今回は平成30年度 電力科目 A問題12、変圧器のV結線方式について誤っているものを選ぶ問題です。V結線は単相変圧器2台で三相を得る方式で、「出力」と「利用率」の2つの√3系の数値を混同させるのが定番の罠です。
ここを押さえれば一発。V結線の出力=√3×(変圧器1台の容量)、同じ変圧器3台のΔ結線の出力=3×(1台の容量)。だから出力比は√3/3≒0.577。一方利用率=出力/(2台の合計容量)=√3/2≒0.866。この2つの数字を取り違えた記述が答えです。
平成30年度 電力科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題12
電験3種 電力科目 【変電】 平成30年度 A問題12
変圧器のV結線方式に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
単相変圧器2台で三相が得られる。
同一の変圧器2台を使用して三相平衡負荷に供給している場合、Δ結線変圧器と比較して、出力は√3⁄2倍となる。
同一の変圧器2台を使用して三相平衡負荷に供給している場合、変圧器の利用率は√3⁄2となる。
電灯動力共用方式の場合、共用変圧器には電灯と動力の電流が加わって流れるため、一般に動力専用変圧器の容量と比較して共用変圧器の容量の方が大きい。
単相変圧器を用いたΔ結線方式と比較して、変圧器の電柱への設置が簡素化できる。

誤りは(2):出力は1/√3倍
「Δ結線と比較して出力は√3/2倍」——利用率と混同しています。
| 項目 | 式 | 値 |
| ★Δ結線の出力 | ★3 V I(変圧器3台) | ★— |
| ★V結線の出力 | ★√3 V I(変圧器2台) | ★— |
| ★出力の比 | ★√3/3=1/√3 | ★★0.577 |
| ★利用率 | ★√3 V I ÷ 2 V I=√3/2 | ★★0.866 |
2つの値が混同されやすいので、意味を分けて押さえます。
| ★出力比 | ★利用率 | |
| ★何と比べるか | ★変圧器3台のΔ結線 | ★変圧器2台の定格容量の合計 |
| ★意味 | ★1台減らすとどれだけ落ちるか | ★2台をどれだけ活かせるか |
| ★値 | ★0.577 | ★0.866 |
問題文の(3)は利用率√3/2 と正しく書いています——(2)がその値を出力比として使ってしまったのです。
「√3/2」という値が2回出てきたら疑う——片方は1/√3 のはずです。
2つの値を導く
出力比=1/√3
★約58 % に落ちる
台数は3分の2に減るのに、出力は58 % まで落ちます——単純な比例ではないのです。
利用率=√3/2
★約87 % しか使えない
2台あるのに、その87 % しか活かせません——残り13 % は遊んでいるのです。
三相を2台でまかなうため、電流の位相にずれが生じるから——それが利用率を下げる理由になります。
(4)(5) 電灯動力共用方式
柱上変圧器でよく使われる形です。
| 変圧器 | 担うもの | 容量 |
| ★共用変圧器 | ★単相の電灯負荷+三相動力の一部 | ★★大きい |
| ★専用変圧器 | ★三相動力のみ | ★小さい |
共用変圧器には2種類の電流が重なって流れます——だから容量を大きくするのです。
50 kV·A と20 kV·A のような組合せが一般的——問題文(4)の記述どおりです。
(5)の「電柱への設置が簡素化」も正しい——2台で済むので柱上の負担が減るから。
Δ結線なら3台が必要——電柱の強度も配線も大がかりになります。
⚠️ よくある間違い
(2)の「√3/2倍」を(3)と同じだから正しいと判断する——むしろ同じ値が2回出るのが不自然です。
出力比は1/√3=0.577、利用率は√3/2=0.866——別の値になります。
(3)の利用率を疑ってしまう——√3/2 で正しいのです。
(4)の共用変圧器の容量を疑ってしまう——電流が重なるので大きい。
(5)の「設置が簡素化」を疑ってしまう——2台で済むので正しいです。
同じ値が並んでいたら片方を疑う——本問の見抜き方になります。
⏱️ 本番での進め方
①★V結線の出力比は1/√3=0.577。
②★V結線の利用率は√3/2=0.866。
③★2つの値を混同させるのが本問の狙い。
④共用変圧器は電灯と動力が重なるので容量が大きい。
💡 覚え方
「出力は58 %、利用率は87 %」——比べる相手が違います。出力はΔ3台と比べ、利用率は2台の合計と比べる——分母が違うのです。
変圧器の結線方式は令和4年度下期 A問題7(変電:変圧器の結線方式)にあります。
V結線が使われる場面
利用率が低いのに使われるのは、理由があります。
| 場面 | 理由 |
| ★柱上変圧器 | ★2台で済むので電柱の負担が小さい |
| ★需要の伸びが見込まれる場所 | ★1台足せばΔ結線に拡張できる |
| ★Δ結線の1台が故障したとき | ★残る2台で運転を継続できる |
| ★電灯動力共用 | ★単相と三相を1組でまかなえる |
最も価値が高いのは、故障時に継続できること——Δ結線の非常時の姿がV結線です。
出力は58 % に落ちますが、全停するよりはるかによい——そのまま運転を続けられます。
だからΔ-Δ結線は配電用で好まれる——V結線へ移行できるという保険があるからです。
なぜ利用率が下がるのか
2台の変圧器にかかる電流の位相が、ずれるためです。
Δ結線なら3台が均等に分担します——V結線では位相差の分だけ無駄が出るのです。
その無駄が13.4 %——1−√3/2=0.134にあたります。
要点をもう一度
2つの値の混同を突いた問題です。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 単相変圧器2台で三相が得られる | 正 |
| ★(2) | ★出力は√3/2倍 | ★誤(1/√3倍) |
| (3) | 利用率は√3/2 | 正 |
| (4) | 共用変圧器の容量は大きい | 正 |
| (5) | 電柱への設置が簡素 | 正 |
(2)と(3)に同じ「√3/2」が並んでいます——そこが不自然です。
比べる相手が違うのだから、値も違うはず——それが見抜き方になります。
数値を覚えておく
| 値 | 意味 | 覚え方 |
| ★0.577=1/√3 | ★Δ結線に対する出力比 | ★√3で割る |
| ★0.866=√3/2 | ★2台の容量に対する利用率 | ★cos30度 |
0.577 と0.866——どちらも三角比でおなじみの値です。
出力のほうが小さい——3台と比べるのだから当然になります。
電灯動力共用方式のしくみ
(4)の共用変圧器を、もう少し詳しく見ましょう。
| 負荷 | 相 | 電圧 | どの変圧器から |
| ★電灯(一般家庭) | ★単相3線 | ★100/200 V | ★共用変圧器のみ |
| ★動力(工場・店舗) | ★三相3線 | ★200 V | ★共用+専用の2台 |
共用変圧器は、単相の電灯と三相の一部を同時に担います——2種類の電流が重なるのです。
だから容量を大きくする必要がある——50 kV·A と20 kV·A のような組合せになります。
1組の変圧器で、家庭にも小規模事業所にも供給できる——配電の効率がよいのです。
V結線が柱上でよく使われる最大の理由——問題文(5)の「設置が簡素化」にもつながります。
V結線から見た変圧器の使い方
利用率の低さは、設備計画にどう影響するでしょうか。
| 構成 | 台数 | 設備容量 | 供給できる出力 |
| ★Δ結線 | ★3台 | ★3 S | ★3 S |
| ★V結線 | ★2台 | ★2 S | ★1.73 S(利用率86.6 %) |
同じ出力を得るには、V結線のほうが設備容量が要ります——2 S に対して1.73 S しか出せないから。
それでも台数が1台少ないので、設置は楽になります——柱上では台数のほうが効くのです。
大容量では、この無駄が無視できません——だから変電所ではΔやYを使うことになります。
用途によって選び分ける——V結線は柱上と非常時の形です。
まとめ
| (1)三相化 | 単相2台で三相を得る→正しい |
| (2)出力比 | 対Δは√3/3(0.577)倍。√3/2は誤り→答え |
| (3)利用率 | 出力/(2台容量)=√3/2(0.866)→正しい |
| (4)電灯動力共用 | 共用変圧器の容量を大きくする→正しい |
| (5)設置 | 2台でΔより簡素→正しい |
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