今回は平成24年度 機械科目 A問題6を解説します。同期発電機の自己励磁現象を問う穴埋め問題です。
無励磁でも進み(容量性)負荷をつなぐと増磁作用で電圧が上昇し続けます。これが自己励磁です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
次の文章は,同期発電機の自己励磁現象に関する記述である。
同期発電機は励磁電流が零の場合でも残留磁気によってわずかな電圧を発生し,発電機に(ア)力率の負荷をかけると,その(ア)電流による電機子反作用は(イ)作用をするので,発電機の端子電圧は(ウ)する。端子電圧が(ウ)すれば負荷電流は更に(エ)する。
このような現象を繰り返すと,発電機の端子電圧は(オ)負荷に流れる電流と負荷の端子電圧との関係を示す直線と発電機の無負荷飽和曲線との交点まで(ウ)する。このように無励磁の同期発電機に(ア)電流が流れ,電圧が(ウ)する現象を同期発電機の自己励磁という。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 進み 増磁 低下 増加 容量性 (2) 進み 減磁 低下 減少 誘導性 (3) 遅れ 減磁 低下 減少 誘導性 (4) 遅れ 増磁 上昇 増加 誘導性 (5) 進み 増磁 上昇 増加 容量性
出題のポイント:正帰還のサイクルを追う
自己励磁は「原因が結果を強める」現象です。5つの空欄は、そのサイクルを1周する順番に並んでいます——因果の順序をたどれば、迷わず埋まります。
| 段階 | 何が起きるか | 空欄 |
| ① 出発点 | 励磁電流ゼロでも残留磁気でわずかな電圧が出る | — |
| ② 負荷をつなぐ | 容量性(進み力率)の負荷に進み電流が流れる | (ア)=進み |
| ③ 電機子反作用 | 進み電流は磁束を強める | (イ)=増磁 |
| ④ 電圧が変化 | 磁束が増えたので端子電圧が上がる | (ウ)=上昇 |
| ⑤ 電流が変化 | 電圧が上がったので電流も増える | (エ)=増加 |
| ⑥ ②へ戻る | さらに増磁 → さらに電圧上昇…… | (オ)=容量性 |
②から⑤が一巡して②に戻る——この輪が回り続けることで電圧がどんどん上がっていきます。「増磁 → 上昇 → 増加 → さらに増磁」という向きをつかめば、5つの空欄は一気に決まります。

なぜ進み電流だけが増磁するのか
電機子反作用の向きは、負荷の力率によって変わります。これが同期機の最も重要な性質のひとつです。
| 負荷の力率 | 電機子電流の位相 | 電機子反作用 | 端子電圧への影響 |
| 遅れ(誘導性) | 電圧より遅れる | 減磁作用 | 下がる |
| 力率1(抵抗) | 同相 | 交差磁化作用 | わずかに下がる |
| 進み(容量性) | 電圧より進む | 増磁作用 | 上がる |
遅れ電流なら減磁、進み電流なら増磁——正反対です。自己励磁が起きるのは進み電流のときだけで、遅れ電流では磁束が弱まるので、この正帰還は成立しません。
(ア)に「遅れ」を選ぶと、(イ)は減磁、(ウ)は低下となり、電圧が下がっていくことになります。それは自己励磁ではなく、単なる電圧降下——問題文が「自己励磁という」と結んでいるので、電圧は上がらなければなりません。


電圧はどこまで上がるのか
正帰還がかかると電圧は際限なく上がりそうですが、実際にはある値で止まります。問題文の「無負荷飽和曲線との交点」がその答えです。
| 曲線 | 何を表すか | 形 |
| 無負荷飽和曲線 | 励磁電流に対して発電機が出せる電圧 | はじめ直線的に伸び、磁気飽和で寝てくる |
| 容量性負荷の特性直線 | ある電流を流すために必要な電圧(V=I/ωC) | 原点を通る直線 |
2つの曲線の交点が、電圧が落ち着く点です。飽和曲線が寝てくるおかげで、直線と必ずどこかで交わる——磁気飽和が「歯止め」になっているわけです。
もし鉄心が飽和しなければ、電圧は無限に上がってしまいます。直流発電機の自励が飽和のおかげで安定するのと、まったく同じ構図です。「飽和=悪」ではなく、こういう場面では飽和が守ってくれるということになります。
ただし、落ち着く先が定格電圧より高ければ意味がありません。絶縁が耐えられない電圧まで上がってしまう——だから自己励磁は「防ぐべき現象」とされています。
実際にはどんな場面で起きるのか
「容量性負荷」と言われてもピンと来ないかもしれません。実際に自己励磁が問題になるのは、無負荷の長距離送電線を充電するときです。
送電線には対地静電容量があります。負荷をつながずに送電線だけを充電すると、その静電容量が容量性負荷として働く——長い線路ほど容量が大きく、進み電流も大きくなります。
| 対策 | なぜ効くか |
| 短絡比の大きい発電機を使う | 短絡比が大きい=同期リアクタンスが小さい=電機子反作用が弱い |
| 発電機の容量を大きくする | 相対的に充電電流が小さくなる |
| 複数台を並列にして充電する | 1台あたりの充電電流を減らせる |
| 分路リアクトルを入れる | 遅れ電流で進み電流を打ち消す |
いちばん本質的なのは短絡比です。短絡比が大きい機械は電機子反作用の影響を受けにくいので、進み電流が流れても磁束があまり強まりません——だから自己励磁が起きにくいのです。
水車発電機は短絡比が0.9〜1.2 と大きく、タービン発電機は0.5〜0.7 と小さい——だから自己励磁が問題になりやすいのはタービン発電機のほうだということになります。「短絡比が大きい=鈍感で安定」という感覚を持っておくと、同期機の問題全体で役に立ちます。
⏱️ 本番での進め方
① 因果のサイクルを1周たどる:進み → 増磁 → 上昇 → 増加 → 進み……
② 遅れ=減磁、進み=増磁。この対が同期機の基本。
③ 電圧が止まるのは磁気飽和のおかげ。無負荷飽和曲線と充電特性の交点。
④ 対策の本命は短絡比を大きくすること。
💡 覚え方
自己励磁は「進み(容量性)電流 → 増磁作用 → 電圧上昇 → 電流増加」の正帰還。残留磁気が出発点で、無負荷飽和曲線と充電特性直線の交点で止まる(磁気飽和が歯止め)。短絡比が大きいと起こりにくい——長距離送電線の充電で問題になる。
⚠️ よくある間違い
(ア)に「遅れ」を選ぶのが典型です。遅れ電流は減磁作用なので、電圧は下がってしまい正帰還になりません。もう一つは増磁と減磁の対応を逆に覚えていること——「進みは増やす、遅れは減らす」と結びつけてください。
短絡比とは何か——同期機を読む最重要の指標
自己励磁の対策として出てきた「短絡比」は、同期機のあらゆる性質に関わる指標です。ここで定義を押さえておくと、これから先の同期機の問題がぐっと読みやすくなります。
| 短絡比が大きい | 短絡比が小さい | |
| 同期リアクタンス | 小さい | 大きい |
| 電機子反作用 | 弱い | 強い |
| 電圧変動率 | 小さい(安定) | 大きい |
| 自己励磁 | 起きにくい | 起きやすい |
| 安定度 | 高い | 低い |
| 短絡電流 | 大きい | 小さい |
| 機械の大きさ・価格 | 大きく重く高価 | 小さく安い |
| 呼び名 | 鉄機械 | 銅機械 |
短絡比が大きい機械は「鈍感で安定」です。負荷が変わっても電圧が動きにくく、自己励磁も起きにくい——そのかわり鉄を多く使うので大きく重く、値段も張ります。
代表的な値は、水車発電機で0.9〜1.2、タービン発電機で0.5〜0.7です。水車発電機は低速なので極数が多く、直径が大きい=鉄が多い——自然に短絡比が大きくなります。タービン発電機は高速回転で細長く、鉄が少ないので短絡比が小さくなります。
だから自己励磁が問題になりやすいのはタービン発電機のほうだということになります。「短絡比が大きい=鈍感で安定」という一言を持っておけば、電圧変動率・安定度・自己励磁のどれを聞かれても向きが判断できます。
まとめ
| (ア) | 進み |
| (イ) | 増磁 |
| (ウ) | 上昇 |
| (エ) | 増加 |
| (オ) | 容量性 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電機子反作用:【機械】平成26年度A問題5
・短絡比の記述:【機械】令和5年度上期A問題5

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