今回は平成18年度 機械科目 A問題9を解説します。与えられた出力電圧波形vR(半波の正負が入れ替わる波形)を得ることができる電力変換回路を、5つの回路図から選ぶ問題です。
波形は制御遅れ角で制御されている(ダイオードのみの回路ではない)ことと、正負両方に現れる(全波整流や半波整流ではない)ことの2点から、逆並列接続された2個のサイリスタ(双方向スイッチ)による回路を選びます。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和4年度下期A問題10 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成18年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成18年度 A問題9
図に示す出力電圧波形vRを得ることができる電力変換回路として,正しいのは次のうちどれか。ただし,回路中の交流電源は正弦波交流電圧源とする。
回路候補(1)〜(5)は、下の問題図を参照してください。

出題のポイント:極性と立ち上がりの2点を見る
出力波形から回路を選ぶ問題は、2つの特徴だけで決着します。「正負どちらに現れるか」と「いつ立ち上がるか」——この2点で4通りに分類できます。
| 波形の特徴 | そこから分かること | 該当する回路 |
| 片側の極性だけ | 整流している | 整流回路(半波・全波) |
| 正負の両方に現れる | 整流していない | 交流電力調整装置 |
| 電源電圧と同時に立ち上がる | 制御していない | ダイオード |
| 途中から立ち上がる(頭が欠ける) | 位相制御している | サイリスタ |
本問の波形は正負の両方に現れています——整流していないということ。整流回路の出力は必ず片側の極性だけですから、この一点で整流回路の候補がすべて落ちます。
さらに各半サイクルの途中から立ち上がっている——位相制御されているということです。ダイオードなら電源電圧が0を横切った瞬間から導通するので、頭が欠けることはありません。


2つの特徴を組み合わせる
| 候補 | 正負に現れるか | 位相制御できるか | 判定 |
| ダイオード半波整流 | 片側のみ | できない | × |
| ダイオード全波整流 | 片側のみ | できない | × |
| サイリスタ整流 | 片側のみ | できる | ×(極性で不一致) |
| 逆並列サイリスタ | 両方 | できる | ○ |
サイリスタは一方向にしか流せないので、交流の両方の半サイクルを制御するには2個を逆向きに並べる必要があります。正の半サイクルは一方が、負の半サイクルはもう一方が担当する——それぞれに制御角αを与えれば、対称な波形が得られます。


抵抗負荷だから自然に消弧する
抵抗負荷では、電圧が0になれば電流も同時に0になります。だからサイリスタは半サイクルごとに確実にオフする——これを自然消弧(自然転流)と呼びます。
オフのタイミングを制御する必要がないので、オフできないサイリスタでも問題なく使えます——交流回路がサイリスタの得意な舞台である理由がここにあります。
もし負荷が誘導性なら話が変わります。電圧が0になっても電流はまだ流れ続けるので、導通期間が半サイクルを超えて延びます——波形も本問のような単純な形にはなりません。
問題文が抵抗負荷を前提にしているのは、波形が素直な形になるようにするため——負荷の種類が波形を決めるという関係を押さえておきましょう。
⏱️ 本番での進め方
①「正負両方に現れるか」を最初に見る。片側なら整流回路。
②「途中から立ち上がるか」を次に見る。頭が欠けていればサイリスタ。
③ 両方を満たすのは逆並列サイリスタ(トライアック相当)だけ。
④ 回路図を細かく読まなくても、この2点で判定できる。
💡 覚え方
「正負に現れたら交流出力、頭が欠けたら位相制御」——まず極性、次に立ち上がり。この順序を固定しておけば迷いません。
出題履歴:令和4年度下期にも同じ型が出ている
まったく同じ考え方で解ける問題が、令和4年度下期 A問題10でも出題されています(パワエレ37:出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ)。そちらも正解は (3)——16年隔てて、同じ判定手順が問われていることになります。


交流電力調整装置の出力はどれだけ下がるか
本問では波形を読むだけでしたが、制御角αと出力の関係も押さえておきましょう。抵抗負荷を双方向に位相制御した場合の実効値です。
| 制御角 α | 出力電圧(電源電圧に対する比) | 出力電力(最大に対する比) |
| 0° | 1.000 | 100 % |
| 60° | 0.897 | 80 % |
| 90° | 0.707 | 50 % |
| 120° | 0.446 | 20 % |
| 180° | 0 | 0 % |
α=90°でちょうど電力が半分になります。電圧は0.707倍(1/√2)——電力は電圧の2乗に比例するので0.5という関係です。
制御角と出力は直線関係ではありません。0°から60°まではあまり下がらず、90°付近で急に変化する——調光器のつまみが「最初は効きが鈍く、途中から急に暗くなる」のは、この特性のせいです。
実用の調光器では、この非直線性を電子回路で補正して、つまみの回転角と明るさが比例するように工夫されています——波形の理屈が、使い勝手の設計にまでつながっているのです。
波形問題で見るべき順序を決めておく
パワエレの波形問題は毎年のように出題されます。そのたびにゼロから考えるのではなく、見る順序を決めておく——それだけで解答時間が大きく変わります。
| 順 | 見るところ | 分かること |
| ① | 出力は正負どちらに現れるか | 片側=整流/両方=交流出力 |
| ② | いつ立ち上がるか | 0を横切った瞬間=ダイオード/途中=サイリスタ |
| ③ | 1周期に山がいくつあるか | 1つ=半波/2つ=全波(三相なら3つ・6つ) |
| ④ | 0になる期間があるか | ある=断続/ない=連続(リアクトル平滑) |
①と②で回路の種類がほぼ決まります。③は整流回路のなかでの区別、④は平滑方式の区別——必要になったところまで進めばよく、全部見る必要はありません。
本問なら①だけで整流回路が全部落ち、②で答えが決まりました。2つ見ただけで終わり——回路図を1つずつ丁寧に読む必要はないのです。
逆に、回路図から波形を描かせる問題もあります。その場合は同じ観点を逆向きに使う——「サイリスタがあるから頭が欠ける」「逆並列だから正負に出る」という具合です。
どちら向きに問われても、着目点は同じ——この4つの観点を持っておけば、パワエレの波形問題は怖くありません。
まとめ
| 波形の特徴 | 位相制御され、正負に反転 |
| 該当回路 | 逆並列サイリスタ(双方向スイッチ) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相双方向サイリスタスイッチの運転判定:【機械】平成23年度A問題9
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(令和4年下期):【機械】令和4年度下期A問題10

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