電験3種の機械科目で頻出の直流他励機の発電機・電動機運転。本記事では、平成26年度 A問題2で問われた、発電機を電動機として使ったときの負荷電流(電機子電流)を求める計算問題を解説します。
カギは、同じ機械なので界磁一定なら E∝n が発電機・電動機で共通なこと。発電機で E-n の関係を出し、電動機の回転速度に当てはめます。符号は発電機 \( E=V+I_aR_a \)、電動機 \( V=E+I_aR_a \) です。
平成26年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
発電機として運転したときの姿から、電動機運転の姿へ橋を渡していきます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成26年度 A問題2
出力 20 [kW]、端子電圧 100 [V]、回転速度 1500 [min⁻¹] で運転していた直流他励発電機があり、その電機子回路の抵抗は 0.05 [Ω] であった。この発電機を電圧 100 [V] の直流電源に接続して、そのまま直流他励電動機として使用したとき、ある負荷で回転速度は 1200 [min⁻¹] となり安定した。このときの運転状態における電動機の負荷電流(電機子電流)の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、発電機での運転と電動機での運転とで、界磁電圧は変わらないものとし、ブラシの接触による電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとする。(1) 180 (2) 200 (3) 220 (4) 240 (5) 260
出題のポイント:同じ機械なので E と n の関係は引き継げる
この問題は1台の機械を発電機として使ったあと、そのまま電動機として使うという設定です。ここで効いてくるのが「界磁電圧は変わらない」という条件——磁束 φ が両方の運転で同じなので、E=kφn という比例関係をそっくり引き継げます。
つまり発電機運転で「1500 min-1 のとき E は何 V か」を1回だけ確定させれば、あとは速度比を掛けるだけで電動機運転の E が出ます。この橋渡しが本問の骨格です。

符号の向きだけは必ず切り替える
引き継げるのはE と n の比例関係だけで、電圧の式の符号は運転モードごとに切り替える必要があります。ここを取り違えると、発電機の E を10 V 小さく(あるいは電動機の E を10 V 大きく)見積もることになり、答えが大きくずれます。
符号は「電流がどちらへ流れるか」で決まります。発電機は電機子が電流の供給源なので、内部抵抗 Ra を通って外へ出るときに電圧を失います(V=E−IaRa、つまり E=V+IaRa)。電動機は外から電流が押し込まれるので、端子電圧のうち Ra に取られた残りが逆起電力です(E=V−IaRa)。

問題の解説:110 V → 88 V → 240 A
出力20 kW を端子電圧100 V で割る。他励なので界磁は別電源=この電流は全部負荷へ行く。
発電機は足す。抵抗降下は 200×0.05=10 V。
界磁が同じ ⇒ φ 一定 ⇒ E∝n。速度比0.8をそのまま掛ける。
電動機は引く。端子電圧と逆起電力の差12 V が抵抗にかかる。
0.05 で割るのは20倍すること。12×20=240。

選択肢を検算する
選択肢は180・200・220・240・260 と20 A 刻みの等間隔です。それぞれが逆起電力 E’ の何 V に対応するかを逆算すると、どこで間違えたのかが見えます。
| 選択肢 | 対応する E’ | そこへ着地する誤り |
| (1) 180 | 91 V | 速度比を 0.83(=1200/1440 など)と取り違えた場合に近い |
| (2) 200 | 90 V | 発電機運転の電流200 A をそのまま答えた/速度換算を忘れて (100−110)/0.05 の絶対値を取った |
| (3) 220 | 89 V | 等間隔の散らし |
| (4) 240 | 88 V | 正解 |
| (5) 260 | 87 V | 等間隔の散らし |
(2)200 は「何もしなくても出てくる数字」なので特に危険です。発電機の負荷電流がちょうど200 A なので、計算の途中で出てきた値をそのまま答えとして選んでしまいがちです。問われているのは電動機として運転したときの電流——別の運転状態であることを意識してください。
E’ が 88 V だと確定できれば答えは1つに決まります。逆に言えば、この問題の勝負は E’=88 V を出せるかどうかだけ。そこから先は割り算1回です。
なぜ電動機のほうが電流が大きいのか
発電機では200 A、電動機では240 A と電動機運転のほうが電流が大きくなっています。同じ機械なのに不思議に思えるかもしれませんが、これは速度を下げたぶん逆起電力が小さくなり、端子電圧との差が広がったためです。
| 発電機運転 | 電動機運転 | |
| 回転速度 | 1500 min-1 | 1200 min-1(0.8倍) |
| 起電力 E | 110 V | 88 V |
| 端子電圧 V | 100 V | 100 V |
| E と V の差 | 10 V(E のほうが大) | 12 V(V のほうが大) |
| 電機子電流 | 200 A | 240 A |
| 電力の向き | 軸 → 端子(送り出す) | 端子 → 軸(受け取る) |
「V と E の差÷Ra」が電流を決めるという構図はどちらの運転でも同じで、差の向きが逆転しているだけです。Ra が0.05 Ω と小さいので、わずか12 V の差で240 A も流れる——直流機の電流が逆起電力にどれほど敏感かがよく分かります。
この敏感さこそが始動抵抗が必要な理由でもあります。静止状態では E=0 なので、もし始動抵抗を入れなければ 100/0.05=2000 A という破壊的な電流が流れてしまいます。
⏱️ 本番での進め方
① 「界磁は変わらない」=φ 一定=E∝n と余白に書く。これが2つの運転をつなぐ唯一の橋。
② 発電機は足す、電動機は引く。声に出して確認してから式を書く。
③ E’ を出すまでが勝負:110×(1200/1500)=88 V。速度比は約分して 4/5 にすると速い。
④ 検算は逆向き:出した電流から E’ を復元して88 V に戻るか。5秒で済む。
💡 覚え方
同じ機械・同じ界磁なら E∝n がそのまま使える。運転モードが変わっても変わるのは符号だけ(発電機 E=V+IaRa/電動機 E=V−IaRa)。電流は「V と E の差÷Ra」で、Ra が小さいほど小さな差で大電流になる。
⚠️ よくある間違い
速度比の換算を忘れて E=110 V のまま使うと、(100−110)/0.05=−200 となり符号を無視して(2)200 に着地します。回転速度が1500から1200へ変わっていることを見落とさないでください。もう一つは発電機の符号を電動機と同じにしてしまう誤りで、E=90 V となって以降がすべてずれます。

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