今回は令和元年度 機械科目 A問題3を解説します。三相誘導電動機の効率を求める計算問題で、「一次銅損・二次銅損・鉄損の三つが等しい」という珍しい条件が付いています。
ポイントは誘導電動機の電力の流れ。二次銅損だけが滑り s と直結していることを使えば、残りの二つも同じ値だと決まり、効率は η=(1−s)/(1+2s) という一本の式にまとまります。実は出力5.75kWを使わなくても解ける問題です。
令和元年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和元年度 A問題3
4極の三相誘導電動機が60Hzの電源に接続され,出力5.75kW,回転速度1656min-1で運転されている.このとき,一次銅損,二次銅損及び鉄損の三つの損失の値が等しかった.このときの誘導電動機の効率の値[%]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
ただし,その他の損失は無視できるものとする.
4極の三相誘導電動機が60Hzの電源に接続され、出力5.75kW、回転速度1656min-1で運転されている。このとき、一次銅損、二次銅損及び鉄損の三つの損失の値が等しかった。このときの誘導電動機の効率の値[%]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、その他の損失は無視できるものとする。
(1)76.0 (2)77.8 (3)79.3 (4)80.6 (5)88.5 %

出題のポイント:二次銅損だけが滑りと直結している
誘導機の損失は3種類(一次銅損・鉄損・二次銅損)ありますが、滑りと直接つながっているのは二次銅損だけです。この違いが解法の入口になります。
| 損失 | 滑りとの関係 | どうやって求めるか |
| 二次銅損 | Pc2=sP2(直結) | 滑りと二次入力から計算できる |
| 一次銅損 | 関係なし | 別に与えられるしかない |
| 鉄損 | 関係なし | 別に与えられるしかない |
本問は「三つの損失の値が等しい」と与えています。だから二次銅損さえ出せば、残り2つも同じ値だと決まる——この一言が、本来なら求められない2つの損失を確定させています。
4ステップで解く
分母は必ず同期速度。回転速度で割らない。
掛ける相手は二次入力であって出力ではない。
一次銅損と鉄損も0.5 kW ずつ。
出力5.75 kW を使わずに解ける
じつはこの問題、与えられた出力を一切使わずに解けます。3つの損失がすべて sP2 だからです。
効率は滑りだけで決まってしまう。
✓ 同じ答え
分母の 1+2s は「(1−s)+3s」を整理したものです。出力も入力も P2 の倍数なので、比を取れば P2 が消える——効率という「比」を問う問題では、こういうことがよく起きます。
5.75 kW は検算用のおまけだったわけです。もっとも、この一般式に気づかなくても素直に計算すれば解けます——「使わなくても解ける」ことに気づけば、検算の手段が1つ増えると考えてください。
滑り8 % という値をどう見るか
本問の滑りは0.08(8 %)です。一般的な誘導電動機の定格滑りは3〜5 %ですから、やや大きめ——この機械の性格を物語っています。
| 滑り | この問題の条件での効率 | どんな機械か |
| 0.02 | 94.2 % | 大容量・高効率機 |
| 0.03 | 91.5 % | 標準的な汎用機 |
| 0.05 | 86.4 % | 始動トルク重視の設計 |
| 0.08(本問) | 79.3 % | 小容量機/二次抵抗が大きい設計 |
効率=(1−s)/(1+2s) という式のおかげで、滑りだけで効率が決まる——滑りが2 % から8 % へ増えるだけで、効率が94 % から79 % へ落ちます。滑りがいかに効率に効くかが、この表からよく分かります。
もっとも、この式は「3つの損失が等しい」という特殊な条件の下でのものです。実機では一次銅損と鉄損が二次銅損とちょうど等しくなる保証はありません——あくまで本問の設定における関係だと理解しておいてください。
それでも「滑りが大きいほど効率が悪い」という傾向は普遍的です。二次効率が (1−s) である以上、滑りの分は必ず熱になる——これは条件によらず成り立つ関係です。
⏱️ 本番での進め方
① 滑りの分母は必ず同期速度。回転速度で割らない。
② 二次銅損は「二次入力の s 倍」。出力の s 倍ではない。
③ 「3つの損失が等しい」なら η=(1−s)/(1+2s) で一発。
④ 効率は比なので、共通因子(P2)は消える。
💡 覚え方
「二次銅損だけが滑りと直結」——Pc2=sP2、Po=(1−s)P2。3つの損失が等しいなら η=(1−s)/(1+2s) で出力の値を使わずに解ける。滑りが大きいほど効率は落ちる(0.02で94 %、0.08で79 %)。
⚠️ よくある間違い
滑りを回転速度で割るのが最大の落とし穴です。s=(Ns−N)/Ns で、分母は同期速度1 800——1 656 で割ると0.087 となり、答えがずれます。もう一つは二次銅損を「出力×s」で計算すること。掛ける相手は二次入力です。
損失の比率を変えると効率の式はどうなるか
本問は「3つの損失が等しい」という設定でしたが、この比率が変われば効率の式も変わります。一般化しておくと、似た問題に応用が利きます。
| 一次側損失 | k | 効率の式 | s=0.08 のとき |
| ゼロ(理想) | 0 | 1−s | 92.0 % |
| 二次銅損と同じ | 1 | (1−s)/(1+s) | 85.2 % |
| 二次銅損の2倍(本問) | 2 | (1−s)/(1+2s) | 79.3 % |
| 二次銅損の3倍 | 3 | (1−s)/(1+3s) | 74.2 % |
k=0 のときが二次効率そのものです。一次側の損失が増えるほど、総合効率は二次効率から離れていきます——「二次効率は総合効率の上限」だということが、この表から読み取れます。
本問の答え79.3 % は、二次効率92.0 % からかなり離れています。一次側で二次銅損の2倍もの損失が出ているのですから当然です——小容量機ほど一次抵抗と鉄損の割合が大きくなる傾向があり、この設定は小容量機を想定していると読めます。
「三つの損失が等しい」は解けるようにするための条件
実機で一次銅損・鉄損・二次銅損がちょうど等しくなる保証はありません。それでもこう指定するのは、本来なら求められない2つの損失を確定させるためです。
| 損失 | 本来どう求めるか | 本問では |
| 二次銅損 | 滑りと二次入力から計算できる | 0.5 kW と確定 |
| 一次銅損 | 一次抵抗と電流が必要 | 「等しい」から0.5 kW |
| 鉄損 | 無負荷試験が必要 | 「等しい」から0.5 kW |
与えられているのは出力と回転速度と周波数と極数だけ——これだけでは一次銅損も鉄損も分かりません。「三つが等しい」という一言が、その2つを二次銅損に紐づけているのです。
問題文の不自然な条件は、たいてい「解けるようにするため」です。「なぜこんな条件があるのか」を考えると、何を求めさせたいのかが見えてきます——条件文は解法の設計図でもあるという読み方が、ここでも通用します。
まとめ
| 同期速度 | N_s=120f/p=120×60/4=1800 min-1 |
| 滑り | s=(1800−1656)/1800=0.08(分母は同期速度) |
| 二次入力 | P_2=出力/(1−s)=5.75/0.92=6.25 kW |
| 二次銅損 | sP_2=0.08×6.25=0.5 kW(=一次銅損=鉄損) |
| 一次入力 | P_1=6.25+0.5+0.5=7.25 kW |
| 効率 | η=5.75/7.25=79.3 % |
| 公式化 | 三損失が等しいとき η=(1−s)/(1+2s)=0.92/1.16 |
| 答え | (3) |
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