電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の、永久磁石界磁の小形直流電動機。本記事では、令和5年度下期 A問題2で問われた、負荷を与えたときの回転数を求める計算問題を解説します。
カギは、永久磁石なので磁束一定 → 逆起電力 \( E \) は回転数 \( n \) に比例すること。無負荷では \( E\fallingdotseq V \)、銅損から \( R_a \) を求め、負荷時の \( E=V-I_aR_a \) を出して \( n=n_0\dfrac{E}{E_0} \) で計算します。
令和5年度下期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
「損失3 W」をどう使うかがこの問題の入口です。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 令和5年度下期 A問題2
界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機がある。この電動機の電機子に12 [V] の電圧を加えたところ、無負荷の状態で3000 [min⁻¹] で回転した。この電圧を維持したまま負荷を与えて、2 [A] の電機子電流を流したところ、損失が3 [W] 発生した。この時の回転数 [min⁻¹] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、ブラシの接触による電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし、損失は電機子巻線の銅損しか存在しないものとする。(1) 2250 (2) 2625 (3) 2813 (4) 3000 (5) 3429
出題のポイント:与えられた「損失」を抵抗に翻訳する
この問題の入口は「損失が3 W」という情報をどう使うかです。損失そのものを引き算に使うのではなく、いったん電機子抵抗に翻訳してから電圧降下を求める——この2段階が必要になります。
本問は Pc=3 W、Ia=2 A なので、Ra=3/4=0.75 Ω、電圧降下=3/2=1.5 V。どちらも「3を割る」形ですが、割る相手が違います。

永久磁石だから比例計算が使える
界磁が永久磁石なので磁束 φ は絶対に動きません。したがって E=kEφn より n ∝ E——逆起電力の比がそのまま回転数の比になります。
基準になるのは無負荷の状態です。無負荷では電機子電流がほぼゼロなので、抵抗降下もゼロ——逆起電力が端子電圧12 V そのもので、そのとき3 000 min-1 だと分かっています。
| 無負荷 | 負荷時(2 A) | |
| 端子電圧 V | 12 V | 12 V(維持されている) |
| 電機子電流 Ia | ほぼ 0 A | 2 A |
| 抵抗降下 IaRa | 0 V | 1.5 V |
| 逆起電力 E | 12 V | 10.5 V |
| 回転数 n(E に比例) | 3 000 min-1 | ? |
問題の解説:3ステップ
電流の2乗で割る。1乗で割ると1.5 になり、これは電圧降下の値。
端子電圧から1.5 V だけ目減りする。
10.5/12=0.875。
3000の1/8が375なので 3000−375=2625 と暗算できる。


選択肢を逆算する
| 選択肢 | そう出る計算 | どこで間違えたか |
| (1) 2 250 | 3000×(9/12) | 損失3 W を「3 V」として引いた(W と V の取り違え) |
| (2) 2 625 | 3000×(10.5/12) | 正解 |
| (3) 2 813 | 3000×(11.25/12) | Ra=0.75 をそのまま電圧として引いた(Ia を掛け忘れ) |
| (4) 3 000 | 変化なしとした | 逆起電力の低下を無視した |
| (5) 3 429 | 3000×(12/10.5) | 比を上下逆にした |
(4)3 000 と(5)3 429 は物理で即座に消せます。負荷をかければ電流が流れ、抵抗降下のぶん逆起電力が減るので、回転数は必ず下がります。「答えは3 000 より小さい」と先に決めておけば3択になります。
残る(1)(2)(3)は、すべて「引く量をいくらにしたか」の違いです。3 V/1.5 V/0.75 V——正しいのは1.5 Vで、3 W を電流2 A で1回割った値です。
無負荷回転数と負荷時回転数の関係を一般化する
この問題の構造を一般化しておくと、数値が変わっても同じ手順で解けるようになります。
本問なら IaRa/V=1.5/12=0.125 なので、n=3000×(1−0.125)=3000×0.875=2625。「12.5 % 遅くなる」と読めるので、暗算でも処理できます。
| 電機子電流 | 抵抗降下(Ra=0.75 Ω) | 降下の割合 | 回転数 |
| 0 A(無負荷) | 0 V | 0 % | 3 000 min-1 |
| 1 A | 0.75 V | 6.3 % | 2 813 min-1 |
| 2 A(本問) | 1.5 V | 12.5 % | 2 625 min-1 |
| 4 A | 3.0 V | 25 % | 2 250 min-1 |
| 16 A(拘束) | 12 V | 100 % | 0 min-1(停止) |
この表を見ると、誤答の正体もはっきりします。(3)2 813 は電流1 A のときの値、(1)2 250 は電流4 A のときの値——どちらも「別の電流での正しい答え」になっています。電圧降下をいくらと見積もったかが、そのまま電流の取り違えに対応しているわけです。
表の最終行も重要です。電流が16 A(=12/0.75)になると抵抗降下が端子電圧と等しくなり、逆起電力がゼロ=停止。これがこの機械の始動電流(拘束電流)で、定格2 A の8倍です。速度と電流は直線的な関係にあり、無負荷(0 A・3 000 min-1)と拘束(16 A・0 min-1)を結ぶ直線の上を動きます。
★同一問題:令和7年度下期 A問題2
この問題は令和7年度下期 A問題2とまったく同じ問題です。12 V・無負荷3 000 min-1・2 A・損失3 W という数値も、2 625 min-1 という答えも完全に一致しています。
ところが選択肢の並びが逆順になっており、正解の番号が違います。
| 令和5年度下期(本問) | 令和7年度下期 A問題2 | |
| 選択肢の並び | 2250/2625/2813/3000/3429 | 3429/3000/2813/2625/2250 |
| 正解の番号 | (2) | (4) |
| 答えの中身 | 2 625 min-1 | 2 625 min-1(同じ) |
同じ答えなのに番号が (2) と (4) で違う——「番号で覚えると必ず外す」ことを示す決定的な実例です。しかも選択肢がきれいに逆順に並べ替えてあるので、過去問を番号で暗記していた人は、まさに正反対の位置を選んでしまいます。
わずか2年での再出題という点も注目に値します。「永久磁石+損失から抵抗+E∝n」という組合せは、直流機の基本として繰り返し問われるので、数値が変わっても解けるように手順で覚えてください。
⏱️ 本番での進め方
① 「永久磁石」を見たら φ=一定と書く ⇒ n∝E が使える。
② 損失から抵抗は2乗で割る(3/22=0.75 Ω)。電圧降下は1回割る(3/2=1.5 V)。
③ 無負荷は E=V。これが比例計算の基準点。
④ 答えは3 000 より小さいと先に決める。それだけで2肢消える。
💡 覚え方
永久磁石=φ 一定=n ∝ E。無負荷なら E=V。損失[W]から抵抗[Ω]は電流の2乗で割る、電圧降下[V]は電流で1回割る——3 W・2 A なら 0.75 Ω と 1.5 V。この2つを取り違えると選択肢(1)や(3)へ落ちます。
⚠️ よくある間違い
損失3 W をそのまま「3 V」として引く(→(1)2 250)のが最頻です。W は電力、V は電圧——電圧に直すには電流で割るという一手間が必要です。もう一つは抵抗0.75 Ω をそのまま電圧として引く(→(3)2 813)誤りで、Ia を掛けるのを忘れています。

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