |
| ★決めるもの | ★機器の絶縁強度 | ★継電器の動作順序 |
| ★目的 | ★過電圧から機器を守る | ★事故範囲を最小にする |
| ★主役 | ★避雷器 | ★保護継電器・遮断器 |
どちらも「協調」ですが、対象がまったく違います。
避雷器以外の雷対策
発変電所では、避雷器のほかにも備えがあります。
| 対策 | 働き | 場所 |
| ★架空地線 | ★雷を直接受けて大地へ流す | ★送電線・変電所の上空 |
| ★避雷針 | ★構内への直撃を防ぐ | ★変電所構内 |
| ★接地網(メッシュ) | ★接地抵抗を下げ電位差をなくす | ★構内の地下 |
| ★避雷器 | ★侵入したサージを逃がす | ★機器の直近 |
入れない・逃がす・電位差を作らない——3段構えになっています。
架空地線で防ぎきれなかったサージを、避雷器が受け止める——最後の砦です。
接地網は、大地の電位を構内で均一にするためのもの——電位差がなければ機器に電圧がかからないのです。
問題文の(エ)「機器配置」にも、この考え方が関わります——避雷器から遠いほど守られないからです。
まとめ
| (ア) | 特性要素の非直線抵抗特性 |
| (イ) | 抑制された電圧=制限電圧 |
| (ウ) | 処理対象=雷過電圧と開閉過電圧 |
| (エ) | 制限電圧を基準に機器配置を決定 |
| (オ) | 経済的・合理的な絶縁設計=絶縁協調→(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・避雷器と絶縁協調(変電29):【電力】平成27年度 A問題7
・避雷器の特性要素と動作(変電2):【電力】令和7年度下期 A問題6
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成23年度 問題一覧(全4科目)

コメント