今回は令和7年度上期 機械科目 A問題11を解説します。電動機出力4kW・質量900kg・機械効率90%の巻上機で、一定速度で巻き上げているときの巻上速度を逆算する計算問題です。
巻上機の電動機出力の公式P=(9.8Mv/η)×10-3〔kW〕をvについて解き、v=Pη×103/(9.8M) を計算します。
令和7年度上期 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和7年度上期 A問題11
巻上機によって電動機出力4kWで質量900kgの物体を一定速度で巻き上げているときの巻上速度の値〔m/s〕として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし,機械効率は90〔%〕,ロープの質量及び加速に要する動力については考慮しないものとする。なお,重力加速度は9.8〔m/s2〕とする。
(1)0.37 (2)0.41 (3)0.45 (4)0.59 (5)0.87〔m/s〕
出題のポイント:同じ公式を速度について解く
巻上機の公式を、今度は速度vについて解く——それだけの問題です。ただし効率の位置を間違えると答えが変わります。
この式をvについて解くと、ηが分子に移ります。「電動機出力を求めるときは割る」→「速度を求めるときは掛ける」——移項すれば当然そうなるのですが、混乱しやすいところです。
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★ηが分子に来る
意味で考えれば迷いません。電動機が出した4 kW のうち、荷に届くのは90 %の3.6 kW だけ——その3.6 kW で持ち上げられる速度を求めればよいのです。

計算する
電動機出力の90 %
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動力÷力=速度

⚠️ よくある間違い
(3) 0.45 m/sは効率を無視した値(4000/8820=0.4535)——電動機出力がそのまま荷に届くと考えた場合です。
(1) 0.37 m/sは効率で割ってしまった値(0.4535×0.81 相当)。ηを掛けるか割るかを間違えた誤答が両側に置かれています。
「効率を考えれば速度は遅くなる」——だから効率なしの0.45 より小さい値が答えだと見当がつきます。
2つの公式は同じもの
巻上機の問題は、問われ方が変わるだけで公式はひとつです。どの文字を求めるかで、式の見た目が変わるだけ——3つの形を暗記するのではなく、1つの関係から作り出してください。
| 求めるもの | 式 | ηの位置 |
| 電動機出力P | \( P=9.8Mv/\eta \) | 分母(割る) |
| 速度v | \( v=P\eta/(9.8M) \) | 分子(掛ける) |
| 質量M | \( M=P\eta/(9.8v) \) | 分子(掛ける) |
覚えるべき関係はひとつ——「電動機出力×効率=9.8Mv」。左辺が「電動機が出して実際に荷へ届いた動力」、右辺が「荷を持ち上げるのに要る動力」——この釣り合いから、どの文字でも求められます。
実際の巻上機で考えること
本問は「一定速度」「加速に要する動力は考慮しない」という条件付きです。実際の設計では、起動時の加速分も加える必要があります。
| 考慮する項目 | 本問 | 実際の設計 |
| 荷の重量 | 考慮する | 考慮する |
| 加速に要する力 | 無視 | ★考慮する(起動時が最大) |
| ロープの質量 | 無視 | 考慮する(高揚程ほど効く) |
| つり合いおもり | なし | エレベータでは必須 |
エレベータにはつり合いおもり(カウンターウェイト)があります。かごの重量+定員の半分ぐらいの重さを反対側に吊るす——電動機が支えるのは差分だけでよくなるのです。
これで必要な電動機出力が大幅に減ります。しかも下降時には、おもりが上がるので回生も効く——省エネルギーの観点からも合理的な仕組みです。
⏱️ 本番での進め方
① 電動機出力×効率=9.8Mv。この釣り合いがすべて。
② 荷に届く動力=0.90×4=3.6 kW=3600 W。
③ 必要な力=900×9.8=8820 N。3600÷8820=0.41 m/s。
④ 効率なしなら0.45。答えはそれより小さいはず。
💡 覚え方
「電動機出力×効率=9.8Mv」——この1本の式から、P も v も M も出せます。ηを掛けるか割るかで迷ったら、「荷に届くのは一部だけ」と考えれば必ず正しい向きになります。
同じ公式を電動機出力について解く問題が令和3年度 A問題10にあります(電動機応用:巻上機の電動機出力を求める)。本問とちょうど逆向き——2問を並べて解けば、式変形の向きで迷わなくなります。

はずみ車(フライホイール)の役割
巻上機やプレス機など、負荷が急に変わる装置では、はずみ車が使われます。回転体の慣性を利用して、電動機の負担を平準化する仕組みです。
負荷が重くなると回転が少し落ち、その分のエネルギーがはずみ車から供給されます。負荷が軽くなると回転が上がり、再びエネルギーを蓄える——電動機から見れば、平均的な負荷を担うだけでよくなるのです。
| はずみ車なし | はずみ車あり | |
| 電動機の負荷 | ピークに合わせる必要 | 平均に合わせればよい |
| 必要な容量 | 大きい | ★小さくできる |
| 電源への影響 | 変動が大きい | なめらかになる |
電動機の容量を小さくできるだけでなく、電源への負担も軽くなります——急激な負荷変動は電圧変動(フリッカ)の原因になるからです。
はずみ車が効くには、回転速度が少し落ちることが前提です。速度が変わらなければエネルギーは出てこない——だから、すべりの大きい巻線形誘導電動機と組み合わせるのが定石でした。
まとめ
| v=Pη×10³/(9.8M) | ≒0.41m/s |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・巻上機の電動機出力(令和3年度):【機械】令和3年度A問題10
・巻上機の電動機出力(令和6年度上期):【機械】令和6年度上期A問題11

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