変圧器37【電験3種 機械】電気機器の損失と周波数特性(ヒステリシス損・渦電流損)とは?平成23年度 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 変圧器・損失 平成23年度 A問題6 ヒステリシス損と渦電流損!周波数でどう変わる?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の「電気機器の損失」。本記事では、平成23年度 A問題6で出題された損失の穴埋め問題(空欄5つ)を取り上げます。渦電流損・銅損・鉄損・機械損・ヒステリシス損を正しく区別し、さらに周波数特性(ヒステリシス損 ∝ f、渦電流損 ∝ (f・t)²)まで押さえられるかがカギです。

損失は「どこで生じるか」で分類できます。鉄心で生じれば鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)、巻線で生じれば銅損、回転で生じれば機械損。この基本に、損失低減の対策と周波数依存性を組み合わせれば、5つの空欄を確実に埋められます。

目次

平成23年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成23年度 A問題6 問題文(電気機器の損失と周波数特性(ヒステリシス損・渦電流損)とは)
平成23年度 機械科目 A問題6 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

電験3種 機械科目 【変圧器・損失】 平成23年度 A問題6

次の文章は、交流電気機器の損失に関する記述である。

a 磁束が作用して鉄心の電気抵抗に発生する (ア) は、鉄心に電流が流れにくいように薄い鉄板を積層して低減する。

b コイルの電気抵抗に電流が作用して発生する (イ) は、コイルに電流が流れやすいように導体の断面積を大きくして低減する。

c 磁性材料を通る磁束が変動すると発生する (ウ) 、及び変圧器には存在しない (エ) は、機器に負荷をかけなくても存在するので無負荷損と称する。

d 最大磁束密度一定の条件で (オ) は周波数に比例する。

空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)渦電流損銅損鉄損機械損ヒステリシス損
(2)ヒステリシス損渦電流損鉄損機械損励磁損
(3)渦電流損銅損機械損鉄損ヒステリシス損
(4)ヒステリシス損渦電流損機械損鉄損励磁損
(5)渦電流損銅損機械損鉄損励磁損

出題のポイント:5つの空欄を4段落から順に埋める

本問は a〜d の4段落があり、それぞれに損失の名前が入ります段落ごとに「どこで生じるか」「どう減らすか」が書かれているので、読みながら順に確定できます

損失発生場所負荷で変わるかもう一つの呼び名変圧器にあるか
銅損巻線負荷率の2乗に比例負荷損ある
ヒステリシス損鉄心変わらない無負荷損(鉄損)ある
渦電流損鉄心変わらない無負荷損(鉄損)ある
機械損軸受・冷却ファン変わらない無負荷損★ない(回転部分がない)
巻線の銅損I2R、鉄心の鉄損であるヒステリシス損と渦電流損、回転部の機械損である摩擦損と風損を発生場所で分類する図
巻線・鉄心・回転部のどこで生じるかを見れば、損失の大分類が決まります。
平成23年度 A問題6 解説2/2 各空欄に入る損失と周波数特性・答え
解説(2/2):各空欄に入る損失と答え

空欄を一つずつ確定する

(ア)鉄心の電気抵抗に発生し、薄い鉄板の積層で減らす

「薄い鉄板を積層して低減する」——この対策は渦電流損のものです。ヒステリシス損は板を薄くしても減りません(板厚に依存しない)——対策から損失の種類を逆に読むことができます。

(イ)コイルの電気抵抗に電流が作用し、断面積を大きくして減らす

コイルで生じるジュール熱ですから銅損です。導体の断面積を大きくすれば抵抗が下がる——I2R の R を減らす、最も直接的な対策になります。

(ウ)(エ)無負荷損に含まれるもの

「磁性材料を通る磁束が変動すると発生する(ウ)」は鉄損「変圧器には存在しない(エ)」は機械損です。変圧器に回転部分がないことが、そのまま決め手になります。

この2つが「無負荷損」と呼ばれる理由も押さえておきましょう。負荷をかけなくても、電源につないで運転していれば発生し続ける——だから「無負荷でも存在する損失」なのです。

☝️ ひっかけの作り方:(ウ)と(エ)を入れ替えた選択肢が用意されています。「変圧器には存在しない」のはどちらか——鉄損は変圧器の主要な損失そのものですから、存在しないのは機械損のほうだと即座に判断できます。

(オ)周波数に比例する損失

鉄損の周波数・板厚依存

\( P_h\propto f B_m^{1.6\sim2}\ ,\qquad P_e\propto (f\,t)^{2}B_m^{2} \)

ヒステリシス損は f に比例、渦電流損は (f×t) の2乗に比例——板厚 t が効くのは渦電流損だけです。

ヒステリシス損は f の1乗、渦電流損は f の2乗に比例します。「周波数に比例する」と言われたらヒステリシス損——比例(1乗)と2乗を区別するのがこの空欄のねらいです。

選択肢にある「励磁損」という語は、電験では一般的でない用語です。励磁電流による損失は鉄損として扱うのが普通——正式な用語でない語が混ざっていたら疑うのが定石です。

ア渦電流損、イ銅損、ウ鉄損、エ機械損、オヒステリシス損の5空欄と手がかりを示し正解1とする解答図
薄板積層、太い導体、磁束変動、変圧器にはない、fに比例の5手がかりから正解は(1)です。
答え(ア)渦電流損 (イ)銅損 (ウ)鉄損 (エ)機械損 (オ)ヒステリシス損——正解は (1)です。

周波数を変えると損失はどう変わるか

(オ)で問われた周波数依存性は、実務でも意味を持ちます60 Hz 用の変圧器を50 Hz で使うとどうなるか——この問いに答えるには、磁束密度の変化まで考える必要があります

誘導起電力と磁束密度

\( V=4.44fN\varPhi=4.44fNB_mA \)

電圧が同じなら、周波数が下がると磁束密度 Bm は上がる——反比例の関係です。

同じ電圧のまま周波数を60 Hz から50 Hz に下げると、磁束密度は 60/50=1.2倍になります。鉄心が飽和に近づき、励磁電流が急増する——うなりが大きくなり、鉄損も増えます

60 Hz 機を50 Hz で使う50 Hz 機を60 Hz で使う
磁束密度1.2倍に増える0.83倍に減る
鉄心の飽和飽和に近づき危険余裕ができる
可否原則として使えない使えることが多い

「50 Hz 機は60 Hz で使えるが、60 Hz 機は50 Hz で使えない」——これが実務での原則です。周波数が下がると磁束密度が上がるから——本問の(オ)で問われた周波数依存性が、こうした判断につながっています

鉄損はどうやって測るのか — W/kg という単位

鉄損は、鉄心材料そのものの性質として「単位質量あたりの損失」で表されます単位は W/kg——材料のカタログにはこの値が載っています

測定にはエプスタイン試験器という装置が使われます短冊状に切った鋼板を正方形に組み、コイルを巻いて磁化する——そのときの電力から鉄損を求めます

材料の呼称意味
35A300板厚0.35 mm、無方向性(A)、鉄損3.00 W/kg回転機用
30P110板厚0.30 mm、方向性(P)、鉄損1.10 W/kg変圧器用

数字の意味が分かると、材料の性能が読めます最初の2桁が板厚(1/100 mm 単位)、次の記号が方向性の有無、最後の3桁が鉄損(1/100 W/kg 単位)——同じ板厚なら、後ろの数字が小さいほど優れた材料です。

変圧器用の方向性けい素鋼板は、回転機用の無方向性に比べて鉄損が3分の1程度磁束の向きが決まっている変圧器だからこそ使える——本問の(ウ)で問われた鉄損を、材料の側から減らす工夫です。

測定条件を統一しないと比べられない

鉄損は周波数と磁束密度で変わりますから、W/kg の値には測定条件が必ず付いています一般には「50 Hz、1.7 T」や「50 Hz、1.5 T」といった条件です。

本問の d が「最大磁束密度一定の条件で」とわざわざ断っているのも同じ理由——磁束密度が変われば、周波数との関係だけを取り出せないからです。

条件をそろえて初めて、「ヒステリシス損は f に比例」という関係が意味を持ちます問題文の但し書きは、式が成り立つ前提を示している——読み飛ばさずに、なぜその条件が要るのかまで考えると理解が深まります

⏱️ 本番での進め方
① 対策から損失を逆に読む。「薄板積層」なら渦電流損。
②「変圧器には存在しない」=機械損。回転部分がないから。
③「周波数に比例」=ヒステリシス損。渦電流損は2乗。
④「励磁損」は正式な用語でない。混ざっていたら消す。

💡 覚え方
「ヒステリシスは f の1乗、渦電流は (ft) の2乗」——板厚 t が入るのは渦電流だけこの式1本で、(ア)と(オ)の両方が決まります

関連問題:同じテーマが繰り返し出ている

損失の分類は、令和元年度と令和5年度下期でも出題されています変圧器36:電気機器の損失変圧器35:電気機器の損失の分類)。本問は周波数特性まで踏み込んでいる分、やや踏み込んだ内容です。

最大磁束密度一定でヒステリシス損が周波数fに比例し、渦電流損が周波数fと板厚tの二乗に比例し、薄板積層で低減できることを示す図
Bₘ一定ならヒステリシス損はfに比例、渦電流損は(ft)²に比例します。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

コメントする

目次