今回は令和3年度 機械科目 A問題1を解説します。テーマは分巻電動機と直巻電動機のトルク特性の穴埋め問題です。
「分巻=磁束一定でトルクは電流に比例」「直巻=磁束も電流がつくるのでトルクは電流の2乗に比例」。この2本柱を式から導ければ迷いません。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
次の文章は,直流電動機に関する記述である。ただし,鉄心の磁気飽和,電機子反作用,電機子抵抗やブラシの接触による電圧降下は無視できるものとする。
分巻電動機と直巻電動機はいずれも界磁電流を電機子と同一の電源から供給できる電動機である。分巻電動機において端子電圧と界磁抵抗を一定にすれば,負荷電流が増加したとき界磁磁束は(ア),トルクは負荷電流に(イ)する。直巻電動機においては負荷電流が増加したとき界磁磁束は(ウ),トルクは負荷電流の(エ)に比例する。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 一定で 比例 増加し 2乗 (2) 一定で 反比例 一定で 1乗 (3) 一定で 比例 一定で 2乗 (4) 増加し 反比例 減少し 1乗 (5) 増加し 反比例 増加し 2乗
出題のポイント:トルクの式は同じ、違うのは磁束の作り方
分巻と直巻を比べる問題では、トルクの式そのものは同じだということをまず押さえてください。どちらも T=kTφIa です。違うのはφ(磁束)がどうやって決まるかだけ——それが接続の違いから出てきます。
分巻は界磁巻線が電機子と並列なので、界磁電流は If=V/rf。端子電圧と界磁抵抗が一定なら磁束も一定で、負荷が変わっても動きません。直巻は界磁巻線が電機子と直列なので、負荷電流そのものが界磁電流。負荷が増えれば磁束も増えます。

式で追う:1乗と2乗はここで分かれる
この2行が本問のすべてです。(ア)=一定で、(イ)=比例、(ウ)=増加し、(エ)=2乗——式に代入した結果をそのまま日本語にしたものが答えになっています。
問題文の「鉄心の磁気飽和…は無視できるものとする」という但し書きが効いているのはここです。実機では電流を増やしていくと鉄心が飽和して磁束がそれ以上増えなくなるので、直巻のトルクは大電流域で2乗より緩やかになり、やがて1乗に近づきます。「2乗に比例」が成り立つのは未飽和域だけだと知っておくと、実務の話にもつながります。

空欄を1つずつ確定する
(ア)(イ):分巻の磁束は一定、トルクは1乗
分巻では界磁巻線が端子に直接つながっているので、界磁電流は負荷電流とはまったく無関係に V/rf で決まります。問題文が「端子電圧と界磁抵抗を一定にすれば」とわざわざ条件を置いているのは、この2つが磁束を決める全部だと示すためです。
よって(ア)は「一定で」。磁束が定数なので T=kφIa は Ia の1次式となり、(イ)は「比例」です。
(ウ)(エ):直巻の磁束は増え、トルクは2乗
直巻では界磁巻線と電機子が一本の道でつながっているので、流れる電流は1種類しかありません。負荷電流が増えれば界磁電流も同じだけ増え、(ウ)は「増加し」。
そして φ=kfI を T=kTφI に代入すると T=kTkfI2。(エ)は「2乗」です。電流が2倍になればトルクは4倍——これが直巻が始動に強い理由そのものです。

選択肢の構造で絞る
5つの選択肢を並べると、ほとんどが1か所だけ入れ替えた「惜しい」肢だと分かります。
| 選択肢 | (ア)(イ)(ウ)(エ) | どこが誤りか |
| (1) | 一定で・比例・増加し・2乗 | 正解 |
| (2) | 一定で・反比例・一定で・1乗 | 分巻の比例関係を反比例と誤り、直巻の磁束も一定としている |
| (3) | 一定で・比例・一定で・2乗 | (ウ)だけが誤り。磁束が一定なら2乗にならず矛盾する |
| (4) | 増加し・反比例・減少し・1乗 | 分巻と直巻の性質を入れ替えたうえ、向きも逆 |
| (5) | 増加し・反比例・増加し・2乗 | (ア)(イ)が分巻の性質になっていない |
注目すべきは(3)です。「磁束は一定なのにトルクは2乗に比例」という組合せはそれ自体が矛盾しています。T=kφI で φ が定数なら、どうやっても I の1乗にしかなりません。選択肢の中で辻褄が合わないものは、他の空欄を検討するまでもなく消せます。
同じ目で見ると(2)も「直巻の磁束が一定で、トルクが1乗」と主張していますが、これは分巻の性質を直巻の欄に書いただけ。「分巻と直巻で答えがまったく同じになる」ような選択肢は、そもそも問題として成立しません。
この違いが実機で何を意味するか
分巻は「定速度電動機」と呼ばれます。磁束が一定なので n=(V−raIa)/(kφ) の分母が動かず、負荷が増えても速度は電機子抵抗降下のぶんだけしか下がりません。回転数を一定に保ちたい用途——工作機械の主軸、送風機、ポンプなどに向きます。
直巻は「可変速度・大始動トルク」です。軽負荷では高速、重負荷では低速になり、出力(トルク×速度)がほぼ一定に近づくという性質を持ちます。これは電車にとって理想的で、発進時は低速・大トルク、高速走行時は小トルクという運転にそのまま合います。クレーンや巻上機も同じ理由で直巻が使われてきました。
ただし直巻には無負荷で暴走するという致命的な弱点があります。T∝I2 という長所と、無負荷で n→∞ という短所は「磁束が電流でできている」という同じ性質の裏表です。両方をセットで理解しておくと、直巻の問題はどう問われても答えられます。
⏱️ 本番での進め方
① 紙の端に T=kφI と書き、分巻 φ=一定/直巻 φ=kfI を並べて書く。ここまで20秒。
② 代入して 分巻 T∝I/直巻 T∝I2。これで(イ)(エ)が決まる。
③ 矛盾している肢を先に消す:「磁束一定なのに2乗」(3)、「直巻なのに分巻と同じ」(2)。
④ 迷ったら直巻=電車を思い出す。発進時に強い=電流が増えるほど急激にトルクが出る=2乗。
💡 覚え方
トルクの式は共通 T=kφI。違うのは φ だけ。分巻=並列=端子電圧が磁束を作る=一定=T は1乗、直巻=直列=負荷電流が磁束を作る=T は2乗。「直巻は直列」と字面で結びつけると接続を取り違えません。
⚠️ よくある間違い
「磁束が増えるからトルクも増える」と考えて分巻も直巻も同じ結論にしてしまうのが典型(→(2)(5))。分巻の磁束は負荷とは無関係です。また2乗になるのは飽和を無視した場合だけで、問題文の但し書きを読み飛ばすと実機の話と混ざって迷います。
まとめ
| 分巻の磁束 | \(\phi=k_f V/r_f\):端子電圧・界磁抵抗一定なら一定 |
| 分巻のトルク | \(T\propto I_a\)(1乗に比例) |
| 直巻の磁束 | \(\phi=k_f I\):負荷電流が増えれば増加 |
| 直巻のトルク | \(T\propto I^2\)(2乗に比例) |
| 答え | (1) |
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