今回は平成21年度 電力科目 A問題10、消費電力と受電電圧を一定に保ったまま力率を0.8から1に変えたときの電圧降下の比を求める計算問題です。
カギは電圧降下を電力で表す式 v=(P/Vr)(R+X·tanθ)。消費電力Pと受電電圧Vrが一定なら、電圧降下は(R+X·tanθ)に比例。力率が変わると tanθ が変わるので、比が簡単に求まります。
平成21年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成21年度 A問題10
こう長2[km]の交流三相3線式の高圧配電線路があり、その端末に受電電圧6500[V]、遅れ力率80[%]で消費電力400[kW]の三相負荷が接続されている。いま、この三相負荷を力率100[%]で消費電力400[kW]のものに切り替えたうえで、受電電圧を6500[V]に保つ。高圧配電線路での電圧降下は、三相負荷を切り替える前と比べて何倍になるか、最も近いのは次のうちどれか。ただし、高圧配電線路の1線当たりの線路定数は、抵抗が0.3[Ω/km]、誘導性リアクタンスが0.4[Ω/km]とする。また、送電端電圧と受電端電圧との相差角は小さいものとする。
(1) 1.6 (2) 1.3 (3) 0.8 (4) 0.6 (5) 0.5

答えは(5):0.5倍
電圧降下を電力で表すと、比がすぐ出ます。
★
★
★
★
★
★答え
力率1では tanθ がゼロになり、X の項が丸ごと消えます——だから抵抗分だけが残るのです。
本問では X の寄与が R と同じ0.6でした——だからちょうど半分になるのです。
電圧降下の式を電力で書き直す
★
★
★完成
√3 も cosθ も約分されて消えます——きれいな形になるのです。
電力が与えられている問題では、この形が便利です——電流を経由しなくてよいから。
本問は消費電力400 kW が一定と決まっています——だからこの式が使えるのです。
比を取るので、P も Vr も約分で消えます——数値を入れる必要すらないのです。
力率が電圧降下に効くしくみ
| 力率 | tanθ | R+X tanθ | 電圧降下 |
| ★★1.0 | ★★0 | ★★0.6 | ★★最小 |
| ★0.9 | ★★0.484 | ★★0.99 | ★1.65倍 |
| ★★0.8 | ★★0.75 | ★★1.2 | ★★2倍 |
| ★0.6 | ★★1.333 | ★★1.67 | ★2.78倍 |
力率が下がるほど tanθ が急に大きくなります——だから電圧降下が急増するのです。
力率0.6では、力率1のときの2.78倍にもなります——無視できない差です。
だから力率改善は電圧対策としても有効です——本問がそれを数字で示しているのです。
X が大きい線路ほど、この効果が強く出ます。
⚠️ よくある間違い
tanθ を0.8とする——sinθ/cosθ=0.6/0.8=0.75です。
R・X にこう長を掛け忘れる——2 km 分です。
力率1で X の項が残ると考える——tanθ=0 なので消えます。
比を逆にする——切替後÷切替前です。
消費電力400 kW を計算に使おうとする——比なので約分で消えます。
⏱️ 本番での進め方
①★v=(P/Vr)(R+X tanθ)。電力が既知ならこの形。
②★力率1なら tanθ=0 で X の項が消える。
③★tanθ=sinθ/cosθ。
④★比を取れば P も Vr も消える。
💡 覚え方
「電力で書けば R+X tanθ」——√3もcosθも消えます。力率1で X が効かなくなる——そこが本問の要点です。
電圧降下の近似式は平成28年度 A問題9(配電の計算:電圧降下から有効電力)にもあります。
2つの電圧降下の式の使い分け
| 与えられている量 | 使う式 | 理由 |
| ★★電流 I | ★★v=√3 I(Rcosθ+Xsinθ) | ★★そのまま代入できる |
| ★★電力 P | ★★v=(P/Vr)(R+X tanθ) | ★★電流を経由しなくてよい |
| ★★電圧降下率 ε | ★★ε=(PR+QX)/Vr² | ★★率のまま扱える |
3つとも同じことを別の量で書いただけです——与えられた量に合わせて選ぶのです。
本問は消費電力が一定と決まっているので、2番目が最短です。
どれを使っても答えは同じですが、手間が違います。
力率1にすると何が変わるか
| 力率0.8 | 力率1.0 | |
| ★同じ電力での電流 | ★★1.25倍 | ★★基準 |
| ★電圧降下 | ★★1.2(本問の値) | ★★0.6 |
| ★線路損失 | ★★1.56倍 | ★★基準 |
電流が減り、しかも X の項も消えるので、二重に効きます——だから電圧降下が半分になるのです。
損失は電流の2乗なので、1.56倍から1倍へ——36%も減ることになります。
相差角が小さいという前提
| 正確な計算 | 近似式 | |
| ★扱い方 | ★★ベクトルの大きさの差 | ★★受電端電圧の向きの成分だけ |
| ★誤差 | ★なし | ★★相差角が小さければごくわずか |
| ★本問 | ★— | ★★問題文が近似を指定 |
送電端と受電端の電圧は、向きが少しずれています——それが相差角です。
角度が小さければ、直角方向の成分は無視できます——2次の微小量だから。
だから問題文が「相差角は小さいものとする」と断っています。
答えを式に戻して確かめる
★
★
★一致
実際の電圧降下も出してみると、73.8 V と36.9 V です——ちょうど半分になっています。
6500 V に対して約1%の降下なので、近似式が使える範囲です——相差角も小さいのです。
比だけなら数値を入れなくても解けますが、確かめには有効です。
X と R の比で結果がどう変わるか
| 線路 | R:X | 力率0.8→1での比 |
| ★★本問(0.6:0.8) | ★★3:4 | ★★0.5倍 |
| ★R が大きい線路 | ★★2:1 | ★★0.73倍 |
| ★X が大きい線路 | ★★1:3 | ★★0.31倍 |
X の割合が大きいほど、力率改善の効果が大きくなります——消える項が大きいから。
高圧の長い線路ほど X が大きくなります——だから力率改善が効くのです。
本問はちょうど半分という、きれいな結果になりました。
まとめ
| 電圧降下の式 | v=(P/Vr)(R+X·tanθ) |
| R・X | 0.6Ω・0.8Ω |
| 切替前 | 0.6+0.8×0.75=1.2 |
| 切替後 | 0.6+0=0.6 |
| 比 | 0.6/1.2=0.5 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・損失一定と力率(配電計算5):【電力】令和7年度上期 A問題13
・電圧降下率と最大負荷(配電計算13):【電力】令和5年度上期 A問題12

コメント