今回は平成21年度 電力科目 B問題17、電力用コンデンサを接続したときの受電端の無効電力と力率の改善量を求める計算問題です。力率改善の基本計算です。
(a)は負荷の無効電力からコンデンサ容量を引く。(b)は改善後の皮相電力から力率を求め、接続前(60%)との差を計算します。
平成21年度 電力科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17
電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成21年度 B問題17
配電線に100[kW]、遅れ力率60[%]の三相負荷が接続されている。この受電端に45[kvar]の電力用コンデンサを接続した。次の(a)及び(b)に答えよ。ただし、電力用コンデンサ接続前後の電圧は変わらないものとする。
(a) 電力用コンデンサを接続した後の受電端の無効電力[kvar]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)56 (2)60 (3)75 (4)88 (5)133 kvar
(b) 電力用コンデンサ接続前と後の力率[%]の差の大きさとして、最も近いのは次のうちどれか。
(1)5 (2)15 (3)25 (4)55 (5)75 %

(a) の答えは(4):約 88 kvar
負荷の無効電力から、コンデンサの分を引きます。
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★
★
★答え
コンデンサは進み無効電力を出すので、遅れ分を減らします——だから引き算です。
力率0.6なら sinθ は0.8です——3対4対5の三角形だから。
(b) の答えは(2):15 %
有効電力は変わらないので、皮相電力だけが変わります。
★
★
★答え
コンデンサを入れても有効電力は変わりません——100 kW のままです。
無効電力だけが減るので、皮相電力も減ります——166.7から133.4へ。
力率は有効電力÷皮相電力なので、上がります——0.60から0.75へ。
力率改善を3つの量で見る
| 接続前 | 接続後 | 変化 | |
| ★有効電力 P | ★★100 kW | ★★100 kW | ★★変わらない |
| ★無効電力 Q | ★★133.3 kvar | ★★88.3 kvar | ★★45 減った |
| ★皮相電力 S | ★★166.7 kV・A | ★★133.4 kV・A | ★★33.3 減った |
| ★力率 | ★★0.60 | ★★0.75 | ★★0.15 上がった |
変わらないのは有効電力だけです——そこが計算の足場になります。
皮相電力が減れば、線電流も同じ割合で減ります——設備の余裕が生まれるのです。
無効電力を45減らして、皮相電力は33.3しか減っていません——三平方の関係だからです。
だから力率が高いほど、さらに改善する効率は落ちます——1に近づくほど効きにくいのです。
⚠️ よくある間違い
無効電力を P·sinθ とする——P·tanθ です。
コンデンサで有効電力も減ると考える——変わりません。
力率の差を比で計算する——75−60=15 の引き算です。
コンデンサ容量を足してしまう——遅れ分を減らすので引きます。
sinθ を0.6とする——cosθ が0.6なら sinθ は0.8です。
⏱️ 本番での進め方
①★負荷の無効電力は Q=P tanθ。
②★コンデンサ分は引き算で減らす。
③★改善後の力率=P/√(P²+Q²)。
④★有効電力は変わらない。
💡 覚え方
「有効はそのまま、無効だけ引く」——それが力率改善の計算です。力率0.6なら sinθ は0.8——3対4対5を思い出しましょう。
力率1にするコンデンサ容量は平成25年度 B問題16(送電の計算:力率改善と電圧変動)にあります。
力率を電力三角形で見る
| 辺 | 表すもの | 接続前 | 接続後 |
| ★底辺 | ★★有効電力 P | ★★100 kW | ★★100 kW |
| ★高さ | ★★無効電力 Q | ★★133.3 kvar | ★★88.3 kvar |
| ★斜辺 | ★★皮相電力 S | ★★166.7 kV・A | ★★133.4 kV・A |
底辺が変わらず、高さだけが縮む三角形です——だから斜辺も短くなるのです。
力率は底辺÷斜辺、つまり角度の余弦です——高さが縮めば角度が小さくなる。
図を描くと、何が起きているかが一目で分かります。
コンデンサ容量をいくつにするか
| 目標の力率 | 必要な無効電力 | 必要なコンデンサ容量 |
| ★0.75(本問) | ★★88.3 kvar | ★★45 kvar |
| ★0.85 | ★★62.0 kvar | ★★71.3 kvar |
| ★★1.0 | ★★0 kvar | ★★133.3 kvar |
力率1にするには、無効電力を全部打ち消す必要があります——133.3 kvar のコンデンサが要ります。
けれども1に近づくほど、追加の効果は小さくなります——三平方の関係だからです。
だから実務では0.95程度を目標にします——費用に見合う範囲です。
コンデンサ容量の求め方を逆から見る
本問を逆に解くと、この公式が確かめられます——tanθ₁=1.333、tanθ₂=0.883。
100×(1.333−0.883)=45 kvar——問題文の値と一致します。
「力率をここまで上げたい」という設計ではこの式を使います——本問はその逆向きです。
皮相電力が減ると何が得られるか
| 項目 | 接続前 | 接続後 | 変化 |
| ★皮相電力 | ★★166.7 kV・A | ★★133.4 kV・A | ★★20 %減 |
| ★線電流 | ★★基準 | ★★0.80倍 | ★★20 %減 |
| ★線路損失 | ★★基準 | ★★0.64倍 | ★★36 %減 |
電流が2割減れば、損失は約4割減ります——2乗で効くから。
変圧器や電線の余裕も生まれます——皮相電力が容量を決めるのです。
コンデンサ45 kvar でこれだけの効果があります——費用対効果が高いのです。
進み力率にしすぎない
| コンデンサ容量 | 接続後の無効電力 | 状態 |
| ★45 kvar(本問) | ★★88.3 kvar(遅れ) | ★★適切 |
| ★133.3 kvar | ★★0 | ★★力率1 |
| ★★200 kvar | ★★66.7 kvar(進み) | ★★過補償で電圧が上がる |
入れすぎると、今度は進み側に振れてしまいます——軽負荷時に電圧が上がるのです。
だから開閉器付にして、負荷に応じて入り切りします——実務での使い方です。
力率は1に近づけるほどよい、というわけではありません。
B問題の解き方の型
| 段階 | すること | 本問では |
| ★① | ★★(a)を解く | ★★接続後の無効電力88.3 |
| ★② | ★★(a)の答えを控える | ★★端数を丸めない |
| ★③ | ★★(b)で使う | ★★皮相電力の計算に入れる |
(a)の答えを(b)で使うのがB問題の構造です——間違えると両方外れるのです。
88と丸めずに88.3のまま使うと、精度が保てます——最後に丸めるのがこつ。
本問は選択肢の刻みが粗いので影響しませんが、原則は押さえましょう。
まとめ
| 負荷無効電力 | 100·tan(cos⁻¹0.6)=133.3kvar |
| (a)接続後Q | 133.3−45=88kvar |
| 接続後S | √(100²+88.3²)=133.4kV·A |
| 接続後力率 | 100/133.4=75% |
| (b)力率差 | 75−60=15% |
| 答え | (a)-(4),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・力率改善のコンデンサ容量(配電計算24):【電力】平成29年度 B問題17
・力率改善と過負荷回避(配電計算7):【電力】令和7年度上期 B問題17

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