今回は平成21年度 機械科目 B問題17を解説します。水0.370m³を20.0℃から90.0℃に加熱するのに、総合効率90.0%の電気温水器で要する時間(a)と、消費電力1.25kW・6時間で加熱したCO₂ヒートポンプ式給湯器のCOP(b)を求める問題です。★電気加熱6〜8と同系統ですが、抵抗加熱方式との比較という切り口が特徴です。
(a)は水を加熱するのに必要な熱量Qを求め、電熱器容量×効率で割って時間を求めます。(b)は同じ熱量Qを、消費電力×時間で割ることでCOPを求めます。
平成21年度 機械科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題17
電験3種 機械科目 【電気加熱】 平成21年度 B問題17
温度20.0〔℃〕,体積0.370〔m³〕の水の温度を90.0〔℃〕まで上昇させたい.次の(a)及び(b)に答えよ.
ただし,水の比熱(比熱容量)と密度はそれぞれ4.18×10³〔J/(kg・K)〕,1.00×10³〔kg/m³〕とし,水の温度に関係なく一定とする.
(a)電熱器容量4.44〔kW〕の電気温水器を使用する場合,これに必要な時間t〔h〕の値として,最も近いのは次のうちどれか.ただし,貯湯槽を含む電気温水器の総合効率は90.0〔%〕とする.
(b)上記(a)の電気温水器の代わりに,最近普及してきた自然冷媒(CO₂)ヒートポンプ式電気給湯器を使用した場合,これに必要な時間t〔h〕は,消費電力1.25〔kW〕で6〔h〕であった.水が得たエネルギーと消費電力量とで表せるヒートポンプユニットの成績係数(COP)の値として,最も近いのは次のうちどれか.ただし,ヒートポンプユニット及び貯湯槽の電力損,熱損失はないものとする.
(a)電熱器容量4.44〔kW〕の電気温水器を使用する場合,これに必要な時間t〔h〕の値として,最も近いのは次のうちどれか。ただし,貯湯槽を含む電気温水器の総合効率は90.0〔%〕とする。ただし,水の比熱(比熱容量)と密度はそれぞれ4.18×10³〔J/(kg・K)〕,1.00×10³〔kg/m³〕とし,水の温度に関係なく一定とする。
(1)3.15 (2)6.10 (3)7.53 (4)8.00 (5)9.68〔h〕
(1)0.25 (2)0.33 (3)3.01 (4)4.01 (5)4.19〔COP〕
2つの方式に共通する熱量を先に求める
(a)も(b)も、同じ水を同じ温度まで温めます——必要な熱量は共通です。先に1回だけ計算しておくのが要領になります。
★以降はこの値を使う
30.07 kWh——この1つの数値を(a)(b)の両方で使います。kWh に直しておくと、電力[kW]で割るだけで時間[h]が出るので便利です。

(a) 電気温水器は効率で割る
電気温水器は抵抗加熱——効率は必ず1 以下です。90 %なので、投入した電気の9割しか水に届きません。
★効率を掛ける
★答え
4.44 kW の器具でも、実際に働くのは4.00 kW——残り0.44 kW は貯湯槽からの放熱などで失われます。
効率が悪いほど時間がかかる——だから割り算です。掛けてしまうと時間が短くなり、逆になります。
(b) ヒートポンプはCOP を求める
今度はCOP が未知数——「水が得た熱量÷消費電力量」という定義どおりに計算します。
★答え
7.50 kWh の電気で30.07 kWh 分の熱を得た——だからCOP は約4。4倍の熱を運んだということです。

効率とCOP はどう違うか
どちらも「入れた電気に対してどれだけ得られたか」——ところが1 を超えるかどうかが決定的に違います。
| 効率 η(抵抗加熱) | COP(ヒートポンプ) | |
| 定義 | 得た熱÷投入電気 | ★同じ形 |
| 値の範囲 | ★必ず1 以下 | ★1 を超える |
| 理由 | 電気を熱に変えるだけ(損失で減る) | ★外の熱を汲み上げて足している |
| 本問の値 | 0.900 | 4.01 |
電気温水器は7.53時間×4.44 kW=33.4 kWh——ヒートポンプは7.50 kWh。電気代は約4.5分の1 になります。
同じ湯を沸かすのに、これだけの差——ヒートポンプ式給湯器が普及した理由が、数字ではっきり分かります。本問が「最近普及してきた」と書いているのは、この比較を示すためでしょう。
⚠️ よくある間違い
(a)で効率を掛けてしまう——30.07÷4.44×0.9=6.10 h。選択肢(2)にぴったり用意されています。
効率が悪いほど時間はかかる——だから効率で割るのが正しい向きです。効率100 %なら6.77 h、90 %ならそれより長い7.53 h——という大小関係で確かめられます。
(b)でCOP を逆にして0.25 としない——選択肢(1)がそれです。COP は「得た熱÷投入電気」——分子が大きいほうです。
1 より小さいCOP はあり得ないので、(1)(2)はその場で除外できます。
⏱️ 本番での進め方
①共通の熱量Q=30.07 kWh を先に1回だけ計算する。
②(a) 効率は★割る。4.44×0.9=4.00 kW で割ってもよい。
③(b) COP=得た熱÷消費電力量=30.07÷7.50。
④★COP が1 未満の選択肢は物理的にあり得ない。
💡 覚え方
「効率は1 以下、COP は1 超え」——抵抗加熱は電気を熱に変えるだけ、ヒートポンプは外から汲み上げる。この違いが、そのまま電気代4.5倍の差になります。
ヒートポンプの原理は平成20年度 A問題12(電気加熱:ヒートポンプの原理と成績係数)、同系統の計算は平成28年度 B問題17(加熱時間を求める)にあります。

CO₂ 冷媒が使われる理由
問題文の「自然冷媒(CO2)」——なぜ二酸化炭素なのかを見ておきましょう。
| 観点 | フロン系冷媒 | ★CO2 冷媒 |
| オゾン層 | 破壊するものがある | ★影響なし |
| 温暖化係数 | 非常に大きい | ★1(基準) |
| 到達温度 | 60 ℃ 前後 | ★90 ℃ まで可能 |
| 圧力 | 低い | 高い(10 MPa級) |
給湯には高温が必要——CO2 なら90 ℃ 級の湯が作れます。本問が90.0 ℃ まで加熱する設定なのは、この特性に合わせたものです。
「エコキュート」という名称も、CO2 を使うことに由来——自然界にある物質を冷媒にするので「自然冷媒」と呼ばれます。
高圧になるのが難点
CO2 は臨界温度が31 ℃ と低い——給湯温度では液化せず、超臨界状態で使われます。
そのため圧力が非常に高くなる——配管や圧縮機に高い耐圧性能が要ることになります。装置が高価になる理由のひとつです。
B問題を解く順序
(a)と(b)で共通する量がある——それを見抜けるかどうかが分かれ目です。
| 段階 | やること | 使い回すか |
| ① | 共通の熱量Q を求める | ★(a)(b)両方で使う |
| ②(a) | Q÷(P×η) | — |
| ③(b) | Q÷(P×t) | — |
問題文をよく読むと、(b)は「上記(a)の電気温水器の代わりに」——同じ水を同じ温度まで温めると分かります。だからQ は共通です。
気づかずに(b)でもう一度Q を計算しても答えは同じ——ただし時間を無駄にします。B問題は7〜8分——共通部分を見抜く目が、そのまま時間の余裕になるのです。
まとめ
| Q | ≒30.07 kW・h |
| t(電気温水器) | ≒7.53 h |
| (a) | (3) |
| COP(ヒートポンプ) | ≒4.01 |
| (b) | (4) |
| 答え | (a)-(3),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・貯湯タンクの水加熱に必要な熱エネルギーとヒートポンプの消費電力:【機械】令和元年度B問題17
・ヒートポンプの原理と成績係数COP:【機械】平成20年度A問題12

コメント