電子回路36【電験3種 理論】エミッタ接地トランジスタのhパラメータと簡易等価回路の誤差を求める!平成21年度 B問題18 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成21年度 B問題18 hパラメータで解く増幅回路!簡易等価回路の誤差は?

今回は平成21年度 理論科目 B問題18(選択問題)を解説します。エミッタ接地トランジスタ増幅器のhパラメータについて、(a)各hパラメータの名称・記号、(b)簡易等価回路(図2)を用いたときの入力信号電圧vb・電流ibの誤差を求める問題です。

hパラメータはvb=hieib+hrevc、ic=hfeib+hoevcで表されます。hie=入力インピーダンス、hre=電圧帰還率、hfe=電流増幅率、hoe=出力アドミタンス。簡易等価回路ではhreとhoeを無視します。

目次

平成21年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成21年度 B問題18 問題文
平成21年度 理論科目 B問題18 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成21年度 B問題18

 図1の回路は、エミッタ接地のトランジスタ増幅器の交流小信号に注目した回路である。RLは抵抗、ibは入力信号電流、ic=6×10−3Aは出力信号電流、vbは入力信号電圧、vc=6Vは出力信号電圧である。入出力信号の関係をhパラメータで表すと、vb=hieib+hrevc…①、ic=hfeib+hoevc…②となる。表1のhパラメータの数値例を用いて、次の(a)及び(b)に答えよ。

式①vb=hieib+hrevc、②ic=hfeib+hoevc。表1のhie=3.5×103Ω、電圧帰還率=1.3×10−4、電流増幅率=140、hoe=9×10−6S。
(a) 表1の空白箇所(ア)(イ)(ウ)(エ)に当てはまる語句として、正しい組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)入力インピーダンス出力アドミタンスhfehre
(2)入力コンダクタンス出力インピーダンスhfehre
(3)出力コンダクタンス入力インピーダンスhrehfe
(4)出力インピーダンス入力コンダクタンスhrehfe
(5)入力インピーダンス出力アドミタンスhrehfe

(b) 式①②から求めたvb・ibを真の値としたとき、図2の簡易等価回路から求めたvb・ibの誤差Δvb[mV]、Δib[μA]の大きさの組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、ic=6×10−3A、vc=6Vとする。

Δvb[mV]Δib[μA]
(1)0.7854
(2)0.786.5
(3)0.576.5
(4)0.570.39
(5)0.350.39
図1 エミッタ接地トランジスタ増幅器の交流小信号回路と表1(hパラメータの数値例)(問題図)
図1 エミッタ接地トランジスタ増幅器の交流小信号回路と表1(hパラメータの数値例)(問題図)
図2 hreとhoeを無視した簡易小信号等価回路(hie・hfe・ib)(問題図)
図2 hreとhoeを無視した簡易小信号等価回路(hie・hfe・ib)(問題図)

解説①:(a) 4つのhパラメータを整理する

GPT Image 2で作成した4つのhパラメータ整理表
記号・名称・定義・単位を対応させると(a)は選択肢(5)です。

hieは入力インピーダンス、hreは電圧帰還率、hfeは電流増幅率、hoeは出力アドミタンスなので(a)は(5)です。厳密式からib=42.47 μA、vb=149.43 mV、簡易式からib=42.86 μA、vb=150.00 mV。差はΔib=0.39 μA、Δvb=0.57 mVとなり(b)は(4)です。

解説②:(b) hパラメータの厳密値を求める

GPT Image 2で作成したhパラメータ厳密値の導出図
hoeとhreを含む厳密式からibとvbの真の値を求めます。
記号名前定義単位本問の値
\(h_{ie}\)入力インピーダンス\(v_b/i_b\)\(\Omega\)\(3.5\times10^{3}\)
\(h_{re}\)電圧帰還率\(v_b/v_c\)無次元\(1.3\times10^{-4}\)
\(h_{fe}\)電流増幅率\(i_c/i_b\)無次元140
\(h_{oe}\)出力アドミタンス\(i_c/v_c\)S\(9\times10^{-6}\)

添字の1文字目が意味を表します——\(i\)=input(入力)、\(r\)=reverse(帰還)、\(f\)=forward(順方向)、\(o\)=output(出力)2文字目の \(e\) は「エミッタ接地」です。

単位も添字から分かります\(h_{ie}\) は「電圧÷電流」でΩ、\(h_{oe}\) は「電流÷電圧」でS——\(h_{re}\) と \(h_{fe}\) は同じ量どうしの比なので無次元です。

答え(a) (ア)入力インピーダンス (イ)出力アドミタンス (ウ)\(h_{re}\) (エ)\(h_{fe}\) → 選択肢(5)

「出力インピーダンス」ではなく「出力アドミタンス」——\(h_{oe}\) の単位が S(ジーメンス)なので、抵抗ではなくその逆数です。単位を見れば即断できます

解説③:簡易値との差から誤差と選択肢を求める

GPT Image 2で作成した簡易等価回路の誤差と選択肢照合表
簡易値と厳密値の差は0.57 mVと0.39 μAで(b)は選択肢(4)です。

厳密な計算

$$i_c=h_{fe}i_b+h_{oe}v_c$$
❶ 式②
$$6\times10^{-3}=140\,i_b+9\times10^{-6}\times6$$
❷ 数値を入れる
\(h_{oe}v_c=54\ \mathrm{\mu A}\)
$$i_b=\frac{6\times10^{-3}-54\times10^{-6}}{140}=42.47\ \mathrm{\mu A}$$
❸ 真のベース電流
$$v_b=3.5\times10^{3}\times42.47\times10^{-6}+1.3\times10^{-4}\times6$$
❹ 式①
$$=148.65+0.78=149.43\ \mathrm{mV}$$
❺ 真の入力電圧

簡易等価回路での計算

$$i_b=\frac{i_c}{h_{fe}}=\frac{6\times10^{-3}}{140}=42.86\ \mathrm{\mu A}$$
❻ 近似のベース電流
\(h_{oe}\) を無視
$$v_b=3.5\times10^{3}\times42.86\times10^{-6}=150.00\ \mathrm{mV}$$
❼ 近似の入力電圧
\(h_{re}\) を無視
$$\Delta i_b=|42.86-42.47|=0.39\ \mathrm{\mu A}$$
❽ 電流の誤差
$$\Delta v_b=|150.00-149.43|=0.57\ \mathrm{mV}$$
❾ 電圧の誤差
答え(b) \(\Delta v_b=0.57\ \mathrm{mV}\)、\(\Delta i_b=0.39\ \mathrm{\mu A}\) → 選択肢(4)

誤答の正体:どちらか片方だけ合っている選択肢

選択肢\(\Delta v_b\)\(\Delta i_b\)判定
(1)0.78 mV\(54\ \mathrm{\mu A}\)\(h_{re}v_c\) と \(h_{oe}v_c\) をそのまま答えた
(2)0.78 mV\(6.5\ \mathrm{\mu A}\)\(\Delta v_b\) が \(h_{re}v_c\) のまま
(3)0.57 mV\(6.5\ \mathrm{\mu A}\)\(\Delta v_b\) は正しいが電流が誤り
(4)0.57 mV\(0.39\ \mathrm{\mu A}\)◎ 正解
(5)0.35 mV\(0.39\ \mathrm{\mu A}\)\(\Delta i_b\) は正しいが電圧が誤り

(1)の \(54\ \mathrm{\mu A}\) は \(h_{oe}v_c\) そのものです。これは「\(i_c\) のうち \(h_{oe}\) が担う分」であって、\(i_b\) の誤差ではありません——\(140\) で割った \(0.39\ \mathrm{\mu A}\) が答えです。

同じく \(0.78\ \mathrm{mV}\) は \(h_{re}v_c\) そのもの\(\Delta v_b\) は「\(h_{re}\) の分が増える」と「\(i_b\) がずれた分が減る」の差し引き——\(0.78-0.21=0.57\ \mathrm{mV}\) になります。

⚠️ よくある間違い
「無視した項の値」と「無視したことによる誤差」は別物です。2つの近似が互いに打ち消し合うので、誤差は個々の項より小さくなります——必ず最後まで計算して差を取ってください

深掘り①:なぜ \(h_{re}\) と \(h_{oe}\) を無視してよいのか

誤差は \(v_b\) で 0.38 %、\(i_b\) で 0.90 %——どちらも1 %未満です。抵抗の許容差(普通は5 %)より小さいので、実用上まったく問題になりません。

\(h_{re}=1.3\times10^{-4}\) は「出力電圧の1万分の1しか入力に戻らない」という意味です。これほど小さければ無視できます

\(h_{oe}=9\times10^{-6}\ \mathrm{S}\) は抵抗に直すと \(1/h_{oe}\fallingdotseq110\ \mathrm{k\Omega}\)負荷抵抗(数kΩ)と並列に入りますが、110 kΩ は十分大きいので効きません

簡易等価回路は「乱暴な近似」ではなく、根拠のある近似です。本問はその根拠を数値で確かめさせている——だから解いておく価値があります

深掘り②:h パラメータはどこから来たのか

2端子対回路(4端子回路)を表す方法はいくつかあります入力電圧・入力電流・出力電圧・出力電流の4つのうち、どれを「原因」とし、どれを「結果」とするかで呼び名が変わります

パラメータ独立変数従属変数特徴
\(z\) パラメータ\(i_1,i_2\)\(v_1,v_2\)すべてΩ
\(y\) パラメータ\(v_1,v_2\)\(i_1,i_2\)すべてS
\(h\) パラメータ\(i_1,v_2\)\(v_1,i_2\)混合(hybrid)

\(h\) は hybrid(混合)の頭文字です。単位がΩ・無次元・無次元・S とバラバラなのはそのため——「混ざっている」ことが名前になっています

トランジスタに \(h\) パラメータが使われるのは、測定しやすいからです。入力を電流で、出力を電圧で与えるのが、トランジスタの動作にいちばん自然だからです。

深掘り③:誤差率という考え方

$$\frac{\Delta v_b}{v_b}=\frac{0.57}{149.43}\fallingdotseq0.38\ \%$$
❶ 電圧の誤差率
$$\frac{\Delta i_b}{i_b}=\frac{0.39}{42.47}\fallingdotseq0.92\ \%$$
❷ 電流の誤差率

絶対誤差(0.57 mV)だけを見ても大きいか小さいか分かりません元の値との比=誤差率で見て初めて「小さい」と判断できます

この考え方は計測分野でも中心的なテーマです。「測定値の何 %の誤差か」が測定器の性能を表します——理論科目の計測ユニットにつながる話です。

💡 覚え方
簡易等価回路=\(h_{re}\) と \(h_{oe}\) を捨てたもの捨てても誤差は1 %未満——だから安心して使ってよい、というのが本問の結論です。

⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は単位で判別:Ωなら入力インピーダンス、Sなら出力アドミタンス。
❷ (b)は「厳密→簡易→引き算」の3ステップを機械的に。
❸ \(h_{oe}v_c\) や \(h_{re}v_c\) そのものは答えではない——必ず差を取る。
❹ 桁に注意:\(\Delta v_b\) は mV、\(\Delta i_b\) は µA。

出題履歴:h パラメータの意味を問う数少ない出題

ふだんは \(|A_v|=h_{fe}R_L/h_{ie}\) を使うだけですが、本問はその式の前提を確かめさせます令和7年度上期A問題13では \(h_{fe}\) と \(1/h_{oe}\) を静特性から読む問題が出ており、近年は h パラメータそのものを問う傾向があります。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

(ア)hie[Ω]=入力インピーダンス
(イ)hoe[S]=出力アドミタンス
(ウ)(エ)hre・hfe→(a)=(5)
真ib(6m−9μ×6)/140≒42.47μA
(b)誤差Δvb≒0.57mV、Δib≒0.39μA→(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・ソース接地FET増幅器の負荷線と動作点(電子回路35):【理論】平成21年度 A問題13

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