配電計算39【電験3種 電力】力率0.8→1で電圧降下は0.5倍!平成21年度 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 配電の計算 平成21年度 A問題10 力率を1にすると電圧降下は半分!その理由

今回は平成21年度 電力科目 A問題10、消費電力と受電電圧を一定に保ったまま力率を0.8から1に変えたときの電圧降下の比を求める計算問題です。

カギは電圧降下を電力で表す式 v=(P/Vr)(R+X·tanθ)。消費電力Pと受電電圧Vrが一定なら、電圧降下は(R+X·tanθ)に比例。力率が変わると tanθ が変わるので、比が簡単に求まります。

目次

平成21年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 平成21年度 A問題10 問題文
平成21年度 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成21年度 A問題10

 こう長2[km]の交流三相3線式の高圧配電線路があり、その端末に受電電圧6500[V]、遅れ力率80[%]で消費電力400[kW]の三相負荷が接続されている。いま、この三相負荷を力率100[%]で消費電力400[kW]のものに切り替えたうえで、受電電圧を6500[V]に保つ。高圧配電線路での電圧降下は、三相負荷を切り替える前と比べて何倍になるか、最も近いのは次のうちどれか。ただし、高圧配電線路の1線当たりの線路定数は、抵抗が0.3[Ω/km]、誘導性リアクタンスが0.4[Ω/km]とする。また、送電端電圧と受電端電圧との相差角は小さいものとする。

(1) 1.6 (2) 1.3 (3) 0.8 (4) 0.6 (5) 0.5

答え電圧降下は切替前の 0.5倍になります。

答えは(5):0.5倍

電圧降下を電力で表すと、比がすぐ出ます

電圧降下の電力表現
\( v=\dfrac{P}{V_r}(R+X\tan\theta) \)

P・Vr が一定なら (R+X tanθ) に比例する

\( R=0.3\times 2=0.6\ \Omega \)
こう長を掛ける
\( X=0.4\times 2=0.8\ \Omega \)
同じく
\( \tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}=\dfrac{0.6}{0.8}=0.75 \)
力率0.8のとき
\( R+X\tan\theta=0.6+0.8\times 0.75=1.2 \)
切替前
\( \tan\theta=0\ \Rightarrow\ R+X\tan\theta=0.6 \)
力率1のとき
\( \dfrac{0.6}{1.2}=0.5 \)
比を取る
★答え

力率1では tanθ がゼロになり、X の項が丸ごと消えます——だから抵抗分だけが残るのです。

本問では X の寄与が R と同じ0.6でした——だからちょうど半分になるのです。

電圧降下の式を電力で書き直す

\( v=\sqrt{3}\,I(R\cos\theta+X\sin\theta) \)
電流で表した近似式
\( I=\dfrac{P}{\sqrt{3}\,V_r\cos\theta} \)
電力から電流を出す
\( v=\sqrt{3}\cdot\dfrac{P}{\sqrt{3}V_r\cos\theta}(R\cos\theta+X\sin\theta) \)
代入する
\( =\dfrac{P}{V_r}\left(R+X\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\right) \)
cosθ で割る
\( =\dfrac{P}{V_r}(R+X\tan\theta) \)
整理する
★完成

√3 も cosθ も約分されて消えます——きれいな形になるのです。

電力が与えられている問題では、この形が便利です——電流を経由しなくてよいから。

本問は消費電力400 kW が一定と決まっています——だからこの式が使えるのです。

比を取るので、P も Vr も約分で消えます——数値を入れる必要すらないのです。

力率が電圧降下に効くしくみ

力率tanθR+X tanθ電圧降下
★★1.0★★0★★0.6★★最小
★0.9★★0.484★★0.99★1.65倍
★★0.8★★0.75★★1.2★★2倍
★0.6★★1.333★★1.67★2.78倍

力率が下がるほど tanθ が急に大きくなります——だから電圧降下が急増するのです。

力率0.6では、力率1のときの2.78倍にもなります——無視できない差です。

だから力率改善は電圧対策としても有効です——本問がそれを数字で示しているのです。

X が大きい線路ほど、この効果が強く出ます

⚠️ よくある間違い
tanθ を0.8とする——sinθ/cosθ=0.6/0.8=0.75です。
R・X にこう長を掛け忘れる——2 km 分です。
力率1で X の項が残ると考える——tanθ=0 なので消えます
比を逆にする——切替後÷切替前です。
消費電力400 kW を計算に使おうとする——比なので約分で消えます

⏱️ 本番での進め方
①★v=(P/Vr)(R+X tanθ)。電力が既知ならこの形。
②★力率1なら tanθ=0 で X の項が消える。
③★tanθ=sinθ/cosθ。
④★比を取れば P も Vr も消える。

💡 覚え方
「電力で書けば R+X tanθ」——√3もcosθも消えます力率1で X が効かなくなる——そこが本問の要点です。

電圧降下の近似式は平成28年度 A問題9配電の計算:電圧降下から有効電力)にもあります。

2つの電圧降下の式の使い分け

与えられている量使う式理由
★★電流 I★★v=√3 I(Rcosθ+Xsinθ)★★そのまま代入できる
★★電力 P★★v=(P/Vr)(R+X tanθ)★★電流を経由しなくてよい
★★電圧降下率 ε★★ε=(PR+QX)/Vr²★★率のまま扱える

3つとも同じことを別の量で書いただけです——与えられた量に合わせて選ぶのです。

本問は消費電力が一定と決まっているので、2番目が最短です。

どれを使っても答えは同じですが、手間が違います

力率1にすると何が変わるか

力率0.8力率1.0
★同じ電力での電流★★1.25倍★★基準
★電圧降下★★1.2(本問の値)★★0.6
★線路損失★★1.56倍★★基準

電流が減り、しかも X の項も消えるので、二重に効きます——だから電圧降下が半分になるのです。

損失は電流の2乗なので、1.56倍から1倍へ——36%も減ることになります。

相差角が小さいという前提

正確な計算近似式
★扱い方★★ベクトルの大きさの差★★受電端電圧の向きの成分だけ
★誤差★なし★★相差角が小さければごくわずか
★本問★—★★問題文が近似を指定

送電端と受電端の電圧は、向きが少しずれています——それが相差角です。

角度が小さければ、直角方向の成分は無視できます——2次の微小量だから。

だから問題文が「相差角は小さいものとする」と断っています

答えを式に戻して確かめる

\( v_1=\dfrac{400\times 10^3}{6500}\times 1.2 \)
切替前の電圧降下
\( \fallingdotseq 61.5\times 1.2\fallingdotseq 73.8\ \mathrm{V} \)
計算する
\( v_2=61.5\times 0.6\fallingdotseq 36.9\ \mathrm{V} \)
切替後
\( \dfrac{36.9}{73.8}=0.5 \)
比を確かめる
★一致

実際の電圧降下も出してみると、73.8 V と36.9 V です——ちょうど半分になっています。

6500 V に対して約1%の降下なので、近似式が使える範囲です——相差角も小さいのです。

比だけなら数値を入れなくても解けますが、確かめには有効です。

X と R の比で結果がどう変わるか

線路R:X力率0.8→1での比
★★本問(0.6:0.8)★★3:4★★0.5倍
★R が大きい線路★★2:1★★0.73倍
★X が大きい線路★★1:3★★0.31倍

X の割合が大きいほど、力率改善の効果が大きくなります——消える項が大きいから。

高圧の長い線路ほど X が大きくなります——だから力率改善が効くのです。

本問はちょうど半分という、きれいな結果になりました

まとめ

電圧降下の式v=(P/Vr)(R+X·tanθ)
R・X0.6Ω・0.8Ω
切替前0.6+0.8×0.75=1.2
切替後0.6+0=0.6
0.6/1.2=0.5
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・損失一定と力率(配電計算5):【電力】令和7年度上期 A問題13
・電圧降下率と最大負荷(配電計算13):【電力】令和5年度上期 A問題12

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