誘導機18【電験3種 機械】V/f一定制御と電流特性とは?令和7年上期 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 令和7年度上期 A問題4 V/f一定で磁束を保つ!電流はどう変わる?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「V/f一定制御と電流特性」はインバータ時代の定番テーマです。本記事では、令和7年度上期 A問題4「電圧と周波数を共に5 %下げたときの電流」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

一見難しそうですが、実は計算らしい計算は不要。トルクの比例式 \( T \propto VI_2/f \) に「Vもfも0.95倍」を入れると0.95が約分されて消え、電流は80 Aのまま——それが答えです。

目次

令和7年度上期 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和7年度上期 A問題4 問題文(三相かご形誘導電動機のV/f制御と電流)
令和7年度上期 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

電験3種 機械科目 【誘導機】 令和7年度上期 A問題4

一般的な三相かご形誘導電動機がある。出力が大きい定格運転条件では、誘導機の等価回路の電流は、「二次電流≫励磁電流」であるから、励磁回路を省略しても特性をほぼ表現できる。さらに、「二次抵抗による電圧降下≫その他の電圧降下」となるので、一次抵抗と漏れリアクタンスを省略しても、おおよその特性を検討できる。

このような電動機でトルク一定負荷の場合に、電流 80 A の定格運転から電源電圧と周波数を共に 5 %下げて回転速度を少し下げた。このときの電動機の電流の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 72  (2) 76  (3) 80  (4) 84  (5) 88

🔁 再出題情報
V/f一定制御と電流特性は平成26年度 A問題4(誘導機19)とほぼ同型のテーマ。セットで解けば確実に得点源になります。

出題のポイント:「変わらない」が答えになる問題

条件が変わったのに答えが変わらない——この型の問題では「本当に何も変わらないのか」を疑って手が止まりがちです。しかし式で確かめれば、迷う余地はありません

簡易化したあとのトルク

\( T=\dfrac{P_2}{\omega_s}\propto\dfrac{V I_2}{f} \)  (\( \omega_s\propto f \))

分子に V、分母に f——両方を同じ割合で変えれば、その割合は約分されて消えます

🔁 再出題情報
V/f一定制御と電流特性は平成26年度 A問題4(誘導機19)とほぼ同型のテーマ。セットで解けば確実に得点源になります。
電圧と周波数をともに5パーセント下げても電流80アンペアが変わらない図
V/f一定で磁束一定、定トルクなら電流も一定です。

0.95 が約分されて消える

\( T\’\propto\dfrac{(0.95V)\,I_2\’}{0.95f}=\dfrac{V I_2\’}{f} \)
❶ 5 % 下げて代入
0.95 が分子と分母で打ち消し合う
\( T\’=T \;\Rightarrow\; I_2\’=I_2=80\ \mathrm{A} \)
❷ トルク一定なら
電流は変わらない
答え電動機の電流は 80 A(変わらない) ⇒ (3)
Vとfを0.95倍にして磁束と二次電流が一定になる関係
0.95が分子・分母で相殺され、V/fは不変です。
V/f一定制御で電流80アンペアを導く3ステップの解説
T∝VI₂/fより、正解は選択肢3の80 Aです。

「何 % 下げるか」は答えに関係しない

この問題の構造で決定的なのは、下げる割合が式から消えてしまうという点です。

下げる割合電圧周波数V/f電流
5 %(本問)0.95V0.95f不変80 A
10 %0.90V0.90f不変80 A
30 %0.70V0.70f不変80 A
50 %0.50V0.50f不変80 A

何 % だろうと答えは変わりません。「5 %」という数字は、答えを出すためには不要な情報だということです——問題文の数値を全部使わないと不安になる人ほど、この型で迷います

ただし極端に下げれば話は別です。周波数を数 % まで下げると、一次抵抗の電圧降下が無視できなくなって磁束が痩せます——V/f 一定制御が成り立たなくなる領域です。本問の5 % や10 % 程度なら、その心配はありません

回転速度はどう変わったのか

問題文の「回転速度を少し下げた」を、具体的な数字で追ってみましょう。4極・50 Hz・定格滑り3 % の機械だとします。

\( N_s=1500 \to 0.95\times1500=1425\ \mathrm{min^{-1}} \)
❶ 同期速度
周波数に比例して下がる。
\( N_s-N=s\,N_s=0.03\times1500=45\ \mathrm{min^{-1}} \)
❷ 遅れ回転数
これは変わらない(滑り周波数が一定だから)。
\( N=1425-45=1380\ \mathrm{min^{-1}} \)
❸ 回転速度
1 455 → 1 380 で75 min−1 低下

「同期速度からの遅れ」が45 min−1 のまま変わらないのが、V/f 一定制御の特徴です。トルクが同じなら二次電流も同じ、二次電流が同じなら滑り周波数も同じ——だから遅れ回転数も同じになります。

速度制御の全体像で言えば、トルク−速度曲線が横に平行移動しているということです。曲線の形(傾き)は変わらず、位置だけがずれる——だから低速でも定格と同じトルクを、同じ電流で出せるのです。

★同型問題:平成26年度 A問題4

この問題は平成26年度 A問題4と、文面も論理もほぼ同一です。変わったのは数値だけでした。

平成26年度 A問題4令和7年度上期 A問題4(本問)
定格電流100 A80 A
下げる割合10 %5 %
答え100 A(変わらない)80 A(変わらない)
正解の番号(3)(3)

電流も割合も変えられていますが、答えの構造はまったく同じです。「与えられた電流をそのまま答える」という一点で決着します。

11年ぶりの再出題で、正解の番号まで一致しました。選択肢が「与えられた値」を中央に置いて上下に振る構成なので、並べ替えの余地がなかったとも言えます。

この型を一度理解しておけば、次にどんな数値で出ても即答できます。過去問演習の価値を象徴するような1問です。

⏱️ 本番での進め方
「省略してよい」と書かれた前置きは解法の指定。素直に簡易回路で考える。
T∝VI2/f——V と f が同率で変われば割合は約分されて消える。
「変わらない」を選ぶ勇気。与えられた値がそのまま答えになることもある。
下げる割合は答えに影響しない——数値を変えた再出題に強くなる。

「トルク一定負荷」とは何か——負荷の3分類

本問の「トルク一定負荷」という条件は、答えを決める重要な前提です。負荷には性格の違う3つの型があり、どれかによって話がまったく変わります

負荷の型トルクと速度の関係動力と速度の関係代表例
定トルク負荷T=一定P∝Nコンベヤ・巻上機・押出機
二乗低減トルク負荷T∝N2P∝N3送風機・ポンプ
定出力負荷T∝1/NP=一定巻取機・工作機械の主軸

本問は定トルク負荷ですから、速度を下げてもトルクは同じだけ要ります——だから電流も同じだけ必要になるわけです。

送風機・ポンプなら、話は劇的に変わる

もし本問の負荷が送風機やポンプだったら——速度を下げた瞬間に、必要なトルクも電流も激減します

流体機械の相似則

流量 \( Q\propto N \)  圧力 \( H\propto N^2 \)  動力 \( P\propto N^3 \)

動力は回転速度の3乗——これが送風機・ポンプでインバータが劇的に効く理由です。

回転速度流量圧力軸動力省エネ効果
100 %100 %100 %100 %
90 %90 %81 %73 %27 % 削減
80 %80 %64 %51 %49 % 削減
50 %50 %25 %13 %87 % 削減

風量を8割にするだけで、動力は半分になります。ダンパやバルブで絞る従来のやり方では、動力はほとんど減らない(流れを堰き止めているだけなので)のに対し、回転速度を下げれば3乗で効く——これがインバータによる省エネの正体です。

本問が定トルク負荷を扱っているのは、この3乗則を使わせないためでしょう。負荷の型を取り違えると答えがまったく変わる——問題文の「トルク一定負荷」は読み飛ばしてはいけない一語です。

💡 覚え方
「V/f 一定=磁束一定=トルク特性そのまま=定トルクなら電流不変」T∝VI2/f分母の f は ωs∝f から来ている滑り周波数 sf も一定に保たれるので、同期速度からの遅れ回転数も変わらず、トルク−速度曲線が平行移動する

⚠️ よくある間違い
「電圧が5 % 下がったのだから電流も5 % 下がって76 A」とするのが最頻の誤りです(選択肢(2))。周波数も同時に下がっていることを見落としています。もう一つは「変わらないはずがない」と思い込んで、あえて別の選択肢を選ぶこと——条件変化の問題で「変化なし」が正解になるのは珍しくありません

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