今回は平成22年度 電力科目 A問題7、大容量発電所の主変圧器がなぜ一次側三角形(Δ)・二次側星形(Y)なのかを問う空欄補充問題です。Y結線の√3倍、Δ結線の第3調波環流、Δ-Yの位相差π/6と、変圧器結線の重要ポイントが一問に詰まっています。
整理のコツ:Y結線は線間電圧=√3×相電圧・線電流=相電流/Δ結線は線間電圧=相電圧・線電流=√3×相電流。二次側をYにすると巻線の相電圧の√3倍の線間電圧が取り出せるので昇圧に有利、一次側のΔは第3調波を巻線内で環流させて外に出しません。
平成22年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【変電】 平成22年度 A問題7
大容量発電所の主変圧器の結線を一次側三角形、二次側星形とするのは、二次側の線間電圧は相電圧の(ア)倍、線電流は相電流の(イ)倍であるため、変圧比を大きくすることができ、(ウ)に適するからである。また、一次側の結線が三角形であるから、(エ)電流は巻線内を環流するので二次側への影響がなくなるため、通信障害を抑制できる。
一次側を三角形、二次側を星形に接続した主変圧器の一次電圧と二次電圧の位相差は、(オ)〔rad〕である。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる語句、式又は数値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) √3 1 昇 圧 第3調波 π/6 (2) 1/√3 √3 降 圧 零 相 0 (3) √3 1/√3 昇 圧 高周波 π/3 (4) √3 1/√3 降 圧 零 相 π/3 (5) 1/√3 1 昇 圧 第3調波 0

(ア)(イ) 星形結線の関係
結線ごとの、線間と相の関係を押さえます。
| 結線 | 線間電圧 | 線電流 |
| ★星形(Y) | ★相電圧の√3倍 | ★相電流と同じ(1倍) |
| ★三角形(Δ) | ★相電圧と同じ(1倍) | ★相電流の√3倍 |
星形は電圧が√3倍、三角形は電流が√3倍——片方だけが√3になります。
だから(ア)は√3、(イ)は1です。
なぜ星形で√3倍になるのか
線間電圧は、2つの相電圧のベクトル差です。
★√3倍
単純な足し算にならないのは、位相が120度ずれているから——そこが三相の特徴です。
(ウ) なぜ昇圧に適するのか
二次側を星形にすると、線間電圧が相電圧の√3倍になります。
| 一次側(Δ) | 二次側(Y) | |
| ★巻線にかかる電圧 | ★線間電圧と同じ | ★線間電圧の1/√3 |
| ★同じ巻数比なら | ★— | ★線間で√3倍の電圧が得られる |
巻数比を変えずに、√3倍の昇圧効果が得られます——だから昇圧用に向くのです。
逆に降圧用ならY-Δが向きます——配電用変電所の主変圧器がその例です。
発電所は昇圧、配電用変電所は降圧——結線の向きが逆になります。
(エ) 第3調波が環流する
変圧器の鉄心は磁気飽和するので、励磁電流に第3調波が含まれます。
| 結線 | 第3調波の行き先 | 結果 |
| ★三角形(Δ) | ★閉ループ内を環流する | ★外へ出ない |
| ★星形(中性点接地) | ★中性線を通って外へ流れる | ★通信線に誘導障害 |
第3調波は3相とも同位相(零相)になります——3相を合計しても打ち消されないのです。
三角形結線なら、その電流は輪の中をぐるぐる回るだけ——外部には出ません。
だから通信線への誘導障害を防げる——問題文の通りです。
Δ巻線を1つ持つことが重要——三次巻線をΔにする設計もあります。
(オ) 位相差はπ/6
Δ-Y結線では、一次と二次の線間電圧に30度の位相差が生じます。
★π/6
一次側のΔでは線間電圧=相電圧——二次側のYでは線間電圧が相電圧より30度進みます。
その差がそのまま一次と二次の位相差になる——これを角変位と呼びます。
Δ-ΔやY-Yなら位相差はゼロ——結線が同じ種類なら差が出ません。
だから並行運転では、角変位が同じ組合せしか並べられない——実務上の重要な制約になります。
⚠️ よくある間違い
(ア)(イ)を1/√3と√3としてしまう——選択肢(2)(5)です。星形は電圧が√3倍、電流は1倍。
(イ)を1/√3としてしまう——選択肢(3)(4)。星形の線電流は相電流と同じです。
(ウ)を「降圧」としてしまう——選択肢(2)(4)。Δ-Yは昇圧向き。
(エ)を「零相」「高周波」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)。環流するのは第3調波です。
(オ)をπ/3や0としてしまう——選択肢(2)(3)(4)(5)。30度=π/6。π/3は60度で誤りです。
(オ)だけで(1)に確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★星形は電圧√3倍・電流1倍。三角形はその逆。
②★Δ-Yは昇圧、Y-Δは降圧に向く。
③★Δ巻線があると第3調波が環流し外へ出ない。
④★Δ-Yの角変位は30度=π/6。
💡 覚え方
「星は電圧が√3、三角は電流が√3」——片方だけです。Δがあれば第3調波は外へ出ない——角変位はπ/6。この3点で解けます。
変圧器の結線は平成29年度 A問題8(変電:変圧器の三相結線)にもあります。
三相結線の使い分け
結線の組合せは、用途によって決まっています。
| 結線 | 主な用途 | 特徴 |
| ★Δ-Y | ★発電所の昇圧用 | ★√3倍の昇圧効果・二次で中性点接地できる |
| ★Y-Δ | ★受電端の降圧用 | ★一次で中性点接地できる |
| Δ-Δ | 配電用 | 1台故障してもV結線で継続できる |
| Y-Y-Δ | 大容量送電用 | 三次のΔで第3調波を処理 |
Y-Yだけは避けられます——第3調波の逃げ場がないからです。
だから三次巻線をΔにして Y-Y-Δ とする——三次は調相設備の接続にも使えます。
中性点接地ができるという利点
星形結線には中性点があります——三角形にはありません。
| 中性点接地の効果 | 内容 |
| ★異常電圧の抑制 | ★対地電位を固定できる |
| ★地絡の検出 | ★地絡電流が流れるので検出しやすい |
| ★絶縁レベルの低減 | ★段絶縁が使えて経済的 |
高電圧の系統ほど中性点接地が重要——だから昇圧側にYを置くのです。
第3調波が零相になる理由
(エ)の第3調波が特別扱いされる根拠です。
★どちらも一周して同じ
3倍すると位相差がなくなります——3相とも同じ波形になるのです。
| 高調波の次数 | 3相の関係 | 呼び方 |
| ★3・9・15…(3の倍数) | ★同位相 | ★零相分 |
| 5・11… | 逆相 | 逆相分 |
| 7・13… | 正相 | 正相分 |
零相分は、3相を足しても打ち消されません——中性線があればそこへ集まるのです。
三角形結線には中性点がないので、外へ出られない——輪の中を環流するだけになります。
だからΔ巻線が1つあれば、第3調波の問題が解決する——設計上の基本です。
要点をもう一度
5つの空欄が、Δ-Y結線の特徴を並べています。
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | ★√3 | ★星形の線間電圧 |
| (イ) | ★1 | ★星形の線電流 |
| (ウ) | ★昇圧 | ★√3倍の効果が得られる |
| (エ) | ★第3調波 | ★Δ内を環流する |
| (オ) | ★π/6 | ★30度の角変位 |
(オ)だけで(1)に確定できます——π/6 を答えるのは(1)だけだからです。
Δ-Yを図で押さえる
一次側Δでは、巻線が線間電圧をそのまま受けます。
二次側Yでは、巻線が線間電圧の1/√3を分担します——裏返せば、線間で√3倍が出るということ。
だから同じ巻数比でも、Δ-Yは√3倍の昇圧になる——(ウ)が昇圧である理由です。
発電機の端子電圧は20 kV 前後、送電は500 kV——大きな昇圧比が要る場面で有利になります。
まとめ
| (ア) | √3(Y結線の線間電圧=√3×相電圧) |
| (イ) | 1(Y結線の線電流=相電流) |
| (ウ) | 昇圧(発電所の主変圧器) |
| (エ) | 第3調波(Δ内を環流し通信障害を抑制) |
| (オ) | π/6rad(Δ-Yの一・二次位相差) |
| 答え | (1) |
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