今回は平成24年度 電力科目 B問題17、750kV·Aの三相変圧器に負荷を追加したときの無効電力を求め、過負荷を回避するのに必要な電力用コンデンサ容量を計算する問題です。力率改善(コンデンサ)の定番テーマです。
ポイントはP・Q・Sの三角関係。各負荷の無効電力は Q=P·tanθ で求めて合計。皮相電力 S=√(P²+Q²) が定格750kV·Aを超えると過負荷なので、コンデンサで無効電力を減らしてSを定格ちょうどまで下げる、と考えます。
平成24年度 電力科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17
電験3種 電力科目 【変電】 平成24年度 B問題17
定格容量750[kV·A]の三相変圧器に遅れ力率0.9の三相負荷500[kW]が接続されている。この三相変圧器に新たに遅れ力率0.8の三相負荷200[kW]を接続する場合、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 負荷を追加した後の無効電力[kvar]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)339 (2)392 (3)472 (4)525 (5)610 kvar
(b) この変圧器の過負荷運転を回避するために、変圧器の二次側に必要な最小の電力用コンデンサ容量[kvar]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)50 (2)70 (3)123 (4)203 (5)256 kvar

(a) 無効電力は負荷ごとに求めて足す
力率が違うので、まとめて計算できません。
★3:4:5
★答え
有効電力も無効電力も、そのまま足せます——同じ向きの成分どうしだからです。
皮相電力は足せません——向きが違うのでベクトル和になるから。
(b) 変圧器の容量に収める
まず、このままでは容量を超えることを確かめます。
★750 を超える
802 kV·A では、750 kV·A の変圧器に収まりません——だからコンデンサで無効電力を減らします。
有効電力700 kW は変えられません——減らせるのは無効電力だけです。
★答え
電力の直角三角形で考える
| 改善前 | ★改善後 | |
| ★有効電力 P | ★700 kW | ★700 kW(変わらない) |
| ★無効電力 Q | ★392 kvar | ★269 kvar |
| ★皮相電力 S | ★802 kV·A | ★750 kV·A |
| ★力率 | ★0.873 | ★0.933 |
横軸の700 kW は固定で、縦軸だけが縮みます——斜辺が短くなるのです。
斜辺が750 になるところまで縮めればよい——それが「最小の容量」になります。
これ以上入れれば余裕は増えますが、費用も増える——だから「必要な最小」を問うているのです。
⚠️ よくある間違い
(a)で力率を掛けてしまう——無効電力は tanθ を掛けます。sinθ を掛けるのは皮相電力からです。
(a)で皮相電力を足してしまう——555+250=805 となり、無効電力ではありません。
(b)で392−750+700 のような引き算をする——三平方の関係が必要です。
(b)で802−750=52 と答えてしまう——皮相電力の差は無効電力の差ではありません。選択肢(1)50 に近く危険です。
(b)で改善後の無効電力269 をそのまま答える——必要なのは差の123。
選択肢(4)203・(5)256 は、力率1.0 まで改善する場合に近い値になります。
⏱️ 本番での進め方
①★無効電力は Q=P tanθ。負荷ごとに求めて足す。
②★P と Q は足せるが、S は足せない。
③★700²+(392−Qc)²=750² を解く。
④★皮相電力の差ではなく、無効電力の差が答え。
💡 覚え方
「横は固定、縦だけ縮める」——有効電力は変えられません。斜辺が750 になるまで縦を縮める——三平方の定理で解けます。
力率改善の基本は平成22年度 A問題6(変電:力率改善とコンデンサ容量)にあります。
変圧器容量から見た余裕
本問の750 kV·A に対して、負荷がどう収まるか見ましょう。
| 状態 | P | Q | S | 判定 |
| ★500 kW のみ | ★500 | ★242 | ★556 | ★余裕あり(74 %) |
| ★700 kW(追加後) | ★700 | ★392 | ★802 | ★★超過(107 %) |
| ★改善後 | ★700 | ★269 | ★750 | ★ちょうど100 % |
負荷を200 kW 足しただけで、容量を7 % 超えます——無効電力も一緒に増えるからです。
コンデンサを入れれば、変圧器を替えずに済みます——それが力率改善の実務上の価値。
変圧器を大きくする場合と比べる
| 対策 | 必要なもの | 費用の目安 |
| ★コンデンサ設置 | ★123 kvar のコンデンサ | ★★安い |
| ★変圧器の更新 | ★1,000 kV·A 級へ交換 | ★★高い・停電も必要 |
コンデンサのほうがはるかに安く、停電も要りません——だから力率改善が先に検討されるのです。
しかも線路損失も減り、電気料金の割引もある——一石三鳥になります。
要点をもう一度
電力の直角三角形で考えれば、両方とも解けます。
| 問 | やること | 答え |
| ★(a) | ★Q=P tanθ を負荷ごとに求めて足す | ★392 kvar |
| ★(b) | ★700²+(392−Qc)²=750² を解く | ★123 kvar |
P と Q は足せますが、S は足せません——向きが違うからです。
(b)は「皮相電力の差」ではありません——802−750=52 は誤りになります。
力率がどう変わるか
★0.06 の改善
わずか0.06 の改善で、容量超過を解消できます——力率改善の効果が大きいのです。
力率1.0 まで上げれば S=700 kV·A——けれども392 kvar のコンデンサが必要になります。
「必要な最小」を問うているので、750 に収まればよい——過剰に入れる必要はありません。
コンデンサの設置場所
(b)は「変圧器の二次側に」と指定しています。
| 場所 | 効果が及ぶ範囲 | 評価 |
| ★負荷の直近 | ★負荷から電源まですべて | ★★最も効果的 |
| ★変圧器二次側 | ★変圧器から電源まで | ★本問の設定 |
| ★変圧器一次側 | ★変圧器より上流のみ | ★変圧器の負担は減らない |
コンデンサより負荷側には効果が及びません——無効電力はそこで供給されるからです。
変圧器の過負荷を避けたいので、二次側に置きます——一次側では変圧器を通る電流が減らないのです。
個々の電動機に付ければ、配線の損失まで減らせます——けれども台数が増えて費用がかさむ。
だから受電設備にまとめて置くのが一般的——本問の設定がそれにあたります。
まとめ
| (a)Q1 | 500×√(1−0.9²)/0.9=242.2kvar |
| (a)Q2 | 200×0.6/0.8=150kvar |
| (a)合計Q | 392.2kvar→(2) |
| (b)残すQ′ | √(750²−700²)=269.3kvar |
| (b)コンデンサ | 392.2−269.3≒123kvar→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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