電動機応用18【電験3種 機械】送風機など流体搬送負荷の速度・トルク・電力の関係の空欄補充問題!平成29年 A問題12 完全解説

電験3種 機械科目 電動機応用 平成29年度 A問題12 回転速度を落とすと電力は3乗で減る!なぜ?

今回は平成29年度 機械科目 A問題12を解説します。送風機など流体搬送負荷の定常特性に関する記述で、エレベータのような鉛直移動体と送風機・ポンプのような流体搬送とで速度に対するトルクの特性が異なることを問う空欄補充問題です。

エレベータなど鉛直移動体はトルクが速度によらず一定。送風機など流体搬送はトルクT∝速度n2で、出力P=ωT∝n・n2=n3となるため、速度制御による省エネ効果が大きいことがわかります。

目次

平成29年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成29年度 A問題12 問題文(送風機など流体搬送負荷の速度・トルク・電力の関係の空欄補充問題)
平成29年度 機械科目 A問題12 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12

電験3種 機械科目 【電動機応用】 平成29年度 A問題12

 次の文章は,送風機など電動機の負荷の定常特性に関する記述である。

 電動機の負荷となる機器では,損失などを無視し,電動機の回転数と機器において制御対象となる速度が比例するとすると,速度に対するトルクの代表的な特性が以下に示すように二つある。

 一つは,エレベータなどの鉛直方向の移動体で速度に対して〔(ア)〕トルク,もう一つは,空気や水などの流体の搬送で速度に対して〔(イ)〕トルクとなる特性である。

 後者の流量制御の代表的な例は送風機であり,通常はダンパなどを設けて圧損を変化させて流量を制御するのに対し,ダンパなどを設けずに電動機で速度制御することでも流量制御が可能である。このとき,風量は速度に対して〔(ウ)〕して変化し,電動機に必要な電力は速度に対して〔(エ)〕して変化する特性が得られる。したがって,必要流量に絞って運転する機会の多いシステムでは,電動機で速度制御することで大きな省エネルギー効果が得られる。

 上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)比例する2乗に比例する比例3乗に比例する
(2)比例する一定の比例2乗に比例する
(3)比例する一定の2乗に比例する3乗に比例する
(4)一定の2乗に比例する比例3乗に比例する
(5)一定の2乗に比例する比例2乗に比例する

出題のポイント:負荷は2種類に分かれる

電動機の負荷は、速度とトルクの関係で分類できます。本問はそのうち2つ——定トルク負荷と二乗トルク負荷の対比です。

(ア)鉛直移動体(イ)流体搬送
代表例エレベータ、巻上機、コンベヤ送風機、ポンプ
トルク速度によらず一定★速度の2乗に比例
出力(P=ωT)速度に比例★速度の3乗に比例
速度制御の省エネ効果小さい★非常に大きい

鉛直移動体のトルクが一定なのは、荷の重さが速度に関係ないからです。ゆっくり上げても速く上げても、支える力は同じ Mg——だからトルクも一定になります。

流体搬送では事情が違います速く回すほど流速が上がり、抵抗も強くなる——流体の抵抗は速度の2乗に比例するので、トルクも2乗に比例するのです。

鉛直移動体のトルク一定特性と、送風機ポンプのトルクが速度の二乗で増える特性を並べた正しいグラフ
鉛直移動体は定トルク、送風機・ポンプは速度の二乗に比例するトルク特性です。

(ウ)(エ)1乗・2乗・3乗の関係

3つの指数がどう繋がっているか——P=ωT というたった1本の式から導けます

回転体の出力

\( P=\omega T\propto n\times n^{2}=n^{3} \)

角速度ωは回転速度n に比例——それにトルク(n2に比例)を掛けるから、出力はn3になります。

速度nとの関係理由
風量(流量)Qn に比例(1乗)1回転で送る量が一定だから
風圧(揚程)Hn2 に比例流速の2乗に比例するから
トルク Tn2 に比例抵抗が2乗で増えるから
電力 P★n3 に比例P=QH ∝ n×n2

「風量は1乗、電力は3乗」——この2つを覚えれば(ウ)(エ)は即答できます。P=QH という関係からも、1+2=3 と確かめられるのが便利です。

平成29年度A問題12の空欄を一定トルク、速度二乗トルク、風量は速度に比例、電力は速度三乗として答え4とする図
4つの空欄が一致する組合せは(4)です。
答え(ア)一定の (イ)2乗に比例する (ウ)比例 (エ)3乗に比例する——正解は (4)です。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「比例する」としている(1)(2)(3)は誤り——エレベータのトルクは速度に関係ないからです。「速く上げるほど力が要る」と思い込むと引っかかります
(5)は(エ)を2乗としている——トルクが2乗だから電力も2乗、と早合点した場合の誤りです。電力はトルク×角速度なので、もうひとつ n が掛かる——この1段を忘れないでください

なぜ速度制御が省エネになるのか

ダンパで絞る方法と、速度を落とす方法を比べてみましょう同じ「風量を減らす」でも、結果はまったく違います

風量ダンパ制御の電力速度制御の電力(n3
100 %100 %100 %
80 %約90 %51 %大きい
50 %約75 %★12.5 %非常に大きい

ダンパは「蛇口を細くする」ようなもの——送風機は同じだけ働いていて、絞った分が損失になるだけです。だから電力はあまり減りません

速度を落とせば、送風機自体が仕事を減らします——3乗で効くので劇的問題文の「必要流量に絞って運転する機会の多いシステム」——絞る時間が長いほど効果が積み上がるという意味です。

ビルの空調は、年間の大半を部分負荷で運転しています。だからインバータ導入の効果が非常に大きい——省エネルギー法でも推奨されている代表的な対策です。

⏱️ 本番での進め方
①(ア)鉛直移動体は定トルク。速度に関係なく荷は同じ重さ。
②(イ)流体搬送は速度の2乗。抵抗が2乗で増える。
③(ウ)風量は1乗。(エ)電力は3乗。
④ P=ωT で n が1つ増える。2乗のままにしない。

💡 覚え方
「流量1乗・圧力2乗・動力3乗」——ポンプでも送風機でも同じ相似則そして「エレベータは定トルク」——2つの負荷の型を対比して覚えてください

この相似則を数値で問う問題が平成21年度 A問題10にあります(電動機応用:ダンパ制御とインバータ制御の消費電力)。風量50 %で電力12.5 %という計算——本問の(エ)がそのまま数値になった設問です。

送風機の風量は速度に比例、トルクは速度の二乗、電力は速度の三乗に比例する相似則を示す図
P=ωTとω∝nから、T∝n²ならP∝n³になります。

負荷特性のもう一つの型:定出力負荷

本問には出てきませんでしたが、3つめの型として定出力負荷があります。3つ並べて整理しておきましょう

トルク出力代表例
定トルク負荷一定速度に比例エレベータ、巻上機、コンベヤ
定出力負荷速度に反比例一定巻取機、工作機械の主軸
二乗トルク負荷速度の2乗に比例速度の3乗に比例送風機、ポンプ

定出力負荷の例が巻取機です。紙やフィルムを一定の張力で巻き取るとき、巻き径が太くなるほど回転を遅くする——そのぶんトルクは大きくなり、出力は一定に保たれます

工作機械の主軸も同じ太い材料を削るときは低速・大トルク、細い材料なら高速・小トルク——切削できる能力(=出力)は同じだからです。

インバータ駆動では、基底周波数を境に特性が変わります基底周波数以下はV/f一定で定トルク、それ以上は電圧が飽和して定出力——1台の電動機で2つの領域を使い分けられるのです。

負荷特性と始動トルクの関係

どの型の負荷かは、電動機の選定にも直結します。始動時に必要なトルクがまったく違うからです。

負荷の型始動時のトルク電動機に求められること
定トルク(巻上機)★定格と同じだけ必要大きな始動トルク
二乗トルク(送風機)ほぼ0でよい始動トルクは小さくてよい

送風機は止まっている状態ではほとんど抵抗がありません——速度が0ならトルクも0だからです。だから始動が楽で、簡単な始動方式で済みます

巻上機はまったく逆止まっていても荷の重さがそのままかかる——始動の瞬間から定格トルク以上が必要です。同じ出力の電動機でも、用途によって選び方が変わるのはこのためです。

まとめ

(ア)鉛直移動体一定のトルク
(イ)流体搬送2乗に比例するトルク
(ウ)風量比例(1乗)
(エ)電力3乗に比例する
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・送風機のダンパ制御とインバータ制御の比較(平成21年度):【機械】平成21年度A問題10
・電動機トルク特性曲線と運転点の安定性(平成24年度):【機械】平成24年度A問題5

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成24年度A問題5(電動機応用19)
【機械】平成21年度A問題10(電動機応用20)
【機械】令和2年度A問題11(電動機応用17)
◀ 電動機応用17:【機械】令和2年度A問題11電動機応用19:【機械】平成24年度A問題5
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