誘導機54【電験3種 機械】等価回路定数の測定とは?令和2年 A問題3 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 令和2年度 A問題3 無負荷試験と拘束試験!定数はどう求める?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「等価回路定数の測定」は3つの試験の目的と条件を正確に覚えているかを試す実務寄りのテーマです。本記事では、令和2年度 A問題3を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

誤りは(4)。拘束試験(s=1)は低電圧を印加して一次電流が定格程度になるよう調整します。「定格電圧」を掛けたら始動電流(定格の4〜6倍)が流れてしまいます——変圧器の短絡試験と同じ発想です。

目次

令和2年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和2年度 A問題3 問題文(等価回路定数の測定)
令和2年度 機械科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3

電験3種 機械科目 【誘導機】 令和2年度 A問題3(要約)

L形等価回路を対象として誤りを選ぶ。(1) 一次巻線の抵抗測定は静止状態・直流で行い、基準巻線温度(75℃や115℃)に換算する。(2) 各端子間の測定値の平均から数式で計算する。(3) 無負荷試験は定格周波数・定格一次電圧で無負荷運転し、電圧・電流・電力を測定する。(4) 拘束試験は回転子を拘束し、定格周波数の定格一次電圧を印加して測定する。(5) 励磁サセプタンスは無負荷試験、合成漏れリアクタンスと二次抵抗は拘束試験で求める。

出題のポイント:3つの試験と、求まる定数の対応

等価回路の定数は1回の測定では求まりません3つの試験を組み合わせて、少しずつ切り分けていきます

試験条件何をゼロにしているか求まる定数
抵抗測定静止・直流リアクタンスをゼロに一次抵抗 r1
無負荷試験定格周波数・定格電圧・無負荷二次電流をほぼゼロに(s≒0)励磁コンダクタンス g0・サセプタンス b0
拘束試験定格周波数・低電圧・回転子を固定機械出力をゼロに(s=1)合成漏れリアクタンス・二次抵抗 r2

この対応表が本問のすべてです。(5)はこの分担をそのまま述べているので正しい——間違っているのは(4)の「定格電圧」という条件のほうです。

誘導電動機の無負荷試験は定格電圧、拘束試験は低電圧で行う比較図
拘束状態で定格電圧を印加すると過大電流になるため、低電圧で試験します。

(4):拘束試験に定格電圧を掛けてはいけない

拘束(回転子を固定)した状態は、始動の瞬間とまったく同じです。そこに定格電圧を加えたらどうなるか——数字で見てみましょう。

\( I_{\text{拘束}}\fallingdotseq 4\sim6\times I_n \)
定格電圧を加えた場合
始動電流そのもの。定格の4〜6倍が流れる。
\( P_{c}\propto I^2 \;\Rightarrow\; 16\sim36\times \)
銅損は2乗で効く
定格の16〜36倍の発熱。しかも回っていないので冷却ファンも効かない。

始動なら数秒で終わるから許されるのであって、測定のために拘束したまま通電し続ければ焼損しますだから電圧を下げて、一次電流が定格程度になるように調整するのが正しい手順です。(4)が誤り

答え誤っているものは (4)(拘束試験は低電圧で行い、電流を定格程度に抑える)
抵抗測定、無負荷試験、拘束試験の条件と得られる等価回路定数の対応表
r₁は直流抵抗測定、g₀・b₀は無負荷試験、x₁+x₂′・r₂′は拘束試験で求めます。
五つの選択肢を判定し拘束試験を定格電圧で行う記述が誤りであることを示す図
拘束試験は低電圧で定格電流程度に調整するため、誤りは選択肢(4)です。

変圧器の試験とまったく同じ構図

誘導機は「二次側が回る変圧器」ですから、定数の測り方も変圧器とそっくりです。変圧器の知識をそのまま持ち込めます

誘導機変圧器共通する考え方
励磁回路を測る無負荷試験(定格電圧)開放試験(定格電圧)二次に電流を流さず、鉄損と励磁だけを見る
巻線側を測る拘束試験(低電圧)短絡試験(低電圧)励磁電流を無視できる状態にして、銅損とインピーダンスを見る
なぜ低電圧かs=1 では始動電流が流れる短絡では過大電流が流れる定格電流が流れる程度に電圧を絞る

等価回路の r2′/s で考えると、条件の意味がはっきりします。

試験滑りr2′/s の値二次側の見え方
無負荷試験s ≒ 0ほぼ無限大二次側が開放されているのと同じ
拘束試験s = 1r2′(そのまま)二次側が短絡されているのと同じ

「無負荷=二次開放、拘束=二次短絡」——滑りを動かすだけで、開放と短絡を切り替えられるのが誘導機の面白いところです。変圧器なら結線を変える必要があることを、回転を止めるだけで実現しています

なぜ抵抗測定は直流で行うのか

(1)の「静止状態・直流で測る」も、理由を押さえておきましょう。

交流で測ると、抵抗だけでなくリアクタンスも一緒に測れてしまいます。直流ならリアクタンスは働かない(di/dt=0)ので、純粋な抵抗だけが得られます回転させないのも、回れば起電力が発生して測定を乱すからです。

「基準巻線温度に換算する」というのも重要な手順です。銅の抵抗は温度で大きく変わるため、測定したときの室温のままでは比較になりません

銅の抵抗の温度換算

\( \dfrac{R_2}{R_1}=\dfrac{235+t_2}{235+t_1} \)

t1=測定時の温度、t2=基準巻線温度235 は銅の温度係数から出る定数です。

\( R_{75}=R_{20}\times\dfrac{235+75}{235+20}=1.216\,R_{20} \)
20 ℃ から75 ℃ へ
約22 % も増える——換算しないと損失計算が大きく狂う。

基準巻線温度は耐熱クラスによって決まり、75 ℃(A種・E種)や115 ℃(F種)が使われます。運転中の巻線は室温より大幅に熱いので、実際の運転状態での抵抗を使わなければ効率も温度上昇も正しく計算できません

⏱️ 本番での進め方
「無負荷は定格電圧、拘束は低電圧」——この1行で(4)が誤りだと分かる。
拘束=始動と同じ状態。定格電圧なら定格の4〜6倍が流れる。
変圧器の開放試験・短絡試験と対で覚える。誘導機は「回る変圧器」。
75 ℃・115 ℃ という数字は正しい飾り。細かい数値に惑わされず(4)を先に見つける。

L形等価回路とは何か

問題文の冒頭にある「L形等価回路」——この言葉を素通りせずに、何を指しているのか押さえておきましょう

等価回路励磁回路の位置特徴
T形等価回路一次と二次の間(本来の位置)正確だが、計算が煩雑(枝が3本に分かれる)
L形等価回路入力端子に移す(近似)直列回路1本になり、計算が非常に楽

励磁回路を入力端まで移してしまうのがL形の考え方です。そうすると、一次と二次が単純な直列回路になり、電流もトルクも1本の式で書けます

この近似が許されるのは、励磁電流が一次電流に比べて小さく、しかも一次巻線のインピーダンス降下が小さいからです。変圧器で使う簡易等価回路とまったく同じ発想で、電験3種の計算問題はほぼすべてL形(または二次側だけの回路)で扱われます

ただし誘導機の励磁電流は定格の30〜50 % と大きい(空隙があるため)ので、変圧器ほどには良い近似になりませんそれでも実用上の精度は十分で、試験の測定法もL形を前提に定められています——問題文が「L形等価回路を対象として」とわざわざ断っているのは、この前提を明示するためです。

3つの試験で求まる定数を、L形の回路図に置いてみると分担がはっきりします。入力端の並列枝(g0・b0)が無負荷試験、直列枝の抵抗とリアクタンス(r1+r2′/s、x1+x2′)が抵抗測定と拘束試験——回路図の枝ごとに測定法が割り当てられていると考えると覚えやすくなります。

💡 覚え方
抵抗測定=直流(リアクタンスを消す)/無負荷試験=定格電圧(二次を開放にする)/拘束試験=低電圧(二次を短絡にする)変圧器の開放・短絡試験とまったく同じ構図r2′/s は s≒0 で無限大(開放)、s=1 で r2′(短絡)——滑りを動かすだけで開放と短絡を切り替えられる

⚠️ よくある間違い
(4)の「定格電圧」を読み流すのがこの問題の唯一にして最大の落とし穴です。「拘束」という語を見た瞬間に「始動と同じ状態だ」と結びつけられれば即座に見つかります。もう一つは(5)の役割分担を誤りと疑ってしまうこと——励磁は無負荷、漏れと二次抵抗は拘束で正しい分担です。

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