電験3種の機械科目で問われる補極と補償巻線。本記事では、令和6年度上期 A問題1の穴埋め問題を解説します。
カギは「回転子=電機子」「ずれるのは電気的中性軸」「生じるのは火花」「小形機は補極」の4点です。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成28年度A問題2 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和6年度上期 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
4つの用語を1つずつ、意味から確定していきましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 令和6年度上期 A問題1
次の文章は、直流機に関する記述である。
直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、(ア) を回転子とする。
このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た (イ) 中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に (ウ) が生じて整流子片を損傷するおそれがある。なお、小形機では、補償巻線と補極のうち (エ) が一般的に用いられる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 界磁 | 電気的 | 火花 | 補償巻線 |
| (2) | 界磁 | 幾何学的 | 応力 | 補極 |
| (3) | 電機子 | 幾何学的 | 応力 | 補償巻線 |
| (4) | 電機子 | 電気的 | 火花 | 補償巻線 |
| (5) | 電機子 | 電気的 | 火花 | 補極 |
出題のポイント:4つの空欄はすべて「言葉の定義」で決まる
この問題は計算が一切なく、4つの用語を正確に覚えているかだけを問うています。逆に言えば覚えていれば10秒で終わる問題——確実に取りにいきたい1問です。
| 空欄 | 答え | 決め手 |
| (ア) | 電機子 | 「界磁巻線に直流の界磁電流を流し」とあるので、界磁は固定子側。残る回転子は電機子 |
| (イ) | 電気的 | 幾何学的中性軸は磁極の真ん中で固定されて動かない。動くのは電気的中性軸 |
| (ウ) | 火花 | 整流子片を傷めるのは整流不良による火花。機械的な応力ではない |
| (エ) | 補極 | 小形機は安価で構造が簡単な補極。補償巻線は高価で大形機向き |

(イ):2つの「中性軸」を区別する
この問題でいちばん間違えやすいのが(イ)です。中性軸には2種類あることを押さえてください。
| 幾何学的中性軸 | 電気的中性軸 | |
| 定義 | N極とS極のちょうど中間の位置 | 磁束密度が実際にゼロになる位置 |
| 位置 | 機械の構造で決まり、動かない | 負荷によって移動する |
| 無負荷のとき | 両者は一致する | 両者は一致する |
| 負荷をかけると | そのまま | ずれる(発電機は回転方向、電動機は逆方向) |
「固定子から見た(イ)中性軸の位置が変化する」と問題文にあります。変化するのですから、動くほうの「電気的」中性軸です。幾何学的中性軸は磁極の位置で決まるので、負荷が変わっても動きようがありません——ここが判断の決め手になります。
☝️ ひっかけの作り方:「幾何学的」という語は、それらしく見えて必ず誤りになる定番のダミーです。「幾何学的=形で決まる=動かない」と結びつけて覚えておけば引っかかりません。

(ウ):整流子を傷めるのは「火花」
電気的中性軸がずれた位置でブラシがコイルを短絡すると、そのコイルには磁束が残っているため起電力が誘導されます。短絡された回路に電圧がかかるのですから、大きな短絡電流が流れます。
ブラシが整流子片から離れる瞬間、この電流がアークとなって飛びます——これが火花です。火花は整流子片の表面を局所的に溶かし、荒れ・段付き摩耗を起こして整流子を損傷します。
選択肢の「応力」は誤りです。ブラシと整流子片の間に生じる問題は電気的なもの(火花)であって機械的なもの(応力)ではありません。「整流子片を損傷する」という結果は同じでも、原因が違う——ここを突いてきています。
(エ):補極と補償巻線の使い分け
| 対策 | 置く場所 | 打ち消す対象 | 特徴 |
| 補極 | 主磁極と主磁極の間(幾何学的中性軸の位置) | 整流帯(ブラシ付近)の磁束 | 構造が簡単で安価 ⇒ 小形機で一般的 |
| 補償巻線 | 主磁極の磁極片に切ったスロット | 主磁極下の磁束のひずみ全体 | 効果は大きいが高価 ⇒ 大形機・急変負荷用 |
| ブラシの移動 | —(ブラシ位置をずらす) | —(対症療法) | 負荷が変わるたびに位置を変えねばならず実用的でない |
| 共通の要点 | — | — | 補極も補償巻線も電機子巻線と直列に接続する ⇒ 負荷電流に比例した打ち消し磁束が自動で得られる |
小形機では補極が一般的です。理由は単純で、補償巻線は主磁極の磁極片にスロットを切って巻線を埋め込む必要があり、構造が複雑で高価だからです。小形機にそこまでのコストはかけられません。
一方補償巻線が要るのは、負荷が急激に変わる大形機です。圧延機のように短時間に大電流が流れる用途では、補極だけでは主磁極下のひずみを抑えきれず、フラッシオーバ(整流子全周にわたる短絡アーク)を起こす危険があります。

整流とは何が起きている現象なのか
「整流子とブラシで整流する」と言葉では簡単ですが、中では1つのコイルの電流が短時間で逆向きに切り替わるという、なかなか大変なことが起きています。ここを理解しておくと、補極が必要な理由が腑に落ちます。
電機子のコイルは回転しながら、あるときはブラシの右側の回路に、次の瞬間には左側の回路に属します。右側では+方向、左側では−方向に電流が流れるので、切り替わりの瞬間にコイルの電流は +I から −I へ反転しなければなりません。
この切り替えの間、ブラシは2枚の整流子片にまたがってコイルを短絡しています。この短絡されている時間(整流周期)はごく短く、1ミリ秒にも満たないのが普通です。短い時間で大きく電流を変えるのですから、コイルのインダクタンスが抵抗します。
| 整流の種類 | 電流の変化の仕方 | 起きること |
| 直線整流 | 短絡期間中に一定の割合でなめらかに反転 | 理想的。火花が出ない |
| 不足整流(遅れ整流) | 反転が間に合わず、最後に急変する | ブラシの後端で火花が出る。最も多いトラブル |
| 過整流 | 反転が早すぎて行き過ぎる | ブラシの前端で火花が出る |
不足整流の原因は、コイルのインダクタンスが作るリアクタンス電圧です。電流を急に変えようとすると e=−L(di/dt) の起電力が発生し、変化を妨げます。補極の本当の役割は、この妨げをちょうど打ち消す起電力をコイルに与えること——だから補極は整流中のコイルがいる場所(主磁極の間)に置かれるのです。
補極を電機子巻線と直列につなぐ理由もここにあります。リアクタンス電圧は di/dt に比例=電流の大きさに比例します。補極の磁束も電機子電流に比例するので、負荷が変わっても打ち消しの度合いが自動的に釣り合う——別電源で励磁したのでは、負荷ごとに手で調整しなければなりません。
大形機で補償巻線まで必要になるのは、フラッシオーバを防ぐためです。負荷が急変すると主磁極下の磁束が大きくひずみ、一部の整流子片間の電圧が異常に高くなります。これが限界を超えると整流子の全周にわたってアークが走り(フラッシオーバ)、機械が停止します。補償巻線は主磁極下のひずみそのものを消すので、この危険を根本から断てます。
★同一問題:番号は違うが中身は同じ
この問題は平成28年度 A問題2とまったく同じ問題文です。空欄も、答えとなる語句も、一字一句同じ。違うのは選択肢の並び順だけです。
| 本問((5)) | 平成28年度 A問題2((3)) | |
| (ア) | 電機子 | 電機子(同じ) |
| (イ) | 電気的 | 電気的(同じ) |
| (ウ) | 火花 | 火花(同じ) |
| (エ) | 補極 | 補極(同じ) |
| 正解の番号 | (5) | (3)(違う!) |
答えの中身は完全に同じなのに、正解の番号だけが違います。これは「番号で覚えると必ず外す」ことを示す決定的な実例です。過去問を繰り返すときは「(3)が正解」ではなく「電機子・電気的・火花・補極」と中身で覚える——この習慣が本番で効きます。
同じ問題が繰り返し出るということは、それだけ重要な論点だという証拠でもあります。補極と補償巻線は直流機の定番中の定番なので、両方の記事を見比べて確実にものにしてください。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「界磁巻線に界磁電流を流し」を読む:界磁が固定子なら回転子は電機子。
② (イ)は「変化する」という動詞から:動くのは電気的中性軸だけ。
③ (ウ)は「整流子片を損傷」の原因:電気的な火花であって機械的な応力ではない。
④ (エ)は「小形機」から:安いほう=補極。大形機なら補償巻線。
💡 覚え方
「電機子・電気的・火花・補極」の4点セットで覚える。幾何学的中性軸は動かない、電気的中性軸が動く。補極は主磁極の間で安価(小形機)、補償巻線は磁極片のスロットで高価(大形機)、どちらも電機子と直列。正解の番号は年度で変わるので中身で覚えること。
⚠️ よくある間違い
(イ)を「幾何学的」とするのが最頻の誤りです。幾何学的中性軸は磁極の中間で固定されており、動きません。もう一つは(エ)を「補償巻線」とする誤り——小形機に高価な補償巻線は使いません。「小形=安いほう」と結びつけてください。

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