今回は令和6年度上期 理論科目 B問題18を解説します。(a)無線通信のアナログ変調・復調の用語を穴埋めし、(b)トランジスタ振幅変調回路の波形を識別して変調率を求める問題です。
搬送波は信号波より高い周波数の正弦波で、復調(検波)で元の信号波を取り出します。(b)は搬送波・信号波・変調波の波形を見分け、変調波の包絡線から変調率m=(V_max-V_min)/(V_max+V_min)を計算します。
令和6年度上期 理論科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和6年度上期 B問題18
無線通信で行われるアナログ変調・復調について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)無線通信で音声や画像などの情報を送る場合、送信側では情報を電気信号(信号波)に変換する。次に信号波より(ア)周波数の搬送波に信号波を含ませて得られる信号を送信する。受信側では、搬送波と信号波の二つの成分を含むこの信号から(イ)の成分だけを取り出すことで情報を得る。搬送波に信号波を含ませる操作を変調といい、(ウ)の搬送波を用いる基本的な変調方式に振幅変調(AM)・周波数変調(FM)・位相変調(PM)がある。変調して得た信号から元の信号波を取り出す操作を復調又は(エ)という。空白(ア)〜(エ)の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 高い 信号波 三角波 検波 (2) 高い 信号波 正弦波 検波 (3) 高い 搬送波 三角波 増幅 (4) 低い 信号波 三角波 増幅 (5) 低い 搬送波 正弦波 検波 (b)図1は、トランジスタの(ア)に信号波の電圧を加えて振幅変調を行う回路の原理図である。電圧v1、v2、v3の波形を同時に計測したところ図2のいずれかであった。このとき、v1の波形は(イ)、v2の波形は(ウ)、v3の波形は(エ)である。図2のグラフより振幅変調の変調率を計算すると約(オ)%となる。空白(ア)〜(オ)の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。ただし、図2のそれぞれの電圧波形間の位相関係は無視する。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) コレクタ 図2(c) 図2(a) 図2(b) 33 (2) コレクタ 図2(c) 図2(b) 図2(a) 67 (3) ベース 図2(b) 図2(a) 図2(c) 50 (4) エミッタ 図2(b) 図2(c) 図2(a) 67 (5) ベース 図2(c) 図2(a) 図2(b) 33


ポイント解説:(a) 高い・信号波・正弦波・検波を順に選ぶ

(a)は、信号波より高い周波数の搬送波を使い、受信側で信号波を取り出します。基本的なAM・FM・PMは正弦波の搬送波を用い、復調は検波とも呼ぶため、組合せは選択肢(2)です。(b)はv2をベースへ加えます。図2(a)は低周波の信号波v1、図2(c)は一定振幅の高周波搬送波v2、図2(b)は包絡線が信号波に沿うAM波v3です。包絡線の最大振幅4目盛、最小振幅2目盛から変調度m=(4−2)/(4+2)=1/3≒33%となり、組合せは選択肢(5)です。
解説(b):信号波(a)・搬送波(c)・AM波(b)を見分け変調度33%を求める

(ア) 信号波より【高い】周波数の搬送波
音声は数十Hz〜数kHzですが、そのままアンテナから飛ばすには波長が長すぎます(1 kHzなら波長300 km)。そこで数百kHz〜数GHzの高い周波数の波に「載せて」送ります——これが搬送波です。
(イ) 受信側は【信号波】の成分だけを取り出す
受け取った波には搬送波と信号波の両方が含まれています。必要なのは元の情報=信号波のほう——搬送波は運び屋なので、届いたら捨てます。
(ウ) 【正弦波】の搬送波を用いる基本的な変調方式
正弦波には「振幅・周波数・位相」の3つのパラメータがあります。そのどれを変化させるかで AM・FM・PM の3方式——3つしかないのは、正弦波のパラメータが3つしかないからです。
| 変調方式 | 何を変化させるか | 特徴 | 用途 |
| 振幅変調(AM) | 搬送波の振幅 | 回路が簡単・雑音に弱い | 中波ラジオ・航空無線 |
| 周波数変調(FM) | 搬送波の周波数 | 雑音に強い・帯域が広い | FMラジオ・音声通信 |
| 位相変調(PM) | 搬送波の位相 | FMと近い性質 | ディジタル通信 |
(エ) 復調は別名【検波】
変調波から元の信号波を取り出す操作が復調(demodulation)で、AMでは特に「検波」と呼ばれます。ダイオードで半分に切って、コンデンサで包絡線をなぞるのが基本的な検波回路です。
解説(b):波形の見分けと変調度の計算
| 図2の波形 | 見た目 | 正体 | 対応する電圧 |
| (a) | 低周波の正弦波 | 信号波 | \(v_2\) |
| (b) | 高周波だが振幅がうねる | 変調波 | \(v_3\) |
| (c) | 高周波で振幅一定 | 搬送波 | \(v_1\) |
(ア)は【ベース】です。信号波をベースに加えると、ベース電流が信号波に応じて増減し、増幅された搬送波の振幅もそれに応じて変わります——これが振幅変調です。
いちばん太い所と細い所
問題の解説:(a)は(2)、(b)はベース・(c)・(a)・(b)・33%の(5)

まず(ア)で絞れます。信号波を加えるのはベース——コレクタ変調やエミッタ変調もありますが、本問の原理図はベース変調です。
次に「振幅一定の高周波=搬送波」。これが \(v_1\) なので (イ)=図2(c)——この2点で選択肢はほぼ1つに絞れます。
| 変調度の誤り方 | 計算 | 値 |
| \(A_{\min}/A_{\max}\) としてしまう | \(2/4\) | 50 % |
| \((A_{\max}-A_{\min})/A_{\max}\) | \((4-2)/4\) | 50 % |
| \(A_{\min}/(A_{\max}-A_{\min})\) | \(2/2\) | 100 % |
| ◎ 正しい定義 | \((4-2)/(4+2)\) | 33 % |
⚠️ よくある間違い
変調度の分母は「和」です。\(A_{\max}+A_{\min}\) は搬送波の振幅の2倍にあたります——\(m=(\text{信号波の振幅})/(\text{搬送波の振幅})\) と書くほうが意味は分かりやすいでしょう。
深掘り①:変調度が100 %を超えるとどうなるか
変調度は0〜100 %の範囲で使います。100 %のとき、包絡線の細いところがちょうど振幅ゼロになります。
100 %を超えると包絡線が反転して食い込み、元の信号波の形が壊れます——これが過変調です。受信側で正しく復調できず、ひずんだ音になります。
逆に変調度が小さすぎると、信号の割合が小さくて雑音に埋もれます。実用上は80〜90 %程度を狙います——大きすぎず小さすぎず。
💡 覚え方
変調度=「信号波の振幅 ÷ 搬送波の振幅」。包絡線の太い所と細い所の差が信号、平均が搬送波——\((A_{\max}-A_{\min})/2\) が信号、\((A_{\max}+A_{\min})/2\) が搬送波で、その比が変調度です。
深掘り②:AMとFMはなぜ性質が違うのか
雑音は主に振幅に乗ります。AMは振幅に情報を載せているので、雑音がそのまま情報を汚します。
FMは周波数に情報を載せるので、受信側で振幅を一定に切りそろえて(リミッタ)から復調すれば、振幅の雑音を捨てられます——FMが雑音に強い理由です。
代償は帯域幅です。FMは周波数を振る分だけ広い帯域を占有します。AMラジオが9 kHz間隔、FMラジオが100 kHz間隔なのはこのためです。
| AM | FM | |
| 載せる場所 | 振幅 | 周波数 |
| 雑音への強さ | 弱い | 強い |
| 占有帯域 | 狭い | 広い |
| 回路 | 簡単 | 複雑 |
| 用途 | 中波ラジオ・航空無線 | FMラジオ・業務無線 |
深掘り③:AM波に含まれる3つの周波数成分
搬送波の周波数を \(f_c\)、信号波を \(f_s\) とすると、AM波には \(f_c\)・\(f_c+f_s\)・\(f_c-f_s\) の3つの成分が含まれます。
振幅が信号で揺れる
3つの正弦波の和になる
\(f_c\pm f_s\) を側波(サイドバンド)と呼びます。情報は側波にだけ入っていて、搬送波そのものには情報がありません。
だから搬送波を送らずに側波だけ送る方式(SSB)もあります。電力も帯域も節約でき、アマチュア無線や短波通信で使われます。
占有帯域幅は \(2f_s\)——信号波の最高周波数の2倍です。音声を5 kHzまで送るなら10 kHzの帯域が要る、という計算になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 波形は3つしかない:低周波の正弦波=信号波、高周波で一定=搬送波、うねる=変調波。
❷ (ア)がベースかコレクタかで選択肢が半分に減る。
❸ 変調度は \((A_{\max}-A_{\min})/(A_{\max}+A_{\min})\)——分母は「和」。
❹ 目盛りは読みやすい整数比になっている(本問は 4 と 2)。
出題履歴:★平成20年度B問題18とまったく同じ内容
本問は平成20年度B問題18と、文章も図もほぼそのまま同じです。ただし選択肢の並び順が違い、(a)は平成20年度では(5)、本問では(2)——過去問の「番号」で覚えていると外します。
変調・復調は理論科目の中では珍しく計算がほとんど要らないテーマです。波形の見分けと変調度の式さえ押さえれば、確実な得点源になります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★同型問題:【理論】平成20年度 B問題18とほぼ同じ
この問題は 【理論】平成20年度 B問題18 と選択肢の並び順だけ違うだけの、実質同じ問題です。解き方も答えの中身も変わりません。
| 項目 | 令和6年度上期 B問題18 | 平成20年度 B問題18 |
| (a)の中身 | 同じ | 高い・信号波・正弦波・検波 |
| (a)の選択肢番号 | (2) ★ここが違う | (5) |
| (b)の中身 | 同じ | ベース・(c)・(a)・(b)・33 % |
| (b)の選択肢番号 | (5) ★ここが違う | (1) |
★注意すべきは「選択肢の番号が違う」ことです。過去問の答えを番号で暗記していると、そのまま外します——必ず本文の中身で判断してください。
▼あわせて解きたい同型問題:【理論】平成20年度 B問題18
まとめ
| (a) | 高い・信号波・正弦波・検波→(2) |
| (b)ア | ベースに信号波 |
| (b)イ〜エ | v1=c(搬送)・v2=a(信号)・v3=b(変調) |
| (b)オ | m=(8-4)/(8+4)≒33%→(5) |
| 答え | (a)(2)・(b)(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・演算増幅器と増幅回路(電子回路6):【理論】令和6年度下期 B問題18

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