今回は令和7年度下期 機械科目 B問題15を解説します。単相変圧器の効率から鉄損(a)と全負荷時の銅損(b)を逆算する、変圧器の損失計算の総合問題です。
核になる知識は2つだけ。①鉄損は負荷に関係なく一定、銅損は負荷率の2乗に比例。②鉄損=銅損のとき効率が最大。問題文の「3/4の負荷で鉄損と銅損が等しくなり」は、この変圧器の最大効率点が3/4負荷であると言っているのと同じです。
令和7年度下期 機械科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和7年度下期 B問題15
定格容量50kV・Aの単相変圧器がある.この変圧器を定格電圧,力率100%,全負荷の3/4の負荷で運転したとき,鉄損と銅損が等しくなり,そのときの効率は98.2%であった.この変圧器について,次の(a)及び(b)に答えよ.
ただし,鉄損と銅損以外の損失は無視できるものとする.
(a)この変圧器の鉄損[W]の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
(b)この変圧器を全負荷,力率100%で運転したときの銅損[W]の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
定格容量50kV・Aの単相変圧器がある。この変圧器を定格電圧、力率100%、全負荷の3/4の負荷で運転したとき、鉄損と銅損が等しくなり、そのときの効率は98.2%であった。この変圧器について、次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし、鉄損と銅損以外の損失は無視できるものとする。
(a)この変圧器の鉄損[W]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)536 (2)472 (3)425 (4)382 (5)344 W
(b)この変圧器を全負荷、力率100%で運転したときの銅損[W]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)712 (2)611 (3)579 (4)453 (5)325 W

出題のポイント:最大効率条件が与えられている
「3/4 の負荷で鉄損と銅損が等しくなり」——この一文が最大効率条件を与えています。鉄損と銅損が等しいと分かっているから、全損失を2で割るだけで鉄損が出るのです。
この条件がなければ、全損失を鉄損と銅損に分けることはできません。効率だけでは損失の合計しか分からないからです——「等しい」という一言が、分離の鍵になっています。
(a) 鉄損を求める
定格容量×負荷率×力率
W が全損失
分母を求める
鉄損+銅損
等しいので折半
(b) 全負荷での銅損
3/4 負荷での銅損が344 Wだと分かりました。銅損は負荷率の2乗に比例しますから、全負荷(負荷率1)では 1/(3/4)2=16/9 倍になります。
α=0.75
負荷率の2乗で割る
選択肢の611に一致
⚠️ よくある間違い
(4) 453 Wは負荷率の2乗ではなく、負荷率そのもので割ったときの値(344÷0.75≒459)に近い答えです。銅損は電流の2乗に比例——「2乗」を忘れる誤りが、この分野では最も多いので注意してください。
この変圧器の効率曲線を描いてみる
鉄損344 W、全負荷銅損611 Wと分かったので、どの負荷率でも効率が計算できます。
| 負荷率 | 鉄損 | 銅損 | 出力 | 効率 |
| 1/4 | 344 W | 38 W | 12 500 W | 97.0 % |
| 1/2 | 344 W | 153 W | 25 000 W | 98.0 % |
| 3/4(最大効率) | 344 W | 344 W | 37 500 W | 98.2 % |
| 1 | 344 W | 611 W | 50 000 W | 98.1 % |
3/4 負荷で98.2 %の山ができ、その前後はなだらか——1/2 から全負荷までは98 %前後を保っています。この平坦さが変圧器の使いやすさです。
最大効率の負荷率は √(鉄損/全負荷銅損)=√(344/611)=0.75——与えられた条件と一致します。(a)(b)で求めた値を使って元の条件を再現できた——これが最良の検算になります。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 出力37 500 W と効率98.2 %から全損失687 W。折半して344 W。
②(b) 344÷(3/4)2=344×16/9≒611 W。
③「2乗」を忘れると453 前後になる。選択肢に用意されている。
④ 検算:√(344/611)=0.75 で条件どおり。
💡 覚え方
「鉄損=銅損なら折半、銅損の換算は負荷率の2乗」——この2手だけで(a)(b)とも解けます。B問題としては最も素直な部類——確実に取りたい1問です。
出題履歴:平成20年度とまったく同じ問題(答えの番号は逆)
本問は平成20年度 B問題16と同一の問題です(変圧器23:鉄損=銅損の条件から損失を逆算するには?)。数値も設定も完全に同じですが——選択肢の並び順が逆になっています。
| 平成20年度 B問題16 | 令和7年度下期 B問題15(本問) | |
| (a)の選択肢 | 344/382/425/472/536 | 536/472/425/382/344(逆順) |
| (a)の正解 | (1) 344 W | (5) 344 W |
| (b)の選択肢 | 325/453/579/611/712 | 712/611/579/453/325(逆順) |
| (b)の正解 | (4) 611 W | (2) 611 W |
選択肢を逆順に並べ替えるだけで、正解の番号が (1)(4) から (5)(2) に変わりました——これほど分かりやすい「番号暗記は通用しない」の実例はありません。17年ぶりの再出題で、値は同じなのに番号だけが変わっているのです。
覚えるべきは「344 W と611 W」という値、あるいはその求め方——番号を覚えても意味がないことが、この2問を並べるとはっきりします。
17年ぶりの再出題が教えてくれること
本問が平成20年度とまったく同じ問題だという事実は、学習の戦略そのものに関わります。電験3種では、過去問がほぼそのまま再出題されることがある——これは無視できない情報です。
| 再出題のパターン | 例 | 対策 |
| 数値も選択肢も完全に同一 | 短絡試験(平成19年度⇔令和6年度上期) | 過去問を解いていれば即答できる |
| 数値は同じ、選択肢の並びが違う | 本問(平成20年度⇔令和7年度下期) | ★番号ではなく値を覚える |
| 問題文は同じ、数値だけ違う | 短絡試験(電力計1 200 W ⇔ 1 000 W) | 解法の手順を身につける |
| 同じテーマを別の切り口で | 最大効率(効率を問う/負荷率を問う/損失を逆算) | 関係式を出入り両方向に使えるようにする |
本問は2番目のパターンです。数値も設定も同じなのに、選択肢が逆順に並べ替えられている——出題側が意図的に番号暗記を封じにきていると読めます。
つまり「過去問を解く」意味は、答えを覚えることではなく解法を身につけること。本問なら「効率から全損失、折半して鉄損、負荷率の2乗で全負荷銅損」という3手——この手順さえ身についていれば、数値が変わっても選択肢が入れ替わっても対応できます。
逆に言えば、頻出テーマの解法を確実に身につけておけば、本番でそれが出たときの得点はほぼ約束されるということ。変圧器の効率・損失は、機械科目で最も繰り返されるテーマの一つ——投資する価値の高い領域です。
まとめ
| 鉄損 | 負荷に無関係で一定(電圧と周波数で決まる) |
| 銅損 | 負荷率の2乗に比例(I²R) |
| 最大効率の条件 | 鉄損=銅損。そのときの負荷率 α=√(鉄損/全負荷銅損) |
| (a)出力 | 50 kV·A×1.0×3/4=37 500 W |
| (a)損失合計 | 37 500/0.982−37 500=687 W |
| (a)鉄損 | 687/2=343.7≒344 W …… (5) |
| (b)全負荷銅損 | 343.7÷(3/4)²=343.7×16/9=611 W …… (2) |
| 全負荷効率 | 50 000/50 954.7=98.13 %(最大効率点より低い) |
| 答え | (a)-(5),(b)-(2) |
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