今回は令和7年度下期 機械科目 A問題11を解説します。電動機と減速機を組み合わせて負荷を駆動したときの、負荷側の回転速度・トルク・軸入力を求める計算問題です。
減速機の性質はたった一言、「速度を 1/6 にする代わりにトルクを 6倍にする」。効率0.96はトルク(=伝わる動力)側だけを目減りさせ、回転速度には効きません。この2点を押さえれば、3つの値は順番に決まります。
出題のポイント

令和7年度下期 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和7年度下期 A問題11
図に示すように,電動機が減速機と組み合わされて負荷を駆動している.このときの電動機の回転速度nmが1200min-1,トルクTmが100N・mであった.減速機の減速比が6,効率が0.96のとき,負荷の回転速度nL[min-1],軸トルクTL[N・m]及び軸入力PL[kW]の値として,最も近いものを組み合わせたのは次のうちどれか.
図に示すように、電動機が減速機と組み合わされて負荷を駆動している。このときの電動機の回転速度nmが1200min-1、トルクTmが100N・mであった。減速機の減速比が6、効率が0.96のとき、負荷の回転速度nL[min-1]、軸トルクTL[N・m]及び軸入力PL[kW]の値として、最も近いものを組み合わせたのは次のうちどれか。
nL[min-1] TL[N・m] PL[kW] (1) 7 200 576 4 147 (2) 7 200 16.0 12.1 (3) 7 200 16.0 4 147 (4) 200 16.0 12.1 (5) 200 576 12.1

ポイント解説:減速機は「速度を割って、トルクを掛ける」
減速比6の減速機とは、入力軸が6回転する間に出力軸が1回転する装置です。したがって回転速度は 1/6。nL = 1200/6 = 200 min-1——ここは割り算です。
一方トルクは逆に6倍になります。理由は動力が保存されるから。動力 P = ωT で、損失がなければ入口と出口の P は同じ。ω が 1/6 になるなら、つじつまを合わせるために T は6倍になるしかありません。減速機は「速さを犠牲にして力を稼ぐ」装置です。
そこに効率0.96が入ります。歯車のかみ合いや軸受で少し食われるので、出てくる動力は入った動力の96%。回転速度は歯数比で機械的に決まるので効率の影響を受けません——目減りするのはトルク側だけです。よって TL = 100 × 6 × 0.96 = 576 N·m。
最後に軸入力(負荷が受け取る動力)です。P = 2πnT/60(n は min-1)を使って PL = 2π×(200/60)×576 = 20.94×576 = 12 064 W ≒ 12.1 kW。
回転速度[min-1]をそのまま掛けてはいけません。1分間あたりの回転数を1秒あたりの角速度に直す 2π/60 = 0.1047 が必要です。この係数を忘れると、答えが約9.55倍に膨れ上がります。
問題の解説
STEP1 負荷の回転速度を求める
減速比6 ⇒ 回転速度は 1/6。
nL = 1200/6 = 200 min-1。減速なのだから遅くなる——掛けたら増速機になってしまう。
STEP2 負荷の軸トルクを求める
動力保存よりトルクは減速比だけ増える:×6。
効率0.96はトルク側で目減りする:×0.96。
TL = 100 × 6 × 0.96 = 576 N·m。
STEP3 負荷の軸入力を求める
P = ωT = 2πn T/60(n の単位は min-1)。
ω = 2π×200/60 = 20.94 rad/s。
PL = 20.94 × 576 = 12 064 W ≒ 12.1 kW。
STEP4 電動機側から検算する
電動機の出力 Pm = 2π×(1200/60)×100 = 125.66×100 = 12 566 W。
減速機を通ると12 566 × 0.96 = 12 064 W ⇒ STEP3と一致。
動力は「効率倍」だけ、速度とトルクは「減速比で入れ替わる」——この整理で必ず検算できます。
STEP5 答えを確定する
nL = 200、TL = 576、PL = 12.1 ⇒ (5)。
答え:(5)
💡 覚え方
減速機=速度 1/減速比、トルク ×減速比。効率はトルク(動力)側だけに掛かり、回転速度には掛からない。動力の式は P = 2πnT/60(n[min-1]、T[N·m]、P[W])で、2π/60 ≒ 0.1047。検算は「電動機の出力 × 効率 = 負荷の軸入力」が最短です。減速比 i、効率 η なら nL=nm/i、TL=i η Tm、PL=η Pm。
⚠️ よくある間違い
①減速比の掛ける・割るを逆にするのが最大の失点源です。(1)(2)(3)はいずれも nL = 1200×6 = 7200 と、減速機なのに増速させてしまった値。「減速機を通したら遅くなる」——日本語のとおりに考えれば防げます。
②トルクを割ってしまう:(2)(3)(4)の 16.0 は 100/6×0.96 の値です。速度とトルクは逆向きに動く——速度が 1/6 になったのなら、トルクは 6倍です。速度もトルクも同じ向きに動いたら、動力が消えたことになってしまうと考えると納得できます。
③2π/60 を忘れる:(1)(3)の 4 147 は 576 × 7200/1000、つまり P = T × n /1000 としてしまった値です。回転速度[min-1]は角速度ではありません。2π/60 ≒ 0.1047 を掛けて rad/s に直すのを手順に組み込んでください。単位が kW なのに4147という桁になった時点で異常だと気づけます。
④効率を回転速度に掛ける:200×0.96=192 としてしまう誤りもあります。回転速度は歯数比で機械的に決まるので、効率が悪くても回転数は変わりません(減るのは伝わる力=トルクです)。
なお選択肢は3つの値の組合せなので、どれか1つでも自信をもって決められれば大きく絞れます。まずnL=200を確定させれば残るのは(4)と(5)の2択、次にトルクは6倍と分かれば(5)に決まります。
減速機を使う理由——電動機の大きさはトルクで決まる
低速で大きなトルクが欲しいなら、最初から低速の電動機を使えばよいのでは——そう思うかもしれません。しかし現実にはそうしません。
| 低速大トルクの電動機 | 高速小トルク+減速機 | |
| 電動機の大きさ | ★非常に大きい | 小さい |
| 価格 | 高い | 安い(減速機を含めても) |
| 総合効率 | 低め | 減速機の損失があっても有利 |
電動機の大きさはトルクで決まります——出力ではありません。同じ出力なら、低速なほど大きなトルクが必要=大きな電動機が要るのです。
本問なら、電動機は100 N·m でよい——負荷側の576 N·m を直接出そうとすれば、5倍以上の大きさになる。減速機で4 %の損失を払っても、それを上回る利益があるわけです。
減速機の種類と効率
効率0.96 という値から、どんな減速機かを推測できます。
| 形式 | 効率 | 特徴 |
| 平歯車・はすば歯車 | 97〜99 % | 高効率。1段の減速比は小さい |
| 遊星歯車 | 95〜98 % | 小型で大きな減速比 |
| ウォームギヤ | ★50〜80 % | 1段で大減速。セルフロックする |
効率0.96 なら平歯車1段か遊星歯車——減速比6 は1段で作れる範囲です。ウォームなら0.6 程度になり、問題の数値とは合いません。
ウォームギヤの効率が低いのは、歯がすべりながら接触するから。その代わり逆方向には回らない——巻上機のように「電源が切れても荷を保持したい」用途で価値をもつのです。
出題履歴:令和6年度下期と同一問題(答えの番号は違う)
本問は令和6年度下期 A問題11と数値まで完全に同じです(電動機応用:減速機と負荷の回転速度・トルク・軸入力)。ところが選択肢の並びが変えられており、正解は (5) と (2)で異なります。
減速比8・効率0.95 の版もあります(令和5年度上期A問題11/平成20年度A問題11)。減速機の問題は4年度で出題されている頻出テーマ——覚えるべきは番号ではなく「200・576・12.1」という値です。
まとめ
| 減速比 i の減速機 | 回転速度は 1/i、トルクは i 倍 |
| 効率 η の効き方 | トルク(動力)側にだけ掛かる。回転速度には掛からない |
| 負荷の回転速度 | n_L=1200/6=200 min-1 |
| 負荷の軸トルク | T_L=100×6×0.96=576 N·m |
| 動力の式 | P=2πnT/60(2π/60≒0.1047) |
| 負荷の軸入力 | P_L=2π(200/60)×576=12 064 W≒12.1 kW |
| 検算 | 電動機出力12 566 W×0.96=12 064 W |
| 答え | (5) |
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