今回は平成26年度 電力科目 A問題11、配電線路の接地方式や一線地絡事故が発生した場合の現象の空欄補充問題です。我が国の6.6kV配電の非接地方式と、その一線地絡特性が問われます。
高圧配電線は変圧器二次側のΔ結線から3線で引き出され非接地方式を採用。この方式では一線地絡電流が数〜数十アンペアと小さく、通信障害もほとんど問題になりません——非接地方式の長所がまるごと整理できます。
答えは(2):Δ結線・非接地方式・数〜数十アンペア・通信障害
日本の6.6 kV 配電線は、中性点を接地していません。
| 空欄 | 正解 | なぜそうなるか |
| ★(ア) | ★★Δ結線 | ★★中性点がないので3線で引き出す |
| ★(イ) | ★★非接地方式 | ★★中性点を接地しない |
| ★(ウ) | ★★数〜数十アンペア | ★★対地静電容量を通ってしか流れない |
| ★(エ) | ★★通信障害 | ★★地絡電流が小さいので誘導も小さい |
平成26年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【配電】 平成26年度 A問題11
次の文章は、配電線路の接地方式や一線地絡事故が発生した場合の現象に関する記述である。
a. 高圧配電線路は多くの場合、配電用変電所の変圧器二次側の(ア)から3線で引き出され、(イ)が採用されている。
b. この方式では、一般に一線地絡事故時の地絡電流は(ウ)程度のほか、高低圧線の混触事故の低圧側対地電圧上昇を容易に抑制でき、地絡事故中の(エ)もほとんど問題にならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) Δ結線 直接接地方式 数百〜数千アンペア 健全相電圧上昇 (2) Δ結線 非接地方式 数〜数十アンペア 通信障害 (3) Y結線 直接接地方式 数〜数十アンペア 通信障害 (4) Δ結線 非接地方式 数百〜数千アンペア 健全相電圧上昇 (5) Y結線 直接接地方式 数百〜数千アンペア 健全相電圧上昇

非接地方式で地絡電流が小さい理由
| 非接地方式 | 直接接地方式 | |
| ★地絡電流の通り道 | ★★健全2相の対地静電容量だけ | ★★接地線を通る太い経路 |
| ★地絡電流の大きさ | ★★数〜数十 A | ★★数百〜数千 A |
| ★健全相の電圧 | ★★√3倍まで上がる | ★★ほとんど上がらない |
| ★通信障害 | ★★ほとんど問題にならない | ★★大きな誘導が生じる |
中性点が接地されていないと、電流の戻り道がありません——だから大きな電流が流れないのです。
わずかに流れるのは、対地静電容量を通る分だけ——それが数〜数十アンペアです。
電流が小さいので、通信線への誘導も小さくなります——それが(エ)の答えです。
そのかわり、健全相の対地電圧が√3倍まで上がります——だから絶縁に余裕をもたせるのです。
非接地方式を選ぶ理由
| 利点 | 内容 |
| ★★地絡電流が小さい | ★★機器の損傷が軽く、感電の危険も小さい |
| ★★通信障害が小さい | ★★電磁誘導が少ない |
| ★★混触時の電圧上昇を抑えやすい | ★★低圧側にB種接地を施すだけでよい |
| ★設備が簡単 | ★接地変圧器や抵抗器が要らない |
配電線は住宅街や商店街を通ります——だから地絡電流を小さく保ちたいのです。
数千アンペアが流れると、周りに大きな影響が出ます——それを避けているのです。
そのかわり、地絡の検出が難しくなります——電流が小さいからです。
だから零相変流器と地絡方向継電器を組み合わせて検出します——工夫が要るのです。
⚠️ よくある間違い
(ア)をY結線とする——3線で引き出すのでΔ結線です。
(イ)を直接接地方式とする——6.6 kV 配電は非接地です。
(ウ)を数百〜数千アンペアとする——非接地なので数〜数十です。
(エ)を健全相電圧上昇とする——それは非接地でむしろ大きい。
非接地なら絶対に安全と考える——健全相の電圧は上がります。
⏱️ 本番での進め方
①★6.6 kV 配電=Δ結線・非接地方式。
②★一線地絡電流は数〜数十アンペア。
③★地絡電流が小さいので通信障害も小さい。
④★健全相の対地電圧は√3倍まで上がる。
💡 覚え方
「非接地は電流が小さく、電圧が上がる」——この2つがセットです。(エ)は通信障害——健全相電圧上昇は逆に問題になるほうです。
中性点接地方式の比較は変電の単元(送電の計算:消弧リアクトル接地)でも扱っています。
地絡電流はどこを通って流れるのか
健全2相の対地静電容量が通り道になります。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★a相が大地とつながる |
| ★② | ★★a相の対地電圧がゼロになる |
| ★③ | ★★健全なb相・c相の対地電圧が√3倍に上がる |
| ★④ | ★★その電圧が対地静電容量を通して電流を流す |
| ★⑤ | ★★2相分の電流が地絡点に集まる |
地絡した相からではなく、健全な相から流れてきます——ここが分かりにくいところです。
電流の大きさは、対地静電容量の大きさで決まります——線路が長いほど大きいのです。
架空線なら数アンペア、ケーブルが多いと数十アンペア——それが(ウ)の範囲です。
電流が小さいので、検出には工夫が要ります——零相変流器で微小電流を捉えるのです。
非接地方式で地絡を検出するしかけ
電流が小さいので、専用の装置を使います。
| 装置 | 役目 | 略号 |
| ★★零相変流器 | ★★3線をまとめて通し、ベクトル和の電流を取り出す | ★ZCT |
| ★★接地形計器用変圧器 | ★★零相電圧を取り出す | ★EVT・GPT |
| ★★地絡方向継電器 | ★★零相電流と零相電圧の位相から方向を判定する | ★DGR |
平常時は3線の電流のベクトル和がゼロです——だからZCTには何も出ないのです。
地絡すると、そのつり合いが崩れて電流が現れます——それを捉えるのです。
ただし、自分の構内か外かを区別する必要があります——どちらでも電流は流れるから。
そこで電圧との位相を見て方向を判定します——それが地絡方向継電器です。
混触時の電圧上昇を抑えられる理由
問題文のbにある「高低圧線の混触」の話です。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★柱上変圧器の内部で高圧線と低圧線が接触する |
| ★② | ★★低圧側に高圧が現れようとする |
| ★③ | ★★B種接地を通って電流が大地へ流れる |
| ★④ | ★★接地抵抗×電流の分だけ低圧側の対地電圧が上がる |
| ★⑤ | ★★非接地なら電流が小さいので上昇も小さい |
低圧側の電圧上昇は、接地抵抗と電流の積で決まります——オームの法則です。
非接地方式では地絡電流が小さいので、上昇も小さい——だから抑制が容易なのです。
直接接地なら数千アンペアが流れます——同じ接地抵抗では危険な電圧になるのです。
だから配電系統には非接地方式が向いています——人が近くにいるからです。
接地方式を比べて覚える
3つの方式を並べると、性格がはっきりします。
| 方式 | 地絡電流 | 健全相の電圧上昇 | 主な適用 |
| ★★非接地 | ★★数〜数十 A(最小) | ★★√3倍(最大) | ★★6.6 kV 配電 |
| ★抵抗接地 | ★★中くらい | ★中くらい | ★22〜154 kV |
| ★★直接接地 | ★★数百〜数千 A(最大) | ★★ほとんど上がらない(最小) | ★★187 kV 以上 |
地絡電流と電圧上昇は、いつも逆の関係になります——片方を抑えると片方が増えるのです。
配電は人の近くを通るので、電流を抑えます——だから非接地です。
超高圧は絶縁の費用が大きいので、電圧上昇を抑えます——だから直接接地です。
この対比で覚えると、どの方式も忘れません——電圧の高さで選び分けるのです。
健全相の電圧が√3倍になる理由
中性点が動くことで起こります。
| 平常時 | a相地絡時 | |
| ★a相の対地電圧 | ★★相電圧(線間÷√3) | ★★ゼロ |
| ★b相・c相の対地電圧 | ★★相電圧 | ★★線間電圧(相電圧の√3倍) |
| ★中性点の対地電圧 | ★★ゼロ | ★★相電圧の大きさになる |
非接地なので、中性点の電位は自由に動けます——固定されていないのです。
a相が大地電位になると、中性点がその分ずれます——三角形ごと平行移動するイメージ。
すると健全相と大地の間には、線間電圧がかかります——相電圧の√3倍です。
だから機器の絶縁は線間電圧に耐える必要があります——それが非接地方式の代償です。
まとめ
| (ア) | Δ結線(変圧器二次側) |
| (イ) | 非接地方式 |
| (ウ) | 数〜数十アンペア(地絡電流) |
| (エ) | 通信障害(問題にならない) |
| 答え | (2) |
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