今回は平成18年度 電力科目 A問題6、誘導障害の空欄補充問題です。この問題は令和7年度上期A問題9(架空送電5)としてほぼ同一文面で再出題されました(H18=(1)・R07上=(3)と番号違い)——19年越しの定番です。
整理はいつもの「電圧はC・電流はM」:電圧が原因→静電誘導障害、電流が相互インダクタンスを介して→電磁誘導障害。ねん架が十分なら誘導電圧はベクトルの和がゼロで平常時0V、1線地絡の不平衡で顕在化します。
平成18年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成18年度 A問題6
架空送電線路が通信線路に接近していると、通信線路に電圧が誘導されて障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。
① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる(ア)障害。
② 架空送電線路の電流が、架空送電線路と通信線路間の(イ)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(ウ)障害。
三相架空送電線路が十分にねん架されていれば、平常時は、電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は(エ)となるのでほぼ0Vとなる。三相架空送電線路に(オ)事故が生じると、電圧や電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が現れ、誘導障害が生じる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 ベクトルの和 1線地絡 (2) 磁気誘導 誘導リアクタンス ファラデー ベクトルの差 2線地絡 (3) 磁気誘導 誘導リアクタンス ファラデー 大きさの差 三相短絡 (4) 静電誘導 自己インダクタンス 電磁誘導 大きさの和 1線地絡 (5) 磁気誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 ベクトルの和 三相短絡

(ア)(ウ) 2つの誘導障害
原因が電圧か電流かで、名前が分かれます。
| ★静電誘導障害 | ★電磁誘導障害 | |
| ★原因 | ★送電線の電圧 | ★送電線を流れる電流 |
| ★媒介するもの | ★静電容量(対地・線間) | ★相互インダクタンス |
| ★式 | ★分圧の比で決まる | ★E=jωMI |
| ★起きやすい場面 | ★常時(不平衡があれば) | ★地絡時(大電流) |
問題文①は「電圧により」と書いています——だから(ア)は静電誘導です。
問題文②は「電流が」と書いています——だから(ウ)は電磁誘導になります。
電圧なら静電、電流なら電磁——この対応だけで両方が決まります。
「磁気誘導」「ファラデー障害」という用語はありません——もっともらしい造語です。
(イ) 相互インダクタンスが媒介する
送電線に電流が流れると、周りに磁界ができます。
その磁界が通信線を貫くと、電圧が誘起されます——変圧器と同じ原理です。
結合の強さを表すのが相互インダクタンス——「自己インダクタンス」では自分自身の話になります。
離隔距離が大きいほど、相互インダクタンスは小さくなる——だから離すことが対策になるのです。
「誘導リアクタンス」は ωL のことで、媒介するものではありません。
(エ)(オ) 平常時はゼロ、事故時に現れる
三相が平衡していれば、誘導電圧は打ち消し合います。
| 状態 | 3相のベクトル和 | 誘導電圧 |
| ★平衡(平常時) | ★ゼロ | ★ほぼ0 V |
| ★1線地絡 | ★ゼロでない | ★★大きく現れる |
| ★三相短絡 | ★ゼロ(平衡している) | ★現れない |
3相の電流は120度ずつずれているので、足すとゼロ——だから「ベクトルの和」です。
「大きさの和」なら打ち消されません——位相を考えるからゼロになるのです。
三相短絡は大電流ですが、平衡しているので誘導しません——だから(オ)は1線地絡になります。
零相電流が流れて初めて、誘導障害が生じる——それが要点です。
ねん架は、この平衡を保つための工夫——各相の位置を入れ替えて条件をそろえます。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「磁気誘導」としてしまう——選択肢(2)(3)(5)がそれです。電圧による誘導は静電誘導。
(イ)を「自己インダクタンス」としてしまう——選択肢(4)。2つの回路をつなぐのは相互インダクタンスです。
(エ)を「大きさの和」としてしまう——選択肢(4)。大きさだけ足せばゼロになりません。
(オ)を「三相短絡」としてしまう——選択肢(3)(5)。平衡しているので誘導しません。
(ア)だけで(1)(4)に絞れます——あとは(イ)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★電圧なら静電誘導、電流なら電磁誘導。
②★媒介するのは相互インダクタンス。自己ではない。
③★平衡ならベクトルの和がゼロ。
④★誘導障害は1線地絡で起きる。三相短絡では起きない。
💡 覚え方
「電圧は静電、電流は電磁」——原因で名前が決まります。平衡していれば打ち消し合う——だから不平衡な1線地絡でだけ問題になるのです。
Y-Y結線の第三調波による誘導障害は平成29年度 A問題7(変電:変圧器のY-Y結線方式)にあります。
誘導障害を減らす4つの手立て
誘導電圧は E=jωMℓI で決まります——どの項を減らすかで対策が分かれます。
| 対策 | 減らす項 | 内容 |
| ★離隔距離を取る | ★M | ★相互インダクタンスが小さくなる |
| ★並行区間を短くする | ★ℓ | ★交差させて並走を避ける |
| ★遮へい線を張る | ★実効的なM | ★逆向きの誘導で打ち消す |
| ★遮断時間を短くする | ★継続時間 | ★影響を受ける時間を減らす |
接地方式でも変わります——抵抗接地なら地絡電流Iそのものが小さいのです。
直接接地は地絡電流が大きいので、誘導障害が起きやすい——超高圧系統で特に配慮が要ります。
架空地線も遮へい線として働きます——雷対策と誘導対策を兼ねているのです。
近年は影響が減っている
通信線が光ファイバに置き換わりました。
金属線でないので、電磁誘導を受けません——根本的に解決したことになります。
それでも制御線や電力線どうしの誘導は残ります——考え方は今も使われるのです。
要点をもう一度
5つの空欄が、誘導障害の全体像を並べています。
| 空欄 | 答え | 決め手 |
| (ア) | ★静電誘導 | ★問題文が「電圧により」 |
| (イ) | ★相互インダクタンス | ★2つの回路を結ぶ量 |
| (ウ) | ★電磁誘導 | ★問題文が「電流が」 |
| (エ) | ★ベクトルの和 | ★位相を考えるとゼロ |
| (オ) | ★1線地絡 | ★不平衡になる事故 |
(ア)と(ウ)は、問題文の「電圧」「電流」がそのまま手がかり——読めば決まります。
(オ)は「不平衡になるか」で判断——三相短絡は平衡なので誘導しません。
ねん架の役割
問題文の「十分にねん架されていれば」に注目しましょう。
| ねん架しない | ★ねん架する | |
| ★各相の位置 | ★固定されたまま | ★区間ごとに入れ替える |
| ★静電容量・インダクタンス | ★相ごとに違う | ★★平均化されて等しくなる |
| ★誘導電圧 | ★打ち消しきれない | ★★ほぼゼロ |
電線の位置が違えば、対地静電容量も相互インダクタンスも違います——だから完全には打ち消せないのです。
3区間で1周するように入れ替えれば、条件が平均化されます——それがねん架です。
静電誘導の大きさを見積もる
静電誘導は、静電容量の分圧で決まります。
★Cm:送電線と通信線の間 Cs:通信線と大地の間
| 条件 | 誘導電圧 | 理由 |
| ★送電線に近い | ★★大きい | ★Cm が大きくなる |
| ★通信線を接地する | ★★小さくなる | ★Cs が大きくなる |
| ★送電電圧が高い | ★大きい | ★V に比例 |
通信線を接地すれば、電位が大地に固定されます——だから誘導電圧が下がるのです。
電磁誘導とは対策が違います——静電誘導は接地、電磁誘導は離隔や遮へい。
静電誘導は電流が流れていなくても生じます——電圧がかかっているだけで起きるから。
だから停電作業中でも、隣の線から誘導を受けることがある——作業前に接地する理由の1つです。
誘導障害が問題になった時代
この問題が出題された背景を見ておきましょう。
| 時代 | 通信線 | 誘導障害 |
| ★かつて | ★裸の金属線が電柱に架かる | ★★深刻な問題 |
| ★現在 | ★光ファイバ・地中ケーブル | ★大幅に減少 |
昔は電話線が送電線と並んで架かっていました——地絡のたびに雑音や感電の危険が生じたのです。
だから電力会社と通信事業者の間で協議が行われました——誘導電圧の許容値が決められているのです。
今は光ファイバが主流で、金属を通らないので誘導しません——根本的に解決しました。
それでも制御ケーブルや配電線どうしでは残ります——考え方は今も現役です。
まとめ
| (ア) | 静電誘導(電圧×静電容量) |
| (イ)(ウ) | 相互インダクタンス→電磁誘導 |
| (エ) | ベクトルの和(ねん架で0V) |
| (オ) | 1線地絡(不平衡で顕在化) |
| 再出題 | R07上問9(架空送電5)と同一内容・番号違い |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電5):【電力】令和7年度上期 A問題9
・式まで問う発展形(架空送電24):【電力】平成28年度 A問題8

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