今回は平成22年度 電力科目 A問題6、遅れ力率0.7の三相負荷に三相コンデンサを並列に入れて力率を0.8に改善するとき、必要なコンデンサの無効電力容量を求める計算問題です。力率改善の基本問題です。
考え方は無効電力の差。有効電力Pは変わらず、コンデンサは無効電力だけを減らす。改善前の無効電力 Q₁=P·tanθ₁ から改善後 Q₂=P·tanθ₂ を引いた差が、挿入すべきコンデンサ容量 Q_C です。
有効電力を軸に考える
コンデンサを入れても、有効電力は変わりません——そこを軸にします。
改善の前後で、それぞれの無効電力を求めます。
★3:4:5の三角形
差を取れば、コンデンサが受け持つ分になります。
★答え
平成22年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成22年度 A問題6
50[Hz]、200[V]の三相配電線の受電端に、力率0.7、50[kW]の誘導性三相負荷が接続されている。この負荷と並列に三相コンデンサを挿入して、受電端での力率を遅れ0.8に改善したい。挿入すべき三相コンデンサの無効電力容量[kV·A]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)4.58 (2)7.80 (3)13.5 (4)19.0 (5)22.5 kvar

別解:無効電力を直接求める
皮相電力を経由しても、同じ答えが出ます。
★同じ答え
三平方の定理で無効電力を求める方法——電力の直角三角形を思い浮かべると分かりやすいです。
有効電力50 kW は横軸で固定——縦軸の無効電力だけが51.0から37.5へ減ります。
その減った分をコンデンサが供給する——それが13.5 kvarになります。
使わない数値が混ぜてある
| 与えられた値 | 使うか | 理由 |
| ★50 kW | ★使う | ★有効電力そのもの |
| ★力率0.7と0.8 | ★使う | ★tanθ を求める |
| ★50 Hz | ★使わない | ★ダミー |
| ★200 V | ★使わない | ★ダミー |
周波数と電圧は、答えに関係しません——無効電力だけを問われているからです。
もし静電容量[μF]を問われれば、両方とも必要になります——Q=3ωCE² から求めることになります。
何を問われているかで、使う値が変わる——与えられた数値を全部使うとは限りません。
⚠️ よくある間違い
皮相電力の差を答えてしまう——71.4−62.5=8.9 kV·A となり、選択肢(2)7.80 に近づきます。減らすのは無効電力です。
sin の差で計算してしまう——50×(0.714−0.6)=5.7。tan の差が正しいのです。
改善後の無効電力37.5 をそのまま答える——必要なのは差の13.5。
力率0.7を sinθ と取り違える——問題文は「力率0.7」なので cosθです。
選択肢(5)22.5 は、tanθ₁ を1.2 と誤ったときの値に近い——√(1−0.49) の計算を丁寧に。
⏱️ 本番での進め方
①★Qc=P(tanθ₁−tanθ₂) が最速。
②★cosθ=0.8 なら sinθ=0.6(3:4:5)。
③★別解は三平方でQを求めて差を取る。
④★50 Hz と200 V はダミー。使わない。
💡 覚え方
「有効電力は変わらない、無効電力だけ減らす」——だから tan の差に P を掛けます。皮相電力の差ではありません——そこが最も多い誤りです。
調相設備の役割は平成24年度 A問題8(変電:調相設備)にあります。
力率改善で何が変わるか
本問の0.7から0.8への改善で、電流はどれだけ減るでしょうか。
★13 % 減
| 項目 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
| ★有効電力 | ★50 kW | ★50 kW | ★変わらない |
| ★無効電力 | ★51.0 kvar | ★37.5 kvar | ★13.5 減 |
| ★皮相電力 | ★71.4 kV·A | ★62.5 kV·A | ★12 % 減 |
| ★線電流 | ★206 A | ★180 A | ★13 % 減 |
| ★線路損失 | ★基準 | ★0.77倍 | ★23 % 減 |
電流が13 % 減れば、損失は2乗で23 % 減ります——力率改善の効果が大きい理由です。
ここで初めて200 V という値が使われます——電流を求めるときに必要になります。
本問が問うているのは無効電力なので、電圧は不要——何を問われているかで使う値が変わるのです。
要点をもう一度
公式1つで解ける問題です。
| 順 | やること | 値 |
| ★① | ★tanθ₁ を求める | ★0.714/0.7=1.020 |
| ★② | ★tanθ₂ を求める | ★0.6/0.8=0.75 |
| ★③ | ★差に P を掛ける | ★50×0.270=13.5 |
cosθ=0.8 なら sinθ=0.6——3:4:5の直角三角形なので暗算できます。
cosθ=0.7 のときは √(1−0.49)=0.714——ここだけ計算が要ります。
よくある取り違え
| 誤り | 出る値 | 近い選択肢 |
| ★皮相電力の差 | ★8.9 | ★(2)7.80 |
| ★sin の差 | ★5.7 | ★(1)4.58 |
| ★改善後のQをそのまま | ★37.5 | ★— |
減らすのは無効電力であって皮相電力ではありません——そこが最も多い誤りです。
コンデンサの静電容量を求めるなら
本問では問われませんが、続けて計算できます。
| 結線 | 無効電力の式 | 必要な容量 |
| ★Δ結線 | ★Q=3ωCV² | ★358 μF |
| ★Y結線 | ★Q=ωCV² | ★1,075 μF |
Δ結線なら、各相に線間電圧がそのままかかります——だから容量が3分の1で済むのです。
ここで初めて50 Hz と200 V が使われます——ω=2π×50=314。
電力用コンデンサはΔ結線が一般的——同じ無効電力を小さな容量で得られるから。
問われているのが kvar か μF かで、使う値が変わる——与えられた数値の意味を考えることが大切です。
まとめ
| 有効電力 | P=50kW(一定) |
| 改善前Q1 | 50×tan(acos0.7)=51.0kvar |
| 改善後Q2 | 50×0.6/0.8=37.5kvar |
| コンデンサ容量 | Qc=51.0−37.5≒13.5kvar |
| 答え | (3) |
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