今回は令和7年度上期 機械科目 A問題7を解説します。スイッチトリラクタンスモータ(SRM)の構造と特徴を問う穴埋め問題です。
SRMは固定子が集中巻、回転子が突極形(永久磁石なし)。リラクタンストルクで回転し、構造が簡単で高速回転に適します。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
次の文章は,スイッチトリラクタンスモータ(SRM)に関する記述である。
一般に,SRMの構造は,固定子の巻線が(ア),回転子の形状が(イ)となっている。固定子の巻線に流す電流をスイッチで切り替えると,(イ)の回転子が,固定子の磁極に引き付けられて回転する。
このモータは,回転子の構造が簡単で強固であるため,(ウ)に適している。また,ネオジムなどの(エ)を使用せず,鉄心と巻線のみで磁気回路を構成できる特長を有する。空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 集中巻 円筒形 低速回転 軟磁性体 (2) 分布巻 突極形 低速回転 希土類磁石 (3) 集中巻 突極形 高速回転 希土類磁石 (4) 分布巻 円筒形 高速回転 希土類磁石 (5) 集中巻 突極形 低速回転 軟磁性体
出題のポイント:SRMは「磁石も巻線もない回転子」
スイッチトリラクタンスモータ(SRM)の最大の特徴は、回転子に何も付いていないことです。巻線も、導体も、永久磁石もありません——ただの鉄の塊(けい素鋼板を積んだ突極)です。
| 固定子 | 回転子 | |
| 形 | 突極(例:6極) | 突極(例:4極) |
| 巻線 | 集中巻 | なし |
| 導体 | — | なし |
| 永久磁石 | — | なし |
| 材料 | 鉄心+銅線 | 鉄心だけ |
だから構造が簡単で強固になります。回転する部分に壊れるものがないのですから当然です——これが「高速回転に適している」理由です。

リラクタンストルクとは何か
SRMが回る原理は、他の電動機とはまったく違います。「磁気抵抗(リラクタンス)が小さくなる位置へ動こうとする力」——それだけです。
磁石にクリップを近づけると、クリップが磁石に吸い寄せられます。あれと同じです。鉄は磁束の通り道になりたがるので、磁束が通りやすい位置(磁気抵抗が最小の位置)へ引き寄せられます。
| 回転子の位置 | 磁気抵抗 | 働く力 |
| 固定子の磁極とずれている | 大きい | そろう向きへ引き寄せられる |
| 固定子の磁極とそろっている | 最小 | 力は働かない(安定点) |
そろってしまったら、そこで止まってしまいます。だから、そろう直前で電流を切って、次の磁極に電流を流す——この切り替え(スイッチング)を繰り返すことで回り続けます。「スイッチト」という名前は、この動作から来ています。
切り替えのタイミングを決めるには、回転子の位置を知らなければなりません。位置センサか、電流波形から位置を推定する演算が必須——制御装置なしには一切回らない電動機です。


なぜ「希土類磁石を使わない」ことが特長なのか
(エ)の「ネオジムなどの希土類磁石を使用せず」——これがSRMが注目される最大の理由です。
| 希土類磁石の問題 | 内容 |
| 資源の偏在 | 産出国が限られ、供給が不安定になりやすい |
| 価格 | 高価で、価格変動も大きい |
| 耐熱性 | 高温で磁力が落ちる(不可逆減磁の危険) |
| リサイクル | 回収・再利用が難しい |
永久磁石同期電動機(PMSM)は高効率ですが、この希土類磁石に依存しています。SRMは鉄心と巻線だけで作れるので、資源リスクからも価格変動からも自由です。
選択肢の「軟磁性体」を選んではいけません。軟磁性体とは、まさに鉄心に使う材料そのもの——SRMは軟磁性体(けい素鋼板)を使って作る電動機です。「使わない」のは硬磁性体である永久磁石のほうです。
3種類の電動機を並べて比べる
| 誘導電動機 | PMSM | SRM | |
| 回転子 | 導体(かご形) | 永久磁石 | 鉄心だけ |
| 二次銅損 | ある | ない | ない |
| 希土類磁石 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 効率 | 良い | 最も良い | 良い |
| 位置検出 | 不要(V/f なら) | 必要 | 必須 |
| 高速回転 | 可 | 磁石の飛散に注意 | 得意 |
| 弱点 | 二次銅損 | 磁石のコストと資源 | トルク脈動と騒音 |
SRMの弱点は、トルクの脈動と騒音です。磁極が引き寄せられる力を断続的に使うので、トルクが滑らかにならず、振動と音が出やすい——低速で静かに回したい用途には向きません。
逆に、高速で回してしまえば脈動は目立たなくなります。「高速回転に適している」のは、構造が強固だからという理由に加えて、この事情もあると考えてよいでしょう。
電気自動車の駆動用として、PMSM の代替候補として研究が続いています。資源制約を受けずに高効率のモータが作れる——そこに価値があるのです。
⏱️ 本番での進め方
① SRM=集中巻+突極形(回転子は鉄心だけ)。
② リラクタンストルク=磁気抵抗が小さくなる向きへ引き寄せられる力。
③ 「使わない」のは希土類磁石。軟磁性体(鉄心)は使う。
④ 構造が強固=高速回転向き。弱点はトルク脈動と騒音。
💡 覚え方
「SRM=集中巻+突極形(磁石なし)。リラクタンストルクで回転、高速回転向き、希土類磁石不要」。回転子には巻線も導体も磁石もない鉄心だけ——だから強固で高速に向く。切り替えのために位置検出が必須。弱点はトルク脈動と騒音。
⚠️ よくある間違い
(イ)に「円筒形」を選ぶのが典型です。突極でなければリラクタンストルクが生じません——磁気抵抗に差があることが動作原理そのものです。もう一つは(エ)に「軟磁性体」——軟磁性体は鉄心の材料で、SRMはそれを使って作られています。
リラクタンストルクを使う電動機の系譜
「磁気抵抗が小さくなる向きへ引き寄せられる」というリラクタンストルクは、SRM だけのものではありません。いくつもの電動機が、程度の差はあれこの力を使っています。
| 電動機 | 磁石によるトルク | リラクタンストルク | 特徴 |
| 突極形同期機 | あり(界磁巻線) | あり | 水車発電機など。xd≠xq |
| SPMSM(表面磁石) | あり | ほぼなし | 磁石が表面にあり空隙が均一 |
| IPMSM(埋込磁石) | あり | あり | 両方使えるので高効率。EV・エアコンの主流 |
| SynRM | なし | あり | 磁石なし・正弦波駆動・分布巻 |
| SRM(本問) | なし | あり | 磁石なし・方形波駆動・集中巻 |
SRM と SynRM は「磁石を使わずリラクタンストルクだけで回る」という点で同じ仲間です。違いは駆動のしかた——SynRM は正弦波電流で滑らかに回し、SRM はスイッチで方形波的に切り替えます。
そのため SynRM のほうがトルク脈動が小さく静かですが、SRM のほうが構造が単純で強固です。「静かさを取るか、頑丈さを取るか」——用途で選び分けることになります。
いま最も普及しているのは IPMSMです。磁石を回転子の内部に埋め込むことで、磁石トルクとリラクタンストルクの両方を使える——効率で他を上回ります。ただし希土類磁石が必要で、そこがSRM や SynRM が代替候補として研究され続けている理由です。
「突極であればリラクタンストルクが生じる」——この一点で、水車発電機からSRM まで一本の線でつながります。本問の(イ)が「突極形」でなければならない理由も、ここにあります。
まとめ
| (ア) | 集中巻 |
| (イ) | 突極形 |
| (ウ) | 高速回転 |
| (エ) | 希土類磁石 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・永久磁石同期モータ:【機械】令和4年度下期A問題6
・ステッピングモータ:【機械】令和4年度上期A問題6

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