変圧器32【電験3種 機械】単巻変圧器の直列巻線電流と自己容量とは?令和5年度上期 B問題15 完全解説

電験3種 機械科目 変圧器 令和5年度上期 B問題15 直列巻線に流れる電流!自己容量も同時に求める

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、令和5年度上期 B問題15で出題された「単巻変圧器の直列巻線電流と自己容量」について、はじめての方でも確実に解けるように、(a)(b)の2問を一歩ずつ丁寧に解説します。

この問題は、単巻変圧器の(a)直列巻線に流れる電流、(b)自己容量を求めるB問題です。ポイントは、直列巻線を流れる電流=二次線電流 I₂であることと、自己容量=(V₂−V₁)×I₂という関係。【機械】平成30年度A問題9【機械】平成19年度A問題6と同じ単巻変圧器の考え方です。

目次

令和5年度上期 機械科目 B問題15:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和5年度上期 B問題15 問題文(単巻変圧器の直列巻線電流と自己容量)
令和5年度上期 機械科目 B問題15 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15

電験3種 機械科目 【変圧器】 令和5年度上期 B問題15

定格一次電圧 3000 V、定格二次電圧が 3300 V の単相単巻変圧器について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお、巻線のインピーダンス、鉄損は無視できるものとする。

(a) この単相単巻変圧器の二次側に負荷を接続したところ、一次電圧は 3000 V、一次電流は 100 A であった。この変圧器の直列巻線に流れる電流値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 9.09 (2) 10.0 (3) 30.9 (4) 90.9 (5) 110

(b) この変圧器の自己容量 [kV·A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 15.8 (2) 27.3 (3) 30.0 (4) 47.3 (5) 81.9

出題のポイント:直列巻線に流れるのは二次電流

単巻変圧器では、2つの巻線に流れる電流が違います直列巻線には二次電流がそのまま、分路巻線には一次と二次の差の電流——この区別が(a)の答えを決めます

単巻変圧器の電流と自己容量

\( V_1 I_1=V_2 I_2\ ,\qquad \text{自己容量}=(V_2-V_1)I_2 \)

直列巻線に流れるのは二次電流 I2分路巻線に流れるのは差の電流 I1−I2 です。

巻線流れる電流本問での値
直列巻線二次電流 I290.9 A
分路巻線I1−I2100−90.9=9.1 A

昇圧して使う場合、一次側の電流のほうが大きいことに注意します。3 000 V で100 A 入れて3 300 V で出すのですから、電力が保存されるなら二次電流は小さくなる——90.9 A です

一次を共通巻線に二次負荷を全巻線に接続した3000ボルトから3300ボルトの昇圧単巻変圧器
一次はB-C間の3000 V、二次負荷はA-C間の3300 Vです。直列巻線A-Bは300 Vを受け持ち、電流は二次電流I₂です。

(a) 直列巻線の電流

\( V_1 I_1=V_2 I_2 \)
電力保存
損失を無視すれば入力=出力
\( 3\,000\times100=3\,300\times I_2 \)
代入
一次3 000 V・100 A
\( I_2=\dfrac{300\,000}{3\,300}\fallingdotseq 90.9\ [\mathrm{A}] \)
二次電流
これが直列巻線に流れる
答え(a)の正解は (4) 90.9 Aです。直列巻線は負荷と直列に入っているので、そこに流れるのは負荷電流=二次電流——名前が構造をそのまま表しています

⚠️ よくある間違い
(1) 9.09 A分路巻線に流れる差の電流(100−90.9=9.09)です。どちらの巻線を聞かれているかを取り違えると、ここに落ちます
(5) 110 A比を逆にした値(100×3 300/3 000)——昇圧なら二次電流は減るはずですから、100 A より大きい答えはあり得ません

(b) 自己容量を求める

自己容量とは、変圧器が実際に電磁誘導で受け渡している容量です。直列巻線が受け持つ電圧は、一次と二次の差の300 V だけ——だから自己容量はその300 V と二次電流の積になります。

\( \text{自己容量}=(V_2-V_1)I_2 \)
定義
直列巻線の電圧×直列巻線の電流
\( \phantom{\text{自己容量}}=(3\,300-3\,000)\times90.9 \)
代入
電圧差300 V
\( \phantom{\text{自己容量}}=300\times90.9\fallingdotseq 27\,300\ [\mathrm{V\cdot A}] \)
計算
約27.3 kV・A
単巻変圧器の直列巻線電流90.9アンペアと自己容量27.3キロボルトアンペアの計算
(a)はV₁I₁=V₂I₂から90.9 Aで(4)、(b)は300 V×90.9 A=27.3 kV・Aで(2)です。
答え(b)の正解は (2) 27.3 kV・Aです。負荷容量は 3 300×90.9=300 kV・Aですから、自己容量はその9.1 %にすぎません

自己容量が小さいことの意味

意味
負荷容量300 kV・A実際に負荷へ供給している容量
自己容量27.3 kV・A変圧器の大きさを決める容量
9.1 %(V2−V1)/V2=300/3 300

300 kV・A の負荷を、27.3 kV・A の変圧器でまかなえる——これが単巻変圧器の圧倒的な強みです。普通の二巻線変圧器なら300 kV・A の機器が必要ですから、大きさも価格も10分の1近くになります

残りの272.7 kV・A はどこへ行ったのか——変圧されずに、分路巻線を通って直接負荷へ流れています電磁誘導を経由するのは差分だけ——だから変圧器が受け持つ仕事が小さくて済むのです

電圧比が1に近いほど、この効果は大きくなります本問は3 000→3 300 で比が1.1——自己容量は負荷容量の9.1 %もし3 000→6 000(比2)なら50 %となり、利点は半減します

降圧で使う場合はどう変わるか

本問は3 000 V を3 300 V に昇圧する使い方でした。では同じ変圧器を、3 300 V を3 000 V に降圧する向きで使ったらどうなるでしょうか

昇圧(本問)降圧
一次側分路巻線(3 000 V)巻線全体(3 300 V)
二次側巻線全体(3 300 V)分路巻線(3 000 V)
直列巻線に流れる電流二次電流(小さいほう)一次電流(小さいほう)
分路巻線に流れる電流差の電流差の電流
自己容量(V2−V1)×I2電圧差×小さいほうの電流(同じ値)

どちらの向きで使っても、直列巻線には「電圧の高い側の電流」が流れます高圧側の電流のほうが小さいので、直列巻線は細くてよい——この関係は変わりません。

自己容量も同じ値になります。直列巻線が受け持つのは電圧差の300 V、流れるのは高圧側の電流——向きを変えても、この積は変わらないからです。

分路巻線の電流に注目する

本問で分路巻線に流れるのは 100−90.9=9.09 Aでした。一次電流100 A の1割にも満たない——この小ささが単巻変圧器の経済性の源です。

\( I_{\text{分路}}=I_1-I_2=100-90.9=9.09\ [\mathrm{A}] \)
分路巻線
差の電流
\( \dfrac{I_{\text{分路}}}{I_1}=\dfrac{9.09}{100}=9.1\ [\%] \)
割合
自己容量/負荷容量の比と一致

分路巻線の電流の割合(9.1 %)が、自己容量と負荷容量の比(9.1 %)とぴったり一致しています。偶然ではありません——どちらも \( (V_2-V_1)/V_2 \) から来ているからです。

「電圧差の割合=自己容量の割合=分路巻線の電流の割合」——3つが同じ値になると知っておけば、どれか1つを求めれば残りも分かります検算にも使える、便利な関係です。

⏱️ 本番での進め方
①(a) V1I1=V2I2 から I2=90.9 A。直列巻線はこの電流。
② 昇圧なら二次電流は一次より小さい。100 A 超の肢は消せる。
③(b) 自己容量=(3 300−3 000)×90.9≒27.3 kV・A。
④ 分路巻線の9.09 A が(a)の誤答に置かれている。どちらの巻線か確認。

💡 覚え方
「直列巻線は負荷と直列だから二次電流、分路巻線は差の電流」——そして「自己容量は電圧差×二次電流」電圧差の分しか変圧器は働いていないと理解すれば、公式を忘れても組み立て直せます。

関連問題:単巻変圧器は繰り返し問われる

単巻変圧器の構造と容量は、穴埋め問題としても出題されています変圧器47:単相単巻変圧器(分路巻線・直列巻線・負荷容量)変圧器48:同(令和6年度下期))。そちらは用語と定義、本問は数値計算——2つの形で問われる定番テーマです。

単巻変圧器の直列巻線電流と共通巻線電流および線路容量と自己容量の関係
電力保存からI₂=90.9 A、共通巻線電流の大きさは9.1 Aです。線路容量300 kV・Aに対し自己容量は27.3 kV・Aです。
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