直流機52【電験3種 機械】永久磁石界磁ならφ一定!逆起電力の比がそのまま回転数の比 令和7年度下期 A問題2 完全解説

電験3種 機械科目 直流機 令和7年度下期 A問題2 磁石界磁ならφは一定!回転数は逆起電力に比例

今回は令和7年度下期 機械科目 A問題2を解説します。界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機で、無負荷時の回転数から負荷時の回転数を求める計算問題です。

鍵は「永久磁石=磁束φが一定」という一点。φが一定なら回転数は逆起電力に比例するので、E の比がそのまま n の比になります。あとは損失から電機子抵抗を出すだけです。

目次

令和7年度下期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 直流機 令和7年度下期 A問題2 問題文
令和7年度下期 機械科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2

電験3種 機械科目 【直流機】 令和7年度下期 A問題2

 界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機がある.この電動機の電機子に12Vの電圧を加えたところ,無負荷の状態で3000min-1で回転した.この電圧を維持したまま負荷を与えて,2Aの電機子電流を流したところ,損失が3W発生した.このときの回転数[min-1]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.

 ただし,ブラシによる電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし,損失は電機子巻線の銅損しか存在しないものとする.

界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機がある。この電動機の電機子に12Vの電圧を加えたところ、無負荷の状態で3000min-1で回転した。この電圧を維持したまま負荷を与えて、2Aの電機子電流を流したところ、損失が3W発生した。このときの回転数[min-1]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

ただし、ブラシによる電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし、損失は電機子巻線の銅損しか存在しないものとする。

(1)3 429 (2)3 000 (3)2 813 (4)2 625 (5)2 250 min-1

出題のポイント:永久磁石は「φ が絶対に動かない」

界磁が永久磁石という設定は、計算問題では強力な武器になります。界磁電流という概念がないので、磁束 φ は何をしても一定——「端子電圧を変えたら磁束はどうなるか」という心配がいっさい要りません

φ が一定なら、直流機の2本柱は次のように単純化されます。

永久磁石界磁なら比例関係が固定される

\( E=k_E\phi n \;\Rightarrow\; n\propto E \)(速度は逆起電力に比例)

\( T=k_T\phi I_a \;\Rightarrow\; T\propto I_a \)(トルクは電流に比例)

φ が定数だから、比例定数がそのまま使える——分巻なら「端子電圧が変われば磁束も変わる」という但し書きが必要ですが、永久磁石ならその心配がありません。

損失から電機子抵抗を逆算する

問題文の「損失は電機子巻線の銅損しか存在しない」という条件が、抵抗を求める鍵です。銅損は Ia2Ra なので、損失と電流が分かれば抵抗が出ます。

\( P_c=I_a^2R_a \;\Rightarrow\; 3=2^2\times R_a \)
❶ 銅損の式
電流の2乗であることに注意。1乗で割ると1.5 Ω になってしまう。
\( R_a=\dfrac{3}{4}=0.75\ \Omega \)
❷ 電機子抵抗

「損失3 W」を「電圧降下3 V」と読み違えないことが大切です。3 W は電力なので、電圧降下は 3/2=1.5 V(=IaRa=2×0.75)。偶然どちらも「3を2で割る」形になりますが、意味はまったく違います

問題の解説:無負荷と負荷を逆起電力で結ぶ

\( E_0=V=12\ \mathrm{V} \)
❸ 無負荷時の逆起電力
無負荷では電機子電流がほぼ0 ⇒ 抵抗降下もゼロ ⇒ 端子電圧がそのまま逆起電力。このとき n0=3 000 min-1
\( E=V-I_aR_a=12-2\times0.75=12-1.5 \)
❹ 負荷時の逆起電力
電流2 A が0.75 Ω を通ると1.5 V 落ちる。
\( E=10.5\ \mathrm{V} \)

\( n=n_0\dfrac{E}{E_0}=3000\times\dfrac{10.5}{12} \)
❻ φ 一定なので n ∝ E
10.5/12=0.875
\( n=3000\times0.875=2625\ \mathrm{min^{-1}} \)
❼ 答え
3000の1/8が375なので、3000−375=2625 と暗算できる。
答え回転速度 2 625 min-1(4) / 検算:2625/3000=0.875、12×0.875=10.5 V ✓

選択肢を逆算する

選択肢そう出る計算どこで間違えたか
(1) 3 4293000×(12/10.5)比を上下逆にした。負荷をかけて速くなるのはおかしい
(2) 3 000変化なしとした逆起電力の低下を無視した
(3) 2 8133000×(11.25/12)電圧降下を0.75 V とした(Ia を掛け忘れて Ra をそのまま引いた)
(4) 2 6253000×(10.5/12)正解
(5) 2 2503000×(9/12)損失3 W を「3 V」として引いた

(1)3 429 は物理で即座に消せます。負荷をかけて電流が流れれば、抵抗降下のぶん逆起電力が減り、速度は必ず遅くなります「答えは3 000 より小さい」と先に決めておけば、(1)(2)が同時に消えて3択になります。

(5)2 250 は「W と V の取り違え」で、単位を意識していれば防げます。3 W は電力、引くべきは電圧——電圧に直すには電流で割る(3/2=1.5 V)という一手間が必要です。

永久磁石界磁の長所と短所

この問題が永久磁石界磁という設定になっているのは、計算を簡単にするためだけではありません。小形の直流機では永久磁石が主流だという実情を反映しています。

永久磁石界磁巻線界磁(分巻・他励)
界磁損ゼロ(電流を流さない)常に If2rf が発生する
構造簡単・小型(巻線も配線も不要)巻線と配線が必要
磁束の調整できない界磁電流で自由に変えられる
弱め界磁できない(高速域を伸ばせない)できる
高温減磁の恐れ問題ない
向く用途小形機・模型・電動工具・自動車補機大形機・広範囲の速度制御

「磁束を調整できない」ことが最大の制約です。分巻や他励なら弱め界磁で定格速度以上へ伸ばせますが、永久磁石界磁では電機子電圧を上げるしか手がありません

本問の機械も、12 V で3 000 min-1 という仕様が磁石で固定されています。これより速く回したければ電圧を上げるしかなく、電池駆動なら電圧の上限がそのまま速度の上限になります。小形機で永久磁石が選ばれるのは、その制約より「界磁損ゼロ・構造が簡単」という利点が勝るからです。

⏱️ 本番での進め方
「永久磁石」を見たら φ=一定と余白に書く。これで n∝E と T∝Ia が固定される。
損失から抵抗を出すときは2乗:3=22Ra ⇒ Ra=0.75 Ω。
無負荷なら E=V(引く量がゼロ)。ここが比例計算の基準点になる。
答えは3 000 より小さいと先に決める。それだけで2肢消える。

💡 覚え方
永久磁石界磁=φ 一定=n∝E かつ T∝Ia無負荷なら E=V、負荷時は E=V−IaRa損失(W)から抵抗を出すときは電流の2乗で割る——電圧降下(V)は電流で1回割る。この2つを混同しないこと。

⚠️ よくある間違い
損失3 W をそのまま「3 V」として引くのが典型(→(5)2 250)。W と V は別物で、電圧に直すには電流で割ります。もう一つは電圧降下を Ra=0.75 V としてしまう誤り(→(3)2 813)——Ia を掛けるのを忘れています

この電動機のトルクと出力も出してみる

答えが出たら、この機械がどれくらいの仕事をしているのかまで確かめておくと理解が定着します。永久磁石界磁なので T∝Ia、比例定数は無負荷条件から求められます。

計算
電気入力V×Ia=12×224 W
銅損Ia2Ra=22×0.753 W(問題文の「損失」)
機械出力E×Ia=10.5×221 W
効率21/2487.5 %(=E/V)
角速度2π×2625/60274.9 rad/s
トルク21/274.90.0764 N·m(約7.8 gf·cm)

21 W・0.076 N·m——模型やドライバドリル、家電の駆動部に入っているクラスの小形直流電動機です。12 V という電圧も、電池やACアダプタで扱える範囲で、実在しそうな設定になっています。

効率が E/V=87.5 % ちょうどになるのは、損失が銅損だけという条件のおかげです。実機なら鉄損と機械損が加わるので、これより10ポイントほど低いのが普通です。問題文の「損失は電機子巻線の銅損しか存在しない」は、計算を閉じさせるための理想化だと理解しておいてください。

無負荷で3 000 min-1 という値の意味

無負荷時の逆起電力が12 V で3 000 min-1 ということは、この機械の「電圧あたりの回転速度」は 3000/12=250 min-1/V です。この値は機械の設計(磁石の強さと巻数)で決まる固有値で、速度定数と呼ばれます。

速度定数とトルク定数

\( K_v=\dfrac{n_0}{V}\ [\mathrm{min^{-1}/V}] \qquad K_t=\dfrac{T}{I_a}\ [\mathrm{N\cdot m/A}] \)

どちらも磁束 φ で決まる同じ量の裏表です。φ が大きいほど Kv は小さく(同じ電圧で遅く)、Kt は大きく(同じ電流で強く)なります。

本問では Kt=0.0764/2=0.0382 N·m/AKv=250 min-1/V との積を取ると、250×0.0382=9.55——これは 60/(2π)=9.55 と一致します。2つの定数は独立ではなく、単位の換算係数でつながっているのです。

つまり「速く回る磁石の弱いモータ」は「トルクの小さいモータ」でもある——どちらか一方だけを良くすることはできません。永久磁石モータのカタログに両方の定数が載っているのは、この関係を前提に用途へ合わせて選ぶためです。

★同一問題:令和5年度下期 A問題2(番号だけが違う)

この問題は令和5年度下期 A問題2とまったく同じ問題です。12 V・無負荷3 000 min-1・2 A・損失3 W という数値も、2 625 min-1 という答えも完全に一致しています。

ところが選択肢の並びが逆順になっていて、正解の番号が違います。

令和5年度下期 A問題2令和7年度下期 A問題2(本問)
選択肢の並び2250/2625/2813/3000/34293429/3000/2813/2625/2250
正解の番号(2)(4)
答えの中身2 625 min-12 625 min-1(同じ)

同じ答えなのに番号が (2) と (4) で違う——しかも選択肢がきれいに逆順に並べ替えてあるので、過去問を番号で暗記していた人は、正反対の位置を選んでしまいます「番号で覚えると必ず外す」ことを示す、これ以上ないほど明快な実例です。

わずか2年での再出題という点も見逃せません。「永久磁石+損失から抵抗+E∝n」という組合せは直流機の基本として繰り返し問われるので、数値が変わっても解けるように手順で覚えてください。

まとめ

界磁が永久磁石φ 一定 ⇒ n ∝ E(E=kφn)
損失の条件銅損のみ ⇒ 3W=Ia2Ra=22Ra
電機子抵抗Ra=0.75 Ω
無負荷時E0=V=12 V(n0=3000 min-1
負荷時E=12−2×0.75=10.5 V
回転数n=3000×10.5/12=2625 min-1
答え(4)

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