今回は令和7年度上期 機械科目 B問題18を解説します。「制御器(Kブロック)」と「制御対象(内部フィードバック付き1/(jωT)ブロック)」からなるフィードバック制御系で、K=2,T=0.5としたときの一巡伝達関数(a)と、そのベクトル軌跡(b)を求める問題です。★自動制御10(令和4年度上期B問題15)と全く同じブロック線図構成・出題形式で、K・Tの数値のみが異なる同型の反復出題です。
(a)はまず制御対象内部の閉ループ伝達関数G(jω)=1/(1+jωT)を求め、これにKを掛けます。(b)はω=0とω=2の2点で座標を計算し、実軸切片と象限(上下)から選択肢を絞り込みます。
令和7年度上期 機械科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題18
電験3種 機械科目 【自動制御】 令和7年度上期 B問題18
図は,出力信号yを入力信号xに一致させるように動作するフィードバック制御系のブロック線図である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)図において,K=2,T=0.5として,入力信号からフィードバック信号までの一巡伝達関数(開ループ伝達関数)を表す式を計算し,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2/(1-jω0.5) (2)2/(1+jω0.5) (3)1/(1+jω0.5) (4)2/(3-jω0.5) (5)2/(3+jω0.5)
(b)(a)で求めた一巡伝達関数において,ωを変化させることで得られるベクトル軌跡はどのような曲線を描くか,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。いずれも複素平面上の円弧で,ω=0の実軸切片とω→∞での原点への収束を示す。
(1)第1象限(虚軸+側)の円弧,ω=0で実軸2.0,ω=2で45°方向,ω=∞で原点
(2)同形状だが実軸切片0.67,ω=6のとき45°方向
(3)第4象限(虚軸-側)の円弧,ω=0で実軸2.0,ω=2で45°方向(下向き),ω=∞で原点
(4)同形状だが実軸切片0.67,ω=2のとき45°方向
(5)同形状だが実軸切片0.67,ω=6のとき45°方向

出題のポイント:一巡伝達関数は閉じずに掛けるだけ
(a)で問われているのは一巡伝達関数(開ループ伝達関数)です。「入力信号からフィードバック信号まで」——ループを一周する間の伝達を求めるので、閉じてはいけません。
T=0.5
★分母に「1+」を追加しない
選択肢(5)の 2/(3+j0.5ω) は閉ループの形です。K/(1+K+jωT)=2/(3+j0.5ω)——「1+KG」まで計算してしまうとここに着地します。
| 一巡(開ループ) | 閉ループ | |
| 式 | \( \dfrac{K}{1+j\omega T}=\dfrac{2}{1+j0.5\omega} \) | \( \dfrac{K}{1+K+j\omega T}=\dfrac{2}{3+j0.5\omega} \) |
| ω=0 の値 | 2.0 | 0.67 |
| 問題文の指定 | ★こちら | — |
(a)を間違えると(b)も連鎖して外れます——実軸切片が2.0 か0.67 かで、選択肢がきれいに分かれているのがその証拠です。


(b) ベクトル軌跡の3つのチェックポイント
★K の値そのもの
★実部と虚部の大きさが等しい=45°
原点へ収束
| 確認する点 | 正しい値 | 理由 |
| 実軸切片 | 2.0 | ω=0 で分母が1 |
| 45°になるω | ★2 rad/s | ωT=1、つまり ω=1/T=2 |
| どちらの半平面 | ★第4象限(下側) | 分母が+jω なので虚部は負 |
一次遅れの軌跡は、正の実軸から下半平面を通って原点へ向かう半円です。位相が0°から−90°へ遅れていく——だから第4象限だけを通ります。
45°になるのは ωT=1 のとき——つまり折れ点角周波数 1/Tです。本問なら 1/0.5=2 rad/s——ボード線図の折れ点と同じ周波数だと確かめられます。

⚠️ よくある間違い
実軸切片0.67 の選択肢は(a)で閉ループを求めた場合。
第1象限(上側)の選択肢は位相が進むと考えたもの——遅れ要素なのだから下側です。
ω=6 の選択肢は45°になる条件を取り違えたもの——実部と虚部の大きさが等しくなるのは ωT=1 のときです。
出題履歴:令和4年度上期と同型
本問は令和4年度上期 B問題15とまったく同じブロック線図・同じ設問構成です(自動制御:一巡伝達関数とベクトル軌跡)。違うのは K と T の数値だけ——K=5・T=0.1 が K=2・T=0.5 に変わっています。
| 令和4年度上期 | 令和7年度上期(本問) | |
| K、T | 5、0.1 | 2、0.5 |
| 一巡伝達関数 | 5/(1+j0.1ω) | 2/(1+j0.5ω) |
| 実軸切片 | 5.0 | 2.0 |
| 45°のω | 10 rad/s | 2 rad/s |
解き方は完全に同じ——実軸切片は K、45°になるωは 1/T。この2つを押さえておけば、数値が変わっても即答できます。
⏱️ 本番での進め方
①「一巡伝達関数」は閉じない。KG のまま。
② 内側の閉ループだけ先にまとめる。1/(1+j0.5ω)。
③ 実軸切片=K=2.0。
④ 45°になるのは ω=1/T=2 rad/s。下半平面。
💡 覚え方
「実軸切片は K、45°は 1/T、軌跡は下半平面」——一次遅れのベクトル軌跡はこの3つで決まる。数値が変わっても手順はまったく同じです。

ベクトル軌跡とボード線図は同じ情報
ベクトル軌跡とボード線図は、同じ周波数伝達関数を別の見せ方で表したものです。対応関係を押さえておくと、片方から片方が描けます。
| ω | ベクトル軌跡 | ボード線図 |
| 0 | 実軸上の点(=K) | 低域ゲイン 20log K、位相0° |
| 1/T | ★45°方向 | ★折れ点。−3 dB、−45° |
| ∞ | 原点 | ゲイン −∞、位相 −90° |
ベクトル軌跡は「ゲインと位相を1本の線でまとめて表す」——原点からの距離がゲイン、実軸からの角度が位相です。
ボード線図は「ゲインと位相を2枚に分けて表す」——周波数が横軸なので、どの周波数の話かがはっきり分かるのが利点になります。
| ベクトル軌跡 | ボード線図 | |
| ωの位置 | 線上の点として書き込む必要 | ★横軸で一目瞭然 |
| 安定判別 | ★(−1, j0) との位置関係で直感的 | ゲイン余裕・位相余裕で数値化 |
| 要素の合成 | 難しい | ★足し算でできる |
用途によって使い分けるのが実際です。設計にはボード線図、安定性の直感的な把握にはベクトル軌跡——どちらも読めるようにしておくと強いと言えます。
まとめ
| 制御対象内部 | 1/(1+jωT) |
| 一巡伝達関数 | 2/(1+j0.5ω) |
| ω=0 | (2,0) |
| ω=2 | (1,-1)第4象限 |
| 答え | (a)-(2),(b)-(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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