今回は平成22年度 機械科目 A問題13を解説します。負荷に流れる電流iLを電流センサで検出して制御するフィードバック制御系で、目標値設定電圧vrを8Vとしたときの負荷電流iLの値を求める問題です。
減算器・電源・負荷・電流センサそれぞれの入出力関係を4本の式で立て、これらを1本のiLについての式にまとめて解くという、フィードバック制御系の回路計算の基本パターンです。
平成22年度 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【自動制御】 平成22年度 A問題13
図は,負荷に流れる電流iL[A]を電流センサで検出して制御するフィードバック制御系である。減算器では,目標値を設定する電圧vr[V]から電流センサの出力電圧vf[V]を減算して,誤差電圧ve=vr-vfを出力する。
電源は,減算器から入力される入力電圧(誤差電圧)ve[V]に比例して出力電圧vp[V]が変化し,入力信号ve[V]が1[V]のときには出力電圧vp[V]が90[V]となる。負荷は,抵抗Rの値が2[Ω]の抵抗器である。電流センサは,検出電流(負荷に流れる電流)iL[A]が50[A]のときに出力電圧vf[V]が10[V]となる。
この制御系において目標値設定電圧vr[V]を8[V]としたときに負荷に流れる電流iL[A]の値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1)8.00 (2)36.0 (3)37.9 (4)40.0 (5)72.0〔A〕

出題のポイント:4つの要素を4本の式にする
ブロック線図の計算問題は、要素ごとに素直な式を書くのが出発点です。本問には4つの要素があります。
| 要素 | 与えられた条件 | 式にすると |
| 減算器 | ve=vr−vf | そのまま |
| 電源 | 1 V 入力で90 V 出力 | vp=90ve |
| 負荷 | R=2 Ω | iL=vp/2 |
| 電流センサ | 50 A で10 V | vf=0.2iL |
「1 V のときに90 V」「50 A のときに10 V」——比例定数を読み取るだけです。90 と 0.2 という2つの数字さえ出せれば、あとは代入で終わります。


1本の式にまとめて解く
iL を求めたいので、iL だけの式にします。上流から順に代入していくのが分かりやすい進め方です。
前向き経路のゲインは45
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⚠️ よくある間違い
(4) 40.0 Aはフィードバックを無視した値——ve=8 のまま 45×8=360、それを何かで割り損ねた形です。
(5) 72.0 Aはセンサの比例定数を0.1 としたような場合。
(1) 8.00 Aはvr の値をそのまま答えたもの。
センサの定数は「10 V÷50 A=0.2 V/A」——逆数の5 A/V と取り違えないでください。
目標値どおりにならない理由
この制御系は、目標値8 V に対して iL=36 A になりました。センサ出力は0.2×36=7.2 V——目標値の8 V には0.8 V 足りません。
これが定常偏差(オフセット)です。比例動作だけの制御系では避けられない——偏差が0 になったら操作量も0 になってしまうからです。
| 前向きゲイン | iL | vf | 偏差 |
| 45(本問) | 36.0 A | 7.2 V | 0.8 V(10 %) |
| 450 | 39.6 A | 7.92 V | 0.08 V(1 %) |
| ∞ | 40.0 A | 8.0 V | 0 |
ゲインを上げれば偏差は減りますが、0 にはなりません——選択肢(4)の40.0 A は「ゲイン無限大の理想値」にあたります。実際には届かない値だということです。
偏差を完全に0 にしたければ、積分動作を加えるのでした。定常状態でゲインが無限大になるので、偏差が消える——PID制御のI動作が必要な理由が、この計算からも分かります。
フィードバックがもたらす安定性
この制御系のもうひとつの利点は、要素の特性が変わっても出力があまり変わらないことです。
| 電源のゲイン | フィードバックなし | フィードバックあり |
| 90(設計値) | 360 A | 36.0 A |
| 81(10 %低下) | 324 A(−10 %) | 35.6 A(★−1.1 %) |
電源のゲインが10 %変わっても、出力は約1 %しか変わりません——フィードバックが変動を吸収しているのです。
部品のばらつき、温度変化、経年劣化——そうした不確かさに強いのがフィードバック制御の本質的な価値です。定常偏差という代償を払ってでも使う理由がここにあります。
⏱️ 本番での進め方
① 要素ごとに式を書く。「1 V で90 V」→90、「50 A で10 V」→0.2。
② iL=45ve、ve=8−0.2iL。
③ 代入して 10iL=360 →36.0 A。
④ 公式なら 45/(1+45×0.2)×8=36。どちらでも同じ。
💡 覚え方
「比例定数は与えられた1点から読む」——50 A で10 V なら 0.2 V/A。そして「フィードバックがあると理想値には届かない」——40 A ではなく36 A になるのが定常偏差です。

電流センサという要素
本問の電流センサは「50 A で10 V」——電流を電圧に変換する要素です。実際にどんな方式があるのかを見ておきましょう。
| 方式 | 原理 | 直流 | 絶縁 |
| 分流器(シャント) | 低抵抗の電圧降下を測る | 測れる | ★できない |
| 変流器(CT) | 電磁誘導 | ★測れない | できる |
| ホール素子形 | 磁界をホール効果で検出 | 測れる | できる |
分流器は最も単純ですが、主回路と絶縁できません——高電圧の回路では危険です。また電流が大きいと発熱も無視できません。
変流器は絶縁できますが直流が測れない——電磁誘導は変化しなければ働かないからです。本問のような直流の制御系には使えません。
だから直流を絶縁して測るならホール素子形——インバータの電流検出やパワーコンディショナで広く使われています。「直流が測れて絶縁できる」のが最大の利点です。
センサの精度がそのまま制御精度を決めるのもポイント。フィードバック制御は「測ったものしか制御できない」——センサが1 %ずれていれば、出力も1 %ずれます。前向き要素の誤差はゲインで抑えられても、センサの誤差は抑えられないのです。
目標値設定電圧という考え方
本問では目標値が「8 V」という電圧で与えられました——制御したいのは電流なのに、目標値は電圧です。これには理由があります。
減算器はセンサ出力と目標値を比べます。センサ出力は電圧なので、比べる相手も電圧でなければならない——単位をそろえる必要があるのです。
センサが0.2 V/A なら、8 V は40 A に相当します。つまり「40 A にしたい」という指令を電圧で表している——これが目標値設定電圧の意味です。
実際の答えは36 Aでしたから、狙いの40 A に対して4 A 足りない——この差が定常偏差だと確認できます。目標値の意味を押さえておくと、答えの妥当性まで判断できるようになります。
まとめ
| iL=vp/2 | ① |
| vp=90ve | ② |
| ve=vr-vf | ③ |
| vf=0.2iL | ④ |
| iL=4.5vr | 整理後 |
| 答え | (2) 36.0A |
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