今回は平成27年度 電力科目 A問題11、地中配電線路の得失(メリット・デメリット)の空欄補充問題です。架空配電線路と比較した地中化の利点と欠点が、4つの空欄で整理できます。
利点は都市の景観が良く、台風等で他物接触による事故が少ないこと。欠点は建設費が高く、掘削工事を要するため設備増強が容易でなく、ケーブルの対地静電容量によるフェランチ効果の影響が大きいこと——地中配電の得失がまるごと問われます。
平成27年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【配電】 平成27年度 A問題11
次の文章は、地中配電線路の得失に関する記述である。
地中配電線路は、架空配電線路と比較して、(ア)が良くなる、台風等の自然災害発生時において(イ)による事故が少ない等の利点がある。
一方で、架空配電線路と比較して、地中配電線路は高額の建設費用を必要とするほか、掘削工事を要することから需要増加に対する(ウ)が容易ではなく、またケーブルの対地静電容量による(エ)の影響が大きい等の欠点がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 都市の景観 他物接触 設備増強 フェランチ効果 (2) 都市の景観 操業者過失 保護協調 フェランチ効果 (3) 需要率 他物接触 保護協調 電圧降下 (4) 都市の景観 他物接触 設備増強 電圧降下 (5) 需要率 操業者過失 設備増強 フェランチ効果

答えは(1):都市の景観・他物接触・設備増強・フェランチ効果
利点2つと欠点2つが、順に並んでいます。
| 空欄 | 正解 | 利点か欠点か |
| ★(ア) | ★★都市の景観 | ★★利点(良くなる) |
| ★(イ) | ★★他物接触 | ★★利点(事故が少ない) |
| ★(ウ) | ★★設備増強 | ★★欠点(容易でない) |
| ★(エ) | ★★フェランチ効果 | ★★欠点(影響が大きい) |
なぜフェランチ効果が大きいのか
| 段階 | 起きること |
| ① | ★ケーブルは導体と遮へい層が近く、間に絶縁体がある |
| ★② | ★★だから対地静電容量が架空線より大きい |
| ★③ | ★★軽負荷時に進み電流が多く流れる |
| ★④ | ★★進み電流がリアクタンスを流れると電圧が上がる |
| ★⑤ | ★★受電端電圧が送電端より高くなる |
(エ)を電圧降下と答えたくなりますが、逆です——静電容量が原因なら電圧は上がるのです。
ケーブルは架空線の数十倍の静電容量をもちます——距離が近く、誘電体が入るから。
だから地中配電では、電圧上昇のほうが問題になります——深夜など軽負荷のときです。
対策として分路リアクトルやコンデンサの切り離しを行います——進み電流を減らすのです。
設備増強が容易でないとはどういうことか
| 架空配電線路 | 地中配電線路 | |
| ★電線を増やす | ★★電柱に腕金を足せばよい | ★★管路に空きがなければ掘り直す |
| ★変圧器を増やす | ★★電柱に取り付ける | ★★地上に設置場所を確保する |
| ★工期 | ★★短い | ★★長い |
| ★道路の使用 | ★★ほぼ不要 | ★★掘削の許可が要る |
需要が増えたとき、架空線なら簡単に増設できます——電柱に足すだけだから。
地中は管路の容量が決まっているので、そうはいきません——あらかじめ余裕をみて造るのです。
だから将来の需要を見込んだ設計が要ります——あとから直せないのです。
これが地中化の費用が高くなる理由の一つでもあります。
⚠️ よくある間違い
(エ)を電圧降下とする——対地静電容量が原因ならフェランチ効果です。
(ウ)を保護協調とする——掘削の話なので設備増強です。
(ア)を需要率とする——地中化の利点は景観です。
(イ)を操業者過失とする——自然災害の話なので他物接触。
利点と欠点を取り違える——前半が利点、後半が欠点です。
⏱️ 本番での進め方
①★地中配電の利点=都市の景観・他物接触事故が少ない。
②★欠点=建設費高・設備増強が容易でない・フェランチ効果。
③★対地静電容量が大きい→電圧は上がる(降下ではない)。
④★ダミーは需要率・操業者過失・保護協調・電圧降下。
💡 覚え方
「景観よし・他物接触なし/高い・増設しにくい・電圧が上がる」——利点2つ欠点3つで覚えます。静電容量が大きい=電圧上昇——ここを取り違えないこと。
地中配電の復旧時間は平成20年度 A問題12(配電:地中配電線路の特徴)で問われています。
無電柱化が進む場所と進まない場所
費用の高さが、進み方を左右しています。
| 場所 | 地中化の進み方 | 理由 |
| ★都心の主要道路 | ★★進んでいる | ★★景観と防災の効果が大きい |
| ★観光地・歴史的街並み | ★★進んでいる | ★★景観の価値が高い |
| ★住宅地の生活道路 | ★★進みにくい | ★★費用に見合わない・道路が狭い |
| ★郊外・農村部 | ★★ほとんど進まない | ★★需要密度が低い |
地中化の費用は、架空線の10倍ほどとされます——掘削と管路と地上機器が要るから。
だから効果の大きい場所から順に進めます——限られた予算を配分するのです。
災害時に電柱が倒れないという利点も大きい——緊急車両が通れるのです。
費用と効果のつり合いで決まる——それが本問の(ウ)にもつながる話です。
ダミーの語はどこで使われるか
選択肢の語を知っていれば、消去法が効きます。
| ダミーの語 | 本来の意味 | 本問で不適な理由 |
| ★需要率 | ★★最大需要電力÷設備容量 | ★★地中化で良くなるものではない |
| ★操業者過失 | ★★人の操作ミス | ★★自然災害の話に合わない |
| ★保護協調 | ★★上位と下位の遮断器の動作順序 | ★★掘削工事とは無関係 |
| ★電圧降下 | ★★線路の抵抗とリアクタンスで電圧が下がる | ★★静電容量なら上昇側 |
どれも配電で使う正しい用語です——だが文脈に合わないのです。
「台風等の自然災害」とあるので(イ)は他物接触——操業者過失は人為的だから。
「掘削工事を要することから」とあるので(ウ)は設備増強——保護協調は工事と関係がないのです。
前後の言葉が手がかりになります——空欄の周りを丁寧に読むのがこつです。
架空とケーブルで静電容量が違う理由
(エ)の根拠になる、構造の違いです。
| 架空配電線 | 地中ケーブル | |
| ★導体と大地の距離 | ★★数メートル | ★★数ミリメートル(遮へい層まで) |
| ★間にあるもの | ★★空気(比誘電率1) | ★★架橋ポリエチレン(約2.3) |
| ★対地静電容量 | ★★小さい | ★★数十倍 |
| ★充電電流 | ★小さい | ★★大きい |
静電容量は、距離が近いほど大きくなります——コンデンサと同じ理屈です。
ケーブルは絶縁体をはさんですぐ外側が遮へい層です——だから極端に近いのです。
しかも誘電体が入るので、さらに大きくなります——比誘電率の分だけ増えるのです。
だから同じ長さでも、影響がまるで違います——それが(エ)の答えの根拠です。
地中化の利点をもう一度整理する
景観と他物接触以外にもあります。
| 利点 | 内容 |
| ★★都市の景観 | ★★電線と電柱がなくなり街並みが整う |
| ★★他物接触事故が少ない | ★★樹木・飛来物・鳥獣が触れない |
| ★防災性 | ★★地震や台風で電柱が倒れず道路をふさがない |
| ★安全性 | ★★歩行者が充電部に近づかない |
| ★通行空間 | ★★歩道が広く使える |
本問が挙げているのは前の2つです——けれども実際の利点はもっと多いのです。
災害に強いことが、近年とくに重視されています——電柱が倒れると救急車が通れないから。
だから国も無電柱化を進めています——費用の高さが課題ですが。
利点を多く知っていれば、空欄も選びやすくなります。
フェランチ効果への対策
(エ)の欠点には、ちゃんと手が打たれています。
| 対策 | しくみ | 使う場面 |
| ★★分路リアクトル | ★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す | ★★軽負荷時 |
| ★コンデンサの切り離し | ★★進み無効電力を減らす | ★★深夜など |
| ★開閉器付コンデンサ | ★★負荷に応じて入り切りする | ★時間帯で制御 |
原因が進み電流なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。
力率改善用のコンデンサは、軽負荷時には邪魔になります——だから切り離すのです。
時間帯によって入り切りするのが実際の運用です——昼は入れ、夜は切る。
欠点があっても、対策があれば地中化は進められます——それが実務の考え方です。
まとめ
| (ア) | 都市の景観(利点・良くなる) |
| (イ) | 他物接触(利点・事故が少ない) |
| (ウ) | 設備増強(欠点・容易でない) |
| (エ) | フェランチ効果(欠点・影響が大きい) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・地中送電の特徴(地中送電1):【電力】令和7年度上期 A問題9
・地中配電線路の機器(配電22):【電力】平成28年度 A問題11

コメント