変圧器19【電験3種 機械】変圧器の効率と損失(銅損・鉄損)を徹底解説|令和3年 B問題15

この記事では、電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で出題された令和3年 B問題15(変圧器)の過去問を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。

変圧器の効率・銅損・鉄損に関する計算は、電験3種の機械科目で頻繁に出題される重要テーマです。本記事では、問題文の読み解き方から計算の流れ、最大効率の条件まで、ステップごとに詳しく説明します。スライドなしでも完全に理解できる内容を目指していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

問題文の確認:令和3年 機械科目 B問題15(変圧器)

まずは実際に出題された問題文を確認しましょう。

電験3種 機械科目 令和3年 B問題15 変圧器の問題文
電験3種 機械科目 令和3年 B問題15 問題文

定格容量が \( 10\text{ kV}\cdot\text{A} \) で、全負荷における銅損と鉄損の比が \( 2:1 \) の単相変圧器がある。力率 \( 1.0 \) の全負荷における効率が \( 97\text{ \%} \) であるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、定格容量とは出力側で見る値であり、鉄損と銅損以外の損失は全て無視するものとする。

小問(a):全負荷における銅損 [W]

全負荷における銅損は何 \( [\text{W}] \) になるか、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)(2)(3)(4)(5)
357206200119115

小問(b):効率が最大となる負荷は全負荷の何 [%] か

負荷の電圧と力率が一定のまま負荷を変化させた。このとき、変圧器の効率が最大となる負荷は全負荷の何 \( [\%] \) か、最も近いものを(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)(2)(3)(4)(5)
25.050.070.7100141

解答速報:(a)-(2)、(b)-(3)

解答は (a) (2) 206 W(b) (3) 70.7 % です。以下でその導出過程を詳しく解説します。

問題(a)の解説:全負荷時の銅損を効率の公式から求める

電験3種 機械科目 令和3年 B問題15 問題(a)の解説スライド1
問題(a)の解説(ステップ1〜4):条件整理から効率式の立式まで

ステップ1:与えられた条件を整理する

問題文から読み取れる条件を整理します。

項目記号
定格容量(出力)\( P_n \)\( 10\text{ kV}\cdot\text{A} = 10{,}000\text{ VA} \)
効率\( \eta \)\( 97\text{ \%} = 0.97 \)
力率\( \cos\theta \)\( 1.0 \)
銅損 : 鉄損\( 2:1 \)
銅損\( P_c \)求める値
鉄損\( P_i \)未知数

力率が \( 1.0 \) のとき、定格容量 \( 10\text{ kV}\cdot\text{A} \) はそのまま出力電力 \( 10{,}000\text{ W} \) として扱えます。これは皮相電力と有効電力が等しくなるためです。

ステップ2:効率の公式を立式する

変圧器の効率 \( \eta \) は、次の公式で定義されます。

$$\eta = \frac{\text{出力}}{\text{入力}} = \frac{\text{出力}}{\text{出力} + \text{損失}}$$

損失は銅損 \( P_c \) と鉄損 \( P_i \) の合計ですので、今回の数値を代入すると以下のようになります。

$$0.97 = \frac{10{,}000}{10{,}000 + P_c + P_i}$$

ステップ3:銅損と鉄損の関係式を導く

問題文に「銅損と鉄損の比が \( 2:1 \)」とあるため、以下の関係が成り立ちます。

$$P_c = 2P_i \quad \Longleftrightarrow \quad P_i = \frac{P_c}{2} = 0.5P_c$$

つまり、銅損は鉄損の2倍です。この関係式を効率の式に代入することで、未知数を \( P_c \) だけに絞ることができます。

ステップ4:効率式に代入して式を整理する

\( P_i = 0.5P_c \) を効率の式に代入します。

$$0.97 = \frac{10{,}000}{10{,}000 + P_c + 0.5P_c} = \frac{10{,}000}{10{,}000 + 1.5P_c}$$

分母と分子を入れ替えて変形します。

$$10{,}000 + 1.5P_c = \frac{10{,}000}{0.97}$$

ステップ5:計算を完了させて銅損を求める

電験3種 機械科目 令和3年 B問題15 問題(a)の計算完了と問題(b)の解説スライド
問題(a)の計算完了(ステップ5)と問題(b)の解説:最大効率の条件

両辺から \( 10{,}000 \) を引きます。

$$1.5P_c = \frac{10{,}000}{0.97} – 10{,}000 = 10{,}000 \times \left(\frac{1}{0.97} – 1\right)$$

括弧内を計算します。

$$\frac{1}{0.97} – 1 = \frac{1 – 0.97}{0.97} = \frac{0.03}{0.97}$$

よって、両辺を \( 1.5 \) で割って \( P_c \) を求めます。

$$P_c = \frac{10{,}000}{1.5} \times \frac{0.03}{0.97} = \frac{10{,}000 \times 0.03}{1.5 \times 0.97} = \frac{300}{1.455} \approx 206.2\text{ W}$$

最も近い選択肢は 206 W です。

答え:(a) (2) 206 W

問題(b)の解説:変圧器の最大効率となる負荷率の求め方

ステップ1:変圧器の最大効率条件を理解する

変圧器の効率が最大になる条件は、以下の一言で表せます。

銅損(可変損失)= 鉄損(固定損失)のとき、効率が最大になる

この条件を理解するために、銅損と鉄損の性質を改めて確認しましょう。

損失の種類別名負荷との関係具体的な原因
銅損可変損失負荷電流の2乗に比例して変化する巻線の抵抗による \( I^2 R \) 損
鉄損固定損失負荷によらず一定鉄心のヒステリシス損・渦電流損

変圧器に流れる電流(負荷電流)が増えると銅損は増加しますが、鉄損は変わりません。効率を最大にするには、この2つの損失が等しい点を狙うことが最適となります。これは数学的にも証明できる重要な性質です。

ステップ2:負荷率 α を用いた銅損の表し方

全負荷に対する実際の負荷の割合を 負荷率 \( \alpha \) と定義します(\( 0 \leq \alpha \leq 1 \))。

銅損は負荷電流の2乗に比例するため、負荷率 \( \alpha \) のときの銅損は次のように表せます。

$$\text{負荷率 } \alpha \text{ のときの銅損} = \alpha^2 P_c$$

一方、鉄損は負荷によらず一定なので、常に \( P_i \) のままです。

ステップ3:最大効率条件の式を立てて負荷率を計算する

最大効率の条件「銅損 = 鉄損」に、負荷率 \( \alpha \) を用いた式を当てはめます。

$$\alpha^2 P_c = P_i$$

問題(a)の条件から、\( P_c = 2P_i \)(銅損は鉄損の2倍)なので、これを代入します。

$$\alpha^2 \times 2P_i = P_i$$

両辺を \( 2P_i \) で割ります。

$$\alpha^2 = \frac{P_i}{2P_i} = \frac{1}{2}$$

両辺の平方根をとります。

$$\alpha = \sqrt{\frac{1}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2}} \approx 0.707$$

これをパーセントで表すと \( 70.7\text{ \%} \) となります。

答え:(b) (3) 70.7 %

初心者向けポイントまとめ:変圧器の効率計算で押さえるべき3つの知識

ポイント1:効率の公式は「出力 / (出力+損失)」

変圧器の効率は次の公式で表されます。

$$\eta = \frac{\text{出力}}{\text{出力} + \text{損失}} = \frac{P_{\text{out}}}{P_{\text{out}} + P_c + P_i}$$

損失が小さいほど効率は高くなります。電験3種では、この公式を変形して損失を求める問題が多く出題されます。力率が \( 1.0 \) のときは皮相電力と有効電力が等しいため、定格容量(kV·A)をそのまま出力電力(W)として扱えることも覚えておきましょう。

ポイント2:銅損は「可変損失」、鉄損は「固定損失」

銅損と鉄損の違いは、電験3種の頻出知識です。

損失特性負荷率 \( \alpha \) との関係
銅損 \( P_c \)可変損失(負荷電流の2乗に比例)\( \alpha^2 P_c \)
鉄損 \( P_i \)固定損失(負荷によらず一定)\( P_i \)(変化なし)

銅損が「可変損失」である理由は、巻線の抵抗 \( R \) による損失 \( P = I^2 R \) が電流の2乗に比例するからです。負荷が増えると電流が増え、銅損は急激に増加します。一方、鉄損は変圧器に印加される電圧(磁束密度)によって決まるため、負荷が変わっても一定です。

ポイント3:最大効率の条件は「銅損=鉄損」、負荷率は 1/√2 が目安

変圧器の効率が最大となるのは、可変損失(銅損)と固定損失(鉄損)が等しくなるときです。この条件を式で表すと次のようになります。

$$\alpha^2 P_c = P_i \quad \Longrightarrow \quad \alpha = \sqrt{\frac{P_i}{P_c}}$$

今回の問題では銅損が鉄損の2倍(\( P_c = 2P_i \))であったため、最大効率となる負荷率は \( \frac{1}{\sqrt{2}} \approx 70.7\text{ \%} \) となりました。もし銅損と鉄損が等しい変圧器(\( P_c = P_i \))であれば、最大効率は全負荷(\( \alpha = 1 \)、つまり100 %)で達成されます。

この関係を覚えておくと、最大効率の条件に関するさまざまな問題に対応できます。

解法の全体像:計算の流れを振り返る

今回の問題の解法を整理すると、以下のような流れになります。

手順内容使用する公式・条件
1条件の整理(定格容量・効率・力率・損失比)問題文から読み取る
2効率の公式を立式\( \eta = \frac{P_{\text{out}}}{P_{\text{out}} + P_c + P_i} \)
3銅損と鉄損の関係式を導入\( P_c = 2P_i \)
4代入・変形して銅損 \( P_c \) を計算\( P_c \approx 206\text{ W} \)
5最大効率条件を立式\( \alpha^2 P_c = P_i \)
6負荷率 \( \alpha \) を計算\( \alpha = \frac{1}{\sqrt{2}} \approx 70.7\text{ \%} \)

変圧器の効率問題は、①効率の公式を正確に立てること、②銅損と鉄損の性質(可変・固定)を理解すること、③最大効率条件(銅損=鉄損)を知っていること、この3点がそろえば確実に解くことができます。繰り返し練習して、公式の使い方を体に染み込ませましょう。

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