配電20【電験3種 電力】1線地絡電流を小さく→非接地・地絡方向継電器は逆位相・高圧カットアウトは一次側!平成29年度 A問題12 完全解説

電験3種 電力科目 配電 平成29年度 A問題12 地絡電流を小さくする非接地!継電器は逆位相

今回は平成29年度 電力科目 A問題12我が国の高低圧配電系統における保護の空欄補充問題です。6.6kV配電の接地方式・地絡方向継電器・低圧短絡保護と、配電保護の基本が5つの空欄で問われます。

4つのキー:1線地絡電流を小さくするため非接地方式、地絡電流が故障線路と健全線路で逆位相になるのを地絡方向継電器で利用、低圧短絡保護は柱上変圧器の一次側に付ける高圧カットアウト——非接地方式の保護がまるごと整理できます。

目次

平成29年度 電力科目 A問題12:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 平成29年度 A問題12 問題文
平成29年度 電力科目 A問題12 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題12

電験3種 電力科目 【配電】 平成29年度 A問題12

 次の文章は、我が国の高低圧配電系統における保護について述べた文章である。

 6.6kV高圧配電線路は、60kV以上の送電線路や送電用変圧器に比べ、電線路や変圧器の絶縁が容易であるため、故障時に健全相の電圧上昇が大きくなっても特に問題にならない。また、1線地絡電流を(ア)するため(イ)方式が採用されている。

 一般に、多回線配電線路では地絡保護に地絡方向継電器が用いられる。これは、故障時に故障線路と健全線路における地絡電流が(ウ)となることを利用し、故障回線を選択するためである。

 低圧配電線路で短絡故障が生じた際の保護装置として(エ)が挙げられるが、これは通常、柱上変圧器の(オ)側に取り付けられる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)大きく非接地逆位相高圧カットアウト二次
(2)大きく接地逆位相ケッチヒューズ一次
(3)小さく非接地逆位相高圧カットアウト一次
(4)小さく接地同位相ケッチヒューズ一次
(5)小さく非接地同位相高圧カットアウト二次
答え答えは(3)です。

答えは(3):小さく・非接地・逆位相・高圧カットアウト・一次

5つの空欄が、高圧から低圧へ順に並んでいます

空欄正解なぜそうなるか
★(ア)★★小さく★★地絡電流を抑えたい
★(イ)★★非接地★★中性点を接地しない
★(ウ)★★逆位相★★故障線路と健全線路で向きが逆
★(エ)★★高圧カットアウト★★内蔵ヒューズで保護する
★(オ)★★一次★★柱上変圧器の高圧側

故障回線を「逆位相」で選び出すしくみ

回線零相電流の向きどこから来る電流か
★★故障した回線★★線路から母線へ向かう★★ほかのすべての回線の充電電流が集まる
★★健全な回線★★母線から線路へ向かう★★自分の対地静電容量を流れる分

地絡が起きると、健全な回線からも電流が流れ出します——対地静電容量を通ってです。

その電流はすべて、故障回線を通って地絡点へ向かいます——だから故障回線だけ向きが逆になるのです。

零相電流の大きさだけでは、区別できません——どの回線にも流れているから。

だから零相電圧と比べて位相を見ます——それが地絡方向継電器です。

なぜ電圧上昇が問題にならないのか

6.6 kV 配電線60 kV 以上の送電線
★絶縁の作りやすさ★★容易★★難しく高価
★√3倍の電圧上昇★★余裕をもたせやすい★★絶縁費用が跳ね上がる
★選ばれる接地方式★★非接地★★抵抗接地・直接接地

問題文の冒頭が、非接地を選べる理由を述べています——絶縁が容易だからです。

6.6 kV なら、√3倍の11.4 kV に耐える絶縁も難しくない——元が低いのです。

これが500 kV なら、絶縁の費用が跳ね上がります——だから直接接地にするのです。

電圧の高さで接地方式が決まるのは、このためです

⚠️ よくある間違い
(ア)を大きくとする——地絡電流は小さくしたいのです。
(イ)を接地とする——6.6 kV 配電は非接地です。
(ウ)を同位相とする——同じ向きでは区別できません
(エ)をケッチヒューズとする——それは低圧引込線です。
(オ)を二次とする——高圧カットアウトは一次側です。

⏱️ 本番での進め方
①★非接地方式は1線地絡電流を小さくする。
②★故障回線と健全回線で零相電流は逆位相。
③★だから地絡方向継電器で故障回線を選べる。
④★高圧カットアウトは柱上変圧器の一次側。

💡 覚え方
「故障回線だけが逆向き」——ほかの回線の電流が集まってくるから。大きさでは分からず、向きで分かる——だから方向継電器なのです。

配電の接地方式は平成26年度 A問題11配電:配電線路の接地方式)にあります。

零相電流をどうやって取り出すか

状態3線の電流のベクトル和零相変流器の出力
★平常時★★ゼロ★★何も出ない
★★一線地絡時★★ゼロでなくなる★★地絡電流に比例した出力が出る

3線をまとめて1つの鉄心に通します——それが零相変流器です。

平常時は行きと帰りが打ち消し合ってゼロ——だから何も出ないのです。

地絡すると打ち消しが崩れ、差だけが現れます——数アンペアでも検出できるのです。

柱上変圧器の一次側に付ける意味

事故の場所高圧カットアウトの働き
★変圧器の内部★★ヒューズが溶けて変圧器を切り離す
★★低圧配電線の短絡★★一次側に過電流が現れるのでヒューズが溶ける

低圧側の短絡は、一次側から見れば過電流です——変圧器を通して現れるのです。

だから一次側のヒューズで、低圧側の事故も守れます——(オ)が一次である理由です。

そのまま放っておくと、配電線全体が停電します——波及事故を防いでいるのです。

多回線配電線路という前提

1回線だけの場合多回線の場合
★地絡時に電流が流れる回線★★その1回線だけ★★すべての回線に流れる
★必要な保護★★地絡過電流継電器で足りる★★地絡方向継電器が要る
★判定のしかた★★電流の大きさ★★電流の向き(位相)

1回線しかなければ、電流が流れた=その回線の事故です——迷う余地がないのです。

けれども変電所からは何回線も出ています——どれが事故かを選ぶ必要があるのです。

だから問題文は「多回線配電線路では」と断っています——方向継電器が要る理由です。

零相電圧という共通の基準

回線ごとの違い使い方
★零相電流★★回線ごとに向きが違う★★判定される側
★★零相電圧★★母線に共通で1つ★★比べる基準になる

零相電圧は母線に現れるので、全回線で共通です——だから基準に使えるのです。

それと各回線の零相電流の位相を比べます——逆位相の回線が故障回線です。

配電の保護を1枚で見る

位置守る事故装置
★変電所の引出口★★高圧配電線の短絡★★過電流継電器+遮断器
★変電所の引出口★★高圧配電線の地絡★★地絡方向継電器+遮断器
★柱上変圧器の一次側★★変圧器内部・低圧側の短絡★★高圧カットアウト
★低圧引込線の接続点★★引込線の短絡★★ケッチヒューズ

本問の(エ)(オ)は、この表の3行目にあたります——低圧側の短絡を一次側で守るのです。

ケッチヒューズはさらに下流の引込線を守ります——だから(エ)には入らないのです。

非接地方式が抱える弱点

弱点内容対処
★★健全相の電圧上昇★★対地電圧が√3倍になる★★絶縁に余裕をもたせる
★★地絡の検出が難しい★★電流が小さく負荷電流に埋もれる★★零相変流器と方向継電器を使う
★間欠地絡★★つながったり離れたりして異常電圧が出る★避雷器・早期の除去

利点だけの方式はありません——弱点を工夫で補っているのです。

本問の(ウ)は、その工夫のひとつを問うています

絶縁が容易であることの意味

電圧√3倍したときの対地電圧絶縁の負担
★6.6 kV★★約11.4 kV★★もともと余裕がある
★66 kV★★約114 kV★★がいしの数が増える
★500 kV★★約866 kV★★設備費が跳ね上がる

電圧が高いほど、√3倍の影響が大きくなります——差が絶対値で効いてくるから。

6.6 kV なら11.4 kV でも十分に耐えられます——だから非接地でよいのです。

これが問題文の冒頭が述べていることです——(ア)(イ)の前提になります。

保護継電方式の名前を整理する

名称検出するもの使う場所
★過電流継電方式★★線電流の大きさ★★短絡保護
★地絡過電流継電方式★★零相電流の大きさ★★回線が1つのとき
★★地絡方向継電方式★★零相電流と零相電圧の位相★★多回線のとき

名前に「方向」が付くかどうかが分かれ目です——向きを見るかどうか

多回線では大きさだけでは足りません——だから方向継電方式です。

本問の(ウ)は、その理由そのものを問うています

まとめ

(ア)小さく(地絡電流)
(イ)非接地(方式)
(ウ)逆位相(故障・健全線路の地絡電流)
(エ)高圧カットアウト(低圧短絡保護)
(オ)一次(柱上変圧器の高圧側)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・非接地方式配電線の保護(配電1):【電力】令和7年度下期 A問題7
・高低圧配電系統の保護(配電16):【電力】令和3年度 A問題13

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