電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の「各種変圧器」の論説問題。本記事では、平成28年度 A問題7で問われた単巻変圧器・三巻線変圧器・磁気漏れ変圧器・計器用変成器・変流器(CT)に関する記述から誤っているものを選ぶ問題を解説します。
カギは磁気漏れ変圧器。漏れリアクタンスが大きく、負荷が変わると漏れ磁束が変化して負荷電流をほぼ一定に保つ(定電流特性)のが特徴です。問題文では「負荷電圧を一定に保つ」としており、ここが誤りになります。
平成28年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成28年度 A問題7
各種変圧器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 単巻変圧器は、一次巻線と二次巻線とが一部分共通になっている。そのため、一次巻線と二次巻線との間が絶縁されていない。変圧器自身の自己容量は、負荷に供給する負荷容量に比べて小さい。
(2) 三巻線変圧器は、一つの変圧器に三組の巻線を設ける。これを3台用いて三相Y-Y結線を行う場合、一組目の巻線をY結線の一次、二組目の巻線をY結線の二次、三組目の巻線をΔ結線の第3調波回路とする。
(3) 磁気漏れ変圧器は、磁路の一部にギャップがある鉄心に、一次巻線及び二次巻線を巻く。負荷のインピーダンスが変化しても、変圧器内の漏れ磁束が変化することで、負荷電圧を一定に保つ作用がある。
(4) 計器用変成器には、変流器(CT)と計器用変圧器(VT)がある。これらを用いると、大電流又は高電圧の測定において、例えば最大目盛りが5A、150Vという通常の電流計又は電圧計を用いることができる。
(5) 変流器(CT)では、電流計が二次側の閉回路を構成し、そこに流れる電流が一次側に流れる被測定電流の起磁力を打ち消している。通電中に誤って二次側を開放すると、被測定電流が全て励磁電流となるので、鉄心の磁束密度が著しく大きくなり、焼損するおそれがある。
出題のポイント:磁気漏れ変圧器は「定電流」
5つの記述のうち、誤りは磁気漏れ変圧器の説明です。この変圧器は負荷電圧ではなく負荷電流をほぼ一定に保ちます——「定電流変圧器」という別名からも分かります。
磁路の一部にわざとギャップ(磁気分路)を設けると、一次巻線が作った磁束の一部が二次巻線に届かず、途中で逃げます——これが大きな漏れリアクタンスになります。
漏れリアクタンスが大きいと、電流が増えようとしたときの電圧降下が大きくなるので、電流はそれ以上増えられません。負荷が短絡状態に近づいても電流が制限される——この性質を垂下特性と呼びます。
| 普通の変圧器 | 磁気漏れ変圧器 | |
| 漏れリアクタンス | 小さい | 大きい(意図的) |
| 負荷が変わると | 電圧がほぼ一定 | 電流がほぼ一定 |
| 特性 | 定電圧特性 | 定電流(垂下)特性 |
| 用途 | 一般の配電 | アーク溶接機、放電灯(蛍光灯)の安定器、ネオン変圧器 |
アーク溶接では、アークが飛ぶ前は開放(電流0)、飛んだ後はほぼ短絡という極端な負荷変動が起きます。普通の変圧器なら短絡で焼損しますが、定電流特性なら電流が制限されて安定にアークを保てます——だからこの用途に使われます。

正しい4つの記述を確認する
(1) 単巻変圧器:絶縁されず、自己容量は小さい
巻線の一部が共通なので一次と二次は電気的につながっています——絶縁がないのは欠点です。一方、自己容量が負荷容量より小さいのは利点で、同じ負荷容量なら小型・安価にできます。
(2) 三巻線変圧器:3組目をΔにして第3調波の回路にする
Y-Y結線には第3次高調波の循環路がありませんでした。そこで3組目の巻線をΔに組み、その中で高調波を循環させます——これを安定巻線と呼びます。第3の巻線は所内電源用として使われることもあります。
(4) 計器用変成器:大電流・高電圧を測れる大きさに変換する
変流器(CT)は電流を、計器用変圧器(VT)は電圧を、扱いやすい大きさに落とします。CT の二次定格は5 A、VT の二次定格は110 Vが標準——だから最大目盛5 A や150 V の普通の計器が使えます。
(5) CT の二次側開放は厳禁
CT は一次電流が外部で決まるという点が普通の変圧器と違います。通常は二次電流の起磁力が一次の起磁力を打ち消しており、鉄心の磁束は小さく保たれています。
二次側を開放すると、打ち消す相手がいなくなり、一次電流のすべてが励磁電流になります——磁束密度が異常に上がって鉄心が飽和し、二次側には高電圧が誘起されます。焼損や感電のおそれがあるため、CT の二次側は必ず短絡してから計器を外すのが鉄則です。

CTとVTは、扱いが正反対
(4)(5)で扱われている計器用変成器は、実務での取扱い注意が繰り返し問われるテーマです。変流器(CT)と計器用変圧器(VT)は、やってはいけないことがちょうど逆になっています。
| 変流器(CT) | 計器用変圧器(VT) | |
| 測るもの | 電流 | 電圧 |
| 一次側のつなぎ方 | 回路に直列 | 回路に並列 |
| 二次定格 | 5 A | 110 V |
| やってはいけないこと | 二次側の開放 | 二次側の短絡 |
| 計器を外すとき | 二次側を短絡してから外す | 二次側を開放してから外す |
CT の一次電流は、外部の回路の都合で決まってしまいます——CT 自身にはその大きさを制御する手段がありません。普通の変圧器なら一次電流は負荷しだいで増減しますが、CT は違うという点が本質です。
正常時、一次電流が作る起磁力は、二次電流が作る起磁力にほぼ打ち消されています。鉄心の中の磁束はごくわずか——だから鉄心を小さく作れます。
二次側を開けば、打ち消す相手が消えます。一次電流のすべてが励磁電流として働き、磁束密度が跳ね上がって鉄心は深く飽和します——二次巻線には尖った高電圧が誘起され、絶縁破壊や焼損、そして作業者への感電の危険が生じます。
逆にVTは、一次側が電圧源に並列につながっているだけです。二次側を短絡すれば、普通の変圧器を短絡したのと同じで大電流が流れて焼損します。開放は無害——むしろ通常の状態に近いのです。
「CTは電流源、VTは電圧源として振る舞う」と捉えると、電流源は開放が危険、電圧源は短絡が危険という理論科目の常識と一致します。丸暗記ではなく、この対応で覚えておきましょう。
三巻線変圧器の3つ目の巻線は何をしているのか
(2)で登場する三巻線変圧器は、1つの鉄心に3組の巻線を持つ変圧器です。3組目が何のためにあるのかを知っておくと、この記述がすっと入ります。
| 3組目の使い道 | 内容 |
| 安定巻線(Δ結線) | Y-Y結線で行き場のない第3次高調波を、Δの中で循環させて波形のひずみを防ぐ |
| 所内電源の供給 | 変電所の照明・制御・冷却装置などに使う低圧電源を、この巻線から取り出す |
| 調相設備の接続 | 電力用コンデンサや分路リアクトルを 3組目の巻線につないで無効電力を調整する |
1つの鉄心で3つの電圧階級を扱えるので、変圧器を2台置くより経済的です。変電所で275 kV/154 kV/66 kV を1台でつなぐ——そんな使われ方をしています。
ただし3組目をΔに組むことが必須というわけではなく、Y-Y結線を使うときに必要になるという関係です。Δを含む結線(Δ-YやY-Δ)なら、そもそも第3次高調波の循環路があるので、安定巻線は要りません。
磁気漏れ変圧器のいまと昔
(3)の磁気漏れ変圧器は、蛍光灯の安定器として長く使われてきました。放電灯は点灯すると抵抗が下がり続ける(負性抵抗)ので、電流を制限するものがないと際限なく電流が増えて破壊されます。
磁気漏れ変圧器の垂下特性が、その電流制限を担っていました。点灯前の高い電圧で放電を始めさせ、点灯後は電流を一定に保つ——1台で2役をこなす巧みな仕組みです。
現在はインバータ式の電子安定器やLEDに置き換わり、磁気漏れ変圧器の出番は減りました。それでもアーク溶接機では今も現役で、電験でも「定電流特性を持つ変圧器」として繰り返し問われています。
⏱️ 本番での進め方
① 磁気漏れ変圧器=定電流。溶接機・安定器の用途を思い出せば決まる。
②「電圧」と「電流」を入れ替える誤りは論説問題の定番。両方の語に印をつけて読む。
③ CT二次開放の危険は毎年のように問われる。理由まで言えるようにしておく。
④ 5肢すべてが重要知識なので、解いたあとに全肢を復習する価値がある。
💡 覚え方
「漏れが大きい=電流が伸びない=定電流」——漏れリアクタンスは電流を制限する抵抗のようなものと考えれば、定電圧か定電流かで迷いません。そして「CT は二次を開けるな、VT は二次を短絡するな」——対にして覚えておきましょう。
関連問題:単巻変圧器は単独でも問われる
(1)の単巻変圧器は、穴埋め問題として単独でも出題されています(変圧器47:単相単巻変圧器(分路巻線・直列巻線・負荷容量))。自己容量と負荷容量の違いは、そちらで詳しく扱っています。


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