今回は平成23年度 電力科目 A問題7、送配電線路の過電圧の空欄補充問題です。外部・内部の分類(架空送電8)に加えて、波形による「サージ性/短時間交流」の分類まで踏み込む、過電圧問題の完成形です。
2つの軸で整理:原因の軸=外部(直撃雷・誘導雷・逆フラッシオーバ)/内部(開閉・一線地絡・フェランチ)。波形の軸=サージ性(急峻な波形:雷サージ・開閉サージ)/短時間交流(商用周波数のまま上昇:一線地絡・フェランチ)。配電線路で最も多いのは誘導雷です。
平成23年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成23年度 A問題7
次の文章は、送配電線路での過電圧に関する記述である。
送配電系統の運転中には、様々な原因で、公称電圧ごとに定められている最高電圧を超える異常電圧が現れる。このような異常電圧は過電圧と呼ばれる。過電圧は、その発生原因により、外部過電圧と内部過電圧に大別される。
外部過電圧は主に自然雷に起因し、直撃雷、誘導雷、逆フラッシオーバに伴う過電圧などがある。このうち一般の配電線路で発生頻度が最も多いのは(ア)に伴う過電圧である。
内部過電圧の代表的なものとしては、遮断器や断路器の動作に伴って発生する(イ)過電圧や、(ウ)時の健全相に現れる過電圧、さらにはフェランチ現象による過電圧などがある。
また、過電圧の波形的特徴から、外部過電圧や、内部過電圧のうちの(イ)過電圧は(エ)過電圧、(ウ)やフェランチ現象に伴うものなどは(オ)過電圧と分類されることもある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 誘導雷 開 閉 一線地絡 サージ性 短時間交流 (2) 直撃雷 アーク間欠地絡 一線地絡 サージ性 短時間交流 (3) 直撃雷 開 閉 三相短絡 短時間交流 サージ性 (4) 誘導雷 アーク間欠地絡 混 触 短時間交流 サージ性 (5) 逆フラッシオーバ 開 閉 混 触 短時間交流 サージ性

過電圧を2つの軸で分類する
本問は「原因」と「波形」の2通りの分け方を問うています。
| ★外部過電圧 | ★内部過電圧 | |
| ★原因 | ★自然雷 | ★系統内の現象 |
| ★例 | ★直撃雷・誘導雷・逆フラッシオーバ | ★開閉・地絡・フェランチ |
| ★大きさ | ★数百 kV〜数 MV | ★運転電圧の数倍 |
| ★継続時間 | ★数十マイクロ秒 | ★数ミリ秒〜数秒 |
外から来るか、中で生まれるか——それが第1の軸です。
波形による分類
| ★サージ性過電圧 | ★短時間交流過電圧 | |
| ★波形 | ★一瞬の尖った波 | ★商用周波の波が続く |
| ★含まれるもの | ★外部過電圧すべて+開閉過電圧 | ★地絡時の健全相・フェランチ現象 |
| ★継続時間 | ★マイクロ秒〜ミリ秒 | ★数秒 |
開閉過電圧は内部過電圧ですが、波形はサージ性——2つの軸が交差します。
だから(エ)がサージ性、(オ)が短時間交流——問題文が「(イ)過電圧は(エ)」と書いているのです。
(ア) 配電線路では誘導雷が最も多い
| ★直撃雷 | ★誘導雷 | |
| ★落ちる場所 | ★電線そのもの | ★近くの地面や樹木 |
| ★電圧の大きさ | ★★きわめて大きい | ★数十〜数百 kV |
| ★発生頻度 | ★低い | ★★高い |
| ★配電線路では | ★まれ | ★★最も多い |
配電線は低い位置にあり、周りに建物や樹木があります——だから直撃を受けにくいのです。
近くに落ちた雷が、電磁誘導と静電誘導で電圧を起こす——それが誘導雷になります。
直撃より小さいものの、回数が桁違いに多い——だから「発生頻度が最も多い」のです。
送電線では鉄塔が高いので、直撃雷や逆フラッシオーバが問題になります——電圧階級で主役が変わることになります。
(イ)(ウ) 内部過電圧の代表
系統の中で起きる現象が原因です。
| 種類 | いつ起きるか | 大きさの目安 |
| ★開閉過電圧 | ★遮断器・断路器の開閉時 | ★運転電圧の2〜3倍 |
| ★一線地絡時の健全相 | ★1線が地絡したとき | ★√3倍(非接地系) |
| ★フェランチ現象 | ★軽負荷・無負荷時 | ★1.1〜1.2倍 |
開閉過電圧は e=−L di/dt から生じます——電流を急に切ると高い電圧が出るのです。
一線地絡では、健全相の対地電圧が上がります——中性点が移動するからです。
「三相短絡」では過電圧は生じません——むしろ電圧が下がるので誤りです。
「混触」は高低圧が触れる別の事故——内部過電圧の代表には挙げません。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「直撃雷」としてしまう——選択肢(2)(3)がそれです。配電線路では誘導雷のほうが多い。
(イ)を「アーク間欠地絡」としてしまう——選択肢(2)(4)。問題文が「遮断器や断路器の動作に伴って」と書いているので開閉です。
(ウ)を「三相短絡」としてしまう——選択肢(3)。短絡では電圧が下がります。
(エ)(オ)を入れ替えてしまう——選択肢(3)(4)(5)。雷と開閉は一瞬なのでサージ性です。
(エ)だけで(1)(2)に絞れます——あとは(ア)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★外部=雷、内部=系統内の現象。
②★配電線路で最も多いのは誘導雷。
③★開閉過電圧は内部だが波形はサージ性。
④★地絡やフェランチは短時間交流過電圧。
💡 覚え方
「一瞬ならサージ、続くなら交流」——波形での分類はそれだけです。雷も開閉も一瞬——だから同じサージ性に入ります。
避雷器と絶縁協調は平成23年度 A問題10(変電:発変電所用避雷器)にあります。
誘導雷が起きる仕組み
(ア)の誘導雷を、順に追ってみましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★雷雲の下に負電荷がたまる |
| ★② | ★静電誘導で電線に正電荷が引き寄せられる(拘束電荷) |
| ★③ | ★近くの地面や樹木に落雷する |
| ★④ | ★雷雲の電荷が急に消える |
| ★⑤ | ★拘束されていた電荷が自由になり進行波として走る |
電線に直接落ちなくても、過電圧が生じます——それが誘導雷です。
雷雲が近づいた時点で、すでに電荷が引き寄せられています——それが解放されるのが引き金になります。
配電線は建物や樹木に囲まれているので直撃は少ない——けれども近くへの落雷は頻繁です。
だから配電線路では誘導雷が最も多い——問題文の通りになります。
誘導雷の過電圧は数十〜数百 kV——6.6 kV 系統には十分な脅威です。
要点をもう一度
2つの軸が交差しているのが本問の特徴です。
| ★サージ性 | ★短時間交流 | |
| ★外部過電圧 | ★★直撃雷・誘導雷・逆フラッシオーバ | ★— |
| ★内部過電圧 | ★★開閉過電圧 | ★★地絡時の健全相・フェランチ |
外部過電圧はすべてサージ性です——雷は一瞬だから。
内部過電圧は2つに分かれます——開閉はサージ性、地絡やフェランチは短時間交流。
だから「内部過電圧=短時間交流」ではありません——そこが引っかけどころです。
それぞれに対応する保護
| 過電圧 | 主な対策 |
| ★雷サージ | ★架空地線・避雷器 |
| ★開閉過電圧 | ★抵抗投入・避雷器 |
| ★地絡時の電位上昇 | ★中性点接地方式の選定 |
| ★フェランチ現象 | ★分路リアクトル |
波形が違えば、対策も違います——避雷器はサージ性に効きます。
短時間交流過電圧は数秒続くので、避雷器では処理できません——むしろ避雷器を壊す側になります。
公称電圧と最高電圧
問題文の冒頭にある「最高電圧」を確かめましょう。
| 公称電圧 | 最高電圧 | 比 |
| ★6.6 kV | ★6.9 kV | ★1.045倍 |
| ★66 kV | ★69 kV | ★1.045倍 |
| ★275 kV | ★300 kV | ★1.09倍 |
| ★500 kV | ★550 kV | ★1.1倍 |
公称電圧は系統の呼び名、最高電圧は許容される上限です。
負荷の変動で電圧は上下するので、余裕を見てあります——その範囲なら異常ではないのです。
それを超えたときに初めて「過電圧」と呼ばれます——問題文の定義がそれです。
機器の絶縁は、最高電圧を基準に設計されます——常時それに耐えなければならないから。
過電圧はそれを超えるので、避雷器で抑える必要がある——だから絶縁協調が要ることになります。
軽負荷時に電圧が上がるしくみ
問題文が最後に挙げているフェランチ現象です。
| 負荷 | 支配的な電流 | 受電端電圧 |
| ★重負荷 | ★負荷の遅れ電流 | ★送電端より低い |
| ★軽負荷・無負荷 | ★★線路の静電容量による進み電流 | ★★送電端より高い |
進み電流が線路のリアクタンスを通ると、電圧が上がります——遅れ電流なら下がるのと逆です。
長い送電線やケーブル系統ほど静電容量が大きい——だから顕著になります。
継続時間は数秒以上——だから短時間交流過電圧に分類されるのです。
対策は分路リアクトルの投入——遅れ無効電力を吸収して打ち消します。
雷サージのような一瞬の現象とは、まったく性質が違う——だから分類が分かれるのです。
まとめ
| (ア) | 誘導雷(配電線路で頻度最多) |
| (イ) | 開閉過電圧(遮断器・断路器の動作) |
| (ウ) | 一線地絡(健全相の電圧上昇) |
| (エ) | サージ性(雷・開閉=急峻な波形) |
| (オ) | 短時間交流(地絡・フェランチ=商用周波) |
| 答え | (1) |
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