電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「比例推移」は巻線形誘導電動機の代名詞ともいえる頻出テーマです。本記事では、平成25年度 A問題4「二次抵抗を増やしたときの出力変化」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
問題文には「抵抗を何倍にしたか」が書かれていません。しかし「二次電流一定で損失が30倍」→「滑りが30倍」と読み替えられれば、あとは黄金比 \( P_o = P_2(1-s) \) で一直線。条件の解読がすべての問題です。
平成25年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成25年度 A問題4
二次電流一定(トルクがほぼ一定の負荷条件)で運転している三相巻線形誘導電動機がある。滑り 0.01 で定格運転しているときに、二次回路の抵抗を大きくしたところ、二次回路の損失は 30 倍に増加した。電動機の出力は定格出力の何〔%〕になったか、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 10 (2) 30 (3) 50 (4) 70 (5) 90
出題のポイント:条件を式に翻訳できるか
問題文には「抵抗を何倍にしたか」が書かれていません。代わりに「二次回路の損失が30倍」と言っています。これをどう読み替えるかが、この問題のすべてです。
| 問題文の条件 | 式にすると | そこから分かること |
| 二次電流一定(トルクほぼ一定) | T=一定 ⇒ P2=ωsT=一定 | 二次入力が変わらない |
| 二次回路の損失が30倍 | Pc2=sP2 が30倍 | P2 が一定なので滑りが30倍 |
| 滑り0.01 で定格運転 | s′=30×0.01=0.3 | 変更後の滑り |
「二次電流一定」という条件が、二次入力を固定してくれるのが鍵です。入力が同じなのに損失が30倍になったのなら、その割合(=滑り)が30倍になったということ——それ以外の可能性はありません。

3ステップで解く
P2 が約分される。
黄金比 Po=(1−s)P2 で、P2 は共通。


なぜ「0.70」ではなく「0.70/0.99」なのか
ここが引っかかりやすいところです。「滑り0.3 なら出力は70 %」と即答したくなりますが、それは「二次入力に対する割合」であって「定格出力に対する割合」ではありません。
| 定格運転時(s=0.01) | 変更後(s=0.3) | |
| 二次入力 P2 | 100 | 100(変わらない) |
| 二次銅損 sP2 | 1 | 30 |
| 機械出力 (1−s)P2 | 99 | 70 |
| 定格出力に対する比 | 100 % | 70/99=70.7 % |
定格出力そのものが「99」であって「100」ではない——滑り1 % の分だけ、すでに目減りしているのです。その99 を基準にすると、70 は70.7 % になります。
もし「二次入力の何 % か」と聞かれていれば70 %ですが、問題は「定格出力の何 %」と聞いています。「何を100 とするか」を取り違えない——比を答える問題では毎回確認すべき点です。
もっとも、本問では選択肢が10・30・50・70・90 と粗いので、70 % と70.7 % の区別が答えに影響しません。しかし「なぜ0.99 で割るのか」を説明できるかどうかは、理解の深さの分かれ目です。
捨てた電力はどこへ行ったのか
出力が99 から70 へ、29 だけ減りました。この29 はどこへ消えたのか——二次抵抗の発熱として捨てられています。
+29
−29
ぴったり打ち消し合っています。二次入力は100 のまま変わらないのですから、当然です——「出力が減った分だけ、そのまま熱が増えた」という単純な話にすぎません。
速度で見ると、回転速度は (1−0.01) から (1−0.3) へ、つまり約29 % 落ちています。「速度を29 % 落とすために、入力の29 % を熱にした」——二次抵抗制御の効率の悪さが、そのまま数字に出ています。
これがインバータ(周波数制御)に置き換わった理由です。周波数を70 % にすれば、同期速度そのものが70 % になるので、滑りは0.01 のまま、熱は増えません。同じ「速度を7割に落とす」でも、捨てる電力がまったく違うのです。
⏱️ 本番での進め方
① 「二次電流一定」=二次入力一定と読み替える。ここがすべての出発点。
② 損失30倍=滑り30倍(P2 が一定だから)。
③ 出力比は (1−s′)/(1−s)。分母を1 としないこと。
④ 検算:出力の減少分と損失の増加分が一致する(±29)。
「二次電流一定」と「トルク一定」は同じことか
問題文は「二次電流一定(トルクがほぼ一定の負荷条件)」と、2つを並べて書いています。この2つは本当に同じことなのか——確認しておく価値があります。
厳密に言えば、電流が一定でもトルクが一定とは限りません。r2/s が変われば、同じ電流でもトルクが変わってしまうからです。
ところが比例推移では、まさにその r2/s が一定に保たれます。抵抗を30倍にして滑りも30倍にすれば、r2/s は元のまま——だから電流が同じならトルクも同じになります。「二次電流一定」と「トルク一定」が同じことになるのは、比例推移の上を動いているからなのです。
問題文が両方を書いているのは、読者にどちらの入口からでも入れるようにするためでしょう。「電流一定だから損失は抵抗に比例」と読んでもよいし、「トルク一定だから二次入力が一定」と読んでもよい——どちらの道を通っても、滑りが30倍という同じ結論に着きます。
30倍という数字は、どこから選ばれたのか
出題者が「30倍」を選んだ理由を考えると、問題の作りが見えてきます。
0.3 という扱いやすい数字。
0.70/0.99≒0.707。
初期の滑りが0.01 と小さく設定されているのも意図的です。1−s=0.99 とほぼ1 になるので、「70 % か70.7 % か」という差が選択肢に影響しません——読者が細かい部分でつまずかないよう配慮された設計だと言えます。
もし初期の滑りが0.05 だったらどうでしょう。30倍すると1.5 になってしまい、滑りが1 を超える(=逆回転)という物理的におかしな状態になります。0.01 という小さい値でなければ、この問題は成立しないのです。
実際、二次抵抗を30倍にするというのはかなり極端な操作です。定格滑り1 % の機械は二次抵抗が非常に小さい設計ですから、その30倍でもまだ絶対値としては小さい——数字の妥当性まで含めて、よく作られた問題だと言えます。
問題文の数値には、たいてい理由があります。「なぜこの値なのか」を考える習慣は、計算ミスに気づく力にもつながります——滑りが1 を超えたり、効率が100 % を超えたりしたら、どこかで間違えていると分かるからです。
💡 覚え方
「r2/s=一定——抵抗 k 倍なら滑りも k 倍」。トルク一定なら二次入力も一定なので、損失の倍率=滑りの倍率。出力比は (1−s′)/(1−s) で、分母は1 ではなく0.99。速度を29 % 落とすために入力の29 % を熱にしている——インバータならこの熱が出ない。
⚠️ よくある間違い
出力比を単純に (1−0.3)=70 % とするのが典型です。定格出力そのものが二次入力の99 % なので、0.70/0.99=70.7 % が正確な答えです(選択肢が粗いので結果は同じですが、考え方としては別物)。もう一つは損失30倍を抵抗30倍と読めないこと——電流一定なら損失は抵抗に比例します。

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