今回は平成24年度 電力科目 B問題16、無負荷送電線のフェランチ現象(送電の計算5・15)を逆に使い、測定値から線路アドミタンスBとリアクタンスXを求める問題です。フェランチの式を逆算に応用します。
無負荷π形では、送電端電流は両側キャパシタの充電電流の和 Is=(B/2)(Es+Er)、電圧関係はEs=Er(1−XB/2)。この2式から測定値(Es・Er・Is)を使ってBとXを逆算します。相電圧で計算するのがコツです。
平成24年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成24年度 B問題16
三相3線式1回線無負荷送電線の送電端に線間電圧66.0〔kV〕を加えると、受電端の線間電圧は72.0〔kV〕、1線当たりの送電端電流は30.0〔A〕であった。この送電線が、線路アドミタンスB〔mS〕と線路リアクタンスX〔Ω〕を用いて、図に示す等価回路で表現できるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 線路アドミタンスB〔mS〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.217 (2)0.377 (3)0.435 (4)0.545 (5)0.753 mS
(b) 線路リアクタンスX〔Ω〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)222 (2)306 (3)384 (4)443 (5)770 Ω



(a) の答えは(5):0.753 mS
送電端電流は、2つの容量電流の和です。
| 部位 | 置くもの | 役割 |
| ★中央 | ★★インピーダンス jX | ★線路のリアクタンス |
| ★送電端側 | ★★アドミタンスの半分 jB/2 | ★★静電容量の半分 |
| ★受電端側 | ★★アドミタンスの半分 jB/2 | ★★同じく半分 |
★どちらも進み電流
★答え
無負荷なので、流れるのは充電電流だけです——負荷電流がないから。
2つの容量はどちらも進み電流なので、そのまま足せます——同じ向きのベクトル。
相電圧に直すため、√3 で割ります——アドミタンスは1相分だから。
(b) の答えは(1):222 Ω
直列枝を流れる電流と、電圧の差から求めます。
★
★約222
直列枝を流れるのは、受電端側容量の電流だけです——受電端が無負荷だから。
送電端側の容量電流は、直列枝を通りません——手前で分かれるのです。
電圧の差も相電圧で取ります——1相分の回路だから。
受電端のほうが高い理由
| 段階 | 起きること |
| ① | ★受電端が無負荷なので負荷電流がない |
| ★② | ★★線路の静電容量による充電電流だけが流れる |
| ★③ | ★★充電電流は進み電流 |
| ★④ | ★★進み電流がリアクタンスを流れると電圧が上がる |
| ★⑤ | ★★受電端電圧が送電端電圧を超える |
66.0 kV を加えたのに、受電端は72.0 kV になっています——それがフェランチ現象です。
ふつうは電圧降下で下がるはずです——遅れ電流が流れるから。
無負荷なら進み電流だけなので、逆に上がります——電圧降下が負になるのです。
本問は、その現象から線路定数を逆算しています——実測にも使える考え方です。
⚠️ よくある間違い
(a)でアドミタンスをB のまま使う——π形なので両端にB/2ずつです。
(a)で線間電圧のまま計算する——相電圧に直します(√3 で割る)。
(b)で送電端電流30.0 A を使う——直列枝を流れるのは受電端側の分だけ。
(b)で線間電圧の差を使う——相電圧の差です。
(a)を間違えると(b)も外れる——B問題の構造になります。
⏱️ 本番での進め方
①★π形ではアドミタンスは両端にB/2ずつ。
②★送電端電流は2つの容量電流の和。
③★直列枝を流れるのは受電端側の容量電流だけ。
④★電圧も電流も相電圧・1相分で扱う。
💡 覚え方
「送電端電流は和、直列枝は受電端側だけ」——そこが(a)と(b)の違いです。π形は両端にB/2——間違えると全部ずれます。
同じπ形回路の問題は令和元年度 B問題16(送電の計算:フェランチ現象)にあります。
線路定数を測定から求める
本問は、測った値から回路の中身を逆算しています。
| 測ったもの | 本問の値 | そこから分かるもの |
| ★送電端の線間電圧 | ★66.0 kV | ★★(a)でB を出す材料 |
| ★受電端の線間電圧 | ★72.0 kV | ★★(a)と(b)の両方で使う |
| ★送電端の線電流 | ★30.0 A | ★★(a)でB を出す材料 |
3つの測定値だけで、B と X の両方が求まります——無負荷という条件が効いているのです。
負荷がつながっていると、こう単純にはいきません——負荷電流が混ざるから。
だからわざと無負荷にして測ります——実際の試験でも行う手順です。
電線の亘長や配置から計算する方法もあります——測定はその確かめになります。
無負荷の線路で流れる電流
どこで何アンペア流れるのかを整理します。
| 場所 | 流れる電流 | 本問の値 |
| ★送電端 | ★★送電端側容量+直列枝の合計 | ★30.0 A |
| ★送電端側の容量 | ★★Vs/√3×B/2 | ★約14.3 A |
| ★直列枝(線路) | ★★受電端側容量の分だけ | ★★約15.7 A |
| ★受電端 | ★★ゼロ(無負荷) | ★0 A |
送電端の30.0 A は、2つの経路に分かれます——手前の容量と、線路の先へ。
手前の容量に流れる分は、線路を通りません——そこで大地へ抜けるのです。
だから(b)で30.0 A を使うと間違えます——15.7 A が正しいのです。
受電端では電流がゼロになります——無負荷だから行き先がない。
この電流の分かれ方が、π形回路の要点です——図に矢印を書き込むと分かりやすいのです。
π形とT形の違い
集中定数で表すとき、2つの置き方があります。
| π形 | T形 | |
| ★インピーダンス | ★★中央に Z を1つ | ★★両端に Z/2 ずつ |
| ★アドミタンス | ★★両端に Y/2 ずつ | ★★中央に Y を1つ |
| ★よく使う場面 | ★★送電線の計算 | ★変圧器などの等価回路 |
送電線ではπ形を使うのがふつうです——静電容量が線路全体に分布しているから。
それを両端に半分ずつ寄せたのがπ形——実際に近い近似になります。
本問もπ形なので、B/2 が両端に付きます——そこを間違えると答えが2倍ずれるのです。
まとめ
| 相電圧 | Es=38105V、Er=41569V |
| (a) | Is=(B/2)(Es+Er)→B=0.753mS |
| (b)電圧式 | Es=Er(1-XB/2)→XB/2=0.0833 |
| (b) | X=0.0833/(B/2)=222Ω |
| 答え | (a)-(5),(b)-(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・フェランチのπ形計算(送電の計算5):【電力】令和6年度下期 B問題17
・T形等価回路(送電の計算4):【電力】令和6年度下期 B問題16

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