今回は平成24年度 機械科目 B問題15を解説します。★パワエレ43(令和5年度上期B問題16)とほぼ同一の回路・設問構成の再出題で、単相インバータの負荷電流・直流電流の波形選択(a)と、特徴に関する正誤問題(b)です。
誘導性負荷のため電流は指数関数的に変化します。(b)で誤りとなるのは、ダイオードが導通することでパワートランジスタを「転流」させているという記述で、実際はダイオード電流がT/2+αで0Aになってから初めてパワートランジスタがオンできる、という点が違います。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和5年度上期B問題16 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成24年度 機械科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成24年度 B問題15
図1は,単相インバータで誘導性負荷に給電する基本回路を示す。負荷電流i0と直流電流idは図示する矢印の向きを正の方向として,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)出力交流電圧の1周期に各パワートランジスタが1回オンオフする運転において,図2に示すように,パワートランジスタS1〜S4のオンオフ信号波形に対して,負荷電流i0の正しい波形が(ア)〜(ウ),直流電流idの正しい波形が(エ),(オ)のいずれかに示されている。その正しい波形の組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(a)パワートランジスタS1〜S4のオンオフ信号波形に対して,負荷電流i0の正しい波形が(ア)〜(ウ),直流電流idの正しい波形が(エ),(オ)のいずれかに示されている。その正しい波形の組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)(ア)と(エ)
(2)(イ)と(エ)
(3)(ウ)と(オ)
(4)(ア)と(オ)
(5)(イ)と(オ)(b)単相インバータの特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ(選択肢はパワエレ43(b)と同一内容)。
(1)図1は電圧形インバータであり,直流電源Eの高周波インピーダンスが低いことが要求される。
(2)交流出力の調整は,S1〜S4に与えるオンオフ信号の幅T/2を短くすることによって交流周波数を高くすることができる。又は,Eの直流電圧を高くすることによって交流電圧を高くすることができる。
(3)図1に示されたパワートランジスタを,IGBT又はパワーMOSFETに置換えてもインバータを実現できる。
(4)ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためであり,さらにダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている。
(5)インダクタンスを含む負荷としては誘導電動機も駆動できる。運転中に負荷の力率が低くなると,電流がダイオードに流れる時間が長くなる。


出題のポイント:誘導性負荷では電流が連続する
(a)は波形の選択、(b)は記述の正誤——どちらも「誘導性負荷だから電流が急変できない」という一点から出発します。
リアクトルに流れる電流は、瞬時には変えられません。電圧を反転させても、電流はしばらく同じ向きに流れ続ける——指数関数的に減っていき、やがて向きを変えるのです。
| 純抵抗負荷 | 誘導性負荷(本問) | |
| 負荷電流の形 | 電圧と同じ方形波 | 指数関数的に増減する連続波形 |
| 電圧と電流の符号 | 常に同じ | 切替直後は逆になる期間がある |
| 直流側電流 id | 常に正 | ★負の期間(回生)がある |
| 逆並列ダイオード | 不要 | ★必須 |
(a)の答えは io=(ア)、id=(エ)です。負荷電流は角のない連続した波形、直流側電流には負の区間がある——この2点で他の候補が落ちます。



(b) 「転流させている」という記述はどこが違うのか
誤りは(4)です。「ダイオードが導通することによる逆電圧で、パワートランジスタを転流させている」——因果関係が逆になっています。
| 誤りの記述(4) | 実際の順序 | |
| 先に起きること | ダイオードが導通する | ダイオード電流が0になる |
| 次に起きること | その逆電圧でトランジスタが転流する | そこで初めてトランジスタがオンできる |
実際の順序はこうです。スイッチを切り替えた直後、負荷電流はまだ前の向きに流れている——その電流は逆並列ダイオードを通って直流電源へ戻ります。
電流が指数関数的に減り、T/2+α の時点で0になる。ダイオードが自然に切れて、そこで初めてパワートランジスタに電流が移る——ダイオードが「転流させている」のではなく、ダイオードが切れるのを「待っている」のです。
もしダイオードが導通しているうちにトランジスタをオンすれば、上下のアームが同時導通して短絡します。これを避けるためにデッドタイム(両方をオフにする短い期間)を設ける——実機のインバータでは必ず入れられている保護です。

逆並列ダイオードがなければどうなるか
誘導性負荷の電流は、行き場がなければ止まりません。むりに止めようとすれば、L·di/dt という莫大な電圧が発生する——素子が絶縁破壊で壊れます。
| ダイオードあり | ダイオードなし | |
| 切替直後の電流 | ダイオードを通って電源へ戻る | 行き場がない |
| 素子にかかる電圧 | 電源電圧どまり | ★跳ね上がって破壊 |
| エネルギー | 電源に回収される | 素子で熱になる |
だから電圧形インバータには、必ず逆並列ダイオードが組み込まれています。IGBTモジュールには最初から内蔵されているのが普通——「あって当たり前」なので、かえって役割を問われると答えにくいのです。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 誘導性負荷なので io は角のない連続波形=(ア)。
② id には負の回生区間がある=(エ)。
③(b) ダイオードは「転流させる」のではなく「切れるのを待たれる」側。
④ ダイオード電流が0になって初めてトランジスタがオンできる。
💡 覚え方
「ダイオードは通路であって引き金ではない」——役割はエネルギーを電源へ返すこと。そして「電流が0になってから次がオン」——順序を逆にした記述が誤りです。
出題履歴:令和5年度上期と同一問題
本問は令和5年度上期 B問題16とほぼ同じ問題です(パワエレ43:単相インバータの電流波形と環流ダイオード)。回路も設問構成も同じ——セットで解いておけば確実な得点源になります。
令和2年度 B問題16も同じテーマです(パワエレ:単相インバータの実効値と電流波形)。そちらでは(a)で方形波の実効値を問い、(b)で本問と同じ波形の組合せを問うています——3年度にわたって同じ図が使い回されていることになります。

デッドタイムがもたらす副作用
上下のアームが同時に導通しないよう、両方をオフにする短い期間(デッドタイム)を設ける——安全のために不可欠ですが、これが出力波形をわずかに歪ませます。
デッドタイムの間、出力電圧は「どちらのスイッチも決めていない」状態になります。実際には負荷電流の向きに応じて、逆並列ダイオードのどちらかが導通して電圧が決まる——つまり電流の向きで出力電圧がずれるのです。
| 負荷電流の向き | デッドタイム中に導通するもの | 出力電圧のずれ |
| 正(負荷へ流出) | 下アームのダイオード | 指令より低くなる |
| 負(負荷から流入) | 上アームのダイオード | 指令より高くなる |
ずれの向きが電流の符号で反転するので、出力には低次の高調波(5次・7次など)が現れます——電動機を低速で運転すると、トルクの脈動や異音として現れることがあります。
デッドタイムは短いほど歪みが小さいのですが、短すぎれば同時導通(アーム短絡)の危険があります。素子のターンオフ時間より確実に長く取るのが原則——IGBTなら数マイクロ秒程度です。
近年は、ずれの分をあらかじめ指令値に足し込む「デッドタイム補償」が広く使われます。電流の向きを検出して、補正量の符号を切り替える——本問で学んだ「電流の向きで導通する素子が変わる」という理解が、そのまま実務につながるのです。
まとめ
| (a)波形の組合せ | (ア)と(エ) |
| (b)誤りの記述 | (4) |
| 答え | (a)-(1),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相インバータの電流波形選択(令和5年度上期):【機械】令和5年度上期B問題16
・単相インバータの出力実効値と波形選択:【機械】令和2年度B問題16

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