電験3種の機械科目で問われる直流発電機の電機子反作用。本記事では、平成23年度 A問題1の穴埋め問題を解説します。
カギは「電機子巻線の電流が界磁巻線の磁束に影響する」という主客の整理と、「主磁束減少→端子電圧低下」「中性軸のずれ→ブラシ位置の導体に起電力→短絡」の因果関係です。
平成23年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
「電機子反作用」という言葉の意味を確かめるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成23年度 A問題1
次の文章は、直流発電機の電機子反作用とその影響に関する記述である。
直流発電機の電機子反作用とは、発電機に負荷を接続したとき (ア) 巻線に流れる電流によって作られる磁束が (イ) 巻線による磁束に影響を与える作用のことである。電機子反作用はギャップの主磁束を (ウ) させて発電機の端子電圧を低下させたり、ギャップの磁束分布に偏りを生じさせてブラシの位置と電気的中性軸とのずれを生じさせる。このずれがブラシがある位置の導体に (エ) を発生させ、ブラシによる短絡等の障害の要因となる。ブラシの位置と電気的中性軸とのずれを抑制する方法の一つとして、補極を設けギャップの磁束分布の偏りを補正する方法が採用されている。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 界磁 | 電機子 | 減少 | 接触抵抗 |
| (2) | 電機子 | 界磁 | 増加 | 起電力 |
| (3) | 界磁 | 電機子 | 減少 | 起電力 |
| (4) | 電機子 | 界磁 | 減少 | 起電力 |
| (5) | 界磁 | 電機子 | 増加 | 接触抵抗 |
出題のポイント:主語と述語を取り違えない
この問題の(ア)(イ)は「どちらがどちらに影響を与えるのか」という主客の問題です。電機子反作用という言葉自体が答えを示しています——「電機子」が起こす「反作用」なのですから、影響を与える側が電機子、受ける側が界磁です。
(ア)=電機子、(イ)=界磁。負荷をつなぐと電機子巻線に電流が流れ、その電流が作る磁束が、界磁巻線の作る主磁束をゆがめる——これが電機子反作用の定義そのものです。

電機子反作用が起こす3つのこと
| 電機子反作用が起こすこと | 何が起きるか | 困ること |
| ①主磁束の減少 | 磁極の片側は強め・片側は弱められるが、強められる側が磁気飽和するため差し引きで減る | 発電機は端子電圧が低下、電動機は速度が上昇 |
| ②磁束分布のひずみ | 磁束密度が零になる電気的中性軸が移動する(発電機は回転方向、電動機は逆方向) | ブラシ位置とずれて整流が悪化 |
| ③整流中コイルの起電力 | ずれた位置で短絡されるコイルに起電力が残る | 火花が飛び整流子片を損傷 |
問題文はこの表の①と②③を順に述べています。「ギャップの主磁束を(ウ)させて発電機の端子電圧を低下させたり」が①、「磁束分布に偏りを生じさせてブラシの位置と電気的中性軸とのずれを生じさせる」が②、「このずれがブラシがある位置の導体に(エ)を発生させ」が③です。
(ウ):なぜ主磁束は「減少」するのか
電機子電流が作る磁束は、磁極の片側を強め、反対側を弱めます。足し引きすればゼロになりそうですが、実際には差し引きで減ります。理由は磁気飽和です。
強められる側は鉄心がすでに飽和に近いので、磁束はあまり増えません。一方弱められる側は素直に減ります。したがって増える量より減る量のほうが大きく、合計すると主磁束は減少するのです。
(ウ)=減少。これによって発電機では E=kEφn が下がり、端子電圧が低下します。電動機では逆に、φ が減ると n=E/(kEφ) が上がって速度が上昇します——同じ原因でも、発電機と電動機で現れ方が違うことに注意してください。
| 発電機 | 電動機 | |
| 主磁束 φ | 減少 | 減少(同じ) |
| 結果 | E=kEφn が下がる ⇒ 端子電圧が低下 | n=E/(kEφ) が上がる ⇒ 速度が上昇 |
| 電気的中性軸の移動 | 回転方向へずれる | 回転方向と逆へずれる |

(エ):ブラシ位置の導体に何が発生するのか
整流の瞬間、ブラシは2つの整流子片にまたがってコイルを短絡しています。この短絡されたコイルが磁束密度ゼロの位置(電気的中性軸)にあれば、起電力が誘導されず安全です。
ところが電機子反作用で電気的中性軸がずれると、ブラシ位置には磁束が残っています。すると短絡されたコイルに起電力が発生し、短絡回路に大きな電流が流れて火花になります。
(エ)=起電力。選択肢にある「接触抵抗」は誤りです——接触抵抗はむしろ整流を助けるもので(短絡電流を抑える)、障害の原因ではありません。炭素ブラシが使われるのは、金属より接触抵抗が大きく整流に有利だからです。

選択肢を絞り込む手順
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)=電機子 | 「電機子反作用」=電機子が起こす作用。名前がそのまま答え | (1)(3)(5)が消えて(2)(4) |
| (ウ)=減少 | 磁気飽和のため差し引きで減る。端子電圧を「低下させたり」と問題文にある | (2)が消えて(4)に確定 |
2段階で終わります。特に(ア)は「電機子反作用」という語の意味を考えるだけで決まるので、ここで3肢が消えます。用語の名前が定義を語っている——電気の分野では非常に多いパターンです。
さらに問題文の「端子電圧を低下させたり」という記述が(ウ)の答えを保証しています。磁束が増えれば端子電圧は上がるはずなので、「低下」と書いてある以上、磁束は「減少」でなければ辻褄が合いません。空欄の答えが本文中の他の記述から確定できることはよくあるので、前後をよく読む価値があります。
対策としての補極・補償巻線
問題文の最後に「補極を設けギャップの磁束分布の偏りを補正する方法」が挙げられています。電機子反作用への対策は主に次の3つです。
| 対策 | 置く場所 | 打ち消す対象 | 特徴 |
| 補極 | 主磁極と主磁極の間(幾何学的中性軸の位置) | 整流帯(ブラシ付近)の磁束 | 構造が簡単で安価 ⇒ 小形機で一般的 |
| 補償巻線 | 主磁極の磁極片に切ったスロット | 主磁極下の磁束のひずみ全体 | 効果は大きいが高価 ⇒ 大形機・急変負荷用 |
| ブラシの移動 | —(ブラシ位置をずらす) | —(対症療法) | 負荷が変わるたびに位置を変えねばならず実用的でない |
| 共通の要点 | — | — | 補極も補償巻線も電機子巻線と直列に接続する ⇒ 負荷電流に比例した打ち消し磁束が自動で得られる |
補極も補償巻線も、電機子巻線と直列につなぐのが決定的に重要です。電機子電流が増えれば打ち消し磁束も同じだけ増えるので、負荷が変わっても自動的に追従します。もし別電源で励磁したら、負荷ごとに手で調整しなければならず実用になりません。
⏱️ 本番での進め方
① 用語の名前から主語を決める:「電機子反作用」なら(ア)は電機子。
② 問題文の他の記述で検算する:「端子電圧を低下させたり」⇒ 磁束は減少。
③ 整流子を傷めるのは火花、その原因は短絡コイルに残る起電力。接触抵抗ではない。
④ 対策は補極(小形機)・補償巻線(大形機)、どちらも電機子と直列。
💡 覚え方
電機子反作用=電機子電流の磁束が界磁の主磁束をゆがめる作用。起こることは3つ——①主磁束が減る(磁気飽和のため)②電気的中性軸がずれる ③短絡コイルに起電力が残って火花。発電機は端子電圧が下がり、電動機は速度が上がる。対策の補極・補償巻線はどちらも電機子と直列。
⚠️ よくある間違い
(ア)(イ)を逆にするのが最頻(→(1)(3)(5))。「電機子反作用」という名前が主語を教えてくれます。もう一つは(エ)を「接触抵抗」とする誤り。接触抵抗は整流を助ける味方であって障害の原因ではありません——炭素ブラシをわざわざ使う理由がそこにあります。

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