今回は平成21年度 機械科目 A問題4を解説します。同期発電機を商用電源に並列する条件と、位相差による突入電流を問う穴埋め問題です。
電圧の大きさ・周波数・位相を一致させます。位相差180°のとき突入電流が最大になります。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
同期発電機を商用電源(電力系統)に遮断器を介して接続するためには,同期発電機の(ア)の大きさ,(イ)及び位相が商用電源のそれらと一致していなければならない。これらの条件が一つでも満足されていなければ,遮断器を投入したときに過大な電流が流れることがあり,同期発電機が損傷する。
仮に,(ア)の大きさ,(イ)が一致したとしても,位相が異なる場合には位相差による電流が生じる。同期発電機が無負荷のとき,この電流が最大となるのは位相差が(ウ)〔°〕のときである。
同期発電機の(ア)の大きさ,(イ)及び位相を商用電源のそれらと一致させるには,(エ)及び調速装置を用いて調整する。空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる語句又は数値の組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) インピーダンス 周波数 60 誘導電圧調整器 (2) 電圧 回転速度 60 電圧調整装置 (3) 電圧 周波数 60 誘導電圧調整器 (4) インピーダンス 回転速度 180 電圧調整装置 (5) 電圧 周波数 180 電圧調整装置
出題のポイント:一致させる量と、合わせる装置
並列投入の問題は「何を一致させるか」と「何で合わせるか」の2つを聞いてきます。本問は最後に(エ)で装置の名前まで問うているのが特徴です。
| 一致させるもの | 合わせる装置 | 操作の対象 |
| 電圧の大きさ | 電圧調整装置(励磁を調整) | 界磁電流 |
| 周波数・位相 | 調速装置(ガバナ) | 原動機の回転速度 |
| 相回転 | —(配線で決まる) | 設置時に確認 |
問題文の「(エ)及び調速装置を用いて調整する」——調速装置が並んでいるのですから、(エ)は電圧側の装置です。「誘導電圧調整器」は配電線の電圧を調整する別の機器で、発電機の励磁を調整するものではありません。

空欄を確定する
(ア)=電圧。一致させるのは電圧の大きさです。「インピーダンス」を一致させるという操作はありません——機械の設計で決まってしまう量です。
(イ)=周波数。「回転速度」ではありません——極数が違う発電機どうしなら、回転速度が違っても周波数は一致し得ます。系統でそろえるべきは周波数のほうです。
(ウ)=180。位相差が180°のとき、2つの電圧が真逆を向いて差が最大になります。
(エ)=電圧調整装置。調速装置と対になる、電圧側の調整装置です。


位相差と電圧差の関係を式で見る
(ウ)が180°である理由を、式で確かめておきましょう。大きさの等しい2つの電圧に位相差 θ があるとき、その差の大きさは次のようになります。
| 位相差 θ | sin(θ/2) | 電圧差 | 突入電流の目安 |
| 0° | 0 | 0 | 0(理想的な投入) |
| 60° | 0.5 | E | 短絡電流の半分程度 |
| 90° | 0.707 | 1.41E | かなり大きい |
| 180° | 1.0 | 2E | 最大——短絡より厳しい |
180°のときは、2つの起電力が足し合わさって回路に加わります。片方を短絡したときの電圧が E であることを思えば、2E は短絡よりも厳しい条件だということになります。
「60°」を選んでしまう誤答が用意されているのは、60°という数字が三相回路でよく出てくるからでしょう。しかしこの式に当てはめれば、60°では電圧差が E にしかなりません——最大は明らかに180°です。
「電圧調整装置」と「調速装置」の役割分担
(エ)で問われている電圧調整装置は、発電機の励磁を制御して端子電圧を保つ装置です。自動電圧調整器(AVR)と呼ばれることもあります。
| 装置 | 制御するもの | 並列前 | 並列後 |
| 電圧調整装置(AVR) | 界磁電流 → 端子電圧 | 系統電圧に合わせる | 無効電力の分担を決める |
| 調速装置(ガバナ) | 原動機の出力 → 回転速度 | 周波数と位相を合わせる | 有効電力の分担を決める |
並列前と並列後で、同じ装置の役割が変わるのが興味深いところです。並列前は「合わせる」ため、並列後は「分担を決める」ため——系統につながると速度も電圧も系統に固定されるので、操作の結果が電力の分担として現れるのです。
「有効は調速装置、無効は電圧調整装置」——この分離が同期発電機の運用の基本になります。ガバナをいくら開いても無効電力は増えませんし、励磁を強めても有効電力は増えません。
⏱️ 本番での進め方
① 一致させるのは「電圧の大きさ・周波数・位相」。インピーダンスではない。
② (イ)は「回転速度」ではなく「周波数」——極数が違えば速度は別物。
③ 電圧差は 2E sin(θ/2)——180°で最大。
④ 電圧は電圧調整装置、周波数・位相は調速装置。
💡 覚え方
「並列条件=電圧・周波数・位相。位相差180°で突入電流最大。電圧は電圧調整装置、周波数・位相は調速装置」。電圧差は 2E sin(θ/2) で180°なら2E=短絡より厳しい。並列後は同じ装置が「分担を決める」役に変わる(有効は調速、無効は励磁)。
⚠️ よくある間違い
突入電流が最大になる位相差を60°とするのが用意された誤答です。2E sin(θ/2) が最大になるのは θ=180°——60°では E にしかなりません。もう一つは(ア)に「インピーダンス」——一致させるのは電圧です。
並列後の分担を決める「垂下特性」
並列投入が終わったあと、複数の発電機は負荷をどう分け合うのでしょうか。その仕組みを作っているのが、調速装置に持たせた垂下特性(ドループ)です。
調速装置は「回転速度が下がったら出力を増やす」という制御をします。ただし完全に一定の速度を保とうとすると、複数の機械で不都合が起きます——どの機械も自分だけで速度を決めようとして、負荷の取り合いになるからです。
| 特性 | 速度と出力の関係 | 複数台で並列すると |
| 定速度特性(垂下なし) | 速度を完全に一定に保とうとする | 分担が定まらず、取り合い(ハンチング)が起きる |
| 垂下特性(ドループあり) | 出力が増えると設定速度がわずかに下がる | 各機の分担が一意に決まる |
垂下特性を持たせると、系統周波数に対して各機の出力が一意に決まります。周波数が少し下がれば、すべての機械が特性に沿って自動的に出力を増やす——誰も指示しなくても負荷が分担されるのです。
ドループが小さい機械ほど、周波数のわずかな変化に対して大きく出力を変えます。逆にドループが大きければ、周波数が変わってもあまり出力を変えません——この設定で「どの発電機がどれだけ周波数調整を担うか」が決まります。
系統の周波数が保たれているのは、この仕組みが全国の発電機で同時に働いているからです。需要が増えて周波数が下がりかけると、すべての発電機が一斉に出力を上げて押し戻す——「調速装置で位相を合わせる」という本問の記述の先には、こうした系統全体の話が広がっています。
まとめ
| (ア) | 電圧 |
| (イ) | 周波数 |
| (ウ) | 180 |
| (エ) | 電圧調整装置 |
| 答え | (5) |
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