電験3種の機械科目で問われる直流分巻発電機の損失。本記事では、平成22年度 A問題2で出題された、効率から全損失を求めて固定損を切り出す計算問題を解説します。
カギは 入力=出力/η で全損失を出し、そこから界磁回路損(VIf)と電機子抵抗損(rₐIₐ²)を引くこと。分巻発電機では \( I_a=I_n+I_f \) になる点も重要です。
平成22年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
定格出力と効率から全損失を出し、計算できる損失を引いていきます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成22年度 A問題2
直流発電機の損失は、固定損、直接負荷損、界磁回路損及び漂遊負荷損に分類される。
定格出力 50 kW、定格電圧 200 V の直流分巻発電機がある。この発電機の定格負荷時の効率は 94 % である。このときの発電機の固定損 [kW] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、ブラシの電圧降下と漂遊負荷損は無視するものとする。また、電機子回路及び界磁回路の抵抗はそれぞれ 0.03 Ω 及び 200 Ω とする。(1) 1.10 (2) 1.12 (3) 1.13 (4) 1.30 (5) 1.32
出題のポイント:分巻発電機は Ia = In + If
この問題は「効率から全損失を出し、計算できる損失を引いて残りを固定損とする」という引き算の問題です。手順そのものは単純なのですが、電機子電流をいくつにするかという一点だけで答えが4通りにも分かれるように作られています。
分巻発電機では、界磁巻線が出力端子に並列につながっています。発電機は電機子で作った電流を負荷と界磁の両方へ配るので、電機子電流は負荷電流と界磁電流の和——Ia = In + If になります。ここを In のままにしたり、引き算にしたりすると、そのまま誤答の選択肢に着地します。
電動機なら逆に Ia = I ー If です(電源から入ってきた電流が界磁と電機子に分かれる)。発電機は足す、電動機は引く——電流がどちらへ流れていくのかを絵にして確かめる癖をつけてください。

直流機の損失の分類を整理する
問題文が「固定損、直接負荷損、界磁回路損及び漂遊負荷損に分類される」とわざわざ書いているのは、どれを計算し、どれを引き算で求めるのかを意識させるためです。4つの中身を押さえておくと、この種の問題は全部同じ手順で片づきます。
| 損失の種類 | 中身 | 求め方 |
| 固定損(無負荷損) | 鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)と機械損(軸受・ブラシの摩擦、風損) | 直接は計算できない ⇒ 引き算で求める |
| 直接負荷損 | 電機子巻線の抵抗損 raIa2、ブラシの電圧降下による損失 | 抵抗と電流から計算できる |
| 界磁回路損 | 界磁巻線での損失 VIf(=rfIf2) | 抵抗と電圧から計算できる |
| 漂遊負荷損 | 漏れ磁束による渦電流など、上のどれにも入らない雑多な損失 | 本問では無視と指定 |
固定損だけが「計算できない損失」だという構図が見えれば、問題の意図は明快です。全損失を出して、計算できるものを全部引く——残ったものが固定損です。「固定損」と呼ぶのは負荷が変わっても値がほとんど変わらないからで、鉄損は電圧と周波数、機械損は回転速度で決まり、どちらも負荷電流には依存しません。
問題の解説:3.19 kW から 0.20 kW と 1.89 kW を引く
STEP1 負荷電流・界磁電流・電機子電流を出す
定格出力50 kW を定格電圧200 V で割れば負荷電流、界磁抵抗200 Ω に端子電圧200 V がかかっているので界磁電流も一発です。
出力[W]÷端子電圧[V]。定格出力は端子から出ていく電力なので、界磁ぶんは含まれていません。
界磁巻線は端子に並列 ⇒ 端子電圧200 V がそのままかかる。
発電機は足す。電機子が作った電流が負荷と界磁に分かれていく。

STEP2 効率から全損失を求める
原動機から軸に与えられる機械動力。出力を効率で割るだけ。
入力と出力の差が、そっくり損失になっている。
STEP3 計算できる損失を引く
\( r_fI_f^2=200\times1.0^2 \) と計算しても同じ200 W。
2512=63 001。ここで250を使うと1.875 kWになり、答えが(2)へずれる。
残ったものが固定損(鉄損+機械損)。

選択肢を逆算して検算する
この問題は5つの選択肢が5通りの電流の扱い方に1対1で対応しているという、めずらしくきれいな作りをしています。実際に計算して確かめてみます。
| 選択肢 | そう出る計算 | どこを間違えたか |
| (1) 1.10 | 3.19 − 0.20 − 0.03×2512 | 正解。Ia=251 A、界磁損も引いた |
| (2) 1.12 | 3.19 − 0.20 − 0.03×2502 | Ia=In=250 A とした(界磁電流を足し忘れ) |
| (3) 1.13 | 3.19 − 0.20 − 0.03×2492 | Ia=In−If=249 A とした(電動機の関係と混同) |
| (4) 1.30 | 3.19 − 0.03×2512 | 界磁回路損0.20 kW を引き忘れた |
| (5) 1.32 | 3.19 − 0.03×2502 | 上の2つ(250 Aかつ界磁損忘れ)を両方やった |
差はわずか0.02 kW ずつで、電卓を叩いた値がそのまま選択肢に並んでいます。「たまたま近い値があった」で選ばず、Ia を251 Aと決めた根拠を言えるかを自分に問い直してください。
なぜ固定損は引き算でしか求められないのか
鉄損は鉄心の中で磁束が向きを変えるたびに発生する損失で、ヒステリシス損(磁区の向きを変える仕事)と渦電流損(鉄心内に流れる誘導電流のジュール熱)からできています。機械損は軸受の摩擦・ブラシと整流子の摩擦・風損です。
どちらも材料の磁化特性や機械の作り方で決まる量で、問題文に与えられる「抵抗」のような電気的な数値からは計算できません。だから実測(無負荷試験)するか、全損失から引き算するかのどちらかになります。本問はその引き算をさせているわけです。
なお固定損が負荷に依らないのは、定格電圧・定格回転速度で運転している限り、鉄心の磁束密度も回転速度も変わらないからです。逆に直接負荷損は電流の2乗で効くので、軽負荷では小さく、過負荷では急激に増えます。効率が最大になるのは固定損=直接負荷損のときで、変圧器の「鉄損=銅損で最大効率」とまったく同じ構図です。
⏱️ 本番での進め方
① 電流を3つ書き出す:In=出力/V、If=V/rf、Ia=In+If(発電機は足す)。ここに30秒。
② 全損失=出力/η−出力。50/0.94は「50×1.0638」で53.19。
③ 引くのは界磁回路損 VIf と電機子抵抗損 raIa2 の2つだけ(漂遊負荷損とブラシ損は無視と指定)。
④ 検算は足して全損失に戻るか。0.20+1.89+1.10=3.19 ✓ で30秒。
💡 覚え方
発電機は Ia=In+If、電動機は Ia=I−If。「発電機は自分の界磁も自分でまかなうから足す」と覚える。損失は固定損(鉄損+機械損)=計算できない/直接負荷損・界磁回路損=計算できるの2分類。全損失から計算できるものを引いた残りが固定損。
⚠️ よくある間違い
Ia に250 A を使うのが最頻の誤り(→(2)1.12)。1 A の違いでも2乗されると1 890 W と1 875 W の差になり、選択肢が分かれます。もう一つは界磁回路損の引き忘れ(→(4)1.30)。「引くのは2つ」と指を折って確認してください。

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