今回は平成24年度 電力科目 A問題13、温度上昇でたるみがどう変わるかを求める計算問題です。この問題は令和6年度下期A問題13(送電の計算3)と数値・図・答えまで完全に同一で再出題されました——12年ぶりのそっくり出題です。
手順は「実長L₁→温度で伸ばしてL₂→新しいたるみD₂を逆算」の3ステップ。径間Sは変わらず、変わるのは実長Lという視点が核心です。
平成24年度 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成24年度 A問題13
図のように高低差のない支持点A、Bで支持されている径間Sが100〔m〕の架空電線路において、導体の温度が30〔℃〕のとき、たるみDは2〔m〕であった。
導体の温度が60〔℃〕になったとき、たるみD〔m〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電線の線膨張係数は1〔℃〕につき1.5×10⁻⁵とし、張力による電線の伸びは無視するものとする。
(1)2.05 (2)2.14 (3)2.39 (4)2.66 (5)2.89 m



答えは(3):2.39 m
温度で電線が伸びた分だけ、たるみが増えます。
① もとの実長を出す
★
② 温度で伸びる長さを出す
★
③ 新しいたるみを出す
★答え
4.5 cm 伸びただけで、たるみは38 cm 増えます——わずかな伸びが大きく効くのです。
わずかな伸びが大きなたるみを生む
実長の差を取ると、関係が見えてきます。
★覚えておくと速い
★
この式を覚えておけば、一気に求められます——実長を経由しなくてよいのです。
たるみの2乗どうしを足す形になります——だから平方根が最後に来るのです。
径間 S が2乗で効くことも読み取れます——長い径間ほど温度の影響が大きい。
温度変化が設計に与える影響
| 温度 | たるみ | 張力 | 設計での確認 |
| ★最高温度(夏・大電流) | ★★最大 | ★最小 | ★★地上高が足りるか |
| ★常温 | ★中程度 | ★中程度 | ★施工時の目標値 |
| ★最低温度(冬) | ★★最小 | ★★最大 | ★★電線が切れないか |
夏はたるみが最大になり、地面に最も近づきます——だから鉄塔の高さはここで決まるのです。
冬は張力が最大になり、電線に最も負担がかかります——だから切れないかを確かめるのです。
2つの条件を両方満たす設計にします——片方だけでは足りないのです。
本問はその夏側の計算——実務に直結することになります。
⚠️ よくある間違い
実長の式を使わず、たるみの式だけで解こうとする——張力が変わるので直接は解けません。実長を経由します。
伸びる長さを S ではなく D に掛けてしまう——伸びるのは電線の長さです。
温度差を60℃ としてしまう——30 ℃ から60 ℃ なので差は30 ℃。
平方根を忘れる——D² が求まったら√を取ります。
D₂²=D₁²+3S²αΔt/8 を覚えておくと速い——実長を経由せずに済みます。
⏱️ 本番での進め方
①★温度変化は実長を経由して解く。
②★D₂²=D₁²+3S²αΔt/8 を覚えると速い。
③★4.5 cm の伸びでたるみは38 cm 増える。
④★夏は地上高、冬は張力を確かめる。
💡 覚え方
「伸びた分は、たるみになる」——実長の式が橋渡しをします。わずかな伸びが大きなたるみを生む——2乗の関係だからです。
たるみの基本計算は令和5年度下期 A問題12(送電の計算:たるみ)にあります。
線膨張係数という量
温度が1 ℃ 上がると、どれだけ伸びるかを表します。
| 材料 | 線膨張係数(1/℃) | 100 m が30 ℃ 上がると |
| ★硬銅 | ★★約1.7×10⁻⁵ | ★5.1 cm 伸びる |
| ★アルミ | ★★約2.3×10⁻⁵ | ★6.9 cm 伸びる |
| ★鋼心アルミより線 | ★★約1.9×10⁻⁵ | ★5.7 cm 伸びる |
本問の1.5×10⁻⁵ は、鋼に近い値です——材料によって違うのです。
アルミは銅より膨張しやすい——だからたるみの変化も大きいのです。
鋼心アルミより線では、鋼とアルミの中間になります——複合材料だからです。
だから電線の種類によって、季節のたるみ差も変わります。
温度が下がったらどうなるか
同じ式で、逆向きも計算できます。
★たるみは減る
★
30 ℃ から0 ℃ に下がれば、たるみは1.52 m になります——2 m から48 cm 減るのです。
たるみが減れば、張力は増えます——反比例だから。
だから冬に電線が切れる危険が高まります——着氷雪が加わればなおさら。
1つの式で、夏も冬も扱えます——Δt の符号を変えるだけです。
温度差でたるみがどれだけ変わるか
実際の季節差を計算してみましょう。
| 温度 | D² | たるみ D | 30 ℃ との差 |
| ★0 ℃(冬) | ★2.31 | ★★1.52 m | ★−48 cm |
| ★30 ℃(基準) | ★4.00 | ★2.00 m | ★— |
| ★60 ℃(夏・大電流) | ★5.69 | ★★2.39 m | ★+39 cm |
0 ℃ から60 ℃ の間で、たるみは87 cm も変わります——1 m 近い差です。
だから鉄塔の高さには、その余裕を見込みます——最も暑いときを基準に。
逆に冬は張力が最大になります——電線が切れないかを確かめるのです。
1つの式で、両方の検討ができます——だから覚える価値があるのです。
計算の見通しを立てる
3段階の流れを頭に入れておきます。
| 段階 | 求めるもの | 使う式 |
| ★① | ★もとの実長 L₁ | \( L=S+\dfrac{8D^2}{3S} \) |
| ★② | ★伸びる長さ ΔL | \( \Delta L=L\alpha\Delta t \) |
| ★③ | ★新しいたるみ D₂ | ★実長の式を逆に使う |
実長という橋を渡ることが要点です——たるみどうしを直接つなぐ式はないから。
電線が伸びるのは長さなので、実長で扱います——たるみは結果として変わるのです。
だから実長の式を2回使うことになります——行きと帰りです。
まとめた式を覚えれば、一気に飛べます——D₂²=D₁²+3S²αΔt/8。
まとめ
| L₁(30℃) | 100+32/300=100.1067m |
| L₂(60℃) | L₁(1+1.5e-5×30)=100.1517m |
| D₂ | √{(L₂-100)×300/8}=2.39m |
| 再出題 | R06下問13(送電の計算3)と完全同一 |
| 答え | (3) 2.39m |
▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算3):【電力】令和6年度下期 A問題13
・実長と張力の総合(送電の計算12):【電力】令和3年度 B問題16

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