今回は平成27年度 機械科目 A問題6を解説します。テーマは小形モータ。おもちゃや家電に入っている小形直流モータの構造と、SPMSM・IPMSM・SynRMという小形同期モータの機種名を問う知識問題です。
直流機シリーズの締めくくりにふさわしい、構造知識の総まとめ問題。図でイメージを固めましょう。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
次の文章は,小形モータに関する記述である。
小形直流モータを分解すると,N極とS極用の2個の永久磁石,回転子の溝に収められた3個のコイル,3個の(ア)で構成されていた。一般に(イ)の溝数を減らすと,エアギャップ磁束が脈動し,トルクの脈動が増える。そこで,希土類系永久磁石には大きな(ウ)があるので,溝をなくしてエアギャップにコイルを設け,トルク脈動の低減を目指した小形モータも作られている。
小形(エ)には,永久磁石を回転子の表面に設けたSPMSMという機種,永久磁石を回転子に埋め込んだIPMSMという機種,突極性を大きくした鉄心だけのSynRMという機種などがある。小形直流モータは電池だけで運転されるものが多いが,小形(エ)は,円滑な(オ)が困難なため,インバータによって運転される。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 整流子片 電機子 保磁力 同期モータ 始動 (2) 整流子片 界磁 透磁率 誘導モータ 制動 (3) ブラシ 電機子 透磁率 同期モータ 制動 (4) 整流子片 電機子 保磁力 誘導モータ 始動 (5) ブラシ 界磁 透磁率 同期モータ 始動
出題のポイント:3つの略号は「磁石がどこにあるか」だけ
この問題は小形直流モータの構造(前半)と小形同期モータの機種名(後半)の2部構成です。後半のSPMSM・IPMSM・SynRMという略号が目立ちますが、覚えることは「磁石をどこに置いたか」の1点だけです。
前半は整流子片の数=コイルの数という構造の基本、後半は永久磁石の「保磁力」と同期モータの始動の難しさ。いずれも直流機・同期機の基礎知識がそのまま出ています。

(ア)(イ):小形直流モータの中身
小形直流モータを分解すると、外側のケースの内側に永久磁石が2個(N極用とS極用)貼りつけてあり、その中で3つのコイルを巻いた回転子が回っています。回転子の軸には整流子があり、ブラシがそこに接触して電流を送り込みます。
| 部品 | 個数 | 役割 |
| 永久磁石 | 2個(N・S) | 界磁をつくる。小形機では巻線でなく磁石を使う |
| コイル | 3個 | 電機子巻線。溝(スロット)に収める |
| 整流子片 | 3個(コイルと同数) | 回転に応じて電流の向きを切り替える |
| ブラシ | 2個 | 外部から整流子へ電流を渡す。個数はコイル数と無関係 |
(ア)は「整流子片」です。ブラシではありません。ブラシは普通2個(+と−)で、コイルが3個でも5個でも2個のままです。「3個の」という数詞が付いているので、コイル数と対応するもの=整流子片だと分かります。
(イ)は「電機子」。溝(スロット)があるのは回転子=電機子の側です。界磁は永久磁石なので溝はありません。溝の数を減らすと磁気抵抗の変化が粗くなり、コギングトルクと呼ばれる脈動が大きくなります。
(ウ):なぜ「保磁力」なのか
溝をなくしてエアギャップに直接コイルを置く(スロットレス構造)と、エアギャップが実質的に広がります。エアギャップが広いほど磁気抵抗が大きく、磁石にとっては減磁されやすい厳しい条件になります。
これに耐えるには保磁力(減磁されにくさ)が大きい磁石が必要で、そこで希土類磁石(ネオジム・サマリウムコバルト)の出番になります。「透磁率」ではありません——透磁率は磁束の通しやすさで、永久磁石の売りではありません(むしろ永久磁石の比透磁率は1に近い)。
| 用語 | 意味 | B-H曲線での位置 |
| 保磁力 Hc | 磁化を消すのに必要な逆向き磁界の大きさ=減磁されにくさ | H軸との交点 |
| 残留磁気 Br | 外部磁界を取り去っても残る磁束密度=磁石の強さ | B軸との交点 |
| 透磁率 μ | 磁束の通しやすさ B/H | 曲線の傾き |
永久磁石は保磁力も残留磁気も大きい(硬磁性材料)、変圧器や電動機の鉄心は両方小さい(軟磁性材料)——この対比で覚えておくと、磁気ヒステリシスの問題でもそのまま使えます。

(エ)(オ):SPMSM・IPMSM・SynRM は全部「同期モータ」
略号は長く見えますが、最後のSMが Synchronous Motor(同期モータ)で共通です。頭に付く部分が磁石の置き方を表しているだけです。
| 機種 | 正式名 | 回転子の構造 | 特徴 |
| SPMSM | Surface Permanent Magnet SM | 磁石を回転子の表面に貼る | 構造が簡単。高速では磁石が飛ぶ心配がある |
| IPMSM | Interior Permanent Magnet SM | 磁石を回転子に埋め込む | 磁石トルク+リラクタンストルクが使える。高速・高効率 |
| SynRM | Synchronous Reluctance Motor | 磁石なし。鉄心の突極性だけ | 磁石が要らず安価・高温に強い |
(エ)は「同期モータ」で確定です。誘導モータではありません——誘導機は回転磁界より遅れて回る(すべりがある)機械で、永久磁石は使いません。
(オ)は「始動」。同期モータは回転磁界が最初から同期速度で回っているため、止まっている回転子は付いていけません。1周のあいだにトルクの向きが交互に変わり、平均トルクがゼロになって起動しないのです。だからインバータで周波数を低いところから徐々に上げていく必要があります。「制動」ではありません(止めるのは難しくない)。

選択肢を絞り込む手順
| 決められる空欄 | 根拠 | 消える選択肢 |
| (ア)=整流子片 | 「3個の」という数詞がコイル数3と対応。ブラシは2個 | (3)(5)が消える |
| (ウ)=保磁力 | 永久磁石の売りは減磁されにくさ。透磁率ではない | (2)(3)(5)が消える |
| (エ)=同期モータ | SPMSM/IPMSM/SynRM の末尾は Synchronous Motor | (2)(4)が消える |
| (オ)=始動 | 同期機は自己始動できない | (2)(3)が消える |
(ア)と(エ)の2つだけで正解が1つに決まります。5つ全部を悩む必要はなく、自信のある空欄から埋めて選択肢を消していくのが穴埋め問題の鉄則です。
なぜ小形機は永久磁石界磁なのか
界磁を巻線で作ると常に界磁電流を流し続ける必要があり、そのぶん銅損が発生します。小形機では出力に対する界磁損の割合が大きくなってしまうため、永久磁石にして界磁損をゼロにするほうが効率で有利になります。配線も減り、構造も簡単です。
代わりに磁束を外から調整できないという制約が付きます。分巻電動機なら界磁抵抗を変えて弱め界磁ができますが、永久磁石機ではそれができません。IPMSMが広く使われるのは、埋め込み構造だと電流の位相を制御することで実質的に弱め界磁ができるからです(d軸電流による弱め磁束制御)。ハイブリッド車や電気自動車の駆動用モータはほとんどIPMSMです。
⏱️ 本番での進め方
① 穴埋めは自信のある空欄から。本問は(ア)と(エ)だけで1つに決まる。
② 数詞に注目:「3個の(ア)」ならコイル3個と同数のもの=整流子片。ブラシは常に2個。
③ 略号は最後の2文字を見る。SM=Synchronous Motor=同期モータ。
④ 同期機の弱点は始動(制動ではない)。回転磁界に付いていけないから。
💡 覚え方
整流子片の数=コイルの数、ブラシは2個。永久磁石の売りは保磁力(減磁されにくさ)——B軸切片が残留磁気、H軸切片が保磁力。S=Surface(表面)/I=Interior(内部)/SynRM=磁石なし、末尾のSMは全部同期モータ。同期モータは自己始動できないのでインバータが要る。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「ブラシ」と答えるのが定番(→(3)(5))。ブラシは電流を渡す部品で、コイルの数とは無関係に2個です。もう一つは(ウ)を「透磁率」とする誤り。透磁率が大きいのは鉄心の特徴で、永久磁石の特徴ではありません。
まとめ
| 小形直流モータ | 永久磁石2個+コイル3個+整流子片3個(コイルと同数) |
| 希土類磁石 | 大きな保磁力 → スロットレス構造が可能 |
| SPMSM/IPMSM/SynRM | いずれも同期モータ(表面磁石/埋込磁石/磁石なし) |
| インバータ運転 | 同期モータは円滑な始動が困難なため |
| 答え | (1) |
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