電動機応用21【電験3種 機械】インバータ駆動電動機の回生時の発電制動と回生制動の仕組み!平成24年 A問題11 完全解説

電験3種 機械科目 電動機応用 平成24年度 A問題11 止めるときに発電する!発電制動と回生制動

今回は平成24年度 機械科目 A問題11を解説します。交流電源-整流器-平滑コンデンサ-インバータで構成される回路で電動機を駆動するとき、大きな慣性負荷を減速する際の発電制動・回生制動の仕組みを問う空欄補充問題です。

慣性モーメントの大きな負荷を減速するとき、電動機からインバータに電力が流れ込み直流電圧が上昇します。抵抗とパワー半導体デバイスの直列回路で電力を消費するのが発電制動、交流電源に電力を戻すのが回生制動です。

目次

平成24年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成24年度 A問題11 問題文(インバータ駆動電動機の回生時の発電制動と回生制動の仕組み)
平成24年度 機械科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11

電験3種 機械科目 【電動機応用】 平成24年度 A問題11

 次の文章は,電動機の運転に関する記述である。

 交流電源-整流器-平滑用コンデンサ-インバータで構成される回路によって電動機を駆動する場合,〔(ア)〕の大きな負荷を減速するときには,電動機からインバータに電力が流れ込む。

 このとき直流電圧が上昇するので,〔(イ)〕とパワー半導体デバイスとの直列回路を平滑用コンデンサと並列に設け,パワー半導体デバイスをスイッチングして電流を調整することによって,電動機からの電力を消費させることができる。この方法を一般に〔(ウ)〕制動と呼んでいる。

 一方,電力を消費するのではなく,逆変換できる整流器を介して交流電源に電力を戻し,他の用途などに有効に使うこともできる。この方法を一般に〔(エ)〕制動と呼んでいる。

 上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)慣性モーメント抵抗発電回生
(2)慣性モーメント抵抗降圧発電
(3)摩擦係数抵抗降圧発電
(4)慣性モーメントリアクトル発電回生
(5)摩擦係数リアクトル降圧回生

出題のポイント:発電制動と回生制動の違い

(ウ)と(エ)が本問の核心です。どちらも電動機を発電機として使うブレーキですが、発生した電力の行き先が違います

発電制動(ダイナミックブレーキ)回生制動
電力の行き先抵抗で熱として捨てる交流電源へ返す
必要な装置抵抗+パワー半導体デバイス★逆変換できる整流器
省エネルギー性なし(捨てる)★あり(再利用できる)
コスト安い高い
電源側の条件問わない電力を受け取れる系統が必要

問題文が「電力を消費させる」「電力を戻し、他の用途などに有効に使う」と書き分けているのが手がかりです。捨てるのが発電制動、返すのが回生制動——この対比で(ウ)(エ)が確定します。

交流電源、整流器、平滑コンデンサ、インバータ、電動機、慣性負荷のブロック図と、減速時に電力が直流リンクへ戻る経路
減速時の発電電力はインバータから直流リンクへ流れ込み、直流電圧を上昇させます。

(ア)(イ)を確定する

(ア)慣性モーメント

減速時に電力が戻ってくるのは、負荷が運動エネルギーを蓄えていたからです。回転体の運動エネルギーは (1/2)Jω2——慣性モーメントJ が大きいほど、返ってくるエネルギーも大きいのです。

選択肢の「摩擦係数」では話が合いません摩擦はエネルギーを消費する側——摩擦が大きければ、放っておいても勝手に止まりますブレーキに困るのは、摩擦が小さくて慣性が大きい場合です。

(イ)抵抗

電力を「消費させる」のですから、必要なのは抵抗です。リアクトルは電力を消費しません——蓄えて返すだけだからです。

「パワー半導体デバイスをスイッチングして電流を調整する」という記述にも注目してください。抵抗を常時つないでおくのではなく、必要なときだけチョッパで通電量を調整する——だから制動力を連続的に制御できるのです。

平成24年度A問題11の空欄を慣性モーメント、抵抗、発電制動、回生制動として答え1とする図
正しい組合せは慣性モーメント・抵抗・発電制動・回生制動の(1)です。
答え(ア)慣性モーメント (イ)抵抗 (ウ)発電 (エ)回生——正解は (1)です。

なぜ直流電圧が上昇するのか

問題文の「直流電圧が上昇するので」——この現象が対策を必要とする理由です。

通常の整流器はダイオードでできていますダイオードは一方向にしか流せない——だから電動機から戻ってきた電力は、交流電源へは抜けられません

行き場を失った電力は、平滑用コンデンサに溜まりますコンデンサに電荷が溜まれば電圧が上がる——これが直流電圧の上昇です。

直流電圧装置の状態対応
通常正常運転
上昇回生エネルギーが流入制動抵抗をオンにして消費
過電圧コンデンサ・素子が危険★保護動作でトリップ

放置すればコンデンサやIGBTが耐圧を超えて壊れます——だから汎用インバータには「過電圧トリップ」という保護があります。急減速させようとするとこの保護が働いて止まる——実務でよく遭遇する現象です。

対策は3つ①減速時間を長くする ②制動抵抗を付ける ③回生コンバータを付ける——コストと省エネ性のバランスで選ばれます

⏱️ 本番での進め方
①(ア)慣性モーメント。摩擦係数ではエネルギーが戻らない。
②(イ)抵抗。消費させるのだからリアクトルではない。
③(ウ)抵抗で捨てる=発電制動。
④(エ)電源へ返す=回生制動。逆変換できる整流器が必要。

💡 覚え方
「捨てるのが発電制動、返すのが回生制動」——行き先で名前が決まるそして「返すには逆変換できる整流器が要る」——ダイオード整流器では返せないのでした。

発電制動で平滑コンデンサと並列のスイッチと抵抗により熱消費する回路と、回生制動で逆変換可能な整流器から交流電源へ戻す回路の比較図
発電制動は抵抗で熱消費、回生制動は逆変換可能な整流器で電源へ返します。

3つの電気ブレーキを整理する

本問に出てきた発電制動と回生制動のほかに、逆相制動もあります。3つをまとめて整理しておきましょう

方式やり方エネルギーの行き先特徴
発電制動発電した電力を抵抗で消費熱(捨てる)装置が簡単・確実
回生制動発電した電力を電源へ返す電源(再利用)★省エネだが電源側の条件が要る
逆相制動(プラッギング)電源の相を入れ替えて逆トルクをかける熱(電源からも供給される)制動力は強いが損失が大きい

逆相制動は、回転を止めるために逆向きのトルクを電源から供給する方式です。制動力は強いのですが、電源からもエネルギーを取りながら止める——非常に効率が悪いのが難点になります。

また、停止時に電源を切らないと逆回転を始めます——速度が0になった瞬間を検出して遮断する仕組みが必要急停止が求められる場合に限って使われる方式です。

回生制動が使えない場面

回生制動は理想的に見えますが、条件が整わないと使えません返した電力を受け取る相手がいることが絶対条件です。

電気鉄道では、近くに力行中の電車がいなければ架線電圧が上がってしまいます——回生失効と呼ばれる現象。そうなると機械ブレーキに切り替わります

近年は変電所に蓄電池を置いて、余った回生電力を貯める設備も増えました。回生失効を減らし、エネルギーを無駄にしない——省エネルギーへの取り組みが進んでいる分野です。

制動抵抗はどれくらいのエネルギーを扱うのか

発電制動で抵抗が消費するのは、負荷が蓄えていた運動エネルギーです。回転体なら (1/2)Jω2——慣性モーメントと回転速度で決まります

そのエネルギーを、減速に要する時間で割れば平均の電力になります。急停止させるほど短時間に集中する=大きな電力——だから制動抵抗の容量は「減速時間」で決まるのです。

減速時間抵抗が扱う平均電力抵抗の大きさ
長い(ゆっくり止める)小さい小型で済む
短い(急停止)★大きい大型が必要

抵抗は熱を出すので、放熱も考えなければなりません頻繁に発停する用途では、抵抗の温度上昇が制約になる——そういう場合こそ回生制動が有利になります。

「たまにしか止めない」なら発電制動、「頻繁に止める」なら回生制動——用途で選び分けるのが実務の考え方です。

まとめ

(ア)慣性モーメント
(イ)抵抗
(ウ)発電
(エ)回生
答え(1)

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