架空送電39【電験3種 電力】誘導障害の出題元!電圧はC・電流はM・地絡で顕在化 平成18年度 A問題6 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成18年度 A問題6 電圧はC・電流はM!誘導障害の出題元がこれ

今回は平成18年度 電力科目 A問題6誘導障害の空欄補充問題です。この問題は令和7年度上期A問題9(架空送電5)としてほぼ同一文面で再出題されました(H18=(1)・R07上=(3)と番号違い)——19年越しの定番です。

整理はいつもの「電圧はC・電流はM」:電圧が原因→静電誘導障害、電流が相互インダクタンスを介して→電磁誘導障害。ねん架が十分なら誘導電圧はベクトルの和がゼロで平常時0V、1線地絡の不平衡で顕在化します。

目次

平成18年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成18年度 A問題6 問題文
平成18年度 電力科目 A問題6 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成18年度 A問題6

 架空送電線路が通信線路に接近していると、通信線路に電圧が誘導されて障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。

 ① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる(ア)障害。

 ② 架空送電線路の電流が、架空送電線路と通信線路間の(イ)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(ウ)障害。

 三相架空送電線路が十分にねん架されていれば、平常時は、電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は(エ)となるのでほぼ0Vとなる。三相架空送電線路に(オ)事故が生じると、電圧や電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が現れ、誘導障害が生じる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)静電誘導相互インダクタンス電磁誘導ベクトルの和1線地絡
(2)磁気誘導誘導リアクタンスファラデーベクトルの差2線地絡
(3)磁気誘導誘導リアクタンスファラデー大きさの差三相短絡
(4)静電誘導自己インダクタンス電磁誘導大きさの和1線地絡
(5)磁気誘導相互インダクタンス電磁誘導ベクトルの和三相短絡
答え正解は (1)——(ア)静電誘導 (イ)相互インダクタンス (ウ)電磁誘導 (エ)ベクトルの和 (オ)1線地絡 です。

(ア)(ウ) 2つの誘導障害

原因が電圧か電流かで、名前が分かれます

★静電誘導障害★電磁誘導障害
★原因★送電線の電圧★送電線を流れる電流
★媒介するもの★静電容量(対地・線間)★相互インダクタンス
★式★分圧の比で決まる★E=jωMI
★起きやすい場面★常時(不平衡があれば)★地絡時(大電流)

問題文①は「電圧により」と書いています——だから(ア)は静電誘導です。

問題文②は「電流が」と書いています——だから(ウ)は電磁誘導になります。

電圧なら静電、電流なら電磁——この対応だけで両方が決まります

「磁気誘導」「ファラデー障害」という用語はありません——もっともらしい造語です。

(イ) 相互インダクタンスが媒介する

送電線に電流が流れると、周りに磁界ができます

電磁誘導電圧
\( E_m=j\omega M\ell\,\left(3I_0\right) \)

M:相互インダクタンス ℓ:並行区間長 3I₀:零相電流の3倍

その磁界が通信線を貫くと、電圧が誘起されます——変圧器と同じ原理です。

結合の強さを表すのが相互インダクタンス——「自己インダクタンス」では自分自身の話になります。

離隔距離が大きいほど、相互インダクタンスは小さくなる——だから離すことが対策になるのです。

「誘導リアクタンス」は ωL のことで、媒介するものではありません

(エ)(オ) 平常時はゼロ、事故時に現れる

三相が平衡していれば、誘導電圧は打ち消し合います

状態3相のベクトル和誘導電圧
★平衡(平常時)★ゼロ★ほぼ0 V
★1線地絡★ゼロでない★★大きく現れる
★三相短絡★ゼロ(平衡している)★現れない

3相の電流は120度ずつずれているので、足すとゼロ——だから「ベクトルの和」です。

「大きさの和」なら打ち消されません——位相を考えるからゼロになるのです。

三相短絡は大電流ですが、平衡しているので誘導しません——だから(オ)は1線地絡になります。

零相電流が流れて初めて、誘導障害が生じる——それが要点です。

ねん架は、この平衡を保つための工夫——各相の位置を入れ替えて条件をそろえます

⚠️ よくある間違い
(ア)を「磁気誘導」としてしまう——選択肢(2)(3)(5)がそれです。電圧による誘導は静電誘導
(イ)を「自己インダクタンス」としてしまう——選択肢(4)2つの回路をつなぐのは相互インダクタンスです。
(エ)を「大きさの和」としてしまう——選択肢(4)大きさだけ足せばゼロになりません
(オ)を「三相短絡」としてしまう——選択肢(3)(5)平衡しているので誘導しません
(ア)だけで(1)(4)に絞れます——あとは(イ)で確定するでしょう。

⏱️ 本番での進め方
①★電圧なら静電誘導、電流なら電磁誘導。
②★媒介するのは相互インダクタンス。自己ではない。
③★平衡ならベクトルの和がゼロ。
④★誘導障害は1線地絡で起きる。三相短絡では起きない。

💡 覚え方
「電圧は静電、電流は電磁」——原因で名前が決まります平衡していれば打ち消し合う——だから不平衡な1線地絡でだけ問題になるのです。

Y-Y結線の第三調波による誘導障害は平成29年度 A問題7変電:変圧器のY-Y結線方式)にあります。

誘導障害を減らす4つの手立て

誘導電圧は E=jωMℓI で決まります——どの項を減らすかで対策が分かれます

対策減らす項内容
★離隔距離を取る★M★相互インダクタンスが小さくなる
★並行区間を短くする★ℓ★交差させて並走を避ける
★遮へい線を張る★実効的なM★逆向きの誘導で打ち消す
★遮断時間を短くする★継続時間★影響を受ける時間を減らす

接地方式でも変わります——抵抗接地なら地絡電流Iそのものが小さいのです。

直接接地は地絡電流が大きいので、誘導障害が起きやすい——超高圧系統で特に配慮が要ります

架空地線も遮へい線として働きます——雷対策と誘導対策を兼ねているのです。

近年は影響が減っている

通信線が光ファイバに置き換わりました

金属線でないので、電磁誘導を受けません——根本的に解決したことになります。

それでも制御線や電力線どうしの誘導は残ります——考え方は今も使われるのです。

要点をもう一度

5つの空欄が、誘導障害の全体像を並べています

空欄答え決め手
(ア)★静電誘導★問題文が「電圧により」
(イ)★相互インダクタンス★2つの回路を結ぶ量
(ウ)★電磁誘導★問題文が「電流が」
(エ)★ベクトルの和★位相を考えるとゼロ
(オ)★1線地絡★不平衡になる事故

(ア)と(ウ)は、問題文の「電圧」「電流」がそのまま手がかり——読めば決まります

(オ)は「不平衡になるか」で判断——三相短絡は平衡なので誘導しません

ねん架の役割

問題文の「十分にねん架されていれば」に注目しましょう

ねん架しない★ねん架する
★各相の位置★固定されたまま★区間ごとに入れ替える
★静電容量・インダクタンス★相ごとに違う★★平均化されて等しくなる
★誘導電圧★打ち消しきれない★★ほぼゼロ

電線の位置が違えば、対地静電容量も相互インダクタンスも違います——だから完全には打ち消せないのです。

3区間で1周するように入れ替えれば、条件が平均化されます——それがねん架です。

静電誘導の大きさを見積もる

静電誘導は、静電容量の分圧で決まります

\( E_s=\dfrac{C_m}{C_m+C_s}\,V \)
誘導電圧
★Cm:送電線と通信線の間 Cs:通信線と大地の間
条件誘導電圧理由
★送電線に近い★★大きい★Cm が大きくなる
★通信線を接地する★★小さくなる★Cs が大きくなる
★送電電圧が高い★大きい★V に比例

通信線を接地すれば、電位が大地に固定されます——だから誘導電圧が下がるのです。

電磁誘導とは対策が違います——静電誘導は接地、電磁誘導は離隔や遮へい

静電誘導は電流が流れていなくても生じます——電圧がかかっているだけで起きるから。

だから停電作業中でも、隣の線から誘導を受けることがある——作業前に接地する理由の1つです。

誘導障害が問題になった時代

この問題が出題された背景を見ておきましょう

時代通信線誘導障害
★かつて★裸の金属線が電柱に架かる★★深刻な問題
★現在★光ファイバ・地中ケーブル★大幅に減少

昔は電話線が送電線と並んで架かっていました——地絡のたびに雑音や感電の危険が生じたのです。

だから電力会社と通信事業者の間で協議が行われました——誘導電圧の許容値が決められているのです。

今は光ファイバが主流で、金属を通らないので誘導しません——根本的に解決しました

それでも制御ケーブルや配電線どうしでは残ります——考え方は今も現役です。

まとめ

(ア)静電誘導(電圧×静電容量)
(イ)(ウ)相互インダクタンス→電磁誘導
(エ)ベクトルの和(ねん架で0V)
(オ)1線地絡(不平衡で顕在化)
再出題R07上問9(架空送電5)と同一内容・番号違い
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電5):【電力】令和7年度上期 A問題9
・式まで問う発展形(架空送電24):【電力】平成28年度 A問題8

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次