変電23【電験3種 電力】変圧器の保全・診断!誘電正接は絶縁の劣化診断(鉄心ではない)平成30年度 A問題7 完全解説

電験3種 電力科目 変電 平成30年度 A問題7 誘電正接で絶縁の劣化を診る!鉄心ではない

今回は平成30年度 電力科目 A問題7、変圧器の保全・診断について誤っているものを選ぶ問題です。油中ガス分析・部分放電測定・絶縁抵抗/誘電正接測定——各診断法が「何の劣化を見ているか」を押さえれば解けます。

ねらいは診断対象の取り違え。絶縁抵抗測定や誘電正接(tanδ)測定は、変圧器の絶縁材料(絶縁物)の劣化や吸湿を見るための試験です。「鉄心材料の経年劣化を把握する」という説明は診断対象を誤っています。

目次

平成30年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 変電 平成30年度 A問題7 問題文
平成30年度 電力科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7

電験3種 電力科目 【変電】 平成30年度 A問題7

 変圧器の保全・診断に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

変圧器の予防保全は、運転の維持と事故の防止を目的としている。
油入変圧器の絶縁油の油中ガス分析は内部異常診断に用いられる。
部分放電は、絶縁破壊が生じる前ぶれである場合が多いため、異常診断技術として、部分放電測定が用いられることがある。
変圧器巻線の絶縁抵抗測定と誘電正接測定は、鉄心材料の経年劣化を把握することを主な目的として実施される。
ガスケットの経年劣化に伴う漏油の検出には、目視点検に加え、油面計が活用される。

答え誤っている記述は (4)です。

誤りは(4):測るのは絶縁物の劣化

「鉄心材料の経年劣化を把握することを主な目的」——対象が違います

試験測るもの診断できる対象
★絶縁抵抗測定★直流を加えたときの抵抗★★絶縁物の吸湿・汚損
★誘電正接測定★交流での損失角 tanδ★★絶縁物の劣化・含水
油中ガス分析絶縁油に溶けたガスの種類と量内部の過熱・放電

どちらも絶縁物を調べる試験です——鉄心を調べるものではありません

変圧器の寿命は、絶縁物の寿命で決まります——鉄心や銅は劣化しにくいのです。

絶縁紙は熱と水分で少しずつ分解していきます——そこを監視するのが保全の中心になります。

問題文の他の4つは、いずれも正しい記述——「鉄心材料」の一語だけが誤りです。

(2) 油中ガス分析という診断法

絶縁油に溶け込んだガスから、内部で何が起きているか分かります

検出されるガス示す異常
★水素・メタン★部分放電(低エネルギーの放電)
★アセチレン★アーク放電(高エネルギー)
★エチレン★高温の過熱(700 ℃ 以上)
★一酸化炭素・二酸化炭素★絶縁紙の劣化

油や紙が分解するとき、温度によって出るガスが変わります——だからガスの種類で原因が推定できるのです。

アセチレンが出たら重大——アークが発生している証拠だからです。

運転を止めずに油を少し採るだけで調べられる——変圧器診断の最も基本的な手法になります。

(1)(3)(5) 保全の考え方

(1) 予防保全

方式内容特徴
★事後保全★壊れてから直す★停電が長引く
★時間基準保全★決めた周期で点検・取替★まだ使えるものも交換する
★状態基準保全★診断結果に応じて手を打つ★無駄が少ない

変圧器は高価で交換に時間がかかります——だから予防保全が基本です。

油中ガス分析や部分放電測定は、状態基準保全の手段——兆候をつかんで先手を打ちます

(3) 部分放電

絶縁物の中の微小な空隙で起きる、局所的な放電です。

すぐに絶縁破壊するわけではありませんが、少しずつ進行します——だから「前ぶれ」なのです。

放電に伴う電気的パルスや超音波を検出します——運転中でも測定できる方法があります。

(5) 漏油の検出

ガスケットはゴム製の密封材——年月とともに硬化して漏れます

油が漏れれば油面が下がる——だから油面計で分かるのです。

油面が下がると巻線が露出し、絶縁破壊につながります——目視と油面計の両方で監視します

⚠️ よくある間違い
(4)の「絶縁抵抗測定と誘電正接測定」自体を疑ってしまう——どちらも実際に行う試験です。
誤りは「鉄心材料の経年劣化」という目的——調べるのは絶縁物になります。
(2)の油中ガス分析を疑ってしまう——内部異常診断の標準的な手法です。
(3)の部分放電を疑ってしまう——絶縁破壊の前ぶれとして正しい
(5)の油面計を疑ってしまう——漏油すれば油面が下がるので有効です。
5つのうち4つが「何を診断するか」を正しく述べている——対象がずれている1つを探す問題になっています。

⏱️ 本番での進め方
①★絶縁抵抗・誘電正接が調べるのは絶縁物。鉄心ではない。
②★変圧器の寿命は絶縁物の寿命で決まる。
③★油中ガス分析はガスの種類で異常の種類が分かる。
④アセチレンが出たらアーク放電。最も重大。

💡 覚え方
「変圧器で傷むのは絶縁物」——鉄も銅もほとんど劣化しませんだから診断はすべて絶縁を見ている——そこを取り違えさせるのが本問です。

変圧器の構造は平成26年度 A問題7変電:変圧器の並行運転)にあります。

絶縁物の劣化はなぜ進むのか

(4)で問われた絶縁物の劣化要因を整理しましょう

要因影響対策
★熱★絶縁紙が分解し機械的強度が落ちる★冷却・過負荷を避ける
★水分★絶縁耐力が大きく低下する★密封・吸湿呼吸器
★酸素★絶縁油が酸化しスラッジが生じる★窒素封入・コンサベータ
★部分放電★局所的に絶縁を侵食する★製造時の異物・空隙の排除

最も効くのは熱——温度が6 ℃ 上がると寿命が半分になるとされます。

だから変圧器の負荷と油温を監視するのが保全の基本——過負荷は寿命を縮めます

誘電正接(tanδ)とは

誘電正接
\( \tan\delta=\dfrac{I_R}{I_C} \)

抵抗分の電流と容量分の電流の比

理想的な絶縁物なら、電流は電圧より90度進みます——抵抗分がゼロだからです。

劣化すると抵抗分が増え、位相が90度からずれます——そのずれ角の正接が tanδになります。

値が大きいほど劣化が進んでいる——数値で劣化度を表せるのが利点です。

要点をもう一度

誤りは(4)の「鉄心材料」という目的だけです。

記述内容正誤
(1)予防保全の目的
(2)油中ガス分析
(3)部分放電測定
★(4)★絶縁抵抗・誘電正接測定★誤(対象は絶縁物)
(5)漏油の検出

試験の名前は正しいので、目的の部分を読む必要があります——「何を診断するか」が問われているのです。

診断項目と対象の対応

診断項目対象
★絶縁抵抗・誘電正接★巻線の絶縁物
★油中ガス分析★内部の過熱・放電
★部分放電測定★絶縁物中の微小な欠陥
★油面計・目視★ガスケットの劣化と漏油

4つとも、直接または間接に絶縁を見ています——鉄心を対象とする項目はありません

変圧器の付属機器

(5)の油面計をはじめ、保全に関わる機器があります

機器働き異常時
★コンサベータ★油の膨張・収縮を吸収する★油面計で量を監視
★吸湿呼吸器★出入りする空気の水分を取る★シリカゲルの色で判断
★ブッフホルツ継電器★内部で発生したガスを検出する★警報・遮断
★放圧装置★内圧が上がったとき逃がす★容器の破損を防ぐ

油は温度で体積が変わります——その増減をコンサベータで吸収するのです。

空気が出入りするので、水分が入らないよう吸湿呼吸器を通します——シリカゲルが青から桃色に変われば交換

ブッフホルツ継電器は、内部異常で生じたガスを集めて検知します——油中ガス分析より早く気づけるのです。

目視点検と機器による監視を組み合わせる——問題文の(5)が示す考え方になります。

絶縁油の役割

(2)(5)に出てくる油は、2つの働きを兼ねています

働き内容失われると
★絶縁★巻線どうし・巻線と鉄心を絶縁する★絶縁破壊に至る
★冷却★対流で熱を放熱器へ運ぶ★温度が上がり寿命が縮む

空気より絶縁耐力が高く、熱もよく運びます——だから油入変圧器が主流なのです。

漏油はその両方を失わせます——だから(5)の検出が重要になります。

油の劣化は酸価やこう色で判定します——定期的に採油して分析するのです。

劣化した油は精製するか交換します——変圧器本体より先に油が寿命を迎えることもあります。

まとめ

(1)予防保全運転維持・事故防止が目的→正しい
(2)油中ガス分析内部異常診断に用いる→正しい
(3)部分放電測定絶縁破壊の前兆を検出→正しい
(4)絶縁抵抗・誘電正接絶縁物の劣化診断(鉄心ではない)=誤り→答え
(5)漏油検出目視+油面計→正しい

▼あわせて解きたい関連問題
・変圧器のV結線(変電24):【電力】平成30年度 A問題12
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成30年度 問題一覧(全4科目)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次