今回は平成20年度 理論科目 B問題16を解説します。ブラウン管オシロスコープの偏向電極(垂直・水平)に加える電圧と蛍光面に現れる波形の対応(a)、及び垂直感度・掃引時間から波形の各値を求める(b)の問題です。
オシロスコープは、垂直偏向電極で電圧に比例して輝点を上下に、水平偏向電極ののこぎり波(掃引)で輝点を左右に動かします。両方を同時に加えると、時間軸上に電圧波形が描かれます。
平成20年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成20年度 B問題16
ブラウン管オシロスコープの偏向電極に加える電圧と蛍光面に現れる波形について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 垂直偏向電極のみに正弦波交流を加えたとき、水平偏向電極のみにのこぎり波を加えたとき、両電極に同時に加えたときの、蛍光面に現れる波形をそれぞれ図から選ぶ。
(b) 垂直感度0.1V/div、掃引時間0.2ms/divに設定したオシロスコープで2つの正弦波電圧va、vbを観測した。図の波形から、vaの実効値、vbの周波数、vaの周期、及び両波形の位相差を求める。
(a) 垂直偏向電極のみに正弦波、水平偏向電極のみにのこぎり波、両電極に同時に加えたときの各波形の組合せとして、正しいものを選ぶ(正解は(3))。
(b) 垂直感度0.1V/div、掃引時間0.2ms/divのオシロで観測した波形の、vaの実効値・vbの周波数・vaの周期・位相差の組合せとして、最も近いものを選ぶ。
(1)0.21V / 1.3kHz / 0.8ms / π/4
(2)0.42V / 1.3kHz / 0.4ms / π/3
(3)0.42V / 2.5kHz / 0.4ms / π/3
(4)0.21V / 1.3kHz / 0.4ms / π/4
(5)0.42V / 2.5kHz / 0.8ms / π/2


出題のポイント:偏向電極は「上下係」と「左右係」
垂直偏向電極は輝点を上下に、水平偏向電極は左右に動かします。片方だけに電圧を加えれば、輝点はその方向にしか動かない——だから縦の直線や横の直線になります。
両方に加えて初めて「波形」が描けます。横方向をのこぎり波で一定速度に走らせる(掃引)と、横軸が時間になる——そこに縦方向の電圧を重ねれば時間波形です。

解説(a):3つの場合を順に考える
| 加える電極 | 輝点の動き | 蛍光面に現れるもの | 図 |
| 垂直偏向電極のみ(正弦波) | 上下だけに往復 | 縦の直線 | 図2 |
| 水平偏向電極のみ(のこぎり波) | 左右だけに往復 | 横の直線 | 図5 |
| 両方同時 | 横に一定速度+縦に電圧 | 時間軸上の正弦波形 | 図6 |
「片方だけなら直線、両方そろって初めて波形」——これがオシロスコープの原理そのものです。横軸を時間にしているのは、のこぎり波(掃引電圧)です。
のこぎり波は「ゆっくり上がって一気に戻る」波形です。ゆっくり上がる間に輝点が左から右へ一定速度で走り、戻るときは瞬時(帰線)——だから横軸が時間に比例します。
解説(b):div を数えて感度を掛ける
0軸からピークまで3 div
正弦波なので \(\sqrt2\) で割る
山から山まで4 div
2波形は同じ周期
ずれは0.5 div
位相差は「1周期を \(2\pi\) として、ずれが何分のいくつか」で求めます。4 div が1周期、ずれが 0.5 div なら 1/8 周期——\(2\pi/8=\pi/4\) です。
誤答の正体:4つの数値のうち1つでも違えば×
| 選択肢 | 実効値 | 周波数 | 周期 | 位相差 | 判定 |
| (1) | 0.21 V | 1.3 kHz | 0.8 ms | \(\pi/4\) | ◎ 正解 |
| (2) | 0.42 V | 1.3 kHz | 0.4 ms | \(\pi/3\) | 実効値と周期が誤り |
| (3) | 0.42 V | 2.5 kHz | 0.4 ms | \(\pi/3\) | 周期と周波数は整合するが振幅が2倍 |
| (4) | 0.21 V | 1.3 kHz | 0.4 ms | \(\pi/4\) | ★周期だけ誤り |
| (5) | 0.42 V | 2.5 kHz | 0.8 ms | \(\pi/2\) | 周期と周波数が矛盾 |
(4)がいちばん惜しい肢です。3つは合っているのに周期だけ 0.4 ms——山から谷までの2 div を1周期と数えてしまった形です。
ここは内部整合でも見抜けます。2つの波形は同じ周期なので、\(v_a\) の周期と \(v_b\) の周波数は逆数の関係——0.4 ms なら 2.5 kHz でなければならず、1.3 kHz とは両立しません。
⚠️ よくある間違い
周期は「同じ位相の点から次の同じ位相の点まで」です。山から谷までは半周期——山から山まで、またはゼロクロス(上昇)から次のゼロクロス(上昇)までを数えてください。半分に数える誤りが、この形式の最頻ミスです。
深掘り①:ブラウン管オシロスコープの構造
電子銃から出た電子ビームが、2組の偏向電極の間を通って蛍光面に当たります。電極に電圧をかけると静電力でビームが曲がり、輝点の位置が動きます。
| 部分 | 役割 |
| 電子銃 | 電子ビームを作り、加速・集束する |
| 垂直偏向電極 | 測定電圧を加え、輝点を上下に動かす |
| 水平偏向電極 | のこぎり波(掃引電圧)で輝点を左右に走らせる |
| 蛍光面 | 電子が当たった点が光る |
偏向は静電力(電界)で行います。テレビのブラウン管は磁界で偏向していましたが、オシロスコープは高速な応答が必要なので静電偏向です。
ディジタルオシロスコープにはブラウン管がありません。A-D変換したデータをメモリに書き込み、液晶に描画します——だから単発現象も記録できます。
深掘り②:のこぎり波がなぜ時間軸になるのか
のこぎり波は「時間に比例して直線的に上がり、最後に一気に戻る」波形です。電圧が時間に比例するので、輝点の横方向の位置も時間に比例します。
これが時間軸
戻る部分(帰線)は輝度を落として見えなくします(ブランキング)。そうしないと戻る線も光ってしまい、波形が読みにくくなります。
掃引の周期を信号の周期の整数倍にそろえると、波形が止まって見えます。これがトリガ(同期)——ずれていると波形が横に流れます。
深掘り③:リサジュー図形という使い方
水平偏向にものこぎり波ではなく正弦波を加えると、2つの正弦波の合成図形が描かれます——これがリサジュー図形です。
| 2つの正弦波の関係 | 描かれる図形 |
| 同じ周波数・同位相 | 斜め45°の直線 |
| 同じ周波数・位相差90°・同振幅 | 円 |
| 同じ周波数・その他の位相差 | だ円 |
| 周波数比 1:2 | 8の字 |
図形の形から周波数比と位相差が読めます。周波数の分からない信号を、既知の信号と比べて測る——周波数計がなかった時代の実用的な手法でした。
本問の図3(斜線)や図4(円)は、まさにリサジュー図形です。水平にのこぎり波を加える(a)の設定では現れません——だから正解にはなりません。
💡 覚え方
片方だけ→直線、両方+のこぎり波→時間波形、両方+正弦波→リサジュー図形。「水平に何を加えるか」で用途が変わる——これがオシロスコープの使い分けです。
深掘り④:div を数えるときのコツ
| 読む量 | どこを数えるか | 本問の値 |
| 振幅(最大値) | 0軸からピークまで | 3 div → 0.3 V |
| 全振幅(p-p) | 谷から山まで | 6 div → 0.6 V |
| 周期 | 山から山(またはゼロクロスから次の同じ向きのゼロクロス) | 4 div → 0.8 ms |
| 位相差 | 2波形の同じ位相の点のずれ | 0.5 div → \(\pi/4\) |
全振幅(peak-to-peak)で読むと誤差が半分になります。6 div を読んで2で割るほうが、3 div を読むより正確——実務でよく使うテクニックです。
プローブの減衰比も必ず確認してください。10対1なら読んだ値を10倍——本問は1対1なのでそのままです。
⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は「片方だけ→直線、両方→波形」の一言で決まる。
❷ (b)は div を数えて感度を掛けるだけ——振幅3 div、周期4 div、ずれ0.5 div。
❸ 実効値は \(\sqrt2\) で割る——オシロが示すのは最大値。
❹ 位相差=(ずれの div ÷ 1周期の div)×\(2\pi\)。
★周期と周波数は逆数——選択肢の中で矛盾している組合せは消せる。
出題履歴:オシロスコープの読み取りは計測の定番
平成25年度B問題16でも、垂直感度と掃引時間から周期・実効値・力率を求める問題が出ています。「div を数えて掛ける」という手順は共通——落ち着けば確実に取れる分野です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (a) | 縦線/横線/波形表示→(3) |
| va実効値 | 0.3V/√2≒0.21V |
| va周期 | 目盛×0.2ms=0.4ms |
| 位相差 | (ずれ/1周期)×2π=π/4 |
| (b) | 0.21V/1.3kHz/0.4ms/π/4→(1) |
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